【AQUA263号】BMプラント動向&巡回報告

 石井養豚センター 〜培養調整完了
 一二月五日に徳島県阿波市にある石井養豚センターの生物活性水プラントの培養調整へ。プラント設置工事はAQUA二六〇号でもお伝えした通り一〇月末に完了しており、生物活性水の完成を確認するための最後の培養調整でした。プラントは一t槽×一〇槽(五槽目から〜一〇槽目までは貯留槽)になっており、このうち六槽目まで満水となっていました。簡易測定を行い、EC値〇・九二 pH値七・四 亜硝酸未検出でした。公的機関へ水質検査を依頼するための採水をおこない、一二月一七日に、大腸菌 検出せず、亜硝酸態窒素 検出せずの結果が出たので、これで石井養豚センターの生物活性水の品質が確認できました。

南阿蘇村でBMW技術基礎講座
 一二月一八日の午後から熊本県南阿蘇村の朝陽庁舎二階会議室にて、南阿蘇村環境保全農業勉強会が開催され、その中でBMW技術の基礎と生物活性水の利用方法についての講座がおこなわれました。この勉強会を主催する南阿蘇村環境保全農業推進協議会は、南阿蘇村農政課と一緒に有機農業をはじめとする環境保全型農業を推進する活動をおこなっています。今回は村内農家向けに南阿蘇村が運営している、「有機肥料生産センター」の堆肥の普及と生物活性水の利用を増やすことを目的として開催されました。参加者は米、野菜の生産者、最近になって新規就農し移住してきたという若者も含め約三〇名で、ほとんどの人がBMW技術の基礎についての話を聞くのが初めての方達でした。西日本BMW技術協会事務局からも参加がありました。
 勉強会は最初に東海大学の片野教授が、南阿蘇村の米の生産者と取り組んできた有機・無農薬栽培の二〇一三年の結果報告と総括をし、「BMW技術を知ったのは、第一一回の阿蘇での全国交流会だと思います。考え方から技術そのものまで、有機農業に適した最もすぐれた技術だと思う。南阿蘇村はそんな宝を持っているのだから、もっと活用できるようになるといいですね。」と最後に話して締めました。
 次に「BMW技術の基礎と生物活性水の利用方法について」としてBMW技術協会の秋山が話をさせてもらい、質問を挟みながら終始和やかな雰囲気で進んでいきました。資料にあった水の循環図(雨が森に降り、海へ流れる)を見ながら、南阿蘇村のいたるところにある湧水が海までに流れる水系を映しだして考えるなど、南阿蘇村のBMW技術を理解してもらうには絶好のロケーションでした。最後に協議会の吉良会長が「これから、もっとBMW技術の理解を深め、牛若丸(南阿蘇村の堆肥)と生物活性水の利用を推進していきましょう。」と締め、勉強会は終わりました。終わった後も新規就農した若い生産者を中心にBMW技術や土作りにと、話は尽きませんでした。とても有意義な勉強会であったのではないかと思います。

増冨の湯と桑原邸
 新年を迎えてから一月一一日に山梨県北杜市の増冨の湯と桑原邸のプラント点検を行いました。増冨の湯の生物活性水プラントは、一tのローリータンク×五槽、ラジウム温泉の源泉と堆肥を原料に作っています。生物活性水のEC値九.八六、pH八.八と、源泉を利用しているだけあってEC値がかなり高いものとなっていました。増冨の湯は日本の百名山のひとつ瑞牆山の麓、標高約千mに位置し、プラントは小屋の中にありますがタンクの水面は厚い氷が張り出していました。導通配管も凍結しているのか、タンク間の流れが悪くなっており、水中ポンプで移動しています。そんな厳寒の中でしたが生物活性水の状態は良好でした。
 桑原邸は北杜市長坂町にあり、生物活性水は五tのホーロータンク×三槽で、「田中さん方式」と呼ぶ、家庭から出る生活雑排水を原料に生物活性水を作っています。桑原さんはご夫婦で約十年前に東京から移住してきました。書籍「夫婦二人の農場を始めよう」(小野雅弘著)を読み、BMW技術の導入を決めたとのことです。この本は田中さん夫妻が退職後茨城県鉾田市に移住し自給的な農的暮らしを始め、トイレ、風呂などの生活雑排水を原料とした生物活性水プラントを全国に先駆けて導入し、できた生物活性水を使って野菜を作り、鶏を飼い、もち米作りなどをしている暮らしを紹介している本です。プラントは問題なく正常に稼働していて、生物活性水の状態も良好でした。

米沢郷牧場でバイオガス発電実験の取り組みがはじまります
 一月二八日に山形県高畠町の米沢郷牧場にて、米沢郷牧場が進めるバイオマス実験に関する話し合いが行われました。昨年の一一月一二日に第一回目の話し合いが始まっており、この取り組みは山梨大学の御園生教授と、北海道士幌町や帯広畜産大学でバイオガスプラント(現在は停止中)の運転管理を行っている、㈲十勝アグリワークスの青木代表の協力を得て、BMW技術協会も加わりプロジェクトを進めていくことになっています。今回の話し合いでは、バイオガスのメタン発酵槽の規格や仕様、予想発電量、必要機材にいたるまで、具体的にどのようなバイオガスプラントができるか、どのようにして実験を進めて行くかが見えてきました。発酵槽の規模は約一〇立方メートル、目標発電量は一〇〜一五kw/hです。プラント自体は既存施設や使わなくなった中古機械を再利用するなどして、できるだけ費用をかけずに作っていく予定です。
(報告:BMW技術協会 秋山澄兄)


高知県立高知農業高校 生物活性水施設
 一二月九日、高知県南国市にある県立高知農業高校で、生物活性水施設の定期点検を実施しました。プラントは、二トンのFRPタンクを四槽並べてあります。定期点検の内容は、第一槽に設置しているリアクターシステムの充填材の交換と各槽の水質測定と状態の確認です。プラントの状態は、亜硝酸態窒素は四槽とも検出しませんでしたが、電気伝導度の測定値が低くなっていたので堆肥の交換間隔を短くしてもらうようにしました。
 出来上がった生物活性水は畜舎の横にある堆肥製造一次発酵施設で利用しています。牛糞が主体の堆肥は、一次攪拌発酵槽での仕上がりも良く、悪臭もありませんでした。

グリーンコープ連合 中水利用施設
 一月二三日、福岡県若宮市若宮物流センターと筑紫野市福岡青果センターに設置している中水利用施設の定期点検を実施しました。点検には西日本BMW技術協会事務局も同行しました。中水の状態は、透明感もあり良好でした。
(報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2014年03月01日12:28

【AQUA263号】新潟にて新たな展開

 「食と農の絆〜見つめよう、人・地域・暮らし・生き物のつながりを、未来は今、はじまっている」をテーマに昨年一一月七日〜八日(一部視察は九日まで)に開催された第二三回BMW技術全国交流会は、総勢ニ三一名の参加がありました。各視察コースも三〇名以上の参加があり、参加者はそれぞれに新潟を満喫したのと同時に、TPPや米の政策など、日本の農業が抱える問題が新潟の地域やその現場に圧しかかろうとしている、あるいは圧しかかっている現状を知ることができたのではないでしょうか。
 全国交流会の実行委員会は謙信の郷、JAささかみ、食農ネットささかみ、新潟県総合生協を中心に構成され、昨年のニ月から一一月までの約一〇カ月の間、全国交流会開催に向けてテーマの選定、内容について議論を重ね、BMW技術の自然循環システムを学ぶ学習会もおこなうことでお互いの交流を深めてきました。その間、個々に抱える技術的問題や社会的問題などの情報交換等をし、共通の問題が明確にもなってきました。そう考えると、充実した内容をもって全国交流会は無事に終えることができたのですが、これで終わりではなく、これをはじまりとして何かやれないかと各々が思うようになってきました。
 今回の経験と時間を期に、新潟県に点として存在していたBMを面へ展開していくこと、共に考え、共に学ぶ、継続したつながりを形にして新潟BMW技術協会(仮称)を設立しようという提案が実行委員会で出され、最後の実行委員会としておこなわれた一二月八日には設立に向けて、新たな展開を進めていくことが確認されました。
 今年の一月ニ三日に新潟市内で設立に向け皆で集まり、組織の概要や趣旨などについて話し合いました。同じメンバーで約一年の間議論をしてきたこともあり、そうなってくると話は早いものです。さらに呼び掛ける仲間を増やし、三月一三日に設立準備会を開催、四月には設立総会を開催する予定です。

新潟BMW技術協会設立に向けてのメモ
 危機感を持つこと。我々が目指す、有機的な考え、BMW技術の持つ理論、農の思想と相反するTPPは近々に日本に導入される。危機を打ち破ることは、生命の基本に帰ることである。自然破壊、人間破壊の時代に求められているBMW技術は、自然の根幹である生命、水、ミネラルの関係性を軸として組み立てられている。それは畜産技術や有機農業技術だけに留まらず、都市の食のあり方や、身体をつかさどる、栄養やミネラルバランスと水の問題にまで、その原理を展開し実践していくことが可能である。そしてそれは資源循環と生命系の持続可能な世界へ、ビジョンを広げることが求められている。

◆三つのポイント
一、農の理念を確立する
 経済至上主義は金がすべてであり、本物の価値や真実、自然の営みを足蹴にしてきた。金がただの紙切れであるなら、農業生産物、地域や人のつながり、文化という何にも変えられない価値が一番になってくる。市場経済の連鎖からどう脱却していくか、そこにどう価値を置いていけばいいのかという明確な答えを私たちは持つべきだ。農には市場経済でない、お金でない豊かさが詰まっている。BMW技術の下に結集する人々がどっしりと腰を据えて、人や動植物の生命の大循環の中で、人と人のつながりという小循環を作りあげながら、里山再生や生物多様性、エネルギーの自給、未利用資源の活用、そして伝統芸能など地域に根付いたビジョンを描くことが大切ではないか。五年、一〇年後のビジョン(使命と長期目標)を考え、理念と目的を確立していく。
二、栽培技術の共有と研究
 米、野菜、果樹の有機栽培技術の向上、畜産を含めて考え(有畜複合)、研究実践し、メンバーで共有していく。
三、情報発信
 一〜二の情報発信。購入者に正しい情報を発信して行き、適正な価格で購入してもらう。その他、技術交流、価値をどう高めていくかを常に考えながら情報を発信する。
(報告:第二三回BMW技術全国交流会実行委員会〜新潟BMW技術協会設立準備会(仮称)事務局)

Author 事務局 : 2014年03月01日12:27

【AQUA263号】第23回BMW技術全国交流会 第二日目前半

[発表①:稲作]
「生物活性水の利用による稲の生育への影響の調査」
大郷グリーンファーマーズ(宮城BMW技術協会/宮城県) 西塚忠樹
 大郷グリーンファーマーズでは、全体で四〇ヘクタールの稲作をやっています。昨年は高温障害による米の等級落ちがあり、それを生物活性水で減らすことができないかどうかという思いで実験しました。育苗(プール育苗)期間中の葉面散布から始まり、定植時、栽培中に生物活性水の利用を行ってきました。今回実験した品種は、ひとめぼれという品種です。田植えから六月中のみ一部分だけ原液の掛け流しを行ったところ、差が出ないのかなと思ったが根の成長が葉面散布を行ったところよりだいぶ大きく出ていました。収量は対照区のほうが八俵/一〇アール、実験区のほうは八.三俵/一〇アールと若干多かったのですが、今年は昨年と入れ替わり低温が続き、日照も少ないものでした。来年はイモチの対策等にも活用できるような実験をしていきたいです。

[発表②:稲作]
「謙信の郷 実験事例報告」
謙信の郷(新潟県)  富永 暁
 生物活性水のプラントは、謙信の郷の代表である井沢代表の牛舎に隣接しています。謙信の郷ではメンバー一〇人が代表の井沢牧場の生物活性水を利用しています。原料は牛の尿です。実験は育苗の時点で生物活性水をどのように使用するかによって、例えば細菌由来の立ち枯れ病だとか、そうした病気にも高温障害にも負けず、白未熟、着色米ですとかそういった被害に負けない稲を作るために、生物活性水の効果がどうでるかという実験を皆でやりました。
 まず峯村さんですが、四月二九日に播種をし五月九日から希釈倍率三〇〇倍で流し込み、五日おきに潅水。試験区と対照区を設けて草丈、根の長さを計測していきました。五月二〇日頃になって、約一cm近くの長さの変化が出てきました。根の長さも試験区で生物活性水に浸けているほうが発育が早いという結果です。さらに経過を追うと葉色が濃くなってきたところが見えてきました。生物活性水を流し込んでいるところは非常に青々として、少し生物活性水の効果が出てきたのではないかと、三〇日、田植え当日には生物活性水のほうは一二cm、それから対照区のほうは一一cmという結果でした。今回は根の長さは計測をしてなかったんですが、明らかに試験区の方が根の張りが良くなっています。
 また、私は四月二七日に播種をして三〇日には育苗シートを外した状態でしたが、五月八日から育苗で葉面散布を始めました。生物活性水は五〇〇倍液、試験区と対照区と設けた上で、育苗の一回に二〇ℓを苗箱五〇枚ずつ対照区と試験区を設けまして、一箱あたり育苗が五〇〇mℓの葉面散布で二日おきに育苗を観察しました。五月二二日に試験区の草丈が一五㎝くらいになり、対照区が約一㎝ほど短く、やはり草丈の成長は非常に良いなと感じました。根の方は生物活性水を入れてるほうに発根促進がはっきりとあらわれています。対照区を設けて、育苗で使用する生物活性水の希釈倍率や葉面散布や本田へのプールへの流し込みの効果実績、生物活性水の活用、栽培における方法をまだまだ探っていきたいと思っています。またデータを取って私たちのグループの中でも、情報を共有して、今後それぞれに合った活用法を選んでいきたいと思います。

[発表③:野菜]
「生姜連作圃場でのBMとさやま生物活性水の使用実験」
夢産地とさやま開発公社(高知県)鈴木弘毅
 僕がした実験というのは一番幼稚なレベルの実験なのでちょっと恥ずかしい位ですが、頑張って発表します。生姜には根茎腐敗病というのがあります、高知県はそもそも生姜生産量日本一ということですが、この根茎腐敗病が発生すると収量はゼロ、全滅するというレベルのすごく怖い病気です。当然、ずっとこの病気を抑える研究を何十年も続けていますが、ちゃんとした対策というのができていない病気です。今は廃止になっているはずですが、唯一臭化メチルというガスを打つという土壌消毒のみが、連作でこの病気を抑える技術ということです。有機JAS認証をとった畑で生姜を作っているので、当然、土壌消毒はできません。とさやまは畑の面積が一番大きくて二〇a、これを寄せ集めていろんな作物を作っています。四年ぐらいで転作すればなんとかこの病気にあわずにすむのかもしれませんが、連作せざるを得ないという条件のもとで生姜を作っているので、なんとかして病気を抑える技術を作りたいなと思っています。ただ高知県でこの根茎腐敗病対策で発表しようとすると、できるわけないだろうと言われる実験です。
 生物活性水だったら土壌の生物性を改善できるという一番基本的な効果に期待して実験に入りました。実験の方法は、生姜連作は七年の一番ひどい畑で三本の畝を一区画として、それを計四区画、原液、五〇〇倍、水、何もかけないとわけました。本来、とさやまで生姜を作っている時は、自然任せで水もあげませんが、この四通りで実験しました。原液と五〇〇倍のところは、一番最初に芽が出ました。一次茎伸長、原液区はもうびっくりする位、一次茎の太さも長さも色もこの段階ではすごく良かったです。でもこれが今年の生姜のピークとなりました。その二週間後の梅雨明け、原液区、五〇〇倍区が一番早かったのですが、あっという間に様子が変わって、ほとんどの生姜が茶色くなって、出てた茎の半分位が倒れだして、それから一ヵ月も経たないうちに五〇〇倍区ではほとんど茎がなくなっています。原液区が辛うじて何本か。なぜか何もしていない区というのは、背丈こそ低い、そんなにすごく健康ではないのですが、まだたくさん立っています。最後の土寄せと最後の草よけで堆肥をかけた段階です。あからさまに五〇〇倍区と原液区は何もないです。やはりここでも何もしなかった区は、まだ最初に伸びた茎が残ってくれていました。
 収穫結果は原液区、五〇〇倍区、水区の生姜はほぼ全滅、何もしない区はこれ本当に病気になっているのかなという位、収穫できました。結論は当然です。ほぼ無理だろうと言われていることをやっているので、ちっとも悔しくはないですけれども、完敗です。ただ本当に最初の芽出しの段階では、原液区の色艶とか太さとかでいうと、もうあからさまに差が出ていました。最初の段階、芽を出すまでの生姜の生育には生物活性水、しかも濃い生物活性水に効果があるんだなということがちょっと分かりました。当然、土の準備は一切していなかったことに等しいということと、水で伝染する、梅雨明けに一気に広がったというのもあって、全然高畝にしていなかったのが反省点。最後に、本当に何もしていなかった区というのが、まぁ何とか家庭菜園レベルの生姜にはなっていたので、この原因というか、これをどう読み解けばいいのかというのが、今まだ僕には全然分かりません。

[発表④:野菜]
「山崎農場の有機肥料栽培における生物活性水の活用」
謙信の郷(新潟県) 山崎 雄大
山崎 龍幸
 今年までの生物活性水を利用しての栽培方法、活用事例の発表をさせていただきたいと思います。上越市という場所で私たちは菱ガ岳と妙高三山に囲まれた場所で生産を行っています。ここの土壌は二千万年前から三千万年前に海底が隆起してできた地層と考えられています。奥地先生からの解説もありました通り、火山灰が積もってミネラルが豊富な地形、山々の噴火による火山灰や火山岩からの豊富なミネラルが供給されているようです。
 豊かな土壌ですが中山間地ということで、路地野菜の圃場が二三区画に分散し約三〇種類ほどの野菜を育てています。全ての野菜は有機肥料のみで栽培、牛糞、豚糞、醤油の絞りかす、米糠、一部購入有機肥料など、あと井沢牧場の生物活性水です。
 生物活性水の利用に移る訳ですが、生物活性水の利用は一〇年ぐらい前から一部の野菜で使用を始めまして、今年はほぼ全ての野菜に使用しました。また、忌避剤やニーム液などを使う際には稀釈液として使っています。約三〇〇倍程度の稀釈が主な基準になっています。水稲では二〇アールで原液を六〇〇ℓを田植え後と出穂三〇日前と出穂期にそれぞれ流し込みをやってみました。実際収量でいいますと反当り一五キログラムほど試験区が増えて、くず米の割合も一〜二%ほど減った結果が得られました。
 生物活性水を利用するようになって作物の生長が安定してきたように感じます。

[発表⑤:果樹]
「有機果樹栽培の高機能化」
山梨大学大学院医学工学総合研究部生命環境学部 教授 御園生 拓
 今回は作ったクロレラをどうしようというところに手を出し始めまして、そこの話をしたいと思います。今度山梨大に新しく生命環境学部という農学系の学部をつくり、そちらへ移りまして今環境科学科というところにいるんですけれども、やまなし自然塾と「有機果樹栽培の高機能化」の共同研究を始めました。果樹については有機栽培ができないという話ですが、なかなかそういうデータはないので、有機肥料とかマルチとかは栽培果樹にどのように効くんだろうかちゃんと調べてみようということではじめました。目標としては完全有機栽培なので、山梨ですからモモとブドウ、高機能化も一緒に見るために栽培方法も開発しようと予定しています。
 研究期間は三年間で、今年の二月からスタートしています。四二〇㎡の実験圃場を作りましたが、ここは粘土質でなかなか水はけが悪く、ずっと慣行農法でやってきた所です。農薬とか化成肥料とかを撒かれているとのことで、二ヵ月位前にまずは土作りということで、黒富士農場の鶏糞堆肥を入れて植栽しました。モモとブドウを植えて、その周りにコンパニオンプランツというものを植え、植物の相互作用で病虫害防除に関しても研究します。
 二週間に一回、一株当たり一〇ℓ、一〇〇倍希釈の藻類バイオマス(クロレラ)と生物活性水とをそれぞれに与えました。一〇〇倍に決めたのはあまり根拠はなくて、皆さんは五〇〇倍とか三〇〇倍とかおっしゃってますけど、そこは何か根拠をもって倍率を決めれるようになるといいと思います。別にポット栽培もやってみようというので、モモとブドウと各六本、モモの場合は畑潅と生物活性水ということでスタートしました。苗の時には全て藻類バイオマスつまりクロレラの入ったものを潅水して植えつけました。今年の二月に高畝切って排水溝作って、三月一日に堆肥を漉き込んでモモを定植、三月八日に水やり開始、三月終わりにチップを敷いてブドウとハーブを定植して、以後、月二回二週間おきに一株あたり一〇ℓを灌水してデータを取ったというふうにしてやってきました。実は統計的に有意な差というのは今回は得られてないんです。最初だから仕様がないというのもありますが、傾向としては、おおきなとか長いなとかはありますが、有意差はない。生物活性水と藻類バイオマスによって何が起こったかというと、桃の第一枝の数が増えたが、バイオマスの効果かどうか。ポットのブドウの新梢長もちょっと長くなったかどうか。最大の収穫は、枯れない。これ素晴らしいです。枯れたら意味ないです。来年も続けます。

Author 事務局 : 2014年03月01日12:23

【AQUA263号】BMWアジアから

フィリピンのBMW技術の動向

 現在、ネグロス島のカネシゲファーム、北部ルソンの農事組合法人CORDEV(コルデヴ〜バナナと稲作農家中心の団体)、同じく北部ルソン山間部のギルバート農園(柑橘農家)の三ヶ所が、フィリピンにおけるBMW技術の拠点となっています。今年中に、この三者を中心としたBMフィリピン(フィリピンBM技術協会)の設立に向けて、ここにきて話が急展開してきています。設立に関しては約四年前から構想がありました。カネシゲファームの代表であるアルフレッド氏は白州郷牧場や米沢郷牧場など、日本のBMW技術の拠点を訪問するなど、BMW技術の理解も深く、北部ルソンのプラント工事は㈱匠集団そらと共同でおこなうなどしてきました。
 カネシゲファームが復興してから数年で、彼らは自分達に適した形でBMW技術を軸にした養豚と耕作の有畜複合の資源循環型農業と暮らしを作り上げてきました。そしてこの取り組みをモデルにした地域が四つになり、それぞれに少しずつ動き始めているのです。
 各地域では母豚数頭の養豚をはじめ、豚舎の排水(糞尿込みの豚舎の洗浄水)をメタン発酵させたバイオガスを煮炊きに使用し、消化液(スラッジ)は液肥として畑や田んぼに利用というカネシゲファームと同じ仕組みを小さくして実践。生物活性水はカネシゲファームから運んで利用していますが、いずれは生物活性水プラントを設置できるようにという願いもあります。バイスという山間部の地域では、規模は小さいながらも養豚、野菜・米の栽培技術が少しずつ向上し、子豚を地域内やその周辺で販売することで、収入が増加しているという結果を出し始めているとのことでした。
 また、この四つの地域の共通点はバランゴンバナナ(※)の生産者であること、生産者同士のつながりや生産技術などの情報共有など、ネットワーク作りという面でもBM的な要素が生かされています。カネシゲファームやCORDEVには最近急激にBMW技術に関する問い合わせや視察が増えています。フィリピン全体としてオーガニックに関する関心が高まっている機運もあり、ネグロスでは自治体からの問い合わせもあるなど、BMW技術への関心が高まってきています。このような現状を踏まえてフィリピンにBMW技術協会(連帯)のような組織を設立し、フィリピンに適合した技術普及と農家の連帯を形成していくことで、更に農民たちの自立を後押しできるのではないかと思います。
 今回のBMフィリピン設立に関しては、これもひとつのステップだと思います。これからどのような形で組織を作り、運営して行くのか、その上でBMW技術をどう普及していくのか焦らず考え、行動していきます。仲間がいて連帯があり、支えあう関係がある限り、「未来へのチャレンジ」は諦めることなく続きます。
    
※バランゴンバナナはフィリピンの農民たちの自立を応援する「民衆交易」の商品として、一九八九年から日本の生協を中心に販売されている。協会法人会員でもある、NPO法人APLAと㈱オルタート・レード・ジャパンはフェアトレードの先駆けとして一九八九年からこの事業を展開しています。
(報告:BMW技術協会 事務局 秋山澄兄)

インドネシアATINA社の排水処理施設を訪問

 一二月一二〜一五日に、インドネシア東ジャワ、シドアルジョにあるATINA社(PT.ALTER TRADE INDONESIA)の工場を訪問しました。
 この工場では、主に日本の生協向けにエコシュリンプ(粗放型のエビ養殖)の冷凍加工を行っています。工場からの排水はエビの入荷量にもよりますが、一日あたり約五〇tです。
 加工時の排水以外に、従業員の制服の洗濯排水や食堂の雑排水も少しですが流入しています。
トイレの排水は別系統で配管されており、排水処理施設には入ってきません。
 プラントは、原水ポンプ槽、流量調整槽、第一曝気槽、沈澱槽、第二曝気槽、自然石槽が設けられており浄化されていきます。自然石槽からは、プラントの隣にあるインディカトル(池)に流れ込み、オーバーフローして敷地外の河川に放流されています。
 雨季のスコールが激しい時は、河川からインディカトルへの逆流も起こるそうです。プラントやインディカトルの周りは緑化されて遊歩道も整備されています。
一三日の午前に訪問した時は、エコシュリンプの入荷は午後からとのことで、工場からの排水は少量でした。流量調整槽、第一曝気槽、第二曝気槽とも臭気もなく順調に稼働していました。また、自然石槽から処理水の一部を生物活性水の製造に利用しています。

 一四日には、エコシュリンプの養殖池を見学しました。工場から車で四〇分くらいの大きな川沿いを河口に向かって走ると養殖池が見えてきました。見学した養殖池は、ATINA社の生産者の中でも二番目の養殖池面積を持っているマイナムさんの所有する池を見せていただきました。細長い池の端っこに池の水を排水する小さな水門があり、そこに竹でできた網かごを設置してエビの収穫作業を見学しました。あいにく収穫は少なかったですが、ブラックタイガーや小魚やカニが入っていました。
 養殖池には管理人夫妻が池のそばに住み込んでいて、日々の池の管理を行っています。ガンガンという水草にプランクトンや水棲昆虫などが棲みつきそれをエサにエビが育つそうです。
 養殖池からの帰途、二〇〇六年の五月にガス井の掘削中に突然熱泥が吹き出し、住民や工場が追い出された現場も見学しました。周囲を高い堤防に囲まれた中は石油臭い泥が充満し、一面泥の海と化していました。
(報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2014年03月01日12:20

 
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