【AQUA288号】第12回BMW技術基礎セミナーが開催されました

 二月一九〜二〇日に第一二回BMW技術基礎セミナーが開催されました。一日目は四五名、二日目は三八名が参加されました。今回の基調講演は西尾道徳氏による「環境・品質重視のEU農業から考えた日本の農業のあり方〜有機農業を事例」と題し、ヨーロッパの農業の現状を学び、私たち日本の農業について考える良い機会となりました。また、二日目には山梨大学の御園生先生による「生物活性水を使用した実験について、今年の取り組みと実験方法」についてのワークショップも開催されました。

一日目(二月一九日)
 はじめに、BMW技術基礎セミナーの開催・運営を担っているBMW技術協会若手幹事会の新座長である謙信の郷の金谷氏の開催挨拶でスタートしました。
 まず、秋山事務局長から、BMW技術の基礎と実際の活用事例についてです。BMW技術の基本的な考え方からBMプラントの種類、そしてこれまでの実験報告からBMW技術の活用方法についての説明がありました。
 次に西尾道徳氏による講演です。西尾氏は農林水産省に入省後、各機関の農業部門を歴任されており、有機栽培や土壌微生物、環境汚染など日本だけでなく海外の農業事情に精通されており、農業関係の著書も多数執筆されています。講演のテーマはヨーロッパ(EU)と日本の農業の違いから見る今後の日本の農業についてです。ヨーロッパ(EU)では、生産物の高い価格保証などの制度で農業を振興したため、過剰施肥による水系の硝酸汚染が深刻化し、その影響は作物の生育阻害や地球温暖化による異常気象などにも繋がるそうです。また、この過剰施肥は私たち日本においては世界のワースト三位に入るほど多肥農業国であること、EU(ヨーロッパ)では施肥制限を設けて対策しているのに対して日本では施肥制限がなく、それは慣行栽培物だけでなく特別栽培農産物や有機JAS農産物も同様であるなど環境保全に対する考え方、また有機農業そのものの考え方にも違いがあることなど、今まで知らなかった国内外の情勢や情報を知ることができました。
 基調講演後は、五つのグループ(果樹・茶、米、畜産、野菜、生活)に分かれて、「日本の農業のこれから」というテーマで話し合いました。同じグループ内でも栽培・生産している種類が異なるのでなかなか意見がまとまりにくい中、環境保全とこれからの有機農業など基調講演を受けた意見が多く出されました。
 最後に伊藤理事長による一日目の総括があり、その後別会場で懇親会が開かれ、親睦を深めて一日目が終了しました。

二日目(二月二〇日)
 二日目は昨年の全国交流会の発表事例を参考に、山梨大学の御園生先生による今年の実験に向けての計画やデータの採取・処理方法などについてのワークショップでした。
 これまで、御園生先生によるデータの採取・処理方法などの説明は何度かありましたが、今までの実験報告では結果の測定数(検体の数)や実験結果を平均値で表現したりと、実験する方それぞれのやり方で報告されていました。それを、実験結果の測定数は多い方がよいが最低でも三例以上実施する、データの表し方は統計手法に則って意味のある比較ができるようにするなど、実際に昨年の全国交流会での発表事例を基に具体的な説明がありました。
 その後は、一日目と同様に各グループに分かれて、今年の実験についてのグループディスカッションが行われ、各グループからは今までの実験を引き続き行いつつ、今回のワークショップで学んだことを反映させるというまとめになりました。
 最後に米沢郷牧場グループの横山氏による閉会挨拶で、二日間の基礎セミナーが終わりました。今年の全国交流会は仙台で開催されます。セミナー終了後には実験を継続している方を中心に、実際の実験データを使い、パソコンでの入力、データグラフの作成などの実践講座が実施されました。

(報告: 生活協同組合連合会グリーンコープ連合 農産本部農産部 秦 武士)

今年の「生物活性水を使用した実験」について

 第一二回基礎セミナーの二日目に話し合われた実験については、米・野菜・果樹・畜産・生活の各部門にわかれて毎年おこなわれています。例年は、この場で課題などを話し合いながらテーマを決め、その後に実験内容を組んでいくことをしてきましたが、今年は少しやり方を変えました。
 今年は前もって実験する人と実験内容について決めておき、その目的や方法などについてお互いに意見を交換し、実験方法やデータの出し方についてこだわることにしました。これまで様々な実験を皆さんにおこなってきてもらいましたが、全国交流会の発表が可能な限り科学的な実験方法を取れているかどうかが課題となっていました。
 そこでこの日に学んだ、御園生先生の実験方法とデータ処理方法を基に、
・実験の目的〜何を調べたいか
・仮説〜どうなっていればよいか
・方法〜どのようにやるか
    対照区をどう選択するか
・結果〜どのようなデータで表すのか
 これらを明確にして実験に入っていくことにしました。実験する人が直接、御園生先生と連絡を取り合いながら実験を進めることにもなっています。このようにして実験の内容、発表の精度が上がっていけば良いかと思います。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2016年04月01日17:27

【AQUA288号】BMプラント動向

●有機栽培
あゆみの会
  (一月二〇日)
 茨城県稲敷市にある農業法人㈲アグリクリエイト、あゆみの会の生物活性水プラントの再生工事に同行しました。あゆみの会は東日本大震災で破損した生物活性水プラントの復旧が進んでいませんでしたが、再稼働することになり五年ぶりの復旧工事になりました。主な用途は会員への生物活性水の供給です。対象作物は葉菜です。一槽一tのステンレスタンクが三槽と一tのバルクタンク二槽と堆肥浸み出し槽の計六槽からなります。原料は、自社堆肥を使うとのことです。現在、既に調整を開始し、培養調整時のみ山梨県の黒富士農場の堆肥を使用しています。 
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●グリーンコープ連合 中水利用施設
(一月二七日)
 グリーンコープ連合の筑紫野市の福岡青果センターと若宮市にある若宮物流センターの中水利用プラントの定期点検に同行しました。点検前日は九州での降雪が相次いだ日で中水利用プラントへの影響も心配されましたが、雪の影響はなく処理は順調に行われていました。
    
●角坂牧場〜新潟県糸魚川市(二月九日)
 昨年末に簡易尿処理プラントを設置した、新潟県糸魚川市にある角坂牧場の点検に同行しました。角坂牧場は酪農で約五〇頭の搾乳牛と育成牛とのことです。角坂牧場では糞尿の分離をロストル(注)で行っているため、尿溜めに少なからず糞が混入しています。そのため、糞中の繊維等が分解されず曝気槽内に残留する。また、糞の成分を分解しきれず、最終槽でもアンモニア臭が残っていました。対応策として一槽目にポンプアップする前の尿溜めに仕切りをつけ、できるだけ固形分を除いて源尿をポンプアップできるようにして、今後の状況を観察しています。
注、ロストル…牛糞と尿を分離する格子状の蓋

●村上園  (二月一三日)
 静岡市清水区の村上園にて、老朽化したブロワーの交換とプラント点検、圃場の視察を行いました。プラントは順調に稼働、その後に茶畑と堆肥場を視察しました。堆肥は魚の骨をカルシウム源で入れるほかは全て植物性で作られており、放線菌の菌層は二〇cm以上もあり、高品質といえる堆肥になっていました。 

●石井養豚センター (二月一五日)
 徳島県阿波市にある、石井養豚センターへプラント点検とプラント増設のための打ち合わせに行きました。石井養豚センターは、母豚一〇〇〇頭の一貫経営をされていて、臭気等の改善のため、一昨年に生物活性水プラントを導入しました。主に、飲水への添加に使用していて、プラント導入以後豚の事故率も減少したとのことです。原料は堆肥の浸み出し液です。一槽一tのバルクタンクが一〇槽と堆肥浸み出し槽からなり、日使用量一〇〇Lまでとなっています。しかし、飲水の使用量が多いため、現在は一〇〇〇倍以上の希釈で使用しています。濃い倍率での添加をし、さらに生物活性水の効果を高めたいとのことで、三月に一槽一t×一〇槽をもう一系列増設する予定で打ち合わせをしてきました。
 既設のプラントでは、EC・pH・亜硝酸態窒素の測定を行いました。石井養豚センターは阿波市の山間部にあり、少し冷え込んでいました。そのせいか、微生物の活動が若干緩やかになっていた印象がありましたが、処理は行われていました。三月上旬にもう一度訪れて増設一系統の施工・調整と既存プラントの点検を行う予定です。

●岡山県 (二月一六日)
①岡山県高梁市
  〜高梁市堆肥供給センター
 堆肥センターの生物活性水プラントの点検とJA美星食肉加工センターの排水処理プラントに行きました。プラントの維持管理を担当している㈱三美産業の妹尾相談役と伊達専務に案内をして頂きました。
 堆肥供給センターのプラントは一槽五tのホーロータンクが四槽からなります。原料は堆肥センターの牛糞堆肥となっています。稼働状態は良好でECは〇・八五mS/cmでした。pH・亜硝酸態窒素も正常値となっていました。
 できあがった生物活性水は一次撹拌発酵時に散布して使用しているとのことです。堆肥の製造は撹拌発酵を二カ月、堆積発酵を四カ月と、通常の堆肥製造より一・五倍近い六ヵ月の時間を要しています。できあがった堆肥はアンモニア臭もなく良質な完熟堆肥となっていて、農家の方への堆肥供給はトラックのバラ積みと、二〇kg袋の「きじまる堆肥」をホームセンター等にて販売しているそうです。
   
②JA美星食肉加工センター
 排水処理プラントは定期的に㈱三美産業が点検を行っているので、良く管理されていました。二月一六日より数日前の冷え込みにより、屋外配管が凍結したとのことでしたが、訪れた際は既に回復しており、問題なく稼働していました。一日五〇〇L程度の排水を処理しているとのことで、EC・pH・亜硝酸態窒素共に問題なく処理されていました。処理水はそばの河川へ放流されています。
   
●㈲広島自然学研究所(二月一七日)
 広島県広島市にある㈲広島自然学研究所の生物活性水プラントの点検を行いました。旭鳳酒造の排水処理(生物活性水)プラントは日本酒の原料となる米のとぎ汁を原料として、冬場の仕込み作業中は排水処理施設として稼働し、二月中旬に酒の仕込みが終了してから生物活性水づくりに入ります。排水処理時のときは、処理水は水路へオーバーフローします。プラントは三六tの処理槽一槽からなり、できた生物活性水はホーロタンクへとポンプアップして貯蔵しています。製造した生物活性水はグリーンコープ連合の組合員へ出荷しています。旭鳳酒造は代表取締役が濱村洋平氏へと世代交代をして間もない時期でしたが、お忙しいなか対応していただきました。世代交代に伴い改めて生物活性水プラントの維持管理についての説明をしました。堆肥の投入や、リアクターシステムの仕組みなど、現場での説明も交えて説明し、実際にリアクター塔の充填剤の交換や堆肥の投入、点検、一部配管部品の改修を行いました。
(報告:BMW技術協会事務局 永合 耀)

Author 事務局 : 2016年04月01日17:25

【AQUA288号】BMプラント会員巡回報告 藤野屋商店、南阿蘇村有機肥料生産センター、久川養鶏場

 一月二八〜二九日に三つのBMプラントを、BMW技術協会の秋山事務局長、永合耀さん、西日本BMW技術協会事務局の宮﨑が訪問しました。二五日に九州地方には寒波と大雪が襲ったので心配しましたが、急に暖かくなったので無事に巡回することができました。

●藤野屋商店にて (一月二八日)
 二八日に大分県竹田市の藤野屋商店を訪問しました。BMプラントは採卵鶏の養鶏場に設置されています。以前は飲水改善と生物活性水プラントの二つがあったのですが、二年ほど前にウインドレス鶏舎にする際に生物活性水プラントは撤去したということです。鶏舎は三万羽×二群×三棟で、一八万羽の飼育ということです。
 甲斐昇一郎副社長と農場の石田賢一さんに様子をお聞きしながら、飲水改善のプラントを点検しました。飲水改善プラントは別棟で地下タンクになっています。少し離れた鶏舎の近くから地下水を導水し、また元の場所に返して鶏舎に配水する仕組みです。このプラントは、別の業者が管理していた時期もあったので、リアクター塔を引き上げて管理方法を改めて説明しました。ペレットと軽石の量と入れ方、エアの量、調節の仕方などを説明し、匠集団そらからペレットをお送りすることにしました。
※後日、匠集団そらからペレットをお送りし、リアクター塔の管理がわかるような写真もお届けしました。

●南阿蘇村有機肥料生産センターにて
(一月二八日)
 宮田鉄雄センター長の話によると、数日前の大雪が生物活性水プラントに大量に入り、プラント内の水が雪で薄められた状態になっているということで、いつもよりECは相当低い数値でした。この状態からの復帰方法について、第一槽から順次定常状態にしていく方法を秋山氏から説明しました。それから宮﨑より、「今年は西日本BMW技術協会総会を七月に熊本で開催するので是非参加をお願いしたい、合わせて会員活動の報告をいただきたい」旨を説明しました。
 たまたま熊本県の阿蘇地域振興局職員の方が訪問されており、BMW技術や生物活性水プラント・堆肥センターの運用などについて一緒に話をしました。

●久川養鶏場にて (一月二九日)    熊本県菊池市の久川養鶏場は、つい最近(一か月ほど前)に飲水改善のプラントを設置し、新たにBMW技術協会・西日本BMW技術協会に加入いただくということで訪問しました。社長の久川英昭さんに、BMW技術について少し事例で説明するとともに、西日本BMW技術協会総会を七月に熊本市で開催するので、農場の皆さんも含めて参加を検討いただくことにしました。飲水改善のプラントについては、農場の臭気等の様子を見ながら次のステップを相談しようということになりました。
 久川さんから、隣に養豚場があり、畜産という意味では地域との関係で臭いなど一緒に解決したいというお話があり、次回訪問時に養豚場の方にBMW技術を使った尿などの処理についてお話もできるし、また七月に西日本BMW技術協会総会では基礎講座としてBMW技術の話もあるし、養豚場の実例の話もできるということで参加の検討もお願いしました。

(報告:西日本BMW技術協会  事務局長 宮﨑利明)

Author 事務局 : 2016年04月01日17:22

【AQUA288号】インドネシア ウバヤ大学ユノス先生にBMWプラント見学を案内

 千葉自然学研究所の礒田代表より、インドネシアで㈱LIXILとの共同実験に取り組んでいる、ウバヤ大学のユノス先生がBMW技術のプラント見学を希望されているとのことで、二月二二日に案内しました。
 当日は、ユノス先生が来日中に在籍している東京工業大学の阿部研究室からゼミ生の海宝さんも参加しました。
 埼玉県蕨市のパルシステム埼玉蕨センター、茨城県鉾田市の田中邸、米川農場、茨城町の清水牧場を案内し、生物活性水の処理過程や利用方法などを説明しました。インドネシアでは、通常、家庭などのし尿処理は沈殿槽で固液分離して上澄み液を放流する方式が主で、処理水を再利用するBMWプラントには大変興味を持たれ、熱心に見学されていました。
 (報告:匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2016年04月01日17:21

【AQUA288号】ポークランドグループ社員研修会で 「BMW技術基礎講座」が開催されました

 二月二九日、秋田県小坂町にある小坂交流センター・セパームにて、ポークランドグループの社員研修会がおこなわれ、BMW技術基礎講座がおこなわれました。社員一二〇名全員が参加し、はじめに豊下勝彦代表からポークランドグループがなぜ設立当初からBMW技術を導入したのか、BM技術協会(当時)が作成したビデオを見ながらその経緯と理由の説明がありました。ポークランドを設立する前に、全国の養豚場や畜産農家を回り、「悪臭のない畜産、ハエのほとんどいない畜産」というBMW技術の現場に驚き「やるならこれだ」と思ったとのことでした。また、技術だけではなく、地域を作ること、循環を重視しながら環境を守っていく農業などBMのもつ理念の部分もしっかりと考えながら今の農場づくりに至っているとのことでした。BMW技術基礎講座はBMW技術協会事務局の秋山から、技術の基礎となぜBMW技術を生産と生活の両方で活用していくのかということをBMの理念の視点からお話させていただきました。
 今回の研修会を通して、現場に立つ方たちがより良い生産を目指すために、ただものを作るだけではなく、なぜBMW技術なのか、なぜ環境保全なのか、そういったことを踏まえてポークランドで豚を生産することで、小坂町の地域づくりにつながっていき、消費者とつながることで地域と地域がつながっていく。このような生産を目指していくということを根本的な部分から、今一度すべての社員に伝えていく必要があるというグループ全体の意気込みを感じることができました。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2016年04月01日17:19

 
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