【AQUA264号】2月の大雪被害について

山梨県をはじめ、関東甲信の各地で歴史的積雪!

 二月一四日〜一五日にかけて、関東甲信地方を襲った記録的な大雪は農業施設などに大きな被害をもたらしました。前週の七〜九日とほぼ同様に東北から近畿の太平洋側の広い範囲、特に関東甲信と東北(主に福島県と宮城県)で記録的な大雪となりました。内陸部では寒気がいつまでも残りながら朝まで強い雪が降る豪雪となりました。
 甲府一一四cm、前橋七三cm、熊谷六二cm、秩父九八cmなど観測史上最高を記録。甲府ではこれまでの記録四九cmを二倍以上塗り替え、さらに同県内の山間部などではたった一晩で一五〇cm〜一八〇cmの積雪があったとのこと。このため、二月一四日の夕方から、鉄道、高速道路などの交通網がほとんど断たれた状態となり、山梨県は一八日まで約五日間も陸の孤島と化しました。ご存知の通り、農業に与えた打撃は大きく、加温していたビニールハウスを含め、多くのハウスが倒壊しています。協会会員も大きな被害を受けました。
BMW技術協会会員の被害状況
 〜山梨、埼玉(二月一九日現在)
「やまなし自然塾」
   (山梨県内東部 甲州市、笛吹市など)
・ハウスはほとんど倒壊、加温していたハウスでも同じ。
・ビニールがけしていないハウスでも、骨組みが脇から押されたりするなどして、ひしゃげてしまったりしている。
・露地のブドウや桃、さくらんぼ等に大きな被害は今のところ見られない。
※雪が深くて確認できていないところもある。
◆白州郷牧場(北杜市白州町)
・積雪一五〇cm以上。鶏舎及び、野菜ハウス、倉庫、ほとんど全部が倒壊。
・被害羽数は約一万羽、卵の出荷は今後長期にわたって厳しい状況。
・雪おろし最中に倒壊したハウスもあったが、幸い人的被害はなかった。
・地域全体の除雪が遅れるなど、復旧作業もままならない状態が続く。
◆黒富士農場(甲斐市敷島町)
・積雪一七〇cm以上。鶏舎等への大きな被害はなし。電気設備等に被害。
・甲府市内に通じる道は自力で除雪して開通した。
◆小澤農園(甲府市)
・ハウスはないので被害は少ない、周辺のハウスは加温ハウス含め八割は倒壊している。
・ぶどう、桃などの路地は大丈夫。老木は多少やられている。
◆萩原フルーツ農園(山梨市)
・ビニールを張ったハウスはないが、骨組みにも多くの被害あり。
・圃場は積雪で全貌が見えていないが、樹は大丈夫かもしれない。
◆増冨の湯(北杜市須玉町)
・集落自体がまだ孤立している。(現在は解消されている)
・プラント施設は近くまで行けないが、見える限りでは建屋は潰れていない。(プラントは大丈夫のようです。)
◆hototo(山梨市牧丘町)
・イチゴハウスは二棟が倒壊、残りはビニールを切って倒壊はしなかったが、いちごは全滅。
・露地のぶどうは雪がとけないとわからない。
◆桑原邸(北杜市長坂町)
・積雪は凄いがプラントは今のところ大丈夫。
・雪かきが難航し、家を出るまで数日かかった。
◆長沢農園(山梨市)
・積雪は凄いが、ハウスはなく大きな被害はなし。
・ぶどう、キウイなどの樹は被害なし。
◆㈱生活クラブたまご(旧鹿川グリーンファーム)坂戸農場(埼玉県毛呂山町)
・低床式の鶏舎が四棟すべて倒壊。被害羽数は約四万羽。

 今回の大雪によって被害を受けられた皆様へ心からお見舞い申しあげます。
   (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年04月01日19:34

【AQUA264号】ドイツスタディー ツアー報告

「ドイツのエネルギー転換と有機農業」スタディツアーの報告

 二月二日、ドイツとオランダへ向けて、伊藤幸蔵BMW技術協会理事長を団長に成田空港を出発しました。BMW技術協会から参加の八名をはじめ、二本松有機農業研究会、NPO法人APLA、無茶々園、JA広島、愛媛大学、協同総合研究所などから総勢二一名となりました。日程は二月八日まででしたが、BMW技術協会のメンバーはさらに足をのばしてオランダへ、スマートアグリの現状を視察して二月一〇日に無事帰国の途に着きました。

はじめに〜
 BMW技術協会では二〇一一年の東日本大震災以降、「脱原発」を宣言し、代替エネルギーへのアプローチを続けてきました。フィリピン・ネグロス島のカネシゲファームにおける「バイオガス発電実験」や茨城県の茨城BM自然塾が進める「涸沼生態系再生プロジェクト」の太陽光発電利用、平成二六年度には、山形県の米沢郷牧場にてバイオガス発電の実験が行われる予定です。
 今回のこの視察は「ドイツ・スタディーツアー」ということで、協会会員であるNPO法人APLAと共同で企画し、愛媛大学客員教授・村田武氏の多大な協力を得て開催に至りました。脱原発を決断し、再生可能エネルギーへの転換を国として推進するドイツでは、農村を中心に「再生可能エネルギー一〇〇%地域づくり」で地域経済循環の再生をめざす運動が全国で広がっています。今回の視察先、南ドイツのバイエルン州やバーデン・ヴュルテンベルク州ではエネルギー協同組合づくりが盛んで、多くの有機農業者と有機農業団体が重要な役割を担っています。

 ドイツ・バイエルン州におけるバイオガス発電は二、三七二施設あり、これらの出力合計は六七・四万KWに達していると言われています。これは原子力発電所一基分に相当するそうです。注目すべきことは、ドイツにおける再生可能エネルギーの取り組みが各地域の農村、農家が独自に出資し、再生可能エネルギー協同組合を立ち上げて自分達の地域の環境バランスを考えた上で取り組みを行っていることです。二〇〇〇年以降、大手電力会社や多数の企業が、メガソーラーや風力発電施設、バイオガス発電施設を農村の土地を取得しながら進めていましたが、地域の環境を無視する形で、燃料となるデントコーン栽培を異常拡大させたりする事態となっていったのでした。近年はこれらに対抗する形で地域資源を自分達の手でエネルギーに変え、地域全体を再生可能エネルギーでまかなおうということで、市民、村民が出資し、それを地域協同組合金融機関が助ける形でエネルギー協同組合を設立し、この農村や農民が中心となった取り組みが多く見られるようになったようです。
 また、その根底には二〇世紀初頭からドイツでは電力協同組合が農村電化を担い、一九三〇年代には約五八四一の組合がありました。ヒトラー・ファシズム期にて公有化されたため急激に減った時期もありましたが二〇世紀末には約四五〇〇の電力協同組合があり、その大半は農村にあったという背景も忘れてはいけないと思います。
(参考文献:ドイツ農業と「エネルギー転換」〜バイオガス発電と家族農業経営 村田武著 筑波書房ブックレット)

①グントレミンゲン原子力発電所
 バイエルン州南部の大都市、ミュンヘンからバイエンルン州レーンクラプフェル郡を目指す道中、バスで約二時間の所にある、ドイツ最大の出力を誇る原子力発電所。現在稼働中の二号機は二〇一七年に、三号機は二〇二一年に稼働を停止する予定。インフォメーションセンターにはここの原子力発電所の仕組みの説明や原子炉の模型展示などがありました。ここは沸騰水型原子炉で日本の福島第一原子力発電所と同じ型のものですが、案内してくれたインフォメーションセンターの責任者の方は、福島の事故について「管理する者のレベルの違い」という認識を強く持っていたのが印象的でした。

②E・レーダー農場(養豚)
 〜バイエンルン州レーンクラプフェル郡 メルリッヒシュタット
 レーダー農場は養豚・肥育のみ年間二五〇〇頭出荷の規模。バイオガス施設は二五〇kw/hの電力と二六〇kw/hの熱の出力。電気は自家消費と売電、熱はメタン発酵槽の加温や木材チップの乾燥(チップは熱源として販売)と地域の温水暖房に利用されている。バイオガスの原料はバンカーサイレージで醗酵させた牧草が六〇%、豚舎から出る糞尿の混ざった藁床三〇%、デントコーンが一〇%を合わせた原料を発酵槽に毎日一五t投入している。施設は約一、五〇〇tの発酵槽が二つ、二、二〇〇tのスラッジ(メタン発酵を終えた抽出液〜液肥として利用)貯留タンクが一つ。スラッジは畑に還元している。総工費は日本円で二億八千万円、プラント収益は年間二八〇〇万円とのこと。ちなみに売電価格は一kwにつき〇・二一ユーロ、熱は一kwにつき〇・〇六ユーロだ。原料は豚の糞尿のみと思っていたらそうではなく、牧草が主(約六〇%)な原料となっている。この原料を確保するためにレーダー氏は一四〇ヘクタールの圃場を所持または借り受けて、牧草やデントコーンを生産している。

③アグロクラフト社〜バイエンルン州レーンクラプフェル郡 バートノイシュッタト
 ドイツには日本のように国と直接的につながっている農業協同組合がないが、各地域に独自の組合や農業者同盟があるとのこと。アグロクラフト社はバイエンルン州農業者同盟のレーンクラプフェルト支部の二人のリーダーが設立。一人は養豚業を営むクレッフェル氏、そしてもう一人は今回の視察をドイツ国内にて段取りしていただいたディーステル氏。農村・農民が主体となってエネルギー協同組合を設立、運営するにあたって、コンサルタント業務ができる組織が不可欠だと二人は考え、地元のマシーネンリンク(農業自助組織)と共同で出資し、再生可能エネルギー分野で市町村における独自のプロジェクトの構想を提案、事業の具体化などをおこなうコンサルタント会社を設立しました。②のレーダー農場のコンサルもおこなっているとのことでした。彼らは大手発電会社や多国籍企業による発電施設の乱立に対抗し、地域の自立にそえる形で未利用資源を有効活用した発電の取り組みを発案しています。

④村で運用するバイオガス発電施設
 〜バイエンルン州レーンクラプフェル郡 ウンスレーベン村
 施設全体の面積は一二ヘクタールという大きなウンスレーベン村のバイオガス発電所。六二五kw/hの電力と七〇〇kw/hの熱の出力、巨大な発酵槽やスラッジ貯留槽がいくつも並び、原料を作るバンカーサイロも大きい、主な原料は牧草とデントコーン。ここには純正のメタンガスを作るプラントも設置されていた。運営は村でおこなっており、従業員はそれぞれ自分の仕事をしながらローテーションを組んで従事しているとのこと。

⑤シュベービッシュハル生産者協議会 ホーフェンローレン州シュベービッシュハル
 一九八六年創立一四五〇の養豚農家が会員となり、絶滅寸前だった地域固有種の豚を復活させ、と畜場から食肉加工場までを経営、ドイツ全体に販売網を持っている。さらにはオーガニックにもこだわり、約四六〇の農家がBIOの認証を持っている。また、加工用に使う胡椒はインドの生産者とフェアトレードでの取引を実現している。直売所レストランのレバーやウィンナーはとても美味しく、肉だけではなく野菜もたっぷりのメニューとなっている。生産者組織というより大きな企業のような印象も受けるが、組織としては小規模の家族経営農家での生産を保っていて、自分達の手だけで産直を実現している。背景には一九六〇年代に始まった農業多角経営化や小農民を集約した希望拡大化というドイツの農業政策に対抗する運動があるとのこと。

  ※写真提供:協同総合研究所 管 剛文氏
  ※オランダの視察報告と参加者の感想は次号にて。
     (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年04月01日12:38

【AQUA264号】第23回BMW技術全国交流会報告 第二日目後半

 前号に引き続き、第二三回BMW技術全国交流会二日目(二〇一三年一一月九日)に行われた、若手を中心とした実験報告・事例発表の概要の後半をお伝えいたします。


[発表⑥:果樹]「米沢郷牧場グループ  生物活性水実験発表・事例報告」
 米沢郷牧場グループ   横山 裕一
 一昨年、昨年と果樹で実験をし、発表をさせていただいています。今回は昨年と同様、三種類の果物で実験を行いました。
 まず果樹栽培だけではなくて農業をするにあたって、自分たちで目的と目標を立てて農業を行っています。その目的は、地域の自然と共生し、地域資源の循環と再生可能な農業を次世代へという目的を立てています。目標は、地域資源の確保と利用率を上げる、地域資源を利用し低コスト栽培と安定収量をめざす、特に果樹では、作物の花を充実させ収量を安定させると共に食味の向上を目標に掲げて行っています。
 私の実験目的は受粉交配率を上げて、着色不良の解消と奇形果の削減と肥大・多収をめざすことです。内容は、開花時に生物活性水を散布することにより植物ホルモンに影響を与え、開花期間の延長と着色不良の解消を、奇形果の削減と肥大・多収を予想して仮説を立てました。米沢郷の生物活性水(原料:鶏糞堆肥)を、一〇〇倍希釈にして対象品目全てに、開花五日前、開花直後、開花終了後の三回、葉面散布するという実験を行いました。
 まずはサクランボの実験ですが、四月一一日に樹木に生物活性水を散布しました。四月二一日に積雪になるくらい降って、本当に今年は大丈夫かなと思いました。結果として、サクランボですが、山形県全体で今年、花の時期に雌しべが二つになって双子果という現象が起きました。原因として前年度の水不足と高温による被害が原因ではないかと言われています。そういったサクランボが今年は多く見られましたが、生物活性水を使用した所と、していない所での差を調べていくうちに、八年目の樹木で一本の木からの収量は若干実験区のほうが少なかったのですが、糖度が四%くらい実験区のほうが高かった。そしてこれが注目ですが、収穫物の双子果の数を数えてみたところ、「実験区の双子果の数が約九三個、対照区のほうが二〇七個」とあきらかに生物活性水を使用した所の方が倍くらいの量の違いがありました。
 西洋なしのラ・フランスですが、これもサクランボと同じように実験をスタートさせましたが枯れました。これはBMW生物活性水をかけたから枯れた訳ではなくて、ここ最近山形県で異常なほどに蔓延している胴枯れ病というものがあります。胴枯れ病になる原因は限定しにくいと言われています。普及所の人たちに聞いてみますと、異常気象によって休眠期からいきなり早く覚めてしまって、山形は一月から三月まで雪の下ですが二月に一〇度になるということはないのですが、その時に果樹が休眠期から覚めてしまい、活動して養分を吸い上げてしまった。それでまた氷点下十何度という寒気に戻ってしまい、吸い上げた養分が幹の中で破裂してその破裂した間に胴枯れ菌が入って、蔓延したのではないかということです。山形県の内陸地方と福島のモモを作っている所でも、そういった現象が見られ、私のところでも三〇年ものの木が三〇〜四〇本すべて枯れてしまって、園地が丸坊主になってきたという危機的な状況でもあります。
 りんごのつがるですが、一昨年と昨年と実験結果は変わりませんでした。収穫した実もそれほど奇形もありませんでしたし、種の数も従来通り多く入って良かったのではないかと思います。
 今回の実験で一番の収穫だったことは、サクランボの種にも影響しているということでした。サクランボやモモのように中心に一つだけ種がある果物と、りんごや梨のように中心に部屋を持って複数の種を持つ果物に対しても、原因は分かりませんが何らかの影響を与えるということが、なんとなく見えてきた感じがしますので、それをベースに、これからいろいろな実験をしていき、生物活性水をもっと活用していきたいと考えています。

[発表⑦果樹]「BMWプラント紹介と
生物活性水実験報告」
萩原フルーツ農園
(やまなし自然塾/山梨県) 萩原 貴司
 一昨年になりますがBMW技術の生物活性水プラントを導入しました。
 今までも黒富士農場さんの生物活性水やBMW堆肥を畑に散布していたのですが、その土地土地でBMW技術を利用する側で違ってくるということと、もう少し踏み込んで果樹にどのような影響があるのかということが知りたかった。また、観光農園として営業しておりますので、BMW技術のことを少しでもお客様に知っていただきたかったということからプラントを作るということを始めました。ちなみにECは、〇・九五mS/㎝、pHは八・七で、ちょっと色的には濃いのですがECの方は比較的落ち着いているという、この生物活性水を使って実験をしました。
 生物活性水がぶどうの萌芽、芽吹きに及ぼす影響を調べてみようということで始めました。一般的にはぶどうの萌芽率を向上させるためには、窒素系の栄養材を芽に塗布もしくは散布することが用いられています。窒素系栄養素ということでは生物活性水にも窒素成分、ミネラル等の微量要素が含まれているというところから、これを休眠期の芽に塗って、そのあと芽吹きにどう影響してくるのかというのを検証しました。窒素系栄養素はもちろん購入しなければなりませんので、生物活性水で代用できたらということです。品種はブラックビートという、大粒の黒いぶどうになります。生育年数五年、同じ年に同じ畑に植樹したものを用いました。実験内容は、休眠期を三月三〇日に設定して、原液をそのまま塗ったもの、水で一〇〇倍に薄めたもの、二〇〇倍に薄めたもの、五〇〇倍に薄めたもの、そしてただの水ということで五試験区設け塗布しました。
 実験の調査方法は、まず芽吹き前の芽の数を数えておきまして、芽が吹いたところで定期的にその吹いた数を計測して、出る前の数と出た後の数を割れば萌芽率となりますので、何%芽が出たのかというのを計測しました。もう一つは各試験区で成長した最長の芽、五つ出たとしたら長い方から三つの長さを、一応芽吹き後の成長の様子をみるために三つ計測してその平均値をとりました。濃い生物活性水を塗布すると最初のうちの発芽率、萌芽率がちょっと低い。芽が出るのがいわゆる遅延する、遅くなるということが示されたと思っています。実は自然塾のメンバーもこのことは何となく気づいていたのですが、今回それをデータとして示すことで傾向として示されたということが言えます。また、芽が出たあとのの新芽伸長に関しては、濃い生物活性水のものほど萌芽の最初の伸びはよい傾向にありました。二〇〇倍については少し伸びが悪かったということが言えますね。芽の伸びが悪いというのは、芽吹きが悪かったために栄養自体が芽吹いたものに集中してしまったためではないかという考察を私は得ていますが、今後ともこれも検証していかなければならないと思います。
 もう一つは生物活性水をぶどうの房自体にかけてぶどうの着色がくるかこないか。昼と夜の寒暖差が一八度以上ないとぶどうの色はよくないと言われていますので、そういったものを改善したいということでこちらの実験を行いました。ぶどうの果実肥大期の後半にはベレーゾン期と呼ばれ果粒に水がまわり着色が始まる生育期があります。その時期に生物活性水を房に直接散布して、色が変わったり、糖度が上がるようにできたらいいなということで品種はピオーネを使いました。果実肥大期に、原液、一〇〇倍に薄めたもの、二〇〇倍、五〇〇倍、水と行いました。これも同様の生物活性水です。このような肩掛けの散布器を用いて房にかけました。有袋といって袋をかけてなるべく病気が付かないように、ぶどうに全部袋をかけて栽培を行っております。その収穫後着色がよくなっておいしそうになったところで収穫して着色や房の重量、pH糖度、粒の数を計測しました。全体的にどの処理区も同等の結果でした。   
 今後も実験を継続しデータを集めたいと思います、これを利用して作業の省力化や分散化が狙えるのではないかと考えています。また、果樹では生物活性水を散布後生育に変化が出にくい、一、二年では難しいのかなと、継続的に行っていきたいと考えています。

[発表⑧:果樹]「果樹(梨)栽培に
おける生物活性水の活用報告」
アーム農園(西日本BMW技術協会/大分県)
  判田 直也
 九州の大分県で梨の専業農家をしておりますアーム農園の判田です。
 九州では四月上旬に梨の花がほぼ一斉に開花します。梨のほとんどの品種は別の梨の品種を交配しないと実を結びません。受粉作業には大変な労力と人手が必要で多くの臨時雇用が必要にもなります。今回生物活性水を用い受粉作業の省力化を図れる試験を行いました。果物ですので、すぐに結果が出ないかもしれないので、とりあえず三年計画で行っております。昨年から始めて今年で二年目になります。経過報告という形で発表したいと思います。目的としまして、従来の受粉作業と受粉なしでBMW生物活性水散布のみの区で、同等以上の結果が得られれば、受粉作業の軽減が見込めます。平成二四年から豊水と秋月という品種を比率一:一の混植園で試験を行なっております。今年で一五年生の木です。C区は生物活性水を全く使用しておらず、梵天で手作業で受粉する慣行栽培です。A、B区はほとんど同じで手作業による受粉は全く行っていません。平成二五年には新しくD区を作りました。D区はB区と同じように生物活性水を使用し梵天受粉も行っている区です。今のところ平成二四年、平成二五年の果実平均、重量、果重、着色、糖度などを見て特に大きな差はないので、来年一年間まで調査して三年間のトータルの結果を出し、今後導入可能か判断していきたいと考えています。

補足  グリーンコープ連合 宮﨑 利明
 目的がちょっと他の人と違い、作業の軽減効果があるのだったらずいぶん役に立つし、これが二年間うまくいっているので、他の果樹の生産者も受粉作業のところでこれが使えるかどうかはやってみる価値があるのではないかと思います。この手の活用は今までなかったので非常におもしろい。

[発表⑨:堆肥]「JAささかみの取り組み」
笹神ゆうきセンター(JAささかみ/新潟県)
 田中 政喜
 私どもの地域において生物活性水を農作物で実験データを取っているということはないのですが、私達が運営しています堆肥の生産の過程で生物活性水を利用しています。堆肥の生産の過程で主にどういう目的で使用しているかといいますと、悪臭やハエが発生するのを防止するという目的があります。それともう一つは、その堆肥を田んぼに散布して利用していく過程で、毎年毎年堆肥を散布することで、土壌改善、土作りを進めていこうじゃないかというような目的で活用しているところです。

[発表⑩:畜産]「BMW技術における
   鶏への生物活性水の噴霧実験報告」
黒富士農場
(やまなし自然塾/山梨県)  向山 洋平
 農場にあるプラントの生物活性水の原液を今回の実験に使用しています。原液を入れたもの、もう一つ五〇倍希釈用のものを用意しました。濃度の異なる生物活性水を直接鶏に噴霧する生育実験を行いました。四月一日から実験を開始して、九月二五日までの約六ヵ月間継続して噴霧しました。週に一回生物活性水原液と五〇倍希釈した生物活性水を噴霧しながら、鶏と卵の飼育産卵状況を観察してきました。最終的には、実験鶏を解剖して、対照区の鶏との比較を行ったのと、卵についても同じく対照区との比較分析を行いました。実験の内容は、対照鶏は最初、平飼いでもやってみたいなと思ったんですけども、ちょっとバラバラして実験データがうまくまとまらないかなと思ったので、ゲージの方のさくらという鶏を使いました。日齢が一四五日の若鶏でして、三二五日までのデータです。目的は鶏の健康増進、鶏の体内への効果を検証(解剖の見地から)、卵自体への効果の検証。卵重、卵白の高さ、卵殻強度、卵の見た目、カラーファン、ハウユニット、実践的に卵の質を高めていきたいなと。
 原液噴霧した実験鶏の消化管を取り出して、食道、胃、十二指腸、小腸、盲腸、大腸等を対照区鶏と確認しました。BMW原液を噴霧した鶏は、食道がとてもきれいで適度な脂肪でした。対照区の鶏は脂肪肝に近いなどの個体間の違いがありました。臓器等に肉眼で確認できる大きな差異は見られませんでした。細胞レベルでもしかしたら何か変化が起きているのかなあというところです。
 次に、卵の測定はエッグマルチテスターを使って、調べた内容は以下の通りです。BMW生物活性水の原液を噴霧したさくら卵三個、五〇倍希釈した卵三個と、対照区の卵三個。日齢と飼料、BMW生物活性水の飲水条件はすべて同じ条件で行いました。三個の平均卵重が六六g、卵白の高さが八・六三mm、カラーファン一三、ハウユニット九一・四、総合評価がAAでした。五〇倍希釈の方が平均卵重六一・九六g、卵白の高さ八・六五mm、カラーファン一二・四、ハウユニット九二・二六七、総合評価AAです。対照区の卵は、平均卵重が六一・七g、卵白高さが八・四六mm、カラーファンが一三・七、ハウユニットが九一・六三、総合評価はAAです。最後に卵重平均と卵白高、ハウユニットだけに絞って、三つの結果をまとめたグラフです。BMW生物活性水の原液、五〇倍希釈液を噴霧した卵は、卵重がわずかながらですけどもハウユニット、卵白高が高めでした。来年度は、未定なんですけども、飼料中に添加したクロレラの絶対数を増やしたクロレラ卵等の実験も行っていきたいと考えています。

[発表⑪:畜産]「生物活性水の高倍率 飲水添加による鶏の腸内環境について」
 米沢郷牧場(山形県)    石川 公士
 生物活性水の高倍率飲水添加による鶏の腸内環境についてということで、生物活性水二〇〇倍の飲水で腸内の環境がどう変化するかを見るため三種類の実験をしました。一つ目はドリンカーの大腸菌群数、二つ目が糞便中の有用菌(乳酸菌)・有機酸構成比比較実験を行い、三つ目が鶏の腸内細菌(鶏大腸菌と鶏クロストリジウム・キャンピロバクター)培養比較実験を行いました。これを行って食味向上とか成績向上に繋がるのではないかと思いまして行ってきました。生物活性水を高倍率で飲ませると、ドリンカー内の大腸菌群が、一般生菌も含まれるんですけど、これが減るのではないかなということで、大腸菌群検査紙を使いまして三日齢と八日齢、一五日齢、二一日齢、三六日齢、四八日齢まで調べました。普通だったら大腸菌が出ますと点々とコロニーができるんですけども、検査紙がちょっと赤くなるくらいでそんなに酷くないという環境でした。サンコリの検査紙を使ったんですけども、メーカーのほうに問い合わせたら、米沢郷さんの飼育環境は非常にクリーンで、良い環境で飼育していますねという評価をいただきました。
 二つ目の試験なんですけども、四三日齢の時に鶏が排出した糞便を大体ピンポン玉くらいに集めて明治製菓さんのほうに出して、その中の有用菌を調べた結果、乳酸菌(ラクトバチルス)、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム)がありました。
 次が総有機酸量ということで、それぞれ個体差があったので平均をとってみたら、乳酸菌が、試験区の方がかなり多くなっている。総有機酸量も多くなったということで、有用菌が増えたという結果になるのかなと解釈しております。
 三つ目の実験は、腸内の細菌を調べたのですが、それぞれ見るとそんなに変わらないという結果になりました。うちの飼育方法が完全無薬飼育なので、本当に何でも効くんじゃないのかと。
 考察として、一番目に生物活性水を高倍率で飲水に添加することによって乳酸菌および有用菌数が対照区と比べて多い。飼育期間中にさらに臭いを抑えた飼育が可能と考えられる。二番目に乳酸菌などの有用菌が増えることで、鶏が健康になりさまざまな弊害(病気等)に強くなり、結果試験区において鶏の増体が良かったものと考えられる。さらなる肉用鶏生産の成績向上が図れる。三番目に、鶏が健康に育つので食味アップに繋がるものと考えます。今後の課題としまして、再度実験を行い同じような結果になるか検証が必要です。

補足  明治製菓ファルマ   福田 泉
 まず大腸菌が出ていますね。皆さんご存知とは思いますが、大腸菌というのは一般的にいろんな動物の大腸の中にいる訳でして、鶏に特にいる訳ではございません。今回採れた大腸菌については、まったく病原性がない無害な大腸菌です。米沢郷牧場さんは抗菌剤を使っていらっしゃらないので、非常に素直な素性のいい大腸菌が鶏のお腹の中にいるんだろうと思いますね。お腹の中の大腸菌の素性がいいということは腸が非常に健康だということで、鶏も健康なんだろうなと。

「交流会総括」
 BMW技術協会全国理事・
 (財)夢産地とさやま開発公社理事長
  山本 優作
 全体において皆さん、非常に若い方が発表されていたというので、若い人の視点でいろんな事をされたんじゃないかと思っています。
 私は全国交流会の第二回からずっと二二回参加していますが、昔と比べるとずいぶん発表の内容も詳細にわたって変わってきたと思います。鈴木といううちの若い職員も発表したんですが、今までの二三回の発表の中であれだけ実験をしたけどダメだった発表というのは、おそらく私の記憶で初めて。だから完敗という表現もあった訳ですけど。でもそれはやっぱり失敗はまた成功の元に繋がっていくだろうと思いますので、今後を期待をしたいなと思っています。
 今回若手の中で、水稲栽培から果樹とかいろんなものがあったんですが、どうも全体的に見ると継続して結果を見ていかなければならないものが非常にあるんじゃないかということで、三年続けて、横山さんは発表していただいてますが、そういった継続の中でわかってくるものもあります。それから御園生さんのように、おそらく大学の先生が果樹の関係でこういう試験に取り組まれたというのは初めてだろうと思うんですが、そういった研究成果も、多分五年位続けてやらないと果樹の場合はなかなか結果が出てこないんじゃないかと思っていますので、そういったものに期待をしたいなと思っています。
 そしてもう一つは、久しぶりに今年パネルディスカッションが行われましたが、非常に新鮮な思いで聞かせていただきました。テーマは「食と農の絆」だったんですが、この、食と農の絆というのは離れかけているんじゃないか、これを何とか引き止めていくことが必要だと思っています。
 最終的に問われているのは、人間の生き様、価値観がどうであるか、ということになろうと思います。お金がたくさんあれば幸せだという風に考えるのか。お金だけじゃないよというものを価値観として持っていれば、「生き方」が私は違ってくるだろうと考えております。すべての基が教育につながっていくんじゃないか、国の大計が教育にありとよく言われますけど、そういったものを大事にしていきたいなと思っています。
 これだけ多くの皆さんが一堂に会して、こういった交流会ができたことを感謝します。  (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年04月01日12:35

 
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