【AQUA272号】「新潟BM自然塾」設立後、第一回目の学習会が開催

 一〇月七日(火)一三時半から、新潟県阿賀野市のJAささかみにて、今年四月に設立された新潟BM自然塾の第一回学習会が開催されました。謙信の郷、JAささかみ、食農ネットささかみ、新潟県総合生協から二四名が参加しました。
 テーマは「俺の米作り」。謙信の郷二名、JAささかみ二名、新潟県総合生協の生産者一名、山形県ファーマーズクラブ赤とんぼの生産者として、伊藤幸蔵BMW技術協会理事長、の合わせて六名から「俺の米作り」についての発表がありました。学習会の最後にはそれぞれが生産した新米を、同じ条件で炊き上げての品評会をおこないました。
 学習会後は参加者のほとんどが懇親会にも参加し、稲作談義が遅くまで繰り広げられました。詳細については次号にて報告をします。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2014年12月01日12:11

【AQUA272号】二月の関東甲信大雪害から、その2

 今年の二月十四日から一五日にかけて、関東甲信地方に記録的な大雪が降り、山梨県、千葉県、埼玉県の協会会員も大きな被害を受けました。BMW技術協会では、全国の会員の皆様に雪害義援金を呼び掛け、皆様の温かいご協力により二、〇七五、〇〇〇円の義援金が集まりました。これらは九つの協会会員に方々へお渡ししました。
 先月の本紙に引き続き、雪害義援金をお渡しした被災会員の方からの御礼のお手紙をご紹介します。

山梨県甲州市〜向山農園
 やまなし自然塾 向山一男・範子
 過日は二月の雪害に際して、丁寧なお見舞いを頂き誠にありがとうございました。我が家では、ハウス面積四〇アールのすべてのハウスが倒壊し(目の前で潰れていくところを見ました)、ぶどう棚も壊れ、ぶどうの木も半分以上が折れたり、裂けたりしました。悲惨な状況を目前に心が折れる思いでした。「悪夢を見ているのだろう。」とそんな気持ちにさえなりました。
 災害によるダメージは大きいものでしたが、そのような中でも私たち家族は皆様や自然塾の仲間、ボランティアの心温まる励ましやお見舞いに勇気づけられ復旧に向けて頑張ってやってきました。ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。畑や棚、ハウスの瓦礫を片付けたあとに新しい苗を植え、路地ぶどうの農作業から出荷、新設ハウス手続き等々、まだやるべきことは山積みしていますが、ともかく前向きに取り組んで行こうと思います。
 畑が以前のようになるまで何年かかるのかわかりませんが、頑張っていこうと思います。遅くなりましたが、御礼かたがた、ご報告申し上げます。末筆ながら、皆様のますますのご健康をお祈り申し上げます。

山梨県甲州市〜宿沢農園
やまなし自然塾 宿沢明
 今年の二月に降った大雪の被害で、私たちの地域では一m三〇cmくらいの積雪により、私のブドウハウスの施設も多大な被害を受け、私にとっても人生初めての経験でした。私のハウスは二〇アール、一三アール、七アールのぶどうのハウスが全壊、三棟のハウス全部が甚大な被害を受けました。しばらくは気落ちして、何の作業から始めてよいのか途方に暮れる一方でした。
 しかし、地元の友人、また無尽仲間他、特にやまなし自然塾の皆様方、らでぃっしゅぼーやの職員の方など大勢の皆様がまだ一mくらい残る雪や、大変寒い環境の中での数日間に渡り、ハウスビニールの撤去、及びブドウ園の復旧作業等に尽力していただきました。
 五月下旬、周りの山々が新緑につつまれる頃には、倒壊したハウスの撤去、及びブドウ園の再建はすべて終了しました。残ったブドウの木をおこし、整理作業を行い、八月下旬からピオーネの収穫も始まりました。収量は以前の一〇%位ですが、来年に向けて、元気に農作業に励んでおります。現在、ハウスの再建に向けて、農協指導課と国と県に提出するハウスの再建計画書を作成中です。
 今回は皆様方の気持ちを忘れずに、来年、再来年と前向きな気持ちで農作業に励んで行きたいと思います。私も今度の自然災害を経験し、原点に戻り、己の力で自ら原理を*すをモットーとして、再度、農業にチャレンジしたいと思います。最後に再度、今回の義援金に対し、心より御礼申し上げます。
山梨県山梨市〜萩原フルーツ農園
やまなし自然塾    萩原貴司
 この度は本年二月一四日に生じた大雪によるハウス雪害のため、多額の義援金を賜りまして誠にありがとうございました。
 当園では、雨よけハウスという、天井のみのビニールハウスを所有しておりますが、冬季はビニールを収納しておく為、大雪が乗らず前回の被害からは逃れることができました。しかし、構造的に脆弱な部分やビニールを収納しきれない部分などに雪が積もり、その重みでパイプが折れ曲がってしまい、広範囲に渡って天井開閉ができなくなってしまいました。歪んだ部分は、スタッフ総出で油圧ジャッキを用いて補修を行ったのですが、その歪みは完全に補正することができず、全体的な強度等も考慮すると、歪んだ部分を取り除き、新材を購入して補修を行う必要があると判断しました。
 完全に修復するには多大な手間と多額の補修費用が生じます。現在、補修の手続きを行っておりますが、ハウス建設業者は過受注により人手が足りず、資材のパイプも生産が間に合わない状況との事で、当園のハウス補修は今年度中に着手できるかどうか、先行き不透明な状況です。
 山梨県は今回の未曽有の大雪により多大な被害を受けました。大雪に対する危機管理意識が希薄だった事、山々に囲まれているため交通網が遮断され、陸の孤島となってしまったことなどにより、発災後は食料品が店から消え、慣れない雪かきや雪の中での生活により、不安と疲労が県内に広がっておりました。そのような時、私や、やまなし自然塾の会員はBMW技術協会会員の皆様から、お電話やメール、SNSなどを通じて多くの励ましのお言葉を頂戴いたしました。そのお言葉は、他の何事にも代え難く、とても暖かく、心に勇気と感動を与えてくれました。これはBMW技術協会の歴史と共に築きあげられてきた、人と人との絆あってのものだと言うことを強く感じ、BMW技術協会の存在がとても頼もしく誇らしく感じました。
 やまなし自然塾では、ハウスの全壊を受けた生産者もおります。山梨県内や他県でも、農業を続けられない程の被害を受けられた方もいらっしゃいます。しかし負けてはいられません。農業者は常に自然に対し畏敬畏怖の念を持った上で、何事にも負けない強い力と心で邁進していく必要があるのだと感じ、私どもも決意新たに頑張っていく所存です。皆様からの義援金は、ハウスの修復に使わせていただきます。
 末筆ではありますが、義援金をおよせくださいました、伊藤幸蔵理事長をはじめとするBMW技術協会会員の皆様のご健勝をお祈りいたしますとともに、深く感謝の意を申し上げお礼の言葉とさせていただきます。

Author 事務局 : 2014年12月01日12:10

【AQUA272号】「アジアから共に未来へ」をテーマに「第4回アジアBMW技術交流会」が開催されます 

第四回アジアBMW技術交流会
第二四回BMW技術全国交流会
第一一回韓国BM交流会

 一一月二〇日〜二一日、第四回アジアBMW技術交流会が開催となります。「アジアから共に未来へ〜地域に根差し、技術と文化を守り育てる〜」をテーマに、日本、韓国、中国、フィリピン、インドネシア、タイからBMの仲間が一同に集まります。
 今年のアジアBMW技術交流会は、全国交流会と韓国BM交流会の同時開催と言うことで、東京・台場の国際交流会館にて開催します。元韓国農林長官の金成勲(キム・ソンフン)氏と岡山大学地球物質科学研究センター准教授の奥地拓生氏の基調講演をはじめ、日本や韓国、アジア各国でのBMW技術の取り組み、生物活性水を使用した実験成果など一〇名の発表を予定しています。アジアには日本を含め、二五〇カ所以上のBMW技術プラントがあります。日本で生まれたこの技術がアジアの仲間にどのように共有されているのかとても楽しみです。
 アジアBMW技術交流会は二〇〇二年の韓国で第一回を開催、以後四年に一度、日本、韓国と開催を経てきました。BMW技術をベースにした農業や暮らしの中で共に学び、交流を深め、言語や文化は違っても、同じ目的に向って進んできました。その成果は今回の交流会で充分に感じることができるかと思います。そして未来へ、共に力を合わせ「夢と希望」、「思い」を持って、これからもあきらめずに進んでいきたいと願っています。
   (BMW技術協会事務局長 秋山澄兄)

□基調報告「BMW技術協会活動報告」
     BMW技術協会理事長 伊藤幸蔵
 今回の第四回アジアBMW技術交流会では、これから地域を担う人々の技術向上と理念の両立、そして経済、真の豊かさを日本をはじめ、アジアの仲間たちと共に考え、次世代につなげていきたい。日本のBMW技術協会が法人化して約三年が過ぎ、これまで「次世代への継承〜未来の創造」、「技術は理念と両輪」を二つのキーポイントとして活動をしてきた。BMW技術基礎セミナー、全国、アジア各地の現場で開催してきた学習会や全国プラント巡回によって、BMW技術の基礎を繰り返し学ぶことをおこなってきた。それと共に、若手を中心に生物活性水を利用した実験をはじめ、独自性溢れる報告、レベルの高いデータなどが集まってきている。二〇一一年の東日本大震災、それ以前のリーマンショックから引き続き、TPP、遺伝子組換の問題、放射能汚染や汚染地域への帰還の問題を含め、世界を一握りの人間が支配できる構造への計画が着々と進んでいる。その中で、私たちは決してあきらめることなく、日本全国、アジアの仲間と共に歩んでいかなくてはならない。BMW技術協会として今後は、「地域をつくり、地域と地域をつなぐネットワークをつくる」、「BMW技術の普及の見直し」、「生物活性水を科学する〜技術の深化」の三つのキーポイントをテーマとして進んでいく。

□基調講演「韓国親環境農業の
   持続可能な発展と政策方向」
  元韓国農林長官 金成勲(キム・ソンフン)
 序論として、「アジアの農業は伝統的に倫理的であり、生態的な生き方として、生命を尊重し、そのものに内在された価値や文化を培養し共有する。全地球的にいえば、小農、有機農、家族農の『農夫』は、地球、土、水、空、生命の多様性を守る保存者あり、偉大な伝統と文化の保全者である。」
 一九九八年の施行された親環境農業政策について、韓国の農業の歴史、世界の農業、食糧の問題などと合わせて、農業が未来に在るべき姿を問う。その他、韓国FTAの現状についてなど。

□基調講演「地球の歴史、
そして岩石と水とミネラルの循環について」
岡山大学地球物質科学研究センター准教授 奥地拓生
 BMW技術(Bは微生物・Mは鉱物・Wは水を表す)を総合的に理解して、さらにこの技術の利用法を将来に向けて発展させていくために、地球とは、岩石とは、水とは、そして鉱物(ミネラル)とは何かを、BMW技術協会会員の皆様に説明してきた。その一環として、協会会員が生活して農畜産物を生産している日本各地のいくつかの地域について、それぞれを代表する岩石とミネラルを観察するための実地調査を行ってきた(表参照)。この調査は、最近は地域の会員の皆さんと相談して行く場所を企画立案しており、岩石とミネラルについて実感を伴った理解ができる場として、多少の役割を果たすようになってきたと考えている。特に、この調査を続けてきたことで見えてきた事実として、日本列島を形成する岩石とミネラルが実に多様であること、およびこの多様性が日本列島のどの地域に行っても必ず見られる(普遍的である)ことが挙げられる。このような多様性は、どの地域においても、岩石の組み合わせは異なるものの、参加者には実感されたところである。
 さて日本列島の岩石の多様性には、岩石の種類の多様性に加えて、その生成年代の多様性も含まれる。数億年前から現在までの年代につくられたいろいろな岩石が、日本列島のどの地域においても多種多様に重なり合って産出する。これらの岩石のそれぞれが、各地域の水系・生態系と密接に相互作用してミネラルを供給することで、非常に重層的な(または層の厚い)ミネラルの供給が、水系・生態系に対して実現されていると考えている。
 今年度のテーマにおいては、このような日本におけるミネラル循環の理解を少し越えた枠組みを新たにつくってゆくことが要請されている。まずは、韓国、フィリピン(ネグロス島、ルソン島)、インドネシア(ジャワ島東部)、タイ(バンコクから西南部)、中国(揚子江下流部)からの参加者の皆様に、地球とは、岩石とは、水とは、そしてミネラルとは何かを、BMW技術との関連を明確にしつつ、改めて説明することを試みたい。フィリピンとインドネシアでは、火山列島、地震列島の特徴は日本と共通である。韓国、中国、タイは火山・地震の活動度は日本より低いが、年代を遡ると、昔は日本と同様に活発な時期があった。その結果として、これらの地域における岩石の種類はやはり多様である。アジアにおけるBMW技術の発展を考えるときに、このような岩石の地域差をどのように位置づけることができるのか。その検討をふまえて、アジアにおける今後の課題をみてゆきたい。

□実践事例報告
①「中国におけるBMW技術普及活動」
㈱華和・みどり農場 戴海燕
 中国でのBMW技術導入は、二〇〇五年の上海・崇明島の国営農場に生物活性水プラントの設置がはじめ。農場で稲種の発芽、育 苗、水田管理に生物活性水の応用実験、生物活性水を生かした有機堆肥の作り方を実験してきた。二〇〇九年七月に上海市から約一〇〇km離れた、江蘇省 常熟市郊外で三ha土地を借り上げ、有畜複合循環型農場、『みどり農場』(中国語の漢字では『米豆犁農場』)を設立し、生物活性水プラントと飲水改善プラントを導入した。現在は、約四五〇〇羽の卵肉兼用鶏、二ha弱の畑で農薬・化学肥料を一切使わないで多品目の野菜を栽培。日本のBMW技術協会会員の指導もあり、現在、みどり農場の有畜複合循環型の農業スタイルは地元行政にも高く評価されてきている。

②「フィリピンにおける
  BMW技術普及とこれから」
フィリピン・「カネシゲファームルーラル
キャンパス」  アルフレッド・ボディオス
 現在、フィリピンには四カ所のBMW技術プラントが設置されている。マニラのあるルソン島北部に二ヵ所、マニラから約三〇〇km南に浮かぶ、さとうきび産業が盛んなネグロス島に二ヵ所。BMW技術がはじめて導入されたのは一九九六年頃だったが、数年後に設置された農場は閉鎖された。二〇〇九年にカネシゲファームの再興と共にバイオガスプラントを併設させて、生物活性水プラントを再稼働、BMW技術は次世代の農民の農業学校、農場の核となっている。今後は、フィリピンの農村地域が理解し、受け入れられる実現可能で現実的な戦略を立案し、BMW技術を軸とした循環型農業を見せていくための、明確で、シンプルで、再現可能で、現実的なモデル農場を農村地域の中につくるというビジョンを掲げ、フィリピンBMW技術協会の設立を目指している。

③「韓国BM協会活動報告」
  韓国BM技術協会 事務局長 金京姫
 韓国BM技術協会は二〇〇四年に設立され、二〇一三年に社団法人化。韓国のBMW技術は主に自治体、農協との連携で導入されているのが特徴的で、韓国政府の関心も高い。また、環境農業団体連合会、正農会、ハンサリム連合、全国親環境農業者連合会などとの交流、連携を深めている。㈱BM水コリアと連携してBMW技術の普及にあたり、現在は一六〇のBMW技術プラントが韓国に設置されている。
 協会活動として、研修会の開催、機関紙「BMストーリー」の発刊など。慶南大学国防産業地域革新センターと一緒に新型プラントの開発に成功し、新型プラント「PESーCGS」(一日生産一〇〇〜五〇〇リッター)を農家に普及していく。

④「生物活性水を使用した稲作実験報告」
 宮城BM技術協会
  大郷グリーンファーマーズ 西塚忠樹
 BMW技術協会米部会内の各団体の課題を調べたところ、育苗、高温対策、着色米などの問題点が共通していた。今年は共通の実験テーマを設け、まずは育苗時の問題解決を各団体の実験から模索することになった。生物活性水を使用した場合の発根への影響を実験し、定植後から稲の活着までの効果を検証する。 実験内容は、生物活性水使用を含む、数パターンの苗を使用し、定植時の苗の根を根元から切断し水に漬けこむ。その後、根の生育具合の経過観察を行い、根の生育具合を、長さ、重さなどで計測し、有意差を調査した。

⑤「有機、環境畜産」
  韓国ダンノモ農場 李 佳遠
 ダンノモ農場は韓国牛の生産農場。二〇〇四年に生物活性水・飲水改善プラントとBMW技術が導入された。農場内には焼肉レストラン、直売所などが併設され、農場内は公園のような作りになっている。生物活性水は飲水添加にはじまり、畜舎への散布、堆肥作りと徹底的に利用、この農場をモデルにBMW技術を導入する畜産農家も多い。今回はダンノモ農場のBMW技術による牛の生産、有機畜産と有機農業は循環式農業の掛けがねという観念から、有畜複合循環型農業の取り組みについての事例報告。

⑥「果樹栽培における
生物活性水のテスト使用と今後について」
大分県 アーム農園 判田 直也
 アーム農園は大分県日田市にある梨と桃の生産農家。梨は人工授粉の作業があり、開花期間一週間ほどで作業を終えなければならない、昼間気温が一五度以上の日でないと結実率は下がる、雨の日は刷毛が濡れるので授粉作業ができないなどの理由から、開花時期に労働時間が集中し、多くの臨時雇用や経費が必要との問題を抱えている。二〇一一年の福岡での第二一回BMW技術全国交流会にて、米沢郷牧場グループの横山裕一さんの実験成果発表をきっかけに、受粉に必要な花粉を持つ梨を混色させ、生物活性水を散布し、受粉作業の簡略化ができるかどうかの実験を三年間に渡って試みた結果報告。人工授粉無しの生物活性水のみ使用区が慣行の人工授粉区と同等以上の結果がでれば成功という目標を立て、時期に応じて、生物活性水を葉面散布や土壌潅注してきたが、結果はいかに。

⑦「生物活性水を用いて生産した
微細藻類バイオマスの施肥効果」
山梨大学大学院医学工学総合研究部  五味 直哉
 畜産廃棄物の処理が近年重要な環境課題となっているが、BMW技術はこの問題に対処しうる有用な技術である。我々は、BMW技術のさらなる有効活用を目的とし、生物活性水を培養液とし太陽光を光源として、単細胞緑藻の培養を行う微細藻類培養システムを開発している。このシステムは現在、山梨県内の黒富士農場と増富の湯で試験運用されており、得られた藻類バイオマスを養鶏飼料や肥料に使う循環型の畜産廃棄物有効利用を実現している。
 本研究では、微細藻類培養システムによって生産された藻類バイオマスの有用性を評価するため、これらを蔬菜類の液肥とした施肥試験を行った。施肥試験は山梨県北杜市の白州郷牧場、増富の湯と山梨大学内に設置したプランターにて行い、各種の作物に対する藻類バイオマスの効果を調べた。収穫物の収量を評価した試験ではチンゲンサイ、サニーレタス、ホウレンソウ、コマツナといった葉物野菜において藻類バイオマスの施肥により生長が促進される可能性が示唆された。ミニトマトでは藻類バイオマス施肥区において果実の重量が低くなったが糖度が有意に高くなるという結果が得られた。ナスでは活性水および藻類バイオマスによる施肥効果はみられなかった。
 なお、コマツナ、チンゲンサイ、サンチュを用いた発芽試験では、サンチュについては藻類バイオマス施肥区、生物活性水施肥区が高い発芽率を示す傾向があったが、チンゲンサイ、コマツナにおいては有意な差がみられなかった。根の伸長試験では、コマツナにおいて生物活性水を一〇倍に希釈して施肥した区がいずれの区とも有意に低い値を示した。これらの結果から、葉物野菜について、少なくとも生物活性水によって培養した藻類バイオマスには施肥障害がみられないが、高濃度の生物活性水には野菜種によっては施肥障害があることが示唆された。
 以上、実験から藻類バイオマスの施肥は作物種により有効である事がわかった。生物活性水および藻類バイオマスの施肥効果について今後も作物種や施肥濃度の観点から検証していく必要があるだろう。

⑧インドネシア・ATINA社におけるBMW技術
オルタートレードインドネシア ハリー・ユーリ
 オルタートレードインドネシア(ATINA)では、昔ながらの粗放養殖で育ったエビの冷凍加工工場に、二〇一三年にBMW技術排水処理プラントが導入された。工場の排水をBMW技術で処理し、処理水は工場内の池に全量放流し、池では食用の淡水魚を放している。また、同社は環境活動として、自然生態系の保全を社員、生産者と共におこなっている。ここでもBMW技術の理論を参考に様々な取り組みがおこなわれている。現在すでに始まっているが、エビの養殖池や田んぼでの処理水の利用をはじめ、エビの孵化場での生物活性水を利用した稚エビの生育実験に取り組んでいる。

⑨「親環境農業の技術的特性と発展課題
(BMW自然循環システムを中心に)」
韓国農水産大学教授 金種淑
 地球環境の悪化による気象異変、食糧生産の不安定、安全な食糧供給、環境汚染など、農業を取りまく条件の悪化で、親環境農業(日本でいう有機農業)の必要性は増大されている。一方、異常気象が続ければ続くほど病虫害の多発によって親環境農業の実践をもっと難しくしたりする。韓国の親環境農業は農業全体の約一〇%に至っており、一九九七年親環境農業育成法が制定された以後、育成政策が地域単位で活発に推進され、生産者の農民団体らが積極的に親環境農業を取り入れて実践して来た結果である。この数字はもっと増加することと予想されているが、親環境農業を実践しようとする農業人たちには、相変らず難しい農業として認識されている。その理由は親環境農業技術が確立されていない、技術の不安定さにある。今後はよりアップグレードされた農業に拡大発展しなければならないということで、これら問題点の根源的な解決なしには、親環境農業の拡大は難しい。親環境農業の原点で、技術的な検討と同時に現場の問題点を解決することのできる方案として、BMW生物活性水農法を中心に考察していく。

⑩「生物活性水を科学する」
 山梨大学大学院医工学総合研究部教授
  御園生 拓
 BMW技術による「生物活性水」には、微生物を活性化し、生物にとって「よい水」「よい土」を作る効果があるとされる。畜産における活用法として畜舎への散布、家畜への飲水供給等が挙げられ、畜舎における悪臭の抑制やハエ発生の減少、家畜の健康増進による病害対策の軽減や育成率の向上、ならびに生産物の高品質化が報告されている、しかし、そもそも「生物活性水」とは何か、またそれによる効果を生み出すメカニズム等についての科学的なアプローチは殆どなされていない。そこでわたし達は「生物活性水」の効果を合理的に説明するための第一歩として、生物活性水とはどのようなものなのかの分析を開始した。BMW技術による畜産排せつ物処理は、バイオリアクター(生物反応を行わせる容器)での好気性土壌バクテリアを用いた有機物分解反応である。排水・排せつ物等に含まれる有機物は、曝気槽におかれた岩石に付着して増殖する土壌腐植由来のバクテリアを始めとした好気性バクテリア群によって段階的に分解され、無機化されていく。有機物濃度(一般にBOD:生物化学的酸素要求量、COD:化学的酸素要求量で表される)が下がるにつれて有害な病原性バクテリアを含む従属栄養生物は減少し、最終的にはほとんど生物のいない、各種の無機成分と腐植物質等の難分解性有機物が残る環境になっていると考えられる。BMW第一段反応槽から最終段に至る処理水の化学的性質を調べることにより、この分解過程がどのように進むのかを知ることができる。一方、各地のBMプラントで作られた生物活性水について同様に化学的性質を調べ、それぞれのプラントの特性を明らかにしていくことにより、BMW技術において重要な地域性を評価することができる。また、多様な試料を分析することにより、逆に、「生物活性水」の持つ共通の特性である悪臭物質発生抑制効果や、あるいは家畜の腸内細菌叢の変化による健康増進効果をもたらす鍵となる物質を特定することができるかもしれない。
 今回は、生物活性水の化学的性質を調べることを目的とし、日本各地のBMプラントからの生物活性水について、pH、電気伝導度に加え、窒素、リンおよびカリウムを始めとした金属イオン濃度の測定を行う。さらに全有機炭素(TOC)を測定するとともに、根圏微生物叢に働きかけることで植物に生育促進効果を及ぼすとされる腐植酸の分析を試みる。

Author 事務局 : 2014年11月17日12:49

 
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