【AQUA251号】高知県「とさやま土づくりセンター」生物活性水プラント工事

 昨年(二〇一二年)一二月一七日〜二四日の八日間、高知県高知市土佐山にある(財)夢産地とさやま開発公社の土づくりセンターで生物活性水プラント増設工事を行いました。
 今回の工事は、土づくりセンターで製造されている堆肥の増産計画に伴うもので、生物活性水の生産量を増やすためのものです。ここにはすでに、一槽五t(ホーロータンク)×五槽(日量/五〇〇L)の生物活性水プラントが導入されています。増設工事を行ったプラントは既存のプラントと同じ容量のもので工事後には日量一tの生物活性水の生産が可能となります。昨年一一月に行われた第二二回BMW技術全国交流会の視察Aコースに参加された方はまだ骨組みだった同センターを見学されたことと思いますが、現在は二次発酵堆肥舎、一次発酵舎等の新建屋の増設工事も完了し、堆肥原料を撹拌する一次発酵撹拌機(基本システム設計を匠集団そらが受注)も納入され、後は生物活性水のできあがりを待つのみとなっています。
 工事はエア配管(ブロアから各槽の散気管へ空気を送るための配管)から始まりました。プラント建屋の張り(内側の柱など)やタンクの位置によって微妙な調整が必要となり、慎重に進められました。加えて、五槽目から一槽目に生物活性水を戻すライン、原水の給水ライン等を取り付け、各槽へ散気管を設置して行きます。また一〜三槽目までに軽石、三〜五槽目に花崗岩、四と五槽目に蛇紋岩を投入していきます。工事が始まってから四日目、一槽目に原水を入れ始めることができました。ここの原水は山の湧水ですが、タンクの水がいっぱいになるのに丸一日かかりました。
 五日目からは一槽目の培養調整が始まりました。原料は堆肥を使用しています。あとは約一週間ごとに第二槽へ、また同じ期間を経て次の槽へと移動させて培養を行っていきます。最終槽での培養が終わり、検査機関にて水質検査を行い、大腸菌と亜硝酸態窒素が検出されなければ生物活性水の完成となります。完成は検査結果含め、二月上旬の予定です。
 土佐山土づくりセンターの工事前の堆肥製造量は年間二五〇t、工事後は年間五〇〇tと約二倍の製造量となります。生物活性水は堆肥の発酵促進と水分調整、悪臭防止のために使用します。また、全国交流会をきっかけに生産農家への利用普及も積極的に進めて行く予定とのこと。堆肥センター等の詳細は次号以降のアクアにてお伝えします。
     (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2013年03月01日19:44

【AQUA251号】フィリピン「カネシゲファーム」「バイオガス発電実験」第一弾報告

 フィリピン・ネグロス島にあるカネシゲファームにてバイオガスを利用した発電実験が行われました。

 一二月一〇日〜一二日の三日間に渡り行われた実験は、山梨大学・帯広畜産大学、BMW技術協会、APLA、匠集団そらとの共同研究プロジェクトで,山梨大学生命環境学部の御園生拓教授と、北海道・帯広畜産大学(㈲十勝アグリワークス)エンジニアの青木賢二氏が中心となって行いました。ご存知の方も多いとは思いますが、カネシゲファームでは豚舎の糞尿排水をメタン発酵させてバイオガスを煮炊きなどの燃料として利用してきました。今回は小型のガスエンジンを持ち込んで、小規模発電の実験を試みたものです。①カネシゲファームのバイオガスで小型エンジンが回せるか、②エンジンによって発電できるのかというシンプルな目標をふたつ設定しました。
 ㈲十勝アグリワークス青木氏は、帯広畜産大学を始めとした大きなバイオガスプラントの管理等を担っている傍ら、バイオガスで稼働する内燃式のポータブルガスエンジンの開発をおこなっています。一昨年の夏(二〇一一年)に山梨大学で行われたエンジンの稼働テストで御園生先生を介して青木氏と出会い、カネシゲファームでの実験をお願いしてきました。エンジンの改良やその他の準備、現地への輸送などに時間を要しましたが、なんとか実験開始まで漕ぎつけることができました。このエンジンが日本の家庭用にも利用され、さらにフィリピンなどのアジアの小農民に適正(中間)技術として取り入れることができるようになることを目的としています。
 はじめに私達は海外で実験を行う厳しさに直面しました。今回、エンジンそのものは航空便にて輸送したのですが、渡航日の約四〇日前に船便でパーツの一部を送りました。通常は二五日〜三〇日で到着するはずの船便が二〜三日前にフィリピンを襲った台風のせいで届いていませんでした。青木さんはすぐに代替えのパーツで実験を試みることに頭を切り替え、現地で資材を調達し、簡易パーツを製作し実験へと望みました。届くはずの荷物は皮肉な事に私達が帰る日の夕方に届きました。
 実験は脱硫装置(注①)と水抜き装置(注②)の組み立て設置、エンジンとオルタネーター(注③)の設置から始めました。今回の発電は自動車の発電方法と同じやりかたで発電をさせます。エンジンを使って自動車用のオルタネーターを回し発電させ車用のバッテリーを介し、さらにインバーター(注④)を使って直流(一二V)から家庭用の交流(二二〇V、日本は一一〇V)に変換し電源を得ます。発電フロー図はバイオガスプラントから発電されるまでのものです。
 すべてのパーツが組み終わると、あらためてガス圧とメタン濃度を再度チェックします。ガス圧は一・二五ヘクトパスカル(通常の家庭用都市ガス圧は二ヘクトパスカル程度)、メタン濃度は約六五%。まずはエンジンを回すところからはじめました。実は届かなかった荷物の中にガス圧を調整するパーツがあったため、今回はそれを使えなかったので簡易ガスバックを使って、手動で微調整しながらガスを送り込みました。何度も何度もエンジンのスターターを引いて、エンジンの音を確認しながらガス圧を調整していきます。はじめてから約一〇分後にエンジンが回りました。目的の①は達成です。手伝ってくれたカネシゲファームのスタッフや私達、日本側のスタッフはハイタッチをしながら喜びました。ですが、喜んでいるのも束の間、一旦エンジンを止めて、今度はバッテリーにつなぎ発電できる状態にするとエンジンがすぐに止まってしまうようになってしまいしました。発電しようとすると何らかの負荷がエンジンにかかってしまい、エンストをおこしてしまうのです。またはじめから機材の連結から配線などの確認をはじめます。それでも同じことを繰り返してしまいます。原因を色々な方向から考えてみました。結果、エンジンとオルタネーターの容量バランスに問題があるようなことが一番考えられるのではないかということで時間切れとなってしまいました。ガソリンを使っていればこの容量バランスでも問題ないのではないかとのことでしたが、バイオガスを利用している以上、きちんとした計算は未知数なのです。オルタネーターに内蔵されているはずのチャージコントローラーが機能していない可能性も考えられたので、その後は現地のスタッフを中心にオルタネーターの容量などを小さくしてもらい、エンジンにかかる負荷を減らす方法で再度挑戦してみるということになりました。あらためてバイオガス発電の難しさを目の当たりにしました。同時に実験により技術そのものが向上していく難しさと楽しさを感じることができました。
 年明けになり、現地のアルフレッド・ボディオス氏(カネシゲファーム責任者)から朗報が入りました。チャージコントローラーを別に付け加えた上で小さなオルタネーターをつなげたところ、短時間ですが発電に成功したとのことでした。今後も引き続き実験を繰り返し、安定した発電ができるようになることを目指します。その後は、使用ガス量に対する発電量などの関係性を検証し、効率のよい発電システムにしていく予定です。
   (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

◇脱硫装置(注①)
メタンガスからエンジンに悪影響を与える硫化水素を取り除く装置。ガスの通り道に筒状の装置を設け、中に鉄化合物を入れて硫化鉄にして除去する。
◇水抜き装置(注②)
メタン発酵槽内は湿度ほぼ一〇〇%で、ガスにも水分が多く含まれる。脱硫装置の保護と、エンジンの安定運転のためにも水分を極力除去する必要がある。
◇オルタネーター(注③)
発電機の一種で、エンジンなどから伝達される機械的運動エネルギーを電気エネルギーへと変換する装置。今回は車用のものを使用。
◇インバーター(注④)
直流から交流に変換する電源回路を持つ電力変換装置。今回は一二Vの直流電気をフィリピンの家庭用交流二二〇Vへ変換する際に使用。

Author 事務局 : 2013年03月01日19:42

【AQUA251号】みやぎBM技術協会にてBMW技術基礎セミナーを開催

震災からの復興に向けて生物活性水プラントを導入予定

宮城BM技術協会 会長 西塚忠元

 一月二二日(火)、みやぎBM技術協会では、会員とあいコープみやぎの若手生産者、そしてあいコープみやぎの職員と理事を対象に、仙台市のあいコープみやぎ本部を会場にBMW技術基礎セミナーを開催しました。講師には、BMW技術協会の伊藤幸蔵理事長にお願いし、二時間の講演を頂きました。その後、大郷みどり会、七郷みつば会など各生産者が抱える課題と今年の目標を発表して討論し、伊藤理事長はじめ、他の生産者よりアドバイスを受けました。参加人数は生産者二一名、生協役職員一〇名、生協援農グループ六名、計三七名の参加、BMW技術協会の秋山澄兄事務局長も参加され、新年早々から熱気あふれる研修会になりました。
 みやぎBM技術協会では、生産者をはじめ生協の役職員も世代交代が進み、若手メンバーが多くなってきました。一昨年の東日本大震災以降、プラントの停止や復旧作業、そして放射能測定等で、研修会等ができず技術の継承が心配でした。まだまだ復興への道は遠い状況ですが、幸いなことにみやぎBM技術協会の会員は復旧のめどがようやく立ち始めた部分もあり、今後の復興に向って皆で頑張って行こうという意志のもと、昨年来、若手生産者を中心に農法研究会をはじめ、現地検討会等を開催するなどして、少しづつ活動を続けてきました。さらに昨年の六月には県北にある大崎市の日向養豚に生物活性水プラントが設置され、稼働が開始されました。今年は震災による津波の被害が大きかった七郷みつば会に生物活性水プラントを導入(移設)する予定です。この様な状況の中でBMW技術そのものを単なる生産物の増収技術(資材)として考える傾向もあり、基礎(技術と理念、目的)からもう一度学べる機会を設けたいと考えていました。ちょうど昨年の全国交流会に参加し、伊藤理事長の基調報告を拝聴しました。是非、再度、地元でも講演して頂き、全国交流会に参加できなかった会員や他の人達にもっと理解を広めていきたいと思いました。
 講演はBMW技術の基本的な考え方や歴史、生物活性水の特徴と機能、そして活用事例などのお話しでした。参加者からは多くの質問がありました。畜産農家からは尿系生物活性水の場合の注意点や生物活性水のできあがりの基準について。耕種農家から、これからプラント導入する七郷みつば会では津波被害からの復興事業で始める、五〇aのトマト栽培施設の生物活性水利用方法等について質問がありました。
 みやぎBM技術協会とあいコープみやぎでは、今年より県内に設置された三つのプラント(①大郷グリーンファーマーズ②日向養豚③七郷みつば会)を核とし、耕種農家の生物活性水の有効利用や耕畜連携の発展、また大きな目標となるネオニコチノイド系の農薬をはじめとした農薬削減の取り組み等に、幅広い活用ができるように期待をしています。宮城では県内産地が定期的に研修会を開いており、今後とも交流を深めながら学習し、お互いに情報を交換し、BMW技術の活用を計っていきたいと考えています。

みやぎBMW技術協会学習会 追記
 昨年(二〇一二年)の一月にやまなし自然塾の方々とみやぎBM技術協会を訪問しました。津波の大きな被害を受けた仙台市若林区荒浜地区にある七郷みつば会の皆さんのところへも訪問しましたが、未だほとんど作物を生産できない状況でした。その他のメンバーの方々からも、復旧はしてきたものの、復興へはまだ遠いといった印象を受けました。あれから一年が経ち、今一度、BMW技術を基礎から学習し、継承していくという西塚会長とあいコープみやぎ・小野瀬理事長の「想い」も含め、学習会に参加された生産者、生協職員や組合員の復興へ向けての強い意志と目標をもって進んで行くんだという気持ちが伝わってきました。
    (BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年03月01日19:25

 
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