【AQUA277号】第10回BMW技術基礎セミナー開催

三月一一〜一二日に第一〇回BMW技術基礎セミナーが開催され、若手の生産者を中心に約五〇名が参加しました。参加団体は、ファーマーズクラブ雪月花、ポークランドグループ、米沢郷牧場グループ、やまなし自然塾、茨城BM自然塾、(株)ミクロコスモス茨城、大川村ふるさとむら公社、山梨大学、白州郷牧場、(農)和郷園、謙信の郷、夢産地とさやま開発公社、西日本BMW技術協会、(株)華和、などでした。
 
 一日目は、九段下「TKPスター会議室」にて「感染症と免疫のしくみの基礎」と題した講演と、生活の中でのBMW技術の基礎講座、発表「生物活性水を科学する」がおこなわれました。
 まず、新潟BM自然塾、謙信の郷の金谷武志氏から開会挨拶があり、続いて、薬学博士、作家の生田哲氏による講演「感染症と免疫のしくみ」が始まりました。
 鳥インフルエンザ、口蹄疫、エボラ出血熱、PED(豚流行性下痢)について、それぞれの特徴、現状の説明があり、インフルエンザを過度に恐れる必要はないこと、まだまだ謎の多いウイルスについて、その感染のしくみ、ウイルスにはワクチンは効果のないことなどを話されました。また、人間による環境破壊によって、ウイルスの世界も大きく乱れ、感染症を爆発させていること、自然の生態系の中での共生によって、人間の免疫力は育まれてきた歴史があり、免疫力を高めるには自然の循環系を回復しなければいけない、と結ばれました。これはBMW技術の理念、ビジョンと全く一致するものです。
 次に「生活の中でのBMW技術の基礎講座」として、BMW技術協会の秋山事務局長が話しました。BMW技術の基本的な考え方から生物活性水、生物活性水プラント、バイオリアクターなどの働き、機能について。生態系の循環モデルを模したBMW技術の循環システム。BMW技術の利用例として農業、食品工場、排水処理施設、中水利用やバイオマス利用への取り組み。BMW技術の未来ビジョン等について、解説がありました。
 続いて、基礎講座「生物活性水を科学する」として山梨大学生命環境学部教授 御園生拓氏から、まず、科学の再現性(同じ要素や要因を条件として整えた時に、再びまったく同じ事象が起こる性質)や反証可能性(「絶対」といいきってしまったら科学でなく宗教になってしまう)など、科学的方法について簡単な講義がありました。続いて(アジアBMW技術交流会での講演からもつながる)生物活性水の成分について、分析データに基づく結果の発表がありました。終わりにコンパニオンプランツとしてハーブとともに植栽した果樹と生物活性水の実験についてや、バイオマス利用の自家発電機開発の進捗状況などの発表もありました。
 最後に伊藤理事長から一日目の総括があり、会場を移しての懇親会となりました。
 二日目は、「東京しごとセンター」セミナー室にて、米沢郷牧場の森谷安兵衛氏の生物活性水を使った果樹栽培実験結果発表からはじまりました。デラウェアのジベレリン処理を二回行っていた(一回目は種なしにするため、二回目は肥大化のため)のを、一回にし、替わりに生物活性水を使用したところ、生育状態は二回処理のときと遜色なかったとのことでした。
 続いて、山梨大学生命環境学部環境科学科の五味直哉氏から、「実験のやり方、データの扱い方について」と題して、講演がありました。課題を決め実験系を決め、その結果から何を導くのか。取るべきデータの選定、そのデータの視覚化と分析の方法、得られたデータの有意差決定、結果をもとに次の実験をどうするのか、といった科学的手法の流れを話していただきました。
 その後、野菜、米、果樹、畜産、生活の部門にわかれての分科会が行われました。グループディスカッションが行われ、今年の実験テーマと内容が話し合われました。
 今年行われるこれらの実験は、今後のBMW技術基礎セミナーや一一月一三日からの第二五回BMW技術全国交流会で結果発表される予定です。今回のBMW技術基礎セミナーでの御園生拓氏、五味直哉氏の講演をふまえ、今年の生物活性水実験発表では精度の高い科学的実験データの提示ができるのではないでしょうか。
 最後に、やまなし自然塾の向山洋平氏から閉会の挨拶があり、第一〇回BMW技術基礎セミナーは終了しました。
   (報告:BMW技術協会事務局 井上 忠彦)

講演者:生田 哲(いくた さとし)氏について
 一九五五年、北海道に生まれる。薬学博士。がん、糖尿病、遺伝子研究で有名なシティ・オブ・ホープ研究所、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)などの博士研究員を経て、イリノイ工科大学助教授(化学科)に。遺伝子の構造やドラッグデザインをテーマに研究生活を送る。帰国後は、生化学、医学、薬学などライフサイエンスを中心とする執筆活動を行う。著書に、『脳は食事でよみがえる』『よみがえる脳』『脳と心を支配する物質』など。


「第10回BMW技術基礎セミナー」に参加して
      やまなし自然塾   高野 弘法

 今回初めてBMW技術基礎セミナーに参加しました。私の農園では何年か前から生物活性水を使用していますが、今までセミナーには父が参加していたのでBMW技術の事について全く知識がありませんでした。そこで、今回初めて基礎セミナーに参加し、BMW技術がどの様なものなのかを学びたいと思い参加させていただきました。
 今回で一〇回目となる基礎セミナーではBMW技術の基礎を教えて頂けるだけではなく、まず一日目には生田先生の基調講演・御園生先生の講義で様々な事を教えて頂きました。
 薬学博士・作家である生田先生は『感染症と免疫のしくみ』についてのお話や、ウイルスの発生の仕組みや感染経路など専門的な事柄や、ウイルス感染後の人間の自己免疫機能の仕組みについても教えて下さいました。最後の結びとして「人間の免疫力を高める事は自然と共生する事。自然循環の仕組みを取り入れたBMW技術、そしてその技術を使い、よりよい農産物を作っているあなたたちは素晴らしい」と言って頂いた先生の言葉でこれからBMW技術を使った果物作りに誇りを持つ事が出来そうです。
 次に御園生先生の講義では『生物活性水を科学する』と言う事で、生物活性水のどの成分が植物の成長促進に効果があるかを科学的に解明する研究の経過報告を踏まえた内容のお話をして下さいました。御園生先生のお話によると「生物活性水は今まで感覚や経験で植物に効果があると言われているだけで、科学的な根拠を示すまで至っていない。科学的な根拠を示す事でBMW技術は宗教的な技術ではなく、科学的に証明された技術と言う事が出来る」との事でした。そのお話を聞いて科学的に証明する事の大切さを改めて考える事が出来ました。今世の中にはなんとなく効果がある、よくわからないけど良さそうだから使ってみると言った曖昧な物や思考が溢れているような気がします。なんとなくでは人を納得させる事や、考えに賛同してもらう事は容易ではないと自分自身でも感じていた事なので、御園生先生の今後の研究成果によってBMW技術が科学的に証明される事がとても楽しみです。
 続いて二日目は生物活性水を用いて農作物・畜産にどのような効果を及ぼすかを考え、実験していこうと言う若手農業者のグループワークに参加しました。私は果物を作っているので果樹のグループワークに参加させて頂きましたが、果樹生産者の皆さんが生物活性水の力でいい果物を作りたいと言う情熱に感銘を受けました。とても熱心に「生物活性水の力を引き出す為にはどのようにしたらいいか。実験の方法はどうしたらいいか」など忙しい農作業の合間を縫って実験方法を考え、実験結果を記録している事に驚き、自分も何か協力出来る事はないかと考え米沢郷牧場の方の『葡萄のジベレリン処理の省力化と薬剤の低減』と言う実験に協力する事に決めました。
 今回参加させて頂いたこの二日間では、今までBMW技術を学ぶ事を父親に任せてばかりだった自分にとってBMW技術を知るいい経験となり、共に歩んでいきたいと思えるような生産者の方々と交流を深める事が出来てとてもいい刺激になりました。これから協会のイベントには積極的に参加し、農業技術だけではなくBMW技術についてもっと学んでいきたいです。

Author 事務局 : 2015年05月01日15:20

【AQUA277号】第25回BMW技術全国交流会への道

第25回BMW技術全国交流会への道
 〜北海道開催に向けて実行委員会がキックオフ!

第25回BMW技術全国交流会in北海道
  今年のテーマは、「いま問い直す、持続可能な農業」

全国交流会は11月13日から二日間です
開催予定地:札幌市内、定山渓温泉などを選定中
第一日目:午後一四時から交流会・懇親会
第ニ日目:午前中は交流会。後に終了
オプション視察:一五日まで延泊して根釧みどりの会(中標津町)、ファーマーズクラブ雪月花(妹背牛町)にて視察交流の予定。
実行委員会構成団体:ファーマーズクラブ雪月花、根釧みどりの会、高松農園、BMW技術協会
実行委員長:石澤元勝(根釧みどりの会 会長)
副実行委員長:田村昌之(ファーマーズクラブ雪月花 代表)

 三月二四日に北海道別海町の西春別公民館にて、第二五回BMW技術全国交流会の北海道開催に向けて第一回目の実行委員会が開催されました。
 出席者は「根釧みどりの会(根釧地域)」から石澤元勝会長、三友盛行氏はじめ九名、「ファーマーズクラブ雪月花(雨竜郡妹背牛町)」から田村昌之代表と市川智氏、BMW技術協会から伊藤理事長と事務局の秋山、㈱匠集団そらの星加浩二氏(根釧地区のプラント点検を兼ねて)。根釧みどりの会のメンバーとファーマーズクラブ雪月花は初の顔合わせとなりました。

○開催に向けて
 現在、北海道のBMW技術プラントは、根釧地域の酪農家グループ「根釧みどりの会」の石澤牧場、三友牧場、岩崎牧場、渡辺牧場、川畑牧場の五箇所。雨竜郡の妹背牛地域の稲作と花卉農家のグループ「ファーマーズクラブ雪月花」に一箇所、恵庭市の高松農園(野菜の施設栽培)に一箇所、全部で七箇所に設置されています。根釧地区はすべて飲水改善プラント、石澤牧場には生物活性水ミニプラントも設置されています。田村農園と高松農園にはそれぞれに生物活性水プラントが設置されています。
 北海道は広く、BM会員農家は広範囲に渡って点在していること、農業形態や栽培品目が異なるなど、お互いの交流が難しい状況にありますが、プラントの設置箇所としては七箇所、拠点としては三箇所あり、北海道というひとつの地域の中に点としてあるBMプラント、協会会員を結ぶことが必要と考えられます。全国の会員の皆さんに、北海道の農業の現状や歴史(本土とは異なるという意味で)を知ってもらうこと、北海道の協会会員の活動、魅力、取り組みなどを知ってもらうことで、今年の北海道での開催は大きな意味を持つのではないでしょうか。また、この機会に北海道での新たなネットワークが生まれてくることへの期待もあります。

○先ずは学習会からスタート
 さて今回は、実行委員会に先だって学習会がおこなわれました。はじめにお互いの組織を知ろうということから、根釧みどりの会の高橋昭夫さんとファーマーズクラブ雪月花(以下、雪月花)の田村代表が、それぞれの組織概要と理念、活動や取り組みについて自己紹介をかねながらプレゼンテーションをおこいました。同じ北海道ですが土地柄と地域、農業の特色が異なります。広大な丘陵地帯に草地が広がる道東の根釧地域、酪農を中心に町や地域が成り立っている。一方で石狩川の中流域で水田地帯が平らに広がる道央の妹背牛町、大稲作地帯であり、減反奨励作物として大豆や玉葱なども盛んに生産されているとのこと。
 続いて、伊藤理事長を講師におこなわれた「BMW技術基礎講座」は、山形県の米沢郷牧場グループでの地域循環の取り組みを交えて(踏まえて)、技術の基礎と生産現場と地域での活用事例報告とBMW技術協会の活動報告がおこなわれました。

○実行委員会
 お昼をはさみ、午後から実行委員会が開催されました。協会事務局が全国交流会を毎年開催する主旨、これまでの開催地や内容の紹介、北海道開催に決まった経緯などの説明をおこないました。続けて日程と開催地、視察についての案をたたき台に概ね開催概要を決めることができました。
 なお、北海道の協会会員は、まだ会員になって新しいということ、お互いの距離が遠いということで、実行委員会の立ち上げはできても、会議の回数は限られてくることから、開催当日の運営などに不安が残りますが、実行委員会事務局を雪月花に置き、主体的に運営を進め、そこをBMW技術協会若手幹事会とBMW技術協会事務局が支えて行くということが確認されました。

○開催テーマは「いま問い直す、
    持続可能な農業」
 開催テーマを決めるにあたり、実行委員長に選出された石澤さんから「皆さんから実行委員長をと言っていただいているけど、実は違和感を抱えています。我々、マイペース酪農の考え方とBMW技術の考え方、技術はもちろん活用させてもらっているし、良い技術だとわかっている。でも根本的な考え方や経済観はどうなのか、どこか違うのではないか。この違和感を交流会自体に問うことになるかもしれない。」という問題提起にはじまりました。
 続けて根釧みどりの会の三友さんからは、「根釧みどりの会、マイペース酪農は「適地・適作・適量」を原則にし、今ではいわゆる自然農といっていい、農業というよりは哲学、そういった生き方を目指している。これは、いわゆる持続可能な世界(環境)を作り、それあっての農業、暮らし、社会。経済が先行している今の世の中は得なこともロクなこともない。今日の講義で生産者も消費者も活用できる技術と聞いたが、BMW技術はこの持続可能な世界を作ること、守ることにどれだけ貢献できるのか、寄与できるのか、その辺が重要な事なのだと思う。むしろそれを色々な人に聞いてみたい。でも一歩間違えば、いわゆる経済優先のビジネス農業も助けてしまう可能性もあると思う。石澤さんが持っている違和感はこのことなのだと思う。」
 これに対し伊藤理事長は「BM的には色々な考え方や人、もちろん問題提起もあった方がいいと思う。もちろん目指すところが同じ、あるいは近くにあればいいが、そこはきちんと話し合うべき。」ということで白熱した議論が繰り広げられることとなりました。
 石澤さんの「違和感」をきっかけに考えて行くと、この違和感はもっと大きな違和感であることがわかってきました。それは市場経済優先主義(市場原理主義)に対してであり、その現実の下、生産者として消費者や販売・物流業者などに感じているものでもあり、それは実行委員共通の「違和感」でもありました。そして三友さんからそのアンチテーゼとして出されたキーワードは「持続可能な世界(農業)を作る」でした。
 伊藤理事長は「いまBMW技術協会は若手が増えてきているが、まわりの農家を見ても作ることや考えることよりも売ることばかり考えて技術や環境を考えることを疎かにしているところがある。お二人の言う経済は、市場原理主義の経済だと思うが、経済についてはやはり考えなければならないだろう。だが、協会としては市場経済優先主義に対抗していこうとしているので、むしろ皆でそこにあえて突っ込んでもいいかと思う。昨年のアジア交流会を通しても、アジアと日本、日本国内においても自然の摂理、気候、農のスタイルに違いはあり、それらは地域の特性にもなってきているのではないのか。その中で暮らしていけば、農業を続けていけば、人それぞれの考え方や知恵もできていく。そこをつないで築いてきたネットワークがあり、それはBMW技術の理念の土台でもあるので、そういった意味でもみんなで一緒に考えていきたい。」
 私たちは市場経済優先主義に立ち向かい「持続可能な世界」を創造する。でも「持続可能な…」というフレーズは多くの人達に使われその中味も様々。「持続可能な世界・農業」を見つめ直し、現在の農業、社会に「問い直す」、そんな交流会を目指して今年のテーマは「いま問い直す、持続可能な農業」となりました。最後に実行委員長の石澤さんは「今日話してみて、最初に話したBMに対する違和感はほぼ無い。今まで誤解もあったかもしれないし、BMW技術協自体も世代交代して変わってきているということがわかった。全国から北海道まで来て下さる方々もいるので、自分自身の勉強を含めて、実行委員長として不安もあるが、期待と希望を大きく持ってやっていきたい。」と白熱した議論は夜遅くなり終了しました。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山 澄兄)

Author 事務局 : 2015年05月01日15:16

【AQUA277号】BMW技術ベーシックNo.2

 ときに難解ともいわれるBMW技術を、初心者もわかりやすく理解するために「BMW技術ベーシック」として、過去の記事や講演記録から抜粋してご紹介いたします。
 今回は、理学博士 川田薫先生のAQUA連載「生命活動とBMW」 (一九九一年)を抜粋して掲載いたします。

 生命はなぜ海から生まれたのでしょうか。生命が生まれてから三〇数億年がたちました。生命体を分析してみると、ミネラルがそのすべてに含まれています。それは岩石に含まれていた成分なのです。

「岩石は溶液のなかに溶けたときに際立った違いがあらわれる」
 地球科学では岩石を見るとき大きくは地殻とマントル層に分けて考えます。地殻をさらに、地殻上部(三五キロ)と地殻下部(五キロ)に分け、マントル層を上部マントルと下部マントルに分けます。私はその代表的な岩石を集めて分析しました。その結果わかったことは、岩石からミネラルを抽出した水は、その岩石が存在した場所によってその性質が大きく異なっているという事実です。
・地殻上部…生体活性を活発にする(たとえば、この液を切り花の瓶に注ぐと、通常の二倍も日持ちがよい。また、木の枝を差し込んでみると、水道水の場合は二週間で枯れてしまうのに、ミネラルを抽出した水の場合は新芽を出し、やがて発根して成長を開始します。)
・地殻下部…界面活性剤の働き。つまり、水の中に色々なものを溶かし込む力をもっています。強制的に構造水を作る力と言い換えてもよい。(有機物が分解浮遊している水の中にこの液を注ぐと、浮遊していた有機物が直ちに分解して完全に溶け込み、もとの水道水と同じ透明な水に変わります。)
・上部マントル…構造水の破壊。つまり、水の中に溶け込んでいるものを析出させる力。これは水処理に利用できます。(この液を水道水の中に注ぐと、水の中に溶け込んでいた有機物が直ちに反応し、水の分子から分離されて、浮遊物として水中に凝集してきます)
 たとえば地殻下部と上部マントルは接しています。岩石も似ているように思えるのに、溶液に溶かすとまったく際立った違いがあらわれます。通常の分析をすると、いわゆるエレメントに差は見られません。しかし溶液にするとなぜこれほどに差が現れるのか。私は、その際立った違いがあらわれるのは、岩石を構成している鉱物が違い、溶液が鉱物の性質を反映しているからなのではないか、と考えたのです。

「鉱物の性質を反映した溶液とはなにか?」
 超微結晶が溶媒中に一様に分散したもの。これを私はクラスターと呼んでいます。鉱物の結晶構造をそのまま保ったもので、それは岩石のときの性質を記憶しています。大きさはたかだか五〇オングストロームくらい。微生物よりも小さく、微生物に食べられてしまう大きさです。地殻上部の岩石が生理活性を持つというのは、この超微結晶が大きな役割を果たしていると考えられます。といいますのは、触媒能をもっているからです。触媒に関する学問では、超微粒結晶の触媒について研究されています。その成果によると、一番活性が高いのは一〇オングストロームの超微粒子だといわれています。つまり、岩石も五〇オングストロームくらいの超微粒子にまで細かくしていくと、この重要な触媒能をもってくるのです。
 触媒の世界では、個々の元素がばらばらに存在しているより、こうしたクラスター(結晶構造をもった状態)のほうが、大きな能力を発揮することがあるといわれています。。ある結晶を絶えず変化しながら保っている。それが、水の持つ構造(これもクラスターと呼ばれている)を変化させて、小さなクラスターに変化させ、生体に取って有用性を持つ水にかえていくと考えられます。

 生理活性を活発にする地殻上部の岩石でいいますと、その代表的な岩石は花崗岩と安山岩でしょう。ただこれらの岩石が、過去、どんな地殻変動を受けてきたかが重要です。たとえば石英(水晶)ですが、X線写真をとりますと、完全なストラクチャー(結晶構造)をしていることがわかります。それが動力や熱などの地殻変動を受けると、構造が歪んできます。しかし、触媒能からみると、この歪みが重要で、機能を高める働きをしてくれるのです。
 珪素の四面体構造が重要なのですが、実際には完全な構造をしているものはありません。ボルトアングルのねじれや変化があり、それが触媒の機能を果たしてくれます。
 日本列島は二千万年ほど前、プレートの動きで日本が大陸から離れ、さらに太平洋から移動してきたプレートがドッキングしてできたものです。このように過去に大きな変化を受けてできあがっただけに、地殻上部の岩石の種類は非常に多くなっています。

「今日の農業の現状」
 二千万年前に日本列島ができたといわれていますから、仮に一年に三〇数日雨が降ったとすると二千万年X三〇数回の雨が地表をたたいたことになり、土壌のミネラルや微粒子は溶脱されてしまいました。いまの畑は抜け殻といってもよく、その上で農業を営まなければいけないのですから、今の農家はじつにかわいそうなのです。
 しかも、これまでの農業が、土の構造を考えずに発展してきたことも大きな誤りです。抜け殻の土の上でも、これまでは化学肥料を施すことで作物がとれてきました。一方では、それまで守られてきた輪作が消え、単作化が進みました。そのことも土壌環境をさらに悪化させてきました。チッソ、リン酸、カリ、それにせいぜい限られた微量要素だけしか施されてこなかったのです。
 土壌病害が蔓延しているというのは、土壌が悪化し、その環境に合った菌がふえたということです。それに対して農薬を使用することが、さらに土の悪化に拍車をかけています。生物というものは、種を変えてもでも生き残ろうとします。それが耐性菌です。これまでも、なにかの急激な異変に遭うと、生物は自らの種を変えて生き残ってきたわけですから、今の状態というのは、同じ事を人工的に短期間に引き起こしているということです。自然の中ではきわめてゆっくり進んでいたことが、短期間に進んでいる。そのことを今の科学は見抜けないでいる、と思います。
 さて、そんな畑に対して、どうすればよいのか?抜けたミネラルを土に戻してやればよいのです。

ミネラルの六大効果
一.土壌のイオン化促進
 土の中にミネラルがあったとしても、酸化物の形をしています。ですからそのままでは生物はそのミネラルを吸収することはできません。酸化物の形では水に溶けないからです。吸収させる形にするためには、酸化物の形のミネラルから酸素を切り離したり、イオン化しなければなりません。普通は、この働きを土の中で生きる無機栄養をエサにする微生物がしてくれていました。また、作物の根が出す根酸(他種類の有機酸)によっても行っていました。ところが、今の土壌はきわめて悪くなっており、微生物は貧困。それに作物もひ弱に育って光合成も弱々しいため、弱い根酸しかだすことができないでいるのです。
 あらかじめミネラルをイオン化してある液を入れると、酸化状態にある土の中のミネラルを一部イオン化し、水に溶けるようにしていきます。そのことにより、植物の吸収を高めることになるわけです。

二.ミネラルバランスがとれる
 病理学からみた微量要素はたかがppm(一〇〇万分の一単位)までの分析です。これでは、せいぜい一六〜一八種類の元素しか特定できません。しかし、実際の生態系はそんなものではありません。
 岩石から抽出した液をppt(一兆分の一)のオーダーで分析してみると、六〇〜七〇元素が含まれています。おもしろいことに、ppm単位の微量要素を試薬でつくって植物に施してみても効果が現れません。ということは、単に微量要素が影響しているというわけではなく、構造(クラスター)が大切だったということの証明です。
 戦前は、農業が輪作を基本として営まれていました。ということは、微量要素のppm単位が保証されていたということです。つまり、作柄によって、作物が出す根酸が違っているので、イオン化するミネラルの種類と量が違っていたのです。しかし、戦後は、単作化が進んで、土の中の使うことのできるミネラルが底をつきました。作物が自分自身で行っていたことをミネラルバランスをとって、補ってやるということです。

三.土壌のソフト化
 土壌構造の基本となるのは粘土鉱物ですが、これらは層状をなしています。マイナス・プラスに帯電しているのですが、そこにカチオン(プラスのイオン)やアニオン(マイナスのイオン)がくっついていて、電気的には中性を保っています。ところがイオン化されたものが入って土が本来のイオン化された状態(ppt単位まで調整された)に置かれたときには、粘土そのものがもっていた本来の電気的反発によって反発しあい、粘土鉱物のすき間が広がるのです。それがミネラルを入れると有機物などを大量にいれたわけでもないのに土が柔らかくなり、膨らんでくる理由です。そしてそこに微生物がすみつき、急速に増殖します。土の中にいる微生物を調べてみると、微生物の数が五倍に、しかも、その種類が変化しています。一般の畑は細菌が九〇%以上、残りがカビ。ところがミネラルを入れた畑を調べると、細菌が七〇%弱、カビが七%弱、酵母が七%弱、放線菌は一五%弱という結果でした。

四.水のクラスターを変える
 水は一個の分子で存在しているわけではありません。数個あるいは数百個と集団をなして存在しています(これを水のクラスターと呼んでいます)。
 水は物を溶かし込む性質が大きいのが特徴です。その水に有機物を溶かし込みますと、水のクラスターは大きくなります。このクラスターが大きくなった水は有機物をくっつけた状態で構造を大きくし、植物の根っこに張り付いて呼吸阻害を引き起こす原因になっていきます。根腐れ、発芽したばかりの時に雨などにあたると植物がやられるのもそういう理由でしょう。もし、水のクラスターが小さい水であったら、こうした障害はでません。
 ところである物質が水に溶けているという状態とはどういうものなのでしょう?
 物質のまわりには、図のように何種類もの水が何層も取り囲んでいます。Aの部分の水は、生体のなかに約一〇%あり、この水は零下一九〇度で凍ります。Bの水は約八〇%を占めており、零下一五度以下で凍ります。Cの部分の水は約一〇%あり、零下数度で凍り、フリーウォーターに近いものです。我々が零度で凍るといっている水はこのフリーウォーターです。そして、この物質のまわりにできた水の分子層を「構造水」と呼んでおり、生体内の水の約九〇%はこの構造水で存在しています。
 ところでミネラルが含まれている水は構造水になりやすいのです。だから根腐れが起きにくいのです。また、零度以下でも凍ることがありませんから、冷害や霜害に強かったり、植物生理をアクティブにしたりします。
 構造水は、温度に対して鈍感になります。植物は外気の温度の影響を受けにくくなるようです。

五.光合成の促進
 光合成とは、光によって炭酸ガスと水からデンプン(多糖類)をつくる働きですが、この作用に大きく関わっているのがミネラルです。
 光合成にはふたつの働きがあります。ひとつは、作物のからだ・根や茎、葉や子実をつくる働き。もうひとつは、根酸をつくり、それを根から分泌して、土の中の栄養分・肥料やミネラルを溶かす働きです。
 私は、光合成は光と炭酸ガスと水だけの問題とは考えていません。もっと大きく考えています。例えば根酸の働きから考えてみましょう。
 植物は根酸によって土の中の酸化物をイオン化し、必要なものを吸収します。この根酸は、植物の種類や生育時期によって変化していきますが、すべてのアミノ酸、有機酸、ホルモン、核酸(つまり自分の体を作る物質すべて)などが含まれています。そして、その物質が微生物のエサになっていきます。土の中では微生物が水を変え、その水が必要な栄養分を含んで植物に吸収されていきます。ですから、私は、光合成は植物と微生物と水と土の共同作業があってはじめて成立すると考えています。
 そのメカニズムについて私は、いまの光合成の考え方では説明がつかないのではないか、と思うようになりました。といいますのは、植物の生長スピードを考えると、これまでの光合成の考え方(葉緑素のところで、光によって炭酸ガスと水の分子をばらばらにして、酵素の力でデンプンを合成する)ではとても追いつけないスピードではないかと思うからです。私は、根の先端部分に、植物の体細胞の前駆物質がつくり出されていると考えると、驚異的な植物の成長の秘密が解けるような気がします。

六.酵素の活性化をはかる
 酵素は生体内の酸化還元反応に関係しています。植物や動物が生きていることができるのは、生命活動といわれる糖の合成・分解、細胞の造成、酸化・還元(代謝活動)などの複雑な化学反応が、低温の植物や動物の体内で活発に行われているからです。植物では一五〜三五度、ある種の植物は五度前後。動物では三七度前後。こんな低温状態のなかで、これだけの複雑な化学反応を起こすことができるのは、酵素の存在があるからです。
 酵素の数は、現在発見されているもので約二三〇〇。その構造の多くは、タンパク質にミネラルといわれている微量元素が結びついてできています。これを金属酵素と呼んでいます。そして、ほとんどの酵素が、あるひとつの反応にしか関わっていません。多様なミネラルがなければ、生体内の反応を促進する酵素を作り出すことができないことがおわかりだと思います。私がミネラルの大切さを話すのもそういう理由からです。

Author 事務局 : 2015年05月01日15:13

【AQUA277号】国内のプラント動向

①北海道厚岸町、別海町、標茶町、中標津町にある根釧みどりの会で、五牧場に設置している飲水改善施設の定期点検を実施しました。三月二三日に別海町の岩崎牧場、標茶町の渡辺牧場、中標津町の三友牧場に伺いました。二四日には、厚岸町の石澤牧場、二五日は別海町の川畑牧場で点検を実施しました。石澤牧場の土木槽を除いて、いずれも三千リットルのステンレスタンクを利用しています。
 二六日には妹背牛町のファーマーズクラブ雪月花、恵庭市の高松農園を訪問し生物活性水プラントの稼働状況を確認しました。また出荷作業のため五交流会実行委員会に出席できなかった高松さんへ、今年の交流会の日程や開催場所について説明をしました。
②三月二八日、高知県南国市の高知県立高知農業高校にて、生物活性水プラントの定期点検をおこないました。プラントはEC値が低かったほかは順調に稼働しています。現在は、プラント横にある堆肥舎で、一次発酵に利用されています。発酵槽は臭気も無く発酵状態が良くなっています。  
③三月二八日に高知市土佐山地区の夢産地とさやま開発公社を訪問しました。夢産地とさやま開発公社が委託管理している土佐山土づくりセンターにて生物活性水プラントの稼働状況を確認しました。担当の山崎さんが、堆肥発酵温度の測定と切り返しの管理をしており、発酵温度と菌叢の状態を確認しながら堆肥の熟成度を上げています。 
④三月二七日に大川村を訪問しました。むらびと本舗が管理している土佐はちきん地鶏向けの飲水改善プラントと生物活性水プラントの稼働状況を確認しました。担当の谷さん、近藤さんが、プラントの点検、維持管理をしています。
  (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2015年05月01日15:12

 
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