【AQUA274号】第四回アジアBMW技術交流会を終えて

アジアBM連帯会長 生田喜和

 日本、そして韓国においては、毎年おこなわれている全国交流会と共同開催という形で、「第四回アジアBMW技術交流会」を無事に終えることができました。これまで四年に一度の開催をしてきたアジアBMW技術交流会ですが、我々のBMW技術運動を中心とした農業問題を解決する取り組みをアジアに向けて発信して行こうということで、韓国の楊平郡でおこなわれた第三回の交流会にて「アジアBM連帯」という言葉が前アジアBM連帯会長の閔 丙采(ミン・ビョンチェ)氏によって提唱されました。今回は日本、韓国をはじめ、フィリピン、中国、タイ、インドネシアから二〇〇名以上の仲間が集い、共に学び、親交を深めることができ、まさに「アジアBM連帯」にふさわしいものであったかと思います。
 テーマは「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜、アングロサクソン流経済優先のグローバル化がアジアを含めて世界を席巻し、それぞれの固有の文化や社会の仕組みが規制緩和、優勝劣敗の競争原理等の導入で破壊されようとしている中、国家ではなく、もちろん国境もなく、アジアに広がってきたBMW技術と、そしてその仲間が中心となって、もうひとつの民衆レベルの繋がりを持てたことにとても大きな意義を感じました。これこそ、真のグローバリゼーションではないでしょうか。
 また、今回参加された皆さんは、アジアの稲作地帯で共に価値観を共有する者の集まりで、私たちはつい最近までは農民としての価値観で生きてきました。これは、昨年の新潟でおこなわれた「第二四回BMW技術全国交流会」からの延長線にもなりますが、私たちは本来、穏やかな地域で、米作りを主体とした、いわゆる稲作文化をベースに地域を作り、生きてきたのではないかと思います。田植え、稲刈り、水の管理など、みんなで一緒に行動し、一緒に仕事をするということがベースに在り、これが地域を作り、モノを作る人々を作っていったと言ってもいいのではないかと思います。

 さて、交流会の内容ですが、伊藤幸蔵理事長のBMW技術が進む方向についての基調報告からはじまりました。二〇一四年は国連が定めた「国際家族農業年」でした。二〇〇八年の食糧危機からさらに人口が増え、多くのグローバル・多国籍企業を推進したが、現状は問題が以前より深刻になっている。そこで国連は地域、水、文化を守るのは家族農業などの小規模農業だと認め、これらが飢餓や貧困の緩和、食料安全保障と栄養の提供、人々の生活の改善、自然資源の管理、環境保護、農村地域での持続へと導くのではないかと説いたとのことで、このことはこれまで我々が目指してきたBMW技術運動と共感できることであり、今後もしっかりと考えて行かなければならないことであるということでした。 
 BMW技術協会としては二〇一一年の協会法人化後、二つのキーポイント「BMW技術は技術と理念の両輪」、「次世代への継承〜未来の創造」として基礎セミナー、全国交流会、プラント巡回、アジア連帯、若手を中心とした生物活性水を使った実験などの活動を通して、BMW技術の基礎に対する理解を深めてきたと報告があり、これらをベースに今後は三つのキーポイント「地域を作り、地域と地域の仲間をつなぐネットワーク作り」「BMW技術の普及の見直し、もっと消費者に普及を目指す」、「生物活性水を科学する・BMW技術の見える化」を目指して活動していくとのことでした。
 続いておこなわれた基調講演は「韓国親環境農業の持続可能な発展と政策方向」として、韓国中央大学名誉教授・韓国元農林部長官(日本でいう農林水産大臣)の金成勲(キム・ソンフン)氏からありました。東洋の食文化哲学は「人は三六五日毎日良い食べ物を一定量(糧)必ず食べ、これを食糧という」という話にはじまり、農業の起源、人々の暮らしや自然界における関りの話しへと続きました。韓国では一九九八年に金大中(キム・デジュン)大統領が、持続可能な農業、環境保全に根差した「親環境農業政策」を導入し、その取り組みは韓国全土で広がりを見せ、BMW技術が親環境農業の中で重要な位置を占めているとのことでした。この政策を推し進めていたのが当時、農林長官であった金氏だったのです。
 世界は安全な食べ物が減少しており、そんな中、小農・家族農が世界の食糧の七〇%を生産しているとの説もあり、小規模家族農が大規模企業農よりも生産的、そして、大規模単一栽培より小規模多品目の方があらゆる気候変化に耐えうる可能性もある。持続可能な小規模農を推進させるような政策が必要になり、土地の収奪や毒性農薬に対する補助を停止させ、持続可能な農業直接支払制のような農産物の適正価格や種子、土着技術の保全等の小規模農を守る政策に優先権を置くべきだと。持続可能な農とは自然環境や農家を守るもので、安全な食べ物を消費者に提供することは農家の義務である。
 以上の基調報告、基調講演でBMW技術の未来と理念は語られ、「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜という今回のテーマの骨格がはっきりとしたのではないかと思います。
 その後は韓国、中国、フィリピン、インドネシアでのBMW技術の取り組み、事例報告があり、二年目となった日本の若手が取り組む「生物活性水を使った実験報告」、新たな取り組みである山梨大学教授の御園生拓氏の「生物活性水を科学する」とつながっていきました。BMW技術とは何か?という根本の問題、生物活性水がなぜ効果があるのかということを解き明かす根本の実験ということで、実験(分析)は、中途であることを前提に報告があり、まずは各地の生物活性水を取り寄せて、成分調査をすることにより「何が効果の要素であるのか」という要素還元的に推論を行ったが、結果的に良く分からない。今後は腐植酸やフミン酸などを含め、引き続き分析・推論をしていくことになるということでした。
 最後の講演は「地球の歴史、そして岩石と水とミネラルの循環について」として、岡山大学地球物質科学研究センター准教授奥地拓生氏からありました。奥地氏は毎年BMW技術全国交流会で現地の岩石や地層・成り立ちなどを調べて報告してきましたが、今回はその集大成ともいえる講演でした。日本列島はプレートが重なり合う不安定な場所に存在しているが豊かな水を生産できる地形にあり、BMW技術が誕生すべき場所であるということ、岩石(地球鉱物)と海水、私たちの体の元素組成が似通っていること、人体がそれらの物質を食物からバランスよく摂取する必要がある。また土壌は岩石を植物が少しずつ変化させ、作られてきたものであることがわかりやすく説明され、長い時間をかけて作られた岩石からミネラル、そして土壌へというプロセスをBMW技術は短期間に生み出すものであると解説され、日本列島の成り立ちからして、全国各地でそれぞれの地域の岩石を使って豊かにBMW技術を応用できることが説明されました。今回は特にアジア連帯ということもあり、韓国、フィリピン、タイ、インドネシアの岩石(地層)についても触れ、いずれもそれぞれの地で多様な岩石(ミネラル)に出会える豊かな土地であるということで話しを終えました。
 今回の交流会は若手幹事会を中心に実行委員会が構成され、実際の運営も都内の協会会員団体から選出された若手と一緒に取り仕切るという交流会でした。会場を移動するというリスクがありましたが、たいした混乱もなく、とてもよくやっていただいたと感謝しています。これもここ数年の活動が及ぶ中で、互いの交流を重ねてきた成果だと思います。この若手の頑張りが将来のBMW技術が進むべき道の舵取りとなり、「アジアから共に未来へ」〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜のテーマの通りに、農業、自然環境、地域と暮らしのこと、それぞれの国で抱えている問題の解決と、民衆の豊かな未来の創造に向けて、力強く踏み出す第一歩となったのではないでしょうか。
 ご参加いただいた皆様にはあらためて深く御礼を申し上げます。今後も一緒に手を取り合って歩んでいきましょう。

Author 事務局 : 2015年02月01日17:14

【AQUA274号】西日本BMW技術協会会員プラント巡回報告

 西日本BMW技術協会では二年前から会員のプラント巡回をしてきましたが、今年は豚のPED(豚流行性下痢)や鳥インフルエンザの流行もあって、巡回を見合わせていました。それで、今回が今年度の最初のプラント巡回です。巡回はプラントの状況を確認するだけでなく、取り組んでいることの確認や、会員がやりたいと思っていることなどの相談なども受けるようにしています。
 一二月一五日に清村養豚場、大矢野原農場、やまびこ会、那須ファーム、庄村養鶏場(以上いずれも熊本県)、一六日に糸島BM農法研究会の柴田さん、ヨコテ養鶏場(以上いずれも福岡県)を、BMW技術協会の秋山澄兄さん、永合耀さん、西日本BMW技術協会事務局の宮﨑と秦、グリーンコープ連合畜産部の大屋さん(一五日のみ)の五名で巡回しました。

清村養豚場にて
 清村養豚場の尿処理プラントはすでにAQUA二〇一四年九月号で報告しているように、新しく固液分離機と曝気槽を増設したことにより、状態はとても良くなっていることをBMW技術協会の皆さんとも確認しました。このプラントの処理水と堆肥を使っている熊本県愛農会野菜部の皆さんも来られていました。プラントは、とても良い状態で、臭いはほとんどせず、曝気槽の汚泥を鼻の先に近づけても全く臭いはありません。プラント全体としては全く問題ないのですが、困っていることとしては、汚泥が多くてプラントの運用が少し「重い」ということです。清村さんと秋山さんにご意見をお聞きしました。

――汚泥を引き抜いたりしているのですか。
清村:増設した曝気槽から二〇トンくらいを引き抜いたことがあります。作業としては、丸一日かかります。直後は、汚泥の量もちょうどよくなるのですが、二日くらいする汚泥の量も増え、もとにもどります。
――このまま、引き抜かずに運用していくということにはならないのでしょうか。
秋山:汚泥の一部は分解されていきますが、徐々に増えて行き、プラント全体にも悪影響を及ぼすと思います。尿処理プラントの場合は沈殿槽から汚泥を引き抜きするような設計にするのですが、このプラントは沈殿槽の大きさが少し小さいので沈殿槽からの引き抜きが難しいようですね。清村さんがやっているような曝気槽からの引き抜きが良いと思います。プラントの様子を見ながら年に数回汚泥の引き抜きをするというような感じでうまくいくのではないかと思います。

 尿処理水のEC(電気伝導度)は、固液分離機と曝気槽の増設以前は一二.三(ms/cm)でしたが、この日はEC六.一で透明感のある良い状態でした。リアクターの状態の点検なども行いました。
 続いて農場の中にある堆肥場を見学しました。堆肥場は全部で五ブロックで、夜間に下からエアを送れるようになっていますが、処理量と堆肥場の大きさの関係で、少し未熟気味のようです。

――堆肥はここでどれくらい滞留することになるのですか。
清村:約二ヶ月です。もう少し切り返しの出来るエリアが欲しいとは思っているのですが。
――秋山さん、状態はどうですか。
秋山:やはり三ヶ月は発酵するようにした方が良いですね。この最後のブロックの堆肥を一ヶ月ぐらい貯留できるような場所があると良いですね。そこではエアを送らなくても静置するだけで良いと思います。

 この後、清村さんと愛農会の皆さんと尿処理水と堆肥の活用について意見交換しました。愛農会のメンバーは全部で一〇名、そのうち五名が清村養豚場の尿処理水と堆肥を使っているということでした。愛農会は清村さんも含めた農畜産生産者のグループで清村さんの息子さんの徹さんも愛農会のメンバーとして野菜を作っているということです。

大矢野原農場にて
 大矢野原農場は若鶏の生産農場で、AQUA二〇一四年一一月号で報告しているように敷料の堆積発酵を一年前から始めています。敷料を鶏舎の中で堆積発酵するようになり、大掛かりな堆肥場が空っぽになっているということで現場を見せていただきました。堆肥場は農場から八〇〇m位離れていて、堆肥場にある生物活性水のプラントから生物活性水を運んで堆積発酵に使っているということでした。できれば農場のそばで生物活性水を作りたいということです。大矢野原農場の日永さんに話を伺いました。

――二か月前にも訪問しましたが、堆積発酵はうまくいっているようですね。
日永:うまくいっていますが、今から真冬になるので、そこを乗り越えることができるかどうかですね。
――敷料の補充にもみ殻を使うようにするのですか。
日永:もみ殻も確保して準備しています。鶏の糞で増えていく敷料を少し引き出して、代わりにもみ殻を補充するということにします。堆積発酵の際にもみ殻を入れて一緒に発酵させる予定です。これを順次繰り返すことになります。
――農場に生物活性水プラントを作りたいということですが、以前使っていたプラントが残っているのですか。
日永:以前は、大きなセメントの土管を六基つないだプラントでしたが、堆肥場の近くに本格的なプラントがあったほうが良いということで、堆肥場に土木槽で大きなプラントを作り、移設しました。再度、最初に使っていたプラントを復活させようと考えています。来春には工事をしたいと思っています。

 来春の工事に向けて、秋山さんと日永さんが打ち合わせをしました。現在のプラントで使っているリアクター塔を移設すること、使える散気管なども極力使うように相談しました。

やまびこ会にて
 やまびこ会は野菜の生産者グループで、生物活性水プラントは出荷場にあります。今回は那須ファーム(採卵鶏農場)、庄村養鶏場(採卵鶏農場)のお二人には生物活性水を持参いただきました。鳥インフルエンザの防疫のため、農場を訪問することは差し控えました。
 やまびこ会の生物活性水プラントは四槽で、堆肥は那須ファームの鶏糞堆肥を使っています。やまびこ会の生産者は、生物活性水をそれほど使わない時期であり、状態はとても良い感じでした。
 那須ファームと庄村養鶏場は、夏は鶏舎内の噴霧にも生物活性水を使っていますが、今の時期は飲水に希釈して使うだけですので、生物活性水はとても良い状態でした。那須ファームは生物活性水を九〇〇倍に希釈して飲水に添加、同じく庄村養鶏場は五〇〇〜六〇〇倍に希釈して添加しているということでした。

柴田邸のBMプラント
 糸島BM農法研究会の柴田さんは自宅のトイレの糞尿を原料にした生物活性水プラントを運用しています。二年前に巡回した際にpHが非常に低かったので(三程度)、石灰石をプラントの中にブラ下げてもらいました。今回pHが七.三程度だったので、少し石灰石を減らした方が良いのではないかということを相談しました。
 柴田さんはホウレン草や水菜をセルトレイで育苗して、畑に定植するということです。種の浸漬からセルトレイでの潅水に生物活性水を使っているということで生育が良いようです。またセルトレイから苗を外す器具や、畑の穴あけは自分で工夫してとても効率的に作業をしているところを見せていただきました。

ヨコテ養鶏場のBMプラント
 ヨコテ養鶏場は、飲水のプラントのタンクを増設するとともに新しく生物活性水のラインを作り直すという準備を進めています。その準備の様子を確認し、既存の生物活性水プラントの点検をしました。生物活性水の状態も数値も特に問題なく、とても良い状態でした。新しい生物活性水プラントは春先に作るということでした。すぐそばにあると鳥処理施設、GPセンター(集卵・パック詰め)も見学させていただきました。
(取材:西日本BMW技術協会事務局 宮﨑利明)

一二月一六日、西日本BMW技術協会役員会が開催されました。
 今回の役員会には、BMW技術協会の事務局長の秋山澄兄さん・永合耀さんにオブザーバーで参加いただきました。(プラント巡回を前日・当日行い、引き続き参加いただきました)

 まず、前日・当日のプラント巡回の様子を写真を見ながら確認しました。それから新規会員の加入状況の報告と脱退の報告を行いました。
 それから中村養豚場の生物活性水の提供が、全部で三〇トン強になっていることを報告しました。
 BMW技術協会常任理事会・匠集団そら株主総会の様子を秋山澄兄さんから報告いただきました。
 次に一一月開催の全国交流会の報告をAQUA一二月号と事務局の報告書に基づいて行いました。関連してこれまで西日本BMW技術協会としては、定例開催されているBMW技術基礎セミナーの運営にかかわって来れていなかったのですが、会員の若手で運営されているこのセミナーの運営に西日本BMW技術協会としても積極的にかかわるということを確認しました。主には東京で開催されるので交通費なども西日本BMW技術協会として補助することにしました。
 西日本BMW技術協会会報についてAQUAを活用するようにする提案を行いました。これまで総会直後の会報は発行していますが、それ以外の時期の会員の動向や役員会の様子などが会員に届けられていませんでした。そこで、BMW技術協会とも共同しながらAQUAに記事を掲載し、「AQUAに掲載されています。ご覧ください」という案内を行うことにしました。
 また、次年度の研修会・総会について相談しました。
(報告:西日本BMW技術協会事務局 宮﨑利明)

Author 事務局 : 2015年02月01日17:13

【AQUA274号】インドネシア〜生物活性水を利用した稚エビの繁殖実験報告

 昨年の第四回アジアBMW技術交流会の二日目に、インドネシアのATINA社(オルタートレード・インドネシア)のハリー・ユーリ氏より、同社におけるBMW技術の取り組みの報告がありました。
 ATINA社は、パルシステムやグリーンコープなどBMW技術協会会員を含む、日本の生活協同組合向けのエコシュリンプ(ブラックタイガー)の冷凍加工工場で、二〇一三年にBMW技術排水処理プラントと生物活性水プラントが導入されました。
 導入から二年もたっていませんが、同社とエコシュリンプの生産者にはBMW技術が深く浸透しはじめています。これは排水処理プラントの処理水を池に放し、魚やエビの養殖を実現することで、水の浄化が目に見えてわかること、エビ生産者が積極的にこの処理水をエビ養殖池で利用し始めていることなどが功を奏しているとのこと。さらに昨年の九月より、同社が運営する稚エビの孵化場(ハッチェリー)では、稚エビの孵化から出荷まで、生物活性水を利用した実験を開始しました。
 一二月七日から一一日までインドネシアを訪問し、この稚エビの繁殖実験の途中経過の確認と、今後についてなどの話し合いをおこないました。

〜ATINA社のBMW技術プラント〜
 排水処理プラント、生物活性水プラントが設置されています。専任スタッフによりきちんと管理がされており、順調に稼働していました。排水処理水が流れる調整池(インディカトル)には、食用淡水魚のティラピアがたくさんいました。排水処理プラントと池の周りは、公園と遊歩道が整備されていて、パパイヤやバナナ、ナスやトウガラシなどが栽培されていました。池の水際にはマングローブが植えられ、そこを赤とんぼが飛び交うなどしていました。
 生物活性水は処理水を原料に作られています。微生物の餌が少し足りないため、一槽目に発酵鶏糞堆肥を毎週五kgほど投入しています。EC(電気伝導率)は三・五ms/cm、pHは七・九、亜硝酸態窒素、大腸菌群の検出はありません。

〜稚エビの繁殖実験〜
①はじめに
 稚エビは孵化後、大きくわけると三つの生育ステージにわけられ、生後二一日で生産者へ引き渡されます。その間はずっとハッチェリーの中の水槽で生育します。大きくなるにつれて水槽の水の塩分濃度を下げていきます。ブラックタイガーは産卵を海でしますが、エビを養殖をする池は、海の水と川の水が混ざる汽水で育つため、エビ養殖池の塩分農度に合わせます。そうすれば放流された時に稚エビのショックが少なく、早くエビ養殖池に慣れるためです。※海水の塩分濃度:約三.四%、エビ養殖池の塩分濃度:約一.四%(乾季と雨季、または生産者のエビ養殖池の状態によって変化させる)

②実験までの経緯
 ATINA社では抗生物質などの薬品を一切使わずに稚エビを繁殖させているため、同業他社に比べると生存率(出荷される稚エビの数÷産卵数)が低く、生産コストも厳しい状況が続いています。そこで親エビの水槽をはじめ、稚エビの二一日間の生育ステージの水槽に生物活性水を希釈して投入し、生存率を上げることができるかどうかを実験することにしました。これは、親会社である日本の㈱オルター・トレード・ジャパン(BMW技術協会会員)の前代表である堀田正彦さんが予てから発案されていたものであり、ATINA社にBMW技術を導入する目的の一部でもありました。

③実験方法
 生育ステージごとに一〇〇倍希釈で生物活性水を水槽へ投入し、生物活性水を投入しない通常のものと生存率、生育状況などを比較する。但し、今回の実験に関しては一五日目以降、水槽の水の一部六tを入れ替えるたびに水槽全体の水量に対して生物活性水を一〇〇倍希釈で投入していったため、二一日目には倍率は上がっている。母親エビは一回の産卵に五〇万〜百万の卵を抱える。卵の数は水中の密度で換算し、稚エビは二一日目の出荷時に一匹ずつカウントする。ステージの途中でのカウントは難しい。

④実験結果
 表を参照にしていただければわかりますが、これまでに四回の比較実験がおこなわれ、一回目の生存率はBM(生物活性水投入)が一二%、通常が四%、二回目はBM二六%、通常二八%、三回目はBM二八%、通常八%、四回目は表にはありませんがBM二二%、通常一五%という結果となりました。二回目以外はBMの方に優位性が見られました。
 また、生存率以外の違いとしては、「親エビの糞やエサの食べ残しからの悪臭がない」、「孵化後の稚エビ、特に〇日〜三日目までの成長が早い」、「稚エビの出荷後のプールやタンクが無臭」などと目に見える結果が出ているとのことでした。「水槽内では自然のプランクトンの増殖も見られるため、今後は人工飼料の使用量も通常より少なくて済み、コストカットにつながるのではないか」との見方もありました。
 
⑤今後について
 今回は、BM実験区の方の生存率が良い傾向にあることはわかりましたが、データにバラツキがあるため確証を得たわけではありません、今後も引き続き実験を続け、より多くのデータを収集していくこととなりました。一五回分のデータが集まった時点で、再度、現場責任者やATINA社の責任者などと相談し、全面的に生物活性水を使用するかどうかを再度検討します。そのために、より多くのデータを集めるためには実験をもっと効率よくできないか、現場の生産に合わせて進めていけるような方法はないかなど、アイディアを出し合いながら話し合いは続きました。
(報告:秋山澄兄BMW技術協会事務局)

Author 事務局 : 2015年02月01日17:12

【AQUA274号】新年挨拶「2015年を迎えて」

一般社団法人BMW技術協会 理事長 伊藤幸蔵

 新年、あけましておめでとうございます。
はじめに、昨年11月の「第4回アジアBMW技術交流会」では、200名以上の会員、及び関係者の皆様とお会いすることができ、そして、実りある交流会を開催することができましたことに御礼申し上げます。
今年の11月は第25回BMW技術全国交流会を北海道で開催いたします。北海道では初めての開催となります。皆様のご参加をお待ちしていますので宜しくお願い致します。
さて、BMW技術協会は一般社団法人になってから三期を終え、四期目に入りました。
2011年10月の法人化後、原点へ還るということを基軸に、「次世代への継承と未来の創造」、「BMW技術は技術と理念の両輪」を大きな課題として活動を続けてきました。BMW技術の基礎をあらためて学び、若手の技術、理念の深化を図るため、BMW技術基礎セミナーの開催や全国のプラント巡回などを重点的におこなってきました。交流会の発表者や参加者の顔ぶれにもだいぶ若手が増えてきたこともあり、今後の展開が楽しみとなってきています。
引き続き、BMW技術の理念と技術の持つ基本を忘れず、努力を怠らずに活動し、個々が自分の意志で考え、技術を選択して、より良いものを作って行くこと、「良いもの」とは品質だけを指すわけではなく、地域の環境や資源に合わせた、生産を継続できる農畜産物づくりを目指し、そして、消費者とともに環境、文化、地域を守って行くことにつなげていきたいと考えています。その意味も含めて、今後は「地域の仲間をつなぐネットワーク」、「BMW技術の消費者への普及」、「生物活性水を科学する」という3つのポイントを推進していきたいと思います。
まず「地域の仲間をつなぐネットワーク」では、昨年の4月には第24回BMW技術交流会の開催をきっかけに新潟BM自然塾が設立され、一昨年の開催地である高知では県内の会員が集まって勉強会が開催されました。その他にも基礎セミナーを西日本BMW技術協会と共催するなど、各地域内でのネットワーク強化を図り、そして北海道から九州までの地域と地域をつなぎ、BMW技術はもとより、農業問題を中心とした様々な問題を全国の仲間で解決するため、より強固なネットワーク作りを目指していきます。今年の北海道での全国交流会も良いきっかけになることを願っています。
次に「BMW技術の生活者への普及」では、BMW技術を活用する上でのテーマのひとつである、自然生態系・自然循環、環境保全、 生産・生活・地域社会の在り方を生産者と消費者が生活者として共に考えるを実践し、BMW技術と生活者の関りをより密接にするためにも、学習会を開催しBMW技術への理解を深めていただき、家庭や職場などで生物活性水使用の推進を図っていきます。これまでもこの取り組みはおこなわれてきましたが、近年は生産者中心の基礎知識の学習、実験となっていました。技術は生産者だけのものではなく、作ったものを食べる消費者の人達と共に作っていくものでもあります。生産の現状を知り、共に考え、そして、生産者にどういうものを作って欲しいかということも含め、技術に興味をもってもらえるよう、あらためてこの取り組みを進めていきたいと思っています。
そして三つ目の「生物活性水を科学する」については、すでに山梨大学と山梨自然学研究所が取り組まれてきたことをベースに置き、生物活性水の分析を行い、技術の「見える化」をしていこうと考えています。これまでにもBMW技術は半分の技術という言い方をしてきました。そして残りの半分については、実際に活用する側が実験や工夫を凝らし地域や作物に合わせた活用法を見出してきました。これは先代の方達の取り組みから現在に至るまで積みあげられた実績であり、私たちにとっては宝物になっています。この間、BMW技術は数々の解析がなされてきましたが、「見える化」を図ることにより、さらに深化させ、若手主体で行われる、生物活性水の使用実験をレベルアップさせていきたいと考えています。
アジアBMW技術交流会でも触れましたが、いま世界全体の未来は不透明な状態ですが、私たちは持続可能な社会と環境、地域づくりを目指した環境保全型農業を行うためにも、自然の浄化作用に学び、そしてBMW技術を実践しながら、地球生態系への理解を深め、未来につながる活動を推進していきたいと思います。
繰り返し話していることでもありますが、私たちは技術に驕ることなく、しっかりとした理念を持つことが大切です。BMW技術の推進を共に考え、技術そのものを深化させていき、 技術が人やその営み、環境を支え、人を作り、人がより良い環境と未来を創造できるということを具体化していきましょう。BMW技術協会には農業者、消費者、物流組織や自治体など、幅広い分野で活動する団体を含め、協会の活動を支える約300の会員が日本国内にいます。アジアを含めればさらに大きな広がりとなります。このようなネットワークの広さを持った団体は多くありません。その根強いネットワーク、心強い仲間がいるということを再確認し、諦めることなく力を合わせより良い未来を創造していきましょう。本年も宜しくお願い致します。

Author 事務局 : 2015年02月01日17:10

 
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