【AQUA265号】「日本農業賞大賞」を協会会員の山梨県 黒富士農場が受賞!

 日本農業の確立を目指し、意欲的な経営に取り組む農家や営農集団を表彰する「日本農業賞」の大賞「個別経営の部」を、BMW技術協会会員の農業生産法人黒富士農場が受賞されました。
 山梨県甲州市の黒富士農場は採卵鶏の平飼い放牧と有機鶏卵生産のパイオニア。飼養羽数七六〇〇〇羽のうち半数が平飼い放牧で、国内ではじめて鶏卵で有機JAS認証を取得しました。アニマルウェルフェアや三店舗の直売所による販売にも取り組んでいます。

Author 事務局 : 2014年05月01日19:49

【AQUA265号】「ドイツスタディツアー」オプション視察 オランダ「スマートアグリ」報告

 先月号に引き続き、二月におこなわれたスタディツアーの後編、オプション視察のオランダ報告をお送りします。
 ドイツでの行程が終わった翌日、今回のツアー参加者総勢二一名のうち、BMW技術協会会員メンバー八名はオランダへと移動しました。

オランダでの目的はスマートアグリの視察です。IT技術をベースに施設管理を自動化し、生産効率の向上を目指す植物工場、私たちの取り組みや考え方とは相反すると言ってもいいのでしょうか、土作りとは縁遠い世界。生産効率を上げるために施設栽培技術の研究を日々続けている研究所「GreenQ(グリーン・キュー)」を視察しました。
 視察報告の前に、なぜオランダでスマートアグリが進んできたのか、その背景には国土や気質、欧州の中央に位置するという立地などの好条件もあったようですが、そこには農家がかつて経験した大きな危機があったとのことです。約三〇年前、EUの前身・ECに農業大国スペインとポルトガルの加盟が決まり、安い農作物が大量に押し寄せる中、他のヨーロッパ諸国や海外に負けない競争力をつけることがオランダの農業で、農業だけではなく国そのものが生き残るための条件となりました。狭い土地を今まで以上に効率よく活用していくこと、その上でのハウスの大規模化、自動管理化、土に代わる人工繊維の畑、試行錯誤の末にたどりついたのが生産効率を高く維持する、スマートアグリということのようです。
 オランダの人口は千六百五十万人、うち農業者人口は三〜四%と言われていますがオランダ経済の二五%は農業生産物が占めています。国土は九州と同じぐらいの広さ、その半分が農用地で土地利用率九九%と言われる国土の中で約五〇%を占めています。日本の国土は約六六%が森林なので、国土利用率は約三四%、農地は国土全体の一二%なので利用されている土地の中での割合は三〇%くらいに相当します。オランダの農用地面積はドイツなどのEU諸国と比べて非常に小さく、耕地が約四三%、牧草地が約五一%、園芸施設は〇・五%、国内を移動中の車窓からは、園芸施設がかなり多く立っているように見えましたが、数字にするとそんなに少ないのかなと首をかしげてしまうくらい、辺り一面にぎっちり立っている印象を受けました。後でわかったのですが、園芸施設は都市部に多く集中しているようで、私たちは沿岸部を移動していたので、そのように感じたのではないかとのことでした。そうは言われてもドイツの太陽光パネル並みに並んでいる園芸施設群に圧倒されました。
 オランダの農業自体は花卉類、野菜、畜産が中心、特に花は世界シェア五割といわれています。野菜はジャガイモ、甜菜、麦、豆の輪作体系が主で、ジャガイモの輸出は世界二位(一位はカナダ)。その他は露地でキャベツやカリフラワー、ブロッコリー等の葉茎菜類、園芸施設ではトマト、ナス、パプリカなど、世界二位の野菜輸出を誇っています。たばこや牛乳などを輸出量と同じくらい輸入して、農産加工品としての輸出も多いです。いずれにせよオランダの農家は昔から路地栽培において狭い農地を可能な限り効率的に活用することを考えてきて、この経験や技術の蓄積がスマートアグリの発展に反映されているとも言えます。路地栽培も施設栽培も単収は世界でもトップクラスとのこと。
 日本と比べると面白いのは、畜産は国の補助金が多く活用されているが、野菜に関しては国からの補助金はほとんどなく、作物ごとに農業組合を作って共同出荷している場合が多いとのこと。ある文献では、オランダの農業の発展は国から押し付けられた農業をするのではなく、自分達で選択し、日々研究、努力を重ねた結果だと書いてあります。オランダ人のまじめな気質、細かいことまで倹約(悪く言えばケチ)する姿勢が根付いている、これも農業の発展の大きな要因のひとつだといわれていることにも納得できます。
 
さて、やっと本題に移りますが、私たちが視察をしたところは、農家ではなく研究所です。しかも、ただの施設栽培技術研究所ではありませんでした。元は園芸施設の建設業者だったとのことで、現在は次の五つの事業を軸に展開しています。
①施設の建設。
②農家への実践向けの栽培研究と農業大学、種苗メーカーなどとの共同研究。
③農園のマネージメントや栽培に関するセミナーなどの開催。
④投資家や農業経営者向けのコンサルト。その土地にあったやり方を調査してから的確なプログラムを展開して行く。
⑤農家への栽培アドバイス。技術や作物ごとの経営コンサル、市場調査など、これは施設栽培に関らず、路地での土耕栽培や酪農、その他畜産も含まれます。
 研究所の入り口でこのような概要説明を受け、防疫服を着用して施設の中へと入りました。施設の総面積は一〇ヘクタールの中に面積は色々ですが約一六〇のコンパートメント(連棟施設)が設置されているとのこと。
 はじめにアマリリス、そしてトマトの施設へと案内されました。各施設でテーマ(実験内容)が決まっているとのことでした。アマリリスは養液排水の再利用や土台となるベースの実験がおこなわれていました。養液排水の再利用は、養液を添加する水耕栽培では通常排水を捨ててしまうそうですが、イオン分解などで再利用できないか、ロックウールに代わる土台(ベース)の実験が赤玉土などを使って実験されていました。トマトの施設は凄いことになっていました。クリスマスイルミネーションよりも凄いLEDの照明。このLED発光による生育促進、光合成を高めるために各生育ステージで光の強さを変えていく試みや、害虫防御などに効果があるかなどの実験をおこなっていました。施設はどの棟も全く同じ形状で色々な作物に対応できるようになっています。トマトの施設では畝間に暖房用の温水配管が設置されていて、その配管がそのまま作業車のレールとなり、その作業車はもちろん人が乗ることができ、リモコンで上下左右に動けるようになっているのでとても便利そうでした。二酸化炭素のエアバックが畝にそって設置されていました。コージェネを利用した二酸化炭素の活用・削減の実験をはじめ、バイオマスなどエネルギー実験の取り組みもおこなっていました。
 また、この他にも特許や企業機密の問題で見ることはできませんでしたが、大学や種苗メーカーなどと共同に実験をおこなっている施設がたくさんありました。このような実験は大きなプロジェクトだと約一〇年間も続けておこなっていくそうです。セミナーは各種合わせて年三〇回程度、視察の受け入れは年間一五〇団体ほど、現在コンサルしている農家は四〇農家で、これらの数字は毎年内容や相手先が変わるものの、ほぼ一年間変わらないとのこと。
 ちなみに園芸施設の建設コストですが、基本セット(栽培装置、暖房装置、選果機などすべてを含む)の設置コストは、一ヘクタール規模で一平方メートル当たりの単価は約一万円、二ヘクタールでは約七千円にまで低下するとのこと。日本の実情の1/2〜1/3と言ってもいいのでしょうか、オランダで使われる温室は軒高四〜五メートルのガラス温室で、しかも仕様が全部統一されているため、最小単位の構造を縦、横に自由に伸ばすことで、いかなる大きさの園芸施設も建設できるようになっています。栽培のノウハウに関してもほぼ共通でわかりやすいマニュアルもついているのが普通とのことです。

九日間の日程はあっという間でした。日本では関東地方を中心とした大雪のニュースが届いていたが、まさか帰国後にさらに凄いことになるとは思いもしなかったです。まずは特にトラブルもなく皆で無事に帰国することができました。
 参加した皆さんの話を聞くと、各自、たくさんのことを学べたのではないかと思います。日本で情報だけ得るだけではどうしても見えてこないことが多々ありました。現場に行き、この目で確かめ、直接当事者に聞いて確かめてという作業はとても大切な事だとあらためて思いました。日本の自分達の場所で、視察したバイオマス施設やスマートアグリ施設を直接取り入れるかどうかは別として、現地に行くことの大切さと、それを仲間で共有し、議論することができたことも良かったです。
 ドイツのエコの取り組みは先進的ではあるものの、いささか疑問に思うところも多々ありまし。デントコーンをバイオマスプラントのためにわざわざ栽培し、バンカーサイロで発酵させ、一日の投入量は一〇トン以上にも及ぶなんてことは、本当にエコなのだろうか。太陽光パネルも農村の家々の屋根にかなり多く設置されていますが、景観として少し寂しく感じてしまった。日本でも私の住む山梨県北杜市は、日照が長いことでも有名だからか、耕作放棄地や山林を切り開いて、強引に太陽光パネルが並び始めています。これは地域のためになるのか、いやそういうものではないような感じで(地域づくりのためにずっと前からやられている方達もいる)、北海道も同じ状況になっているでしょう。ドイツの景観はともかく、地域に還元される再生可能エネルギーの在り方、作り方は各地域で農民・住民主体で見直されている現場を垣間見ることができたのは幸いだったかもしれません。BMの仲間ではフィリピンのカネシゲファームをはじめ、米沢郷牧場やポークランドがメタン発酵のバイオマス取り組みの実験を進めているところであり、米沢郷牧場の場合は準備が始まっています。コストの問題や設置可能面積、消化液(スラッジ)の処理など課題は多いかもしれませんが、地域のために再生可能エネルギーの取り組みになると思いますので、日本的な地域に適したモデルとなってもらえればと期待しています。
 BMW技術協会では、二〇一四年度も日本を飛び出して、皆で学ぶ場を作っていきますので、是非、参加していただきたいと思いますし、行き先や内容について活発なご意見・提案等をいただければ、より良い研修になっていけると思いますので宜しくお願い致します。
  (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)
   ※写真提供:協同総合研究所 管 剛文氏
注 スマートアグリ:農業の技術がIT技術によって蓄積され、温度、湿度、養分その他のセンサーネットワークと連携して自動化し、省エネで再生可能エネルギーなども利用しながら、 植物工場に代表される高度に自動化された農業技術で、農業に新たな産業革命をもたらす技術。

「ドイツ・スタディツアーに参加して」ツアー参加者の感想

山形県 ファーマーズクラブ赤とんぼ 北澤正樹
 予想通り寒かったドイツに到着したのは、現地時間の夕方五時三〇分。翌日からバイオマスエネルギー発電に取り組む農村・農場の視察が始まる。楽しみな気持ちを膨らませながら、ドイツ料理とビールをいただき、眠りに就いた。
 翌日からバスでの移動、ドイツの高速道路であるアウトバーンを走ると、いたる所に風力、バイオガス、太陽光の発電施設がある。大きな畑に広がる太陽光発電施設は、まるで「ソーラー畑」と言ったところだ。二〇二二年に原発を廃止にすると決めたドイツ、たくさんの再生可能エネルギーの発電施設が平らな農地に設けてある。農村の多くの住宅や倉庫の屋根にはソーラーパネルが設置してあり、エネルギー問題・自給を国民が理解していると感じられる光景だった。
 ドイツの農業は日本と同じく高齢化し、後継者不足という状態で、一戸当たりの経営面積は五〇ha〜一〇〇ha、それ以上の規模になってきている。そこでジャガイモや麦などが作付されているが、近年はバイオガス用のデントコーンの作付けが増えている。地域によっては、農地の五〇%がデントコーンになっているという。ウンスレーベン村が運用しているバイオガス発電施設では一日当り何tものデントコーンを原料として使うため、広大なデントコーン置場があり、そこに一年分の原料をストックしていた。いつか農地・原料の奪い合いが起こるのではないかと思った。
 シュベービッシュハルの養豚農家が経営する「直売所」を見学したが、日本にある直売所なんてモノではなく、「スーパー」と言った方が伝わり易いと思う。それくらいの品揃え(四〇〇〇アイテム)があり、農畜産物は地域内のモノを販売し、加工に使うスパイス類はインド・セルビア産を使い、地域内外から適正価格(フェアトレード)で仕入れていた。特に肉とソーセージなどの加工品が充実していて、有機畜産物も充実していた。ちなみに有機たまごは一個六〇円位で売られていた。直売所の隣では地域内の農畜産物を料理したレストランも経営していて、平日にもかかわらず多くのお客さんで賑わっていた。そのほか直売所では、有機(BIO)認証の会社、と畜・加工会社など、幾つもの会社を経営していた。いろんな形で地域内の農産物を食べてもらえる工夫をしていて、直売所というものにとても関心が湧いた視察だった。
 ドイツからオランダに渡り、スマートアグリを視察。「GreenQ」という、ハウス栽培の研究・コンサル等を行っている会社を訪問し、見学をさせてもらった。敷地面積もそうだが、高さのある広大なハウスで、アマリリス・バラ・トマトなどの栽培研究をしていた。全て養液栽培で、温度・湿度はもちろん、LEDの人工光量と太陽からの光(遮光)までコンピュータで管理し、工場で発生するCO2をタンクに溜めてハウス内の植物に使っていた。工夫に工夫を重ね、実験に実験を重ね、小さな規模で大きな収益を生み出す仕組みをオランダは持っている。輸出額世界第二位に納得した視察でした。
 たくさんの視察をしてきたが、それぞれが思いを持って実行し、実現していた。ドイツ・オランダの規模を実現するのは難しいが、視察で見てきた何かは応用することが出来るはず。整理整頓して考えて、何かを実行したい。

新潟県 謙信の郷 金谷 武志
 ドイツ国内でのバス移動中、次々現れる風力発電の風車、広大な農地と住宅や農舎等の屋根に敷き詰め設置された太陽光発電パネルの数々に、脱原発を掲げたドイツの本気度を実感し、ドイツ国民の環境問題と真摯に向き合う姿勢に心打たれました。
 また、穀物サイレージを主原料にしているバイオガス発電施設では、事業収支の詳細な話も伺うことができ、日本においての実現可能性の検討にも大変役に立ちました。もちろん、ウインナーとビールの旨さにも感動!ドイツの後に訪れた、オランダのスマートアグリの効率的な農法もとても参考になりました。最後に、今回の視察研修の旅を実のある物にしていただいた村田教授、事務局の秋山澄兄さん、吉澤真満子さん、ご同行の皆様、本当にありがとうございました。

新潟県 謙信の郷 福原 弥
 ドイツでは原子力発電所の稼働停止→廃止に伴い、再生可能エネルギーへの大幅な転換中である、と、移動中に多くの風力発電所、太陽光パネルなど、様々な発電施設を目にすることで実感した。その中でも視察訪問した養豚場のバイオガス発電、熱エネルギー施設は、国等の補助ではなく資金借入のみで施設を作り、自家消費と地域の熱消費に利用されていることが素晴らしい。現実的に私たちの現状に合わせてみると、新潟では水稲栽培のみでバイオガスの原料も土地もなく、やるとすれば国の助成なしでは考えられない。太陽光発電は身近な再生可能エネルギーとして重視したい。
 また、宿泊したホテルはどこも照明の光量が日本に比べて圧倒的に暗く、一般家庭でも同様に消費電力が少ないと感じた。これもポイント。日本は電化生活に甘んじていると、自分達の姿勢について考えさせられた。
 終わりの二日間はオランダへ移動。トマトの施設園芸栽培を視察したが、大規模化かつ合理化が進み、多面的自動制御管理に驚いた。特にハウス内の温度管理に地下一〇〇mからの蓄熱を利用できることに感心した。農家へのコンサルティングサービスも充実していたが、これをやるには莫大な投資にもなるなと思った。
 全体を通して食文化の違いがあるとは言え、「じゃがいも」はしばらく食べたくない。帰国後の体重は五kg増加し戻る気配が無い。英語も話せるようになりたいとも思った。最後に視察研修に参加された方々に感謝申し上げます、ありがとうございました。
 
新潟県 謙信の郷   佐藤 清繁
 ドイツの農業はもっと大規模で企業的な経営体を想像していました。視察先は確かに大規模ではありましたが、想像よりもはるかに小規模なものでした。しかし環境に対する意識の高さや、原発ゼロに向けた取り組みの素晴らしさに感銘を受けました。 

Author 事務局 : 2014年05月01日19:47

【AQUA265号】BMプラント動向

鹿児島県西之表市(種子島)にて
BMW技術基礎学習会を開催

 三月一日に鹿児島県西之表市(種子島)のJA西之表・会議室(三階)にて、「西之表市の明るい農業を目指す会」の主催で土づくりと地域循環・環境保全型農業を考える学習会が開催されました。学習会の主な目的は「BMW技術の基礎から土づくりと地域循環を考える」ということで、BMW技術協会・事務局の秋山と西日本BMW技術協会事務局・グリーンコープ連合の宮﨑利明氏が講師として参加しました。
 西之表市の明るい農業を目指す会からの主な参加者は沖ヶ浜田黒糖生産者、種子島茶生産者のメンバーや、安納イモの生産者など耕種農家、畜産農家、JA職員等、合せて約三〇名となりました。学習会の目的は有機農業を実践されている方やこれから実践していこうという人達が中心で、とても熱心に各講師の話に耳を傾けていました。
 はじめに、鹿児島県熊毛支場(農業普及センター)・場長の西岡稔彦氏による、「種子島の堆肥作りの重要性」として、種子島では化学肥料に頼り過ぎていて畑がどんどん劣化している危機的な状況にあると提議し、畜産も多いので畜産資源を使った堆肥を畑に活用するなどして、一から土作りを一緒に勉強していこうということでした。
 次にBMW技術協会・事務局の秋山から「BMW技術の基礎と生物活性水の活用」として、技術の基礎、協会の概要と各産地での取り組み等の話をしました。
 最後にグリーンコープ連合の宮﨑氏は「BMW技術と消費者の関り・生活協同組合について」として、BMW技術とグリーンコープの関りの話と、グリーンコープ自体の取り組みの説明がありました。
 質疑応答では、三人の講師と参加者が一緒になって、意見を交換しました。農家からの活発な意見もあり、BMW技術に関する関心もかなり高く、こんな風に使ってみることができるかとか、プラント導入コストや工程日数などへの質問も多く出ました。
  (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

匠集団そら 定期点検
  埼玉県内の中水利用プラント
  北海道根釧地区の飲水改善プラント

 二月の大雪をひきずるように、三月に入ってもなかなか暖かくなりませんが、ようやく関東では桜が咲き、関東では若干遅い春がやってきたのではないかと思います。二月の大雪で甚大なる被害に遭った方々へは心からお見舞い申し上げます。山梨や埼玉のBMWプラントへの直接的被害はありませんでしたが、ご周知の通り、ハウスや鶏舎への被害は大きく、通勤、出張等での通り道では未だ倒壊したままのハウスを多く目にすることがあります。
 さて、匠集団そらでは三月に埼玉県内の中水利用プラントの定期点検をおこないました。パルシステム連合会岩槻センターにはじまり、パルシステム埼玉の蕨、三芳、白岡の各センター、そして老人ホームのオリーブです。蕨センター以外の各施設にプラントが導入されてから約一七年が経ち始めています。(※パルシステム埼玉・蕨センターは二〇一二年にセンター建て替えに合わせてリニューアル)
 各プラントの設備は時期的に、機械や配管に補修や交換が必要となってきています。定期点検は三ヶ月に一度おこなっていますが、ここのところ毎回どこかのプラントで配管や散気管の補修やエアーを送るブロアの交換をおこなっています。BMプラントの歴史を感じながらこの作業をしていますが、プラントは現在も元気に稼働を続けており、トイレの流し水として中水を再利用しています。その中水ですが、トイレへの再利用以外にも活用方法はあります。センター内の花壇や樹木への水やり、外回りの散水にも利用できるかと思います。是非、活用をしてもらいたいと願っています。協会と連携して活用促進に続けられるようなことを考えていきたいと思います。

 同じく定期点検で北海道・根釧地区の五農場、根釧みどりの会のメンバーですが、各農場の飲水改善プラントの点検をおこないました。別海町の岩崎牧場、標茶町の渡辺牧場、中標津町の三友牧場、別海町の川畑牧場、そして厚岸町の石澤牧場です。この五つの飲水改善プラントのうち石澤牧場以外は、三tのステンレスタンク×三基で構成されています。一槽目はカルキ抜きのため、ニ槽目にリアクター塔を投入しています。牛の飲水量は一日五〇Lで計算、×頭数×二日滞留(二倍以上の量)で容量を計算します。ほとんどの農場が四〇頭〜五〇頭なので、五〇L×五〇頭×二=五tとなっています。石澤牧場は一槽が二t×二槽の土木槽です。
 本紙AQUAではこれまでにも根釧みどりの会のメンバーが関っている「マイペース酪農」について、記事に取り上げてきました。マイペース酪農は三友牧場の三友盛行さんが提唱し、基本は放牧、化学肥料や濃厚飼料などの外部資源の投入を抑え、土、草、牛の関係・循環を整えることを重視しています。マイペースとは、のんびり酪農をするという意味ではありません。規模拡大、濃厚飼料多給による高泌乳路線への反省に基づいているとのこと。一頭当たりの年間平均乳量は少ないが、飼料費、肥料費など、経営コストが低く、牛も平均五産と長生きするため、所得率は高くなります。労働時間も一日六時間程度と少なく抑え、小さくてもゆとりのある経営を実現している。糞尿処理などの問題で環境を汚染していくアメリカ型のメガ酪農に対抗する形でもあります。牛一頭につき草地一ヘクタールのバランスが良いとして、牛が増えすぎると、粗飼料が足りなくなって濃厚飼料に依存する酪農に陥り、飼料費がかさむうえに牛が病気になりやすい。規模は経産牛四〇〜五〇頭、牧草地四〇〜五〇ヘクタールが理想。これを超えると労働過剰になり、飼養管理がおろそかになってしまう。糞用処理などの問題で環境を汚染していくアメリカ型のメガ酪農に対抗する形になるが、頭数を無理やり増やすと、糞尿処理施設等への過大投資が不可欠となり、それらの経営が規模拡大により苦しくなっていく現状がほとんどとのこと。
     (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)
※参考図書「マイペース酪農〜風土に生かされた適正規模の実現」三友盛行著(農文協)

「根釧みどりの会」訪問 追記

 昨年の九月に根釧みどりの会の総会に参加させてもらいました。一通りの議事の後に、メンバーの方々が国やホクレンの酪農に関る政策や動向、酪農の技術そのもの、仲間の状況、そして環境問題に関して意見や情報を交換されており、とても勉強になりました。三友牧場の三友さんは「ずっとマイペースを貫きながら仲間でやってきた。変人扱いされることも多々あったけど、いまでは周りから見直されている部分もあるが、まだまだ地域ではメガ酪農が主流。畜舎と付帯設備や尿処理施設、そして餌など、ほぼ大企業の独占で、大がかりなものには補助金をたっぷりつけて推奨している。環境のことを本当に考えているのだろうか、とてもそうは思えない。」
 また二年前に三友農場を訪問した際に、BMW技術を導入してからどうですか、と尋ねたことがあり、三友さんは「もちろん乳量が増えること、乳母炎などへの効果に期待もある。でもBMの考え方や環境へのアプローチを聞いて、自分達の目指すところにBMW技術を入れて当然だろうと思っている。」と浅草出身のベランメイ調交じりで答えられていたのがとても印象的でした。知らない方がまだまだ多いと思いますが、根釧地区の環境問題は深刻と言っても過言ではないかと思います。大きな力に対抗して、マイペース酪農の信念を貫くメンバーの方々に感服しています。三友農場の放牧地で落ちている糞をひとつひとつ割って見せてもらいました。これで牛の健康状態がわかると言いながら、糞が土に還る過程において、微生物はもちろんですが、ハエや糞ころがしなどの様々な虫が順を追って関っていることを教えてもらいました。
(報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年05月01日19:46

【AQUA265号】「第24回BMW技術全国交流会」「第4回アジアBM連帯」の開催日時が決定!

「第24回BMW技術全国交流会」「第4回アジアBM連帯」に向って第2回実行委員会が行われ、開催日時と概要が決定しました!


 2月20日の第1回に引き続き、4月1日に東京・千代田区の東京しごとセンター講堂にて、第2回の実行委員会がおこなわれました。この日は実行委員のメンバーも固まり、具体的な日程、場所などの概要を正式に決定しました。
 今回の実行委員はBMW技術協会若手幹事会のメンバーを中心に、米沢郷牧場グループ、和郷園、やまなし自然塾、謙信の郷、NPO法人APLA、みやぎBM、パルシステム連合会、らでぃっしゅぼーや、ATJ、匠集団そらなどのメンバーで構成されています。
 実行委員長には協会常任理事でアジアBM連帯会長の生田喜和氏と、伊藤幸蔵BMW技術協会理事長、事務局長は協会常任理事で(農)和郷園の木内克則氏。木内氏は若手幹事会の座長でもあります。
 委員会当日は候補に挙げられた数カ所の会場を細部に至るまでチェックしながら厳選し、最後は多数決で会場を決定しました。東京での開催と言うことで、予算やスケジュールが合わず例年より決定が遅れましたが、会場は都内江東区東陽町の「ホテルイースト21」に決定しました。
 また、交流会全体の大きな流れ・目的についての話し合いも第1回に引き続きおこないました。アジアBM連帯ということを意識し、BM的「グローバル」を追求し、日本、アジア、世界に目を向けてBMW技術の持つ技術と理念を発信していく。お互いの国の文化や農業など、できるだけわかり合えるようにしていきたい。日本の諸問題もそうですが、アジア各国の諸問題などについてお互いに協議できる場を作りたい、など、活発な意見が多く出されました。
 テーマについては、次回6月に行われる実行委員会までに熟考し、再度話し合い決定する予定です。アジアの仲間と共に、意義のある、内容の濃い交流会になることを期待します。 (報告:交流会実行委員会)

開催日時:
2014年11月20日(木)13時半〜17時
11月21日(金) 9時〜15時
11月22日(土)オプション視察
(予定候補地:埼玉、千葉、山梨、茨城)
※前日21日に各地に移動して各視察先で懇親会、翌日に視察を行う予定です。

開催場所:
「ホテルイースト21」
 最寄り駅:
 東京メトロ東西線・
東陽町駅(東京都江東区)
 (http://www.hotel- east21.co.jp)

Author 事務局 : 2014年05月01日19:43

 
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