【AQUA253号】千葉県「北見畜産」

 三月二〇日に千葉県市原市の北見畜産を訪問し、プラントの点検と充填材の交換を行いました。
 北見畜産は昨年の一月に生物活性水プラントが設置されました。(五tタンク×六:日生産量五〇〇リットル)主な活用方法は繁殖豚舎の飲水への添加と豚舎洗浄に使用しています。生物活性水のEC(電気伝導率)は一・〇四、pHは八・四、亜硝酸態窒素は検出されず(匠集団そら・簡易検査による)、プラントも順調に稼働していました。
 代表の北見氏は「使い始めて一年経つが、微妙に臭いが変化してきたかなという感じはする。ただ近隣は畜産団地なのではっきりと自分の所だけが臭いがなくなってきたとは言い難いところが難しい。でも、場内に来てくれる人は臭いが軽減されたという人が多いし、感覚ではあるけど母豚も良くなってきていると思う。」とのこと。実際には昨年のプラント完成式の時に比べると堆肥舎含めて、臭いが軽減されていると着いてすぐに感じました。「今後も使い続けて、じっくり成果を出していくよ。」と北見氏は笑顔で話してくれました。
  (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年05月01日20:06

【AQUA253号】韓国BMW技術協会のメンバーが山梨県の黒富士農場と白州郷牧場を視察

 二月一八日〜二〇日の三日間、韓国BMW技術協会のメンバーが山梨県の黒富士農場と白州郷牧場を視察しました。

 訪れたメンバーは韓国忠清南道・洪城郡からプルム学校専攻部の元教員であったジョン・ミンチョル氏をはじめとした六名と、通訳として韓国BM水代表の河ジョンヒ氏です。ミンチョル先生のグループは昨年からプルム学校の卒業生と一緒に農場をつくっています。学校を卒業した若い人達は、農業をする意志があっても資本がなくて土地や農機械などの購入が不可能です。また、地域に対する情報が不足して周辺農家との協力体系を作ることが難しいという韓国の農村事情があります。これらを解決するために農業をしようとする若者達が一緒に農業を実践し、協同組合形式の生産体系を作ろうと始めたとの事です。
 現在六〜七人が、賃借したハウス(八〇〇坪)で葉物野菜を生産しています。来月には正式に協同組合として発足するとのこと。そして、その後は協業農業協同組合農場を拡張して行くのではなく、小さな農場に分化する方式を選択し、新しい協同組合農場を作って独立していく方式です。
 生産物は野菜と有精卵を生産する養鶏を行っていくとのこと。そこで、日本で先進的にBMW技術を活用している平飼い養鶏の現場を視察したいということで、今回の視察が実現しました。

 はじめに黒富士農場を視察。代表の向山茂徳氏(BMW技術協会常任理事)が農場の概要や取り組みなどを話され、その後、堆肥センターや発酵飼料の生産ライン、GPセンターなどを視察しました。発酵飼料の生産ラインでは、ひとつひとつの材料の種類と効果などの質問が相次ぎ、発酵飼料の重要性と同時に、あらためてとうもろこしなどを輸入に頼らなければならいない現状にため息もでました。帰り道の途中、黒富士農場の経営する直売所「たまご村」を視察して白州郷牧場へ向いました。

 白州郷牧場に着くと、たまごかけご飯の食堂&直売所「おっぽに亭こっこ」にて昼食をとり、その後、事業部マネージャーの内藤光氏の案内でサンチュなどが栽培されているハウス、鶏舎、雛舎、保冷保管庫、発酵飼料の生産現場などを視察しました。ハウスでの無加温での栽培、鶏舎での飼育方法などに質問が集中しました。
 その後、同牧場の研修センター内にある加工場へ。見田由布子氏から麹、味噌作りなどの説明があり、試食もさせていただきました。
 この日の夜は白州郷牧場にて親睦を深め、翌日、一人を残して帰国。残った一人のメンバーはヤン・ホングァン氏で、新しい農場の農場長をしています。ヤン氏は約二週間(三月六日まで)、研修のために滞在しました。
   (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年05月01日20:05

【AQUA253号】「技術と理念の両輪」をテーマに第6回BMW技術基礎セミナー開催

米、野菜、果樹、畜産、生活の部門に分かれてBMW技術実験を計画

 第六回BMW技術基礎セミナーが三月一五〜一六日の二日間にわたり開催されました。
 会場は東京・市ヶ谷のTKPカンファレンスセンター会議室、参加人数は一日目が六一名、二日目は四七名、一日目終了後の懇親会には五二名が参加しました。参加団体は北海道のファーマーズクラブ雪月花から、ポークランドグループ、米沢郷牧場グループ、謙信の郷、和郷園、パルシステム、やまなし自然塾、らでぃっしゅぼーや、APLA、ATJ、大川村、夢産地とさやま開発公社、紅会、グリーンコープなどでした。


 今回の基礎セミナーのテーマは「技術と理念の両輪」。昨年の第二二回BMW技術全国交流会の伊藤理事長の基調報告において「BMW技術は技術に驕ることなく、技術と理念が両輪であることを再認識し、何を目的とし、どんな手段(技術)を選択するか、個々が自らの意思で考え、広い視野を持ち、各地域、組織でその『想い』を作っていかなくてはならない。」という提議がありました。そこで今回の基礎セミナーは「技術と理念の両輪」をテーマに、一日目は何を目的にこの技術運動が始まったのか、何を目的に多くの方々が関りを持つようになったのか、二〇年以上に渡るBMW技術の歴史を五人の諸先輩方の「語り」からその「思い」と「経験」をパネルディスカッション形式にてお聞きし、BMW技術運動とその理念を学びました。
 また、基調講演は韓国BM水・代表の河ジョンヒさんに来て頂き、BMW技術の普及が目ざましい韓国において、ご自身が普及をはじめたきっかけから今までの経験などのお話しを伺いました。二日目はBMW技術の基礎を学び、今年の全国交流会(新潟開催)の発表に向けて、生物活性水を使ってどんな実験をするか、またはできるのかということを若手の生産者を中心に米、野菜、果樹、畜産、生活の五つのグループに分かれて検討しました。

一日目 基調講演〜
パネルディスカッション◇基調講演 ㈱韓国BM水代表 河ジョンヒ
  (聞き手 秋山澄兄)
①BMW技術との出会い〜
 韓国カトリック教会神父の鄭(ジョン)氏(韓国BMW技術協会前会長)が一九九五年にけんぽく生協(現パルシステム神奈川ゆめコープ)との交流で見学した米沢郷牧場のBMW技術プラントを見て韓国にもこの技術を導入したいという思いから日本のBM技術協会(当時)との交流が始まった。一九九七年ジョン神父が韓国の農場に最初のBMW技術プラントを導入したのをきっかけに、日本語を話せるスタッフを捜していた。その時に韓国曉星女子大学日本文学科の学生であった河さんが選ばれた。河氏はその前の年に一年間、愛知県の愛知淑徳大学の国文学科に留学していた経験もあった。それが契機となり、山梨県白州郷牧場に研修のため滞在し、椎名盛男常任理事の指導を受け、技術を学び帰国。後に㈱そらインターナショナルコリアを立ち上げ、以後、韓国でのBMW技術の普及活動にあたっている。同社はプラントの設置をする会社で、約三年前に㈱韓国BM水(スー)という社名に変更し、体制も一新した。
②韓国での普及活動〜
 韓国での普及は、慶尚南道の洪城郡にあるプルム農学校や慶尚北道の氷川市にある山自然学校などに教育教材として導入されていった。その頃の韓国は、きちんとした検証がされていない技術、宗教団体のような交流をする技術と評価されていたが、その後、楊平郡での導入など多くの生産者が利用をはじめ、時間をかけながらも韓国全土で普及にあたっていた。現在はロビー活動をしないで農民団体や農家のみならず、行政からも認められるようになった技術と評価されるようになり、現在は韓国親環境農業(有機農業)の技術として認められ、楊平郡のみならず、各自治体や農協などが地域の軸となって普及をすすめるまでに至った。
③これからの展望など〜
 韓国BM水としてはBM活性水(生物活性水)プラントが行政の方に知られてきたが、これからも積極的に新しい技術を開発し、より使いやすいBMWプラントが設置できるように頑張りたい。また、韓国BMW技術協会は会長も代わり、事務局も形成された。協会とは仕事も分担し、協力しながら、今後もより多くの農家が恵まれるために、私利私欲を図らずに、より低い姿勢で一助としたい。

◇パネルディスカッション
 山本常任理事(パルシステム連合会理事長)がコーディネーターをつとめ、向山茂徳常任理事(黒富士農場代表)、豊下勝彦常任理事(ポークランドグル―プ代表)、生田喜和常任理事(生活クラブ大阪顧問)、宮﨑利明西日本BMW技術協会事務局長(グリーンコープ連合)の四名がパネラーとなりパネルディスカッションが行われました。
 四名のパネラーの方々にはあらかじめ、BMW技術との出会い、普及活動の歴史、技術の活用法、個人的なBM観、今後どのような形でBMW技術運動に貢献して行くか、などを題材にレジメを作成していただき、そのレジメに沿って一人ずつ話しを伺いました。その話を受ける形で、会場からの質問や意見(事前に配布してあった用紙に記載)を集め、それらに沿ってディスカッションが進められました。詳細に関しては、コーディネーターをつとめられた山本常任理事の総括を四ページに掲載します。また、この模様をまとめて小冊子を製作する予定です。
 参加者からは、「初期のBMW技術運動を担われた先輩から、運動の始まり、つながりに関して聞くことができてよかった。」、「自分でよく考えて行動すること。知識を高めること。受け身にならず能動的に動くこと。それは技術を手にして向上させることということが四人の方々の共通したメッセージと感じた」などの感想が寄せられました。
 パネルディスカッション終了後は、会場を移して懇親会になりました。

二日目 BMW技術基礎セミナー
〜分科会
 はじめに伊藤幸蔵理事長によるBMW技術基礎セミナーが行われました。BMW技術の概論と米沢郷牧場グループでの取り組みなどについての講演です。
 続いて参加者全員が、米、野菜、果樹、畜産、生活の五つのグループにわかれ、各グループでは生物活性水を使って、どのような実験をするのか、お互いの利用方法などの情報交換も踏まえて話し合いが進められました。テーマは、各生産の現場における課題が、BMW技術を活用して克服できるかを探るものです。今年一年でBMW技術を使った実験を行い、その実験結果は、来年開催予定の「第八回BMW技術基礎セミナー」にて発表されます。
 これまでも生物活性水を利用した多くの実験事例や発表がされてきています。今回の取り組みは、あらためて若手が自分たちで考えて実験を組み立て実践し、自分達の技術にしていくことが大きな目的のひとつです。過去に諸先輩方が行ってきた実験と同じことを繰り返すこともあるかと思いますが、「考えて実践する、実践して理解する」ことによりBMW技術の奥深さと楽しさを追求しようということです。

◇米部会 〜コーディネーター
  峯村正文理事(謙信の郷)
  伊藤幸蔵理事長(米沢郷牧場グループ)
 各産地での課題などをあげるとともに、今までBMW技術を利用してきた経験をふまえて、さらに生物活性水を効果的に使用するにはどうすればいいかなどが話し合われた。これまでも実験は行なってきて全国交流会でも発表してきたが、今度は四つの産地で同じ実験をして、効果を比べるなどの試みを行ってみる。

◇野菜部会 〜コーディネーター
  木内克則常任理事(和郷園)
 各生産者から課題を上げてもらった。しょうがの連作障害、苗の不揃い、発芽率など。これらの課題を少しでも克服する為に生物活性水を利用した実験を試みる。実験を行う生産者は六名。

◇果樹部会 〜コーディネーター
  横山裕一(米沢郷牧場グループ)
 四名の生産者のところで実験を行う。開花期間を揃え、花を長引かせることにより受粉交配率をあげることができるか。着色不良の解消や奇形の削減などが可能か。ジベレリン処理に利用し処理の省力化(薬剤の低減)を図れるかなどの検証。

◇畜産部会 〜コーディネーター
  向山洋平(やまなし自然塾)
 環境や規模の違いから、なかなか実験をすることが難しいと言う声もあったが、三つの実験に取り組む。
①米沢郷牧場(ブロイラー)
 飲水改善に生物活性水を添加しているが、まったくの沢水だけを飲ませる鶏を対照区として、鶏の腸内細菌(大腸菌や乳酸菌など)を調べる。また他社の一般ブロイラーとの比較も行う。
②黒富士農場
 鶏に直接、生物活性水を噴霧、飲水させているものと、そうでない対照区をもうけてその違いを探る。鶏の健康状態や卵への影響など。
③謙信の郷
 ホールクロップサイレージへの生物活性水の利用。対照区として乳酸菌との併用や使わないものなどをもうけて、発酵度合いの違いなどを調べる。

◇生活部門 コーディネーター
  秋山澄兄(BMW技術協会事務局長)
 豆腐工場からでるおからが再利用できずに困っている。現在は処理業者に処理を委託しているが、夏場は保管している間に臭いが発生してしまうので、臭いを抑えることができないか。
 おからを小ロッドずつバケツに入れ、BM菌体や米糠、ヨーグルトを使って実験を試みる。

 分科会の後は、五つの部門から、討議内容、実験の進め方などについての発表があり、各質疑応答を行いました。
 そして、やまなし自然塾の向山洋平氏による挨拶で基礎セミナーは閉会しました。
 BMW技術基基礎セミナーも今回で第六回を数えましたが、協会会員の生産者同士が、周辺の地域だけではなく全国の会員と話すことによって刺激を受け、基礎セミナー終了後、個々にメール等で情報を交換するなど、若手間のつながりがうまれてきました。
   (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)


第六回BMW技術基礎セミナーに
参加しての報告と感想(一日目)

  グリーンコープ連合 商品本部
  畜産部 谷口 雄亮

今回、初めてBMW技術基礎セミナーに参加しました。私はBMW技術と直接的な関わりがなく、知識もなかったため、事前に「自然の自浄作用を活かすBMW糞尿・廃水処理システム」(長崎浩著)という本を読み、「BMW技術とは、良質な土壌の中で働くバクテリア、ミネラル、水のシステムに着目し、そこから使用者が様々な工夫を行い創り出された一連の技術である」という漠然とした知識だけで参加することになりました。
 第六回BMW技術基礎セミナー一日目、BMW技術協会 伊藤幸蔵理事長の開会挨拶から始まり、韓国BM水 河ジョンヒ代表の講演「韓国でのBMW技術の普及について」を聞きました。韓国でBMW技術を広めようとした当初、BMW技術は農薬ではなく、高い効果のある『魔法の水』と誤って広がってしまったため、「肥料のように即効性がない」、「効果がすぐに出ない」等の理由でBMW技術をすぐに辞める人が多かったとのことでした。しかし、韓国BM水のみなさんがBMW技術に対する誇大した先入観を鎮め、改めてBMW技術とはどのような技術なのかを広めることに尽力されたことで、その後、韓国でもBMW技術の利用者が増えてきたとのことです。河代表が韓国で生物活性水を原液で使用したり、生物活性水を農薬や、他の微生物資材に混ぜて使用するなど様々な利用をされているなど新たな発見が多々ありました。私は、生物活性水を利用し青果を無農薬や有機栽培を行っていくものだと考えていました。しかし、生物活性水を農薬や微生物資材などと組み合わせて活用することによって、農薬の効果を高める役割もあることを知りました。
 次に、「私とBMW技術の関わりについて」を議題にコーディネーター山本伸司常任理事、パネラー向山茂徳常任理事、生田喜和常任理事、豊下勝彦常任理事、宮﨑利明西日本BMW技術協会事務局長の参加で、パネルディスカッションが開催されました。BMW技術は、「技術の提供が半分であり、もう半分は生産者が工夫することに意味がある。」という考え方があります。そのため、はじめは生物活性水を作り、鶏に飲ませたり、青果の土壌に散布したり、直接作物に散布したり、生産者が楽しみながらBMW技術を主体的に自ら試し考えることによって、今日まで発展してきました。BMW技術は、その時、その時代にあった考え方、取り組み方があるため、時代によっても生産者によっても多種多様な使い方が出来ることを学びました。
 BMW技術基礎セミナーに初めて参加させていただき、BMW技術が、畜産の農場環境の改善にとどまらず、耕作でも農場環境の改善、また、BMそら等によって一般家庭での生活改善にもつながる自然循環システムに素晴らしさを感じました。また、BMW技術は生産者の工夫によってまだまだ可能性を秘めたものであるということ、生物活性水は農場(プラント)ごとに違うため、必ずしも同じ効果が得られることはないためマニュアル化が難しいということを学びました。河ジョンヒ代表より、韓国で作物に生物活性水を原液で散布し、枯らしてしまったという事例の報告がありましたが、成功の事例だけでなく失敗の事例からも様々な視点からBMW技術の発展ができるものと思います。私は生産者ではないため、BMW技術の活用・実験する環境にはありませんが、生協の職員として、BMWプラントを導入している生産者に話(事例)を聞き、自身でも学び、BMW技術に対する視野を広げ、プラントを導入していない生産者にBMW技術の素晴らしさを語れるようになりたいと思いました。


第六回BMW技術基礎セミナーに
参加しての報告と感想(二日目)

 大川村 ふるさとむら公社  谷 真吾

 はじめてBMW技術基礎セミナーに参加させていただきありがとうございました。BMW技術の基礎、地域との関わり方などを学ぶことができました。
 最初の伊藤理事長の基礎講座ではBMW技術のシステムや、どのようにして生物活性水を作るかといった基礎を学びました。私は鶏舎の方で半年使っていたのですが、どんな効果が出ているのかもわからずに使用していたので、実際の効力を聞いてようやくもっと使ってみようという思いが湧いてきました。大川村では村内の生産者が、少しずつですが生物活性水を使ってもらえるようになってきました。生物活性水を使っているほとんどの生産者が「市販されている液肥とかよりも効果がある」と話してくれています。ただあまり効果を感じなかった方やBMW技術のことを知らない方もおられるので村内の生産者の皆さんに、もっとBMW技術のことを知ってもらわないといけないことが分かりました。
 分科会では、畜産部門に参加してBMW技術をいかにして活用していくかを重点的に話し合いました。全体の話としては、他の部門に比べて目に見えて効果が出ているのが分かりやすいという印象を受けました。特に消臭効果については、鶏、豚、牛ともに効果が有りそのほかのものにも応用しやすいと感じました。
 鶏のほうでは米沢郷牧場グループでブロイラーを飼育されている石川さん、諸橋さんに大川村の現状についてのアドバイスをいただき、とても有意義な時間を過ごせました。
 大川村にアドバイスを持ち帰り報告したのですが、あまりにも問題点がありすぎてどこから手を付けていいのやらという感じになりましたが、まずは鶏舎施設の改善からスタートしようということになりました。元々が水耕栽培を行っていた施設なので屋根が高く、冬場は標高八〇〇m近くに建物があるために結露が激しく床面がびちゃびちゃになってしまうので、ここから解決していくことになりました。具体的な解決策はまだ検討中ですが徐々に改善していこうという意見で一致しました。
 まだまだ問題はありますが、村内へ普及するとともに、はちきん地鶏の飼育にもBMW技術を積極的に使用して品質の向上や飼育環境の改善に利用していこうと考えております。


パネルディスカッション 〜 総括
「私とBMW技術との関わりについて」   
 BMW技術協会常任理事 山本 伸司

はじめに
 今回BMW技術を初期から研究し実践されてきた生産者二名と、それに関わる生協をリードしてきた二名から話を伺った。本来、一名あたり二時間は取るべきところを一五分にまとめてもらった。その後会場からの質問に応えながらディスカッションを行った。この進行を任された立場から報告をしたい。まずはそれぞれの発言要旨から紹介する。
 
パネリスト発言要旨
 向山茂徳山梨自然学研究所代表は、三三歳のときに養鶏場を設立しBMW技術と呼ばれる以前の技術と出会ったという。その原型のプラントを導入し試行錯誤を繰り返した。主に発酵飼料と堆肥作りに活かす。一九九〇年に株式会社山梨自然学研究所を設立し、翌年には土と水と食を考える「やまなし自然塾」の活動をスタートする。この自然塾の仲間たちを財産として有機農業と地域を豊かにする取り組みを今も進めている。特に強調されたのは技術の楽しさと、人とのネットワークがもたらす可能性の広がりである。現在は山梨大学と共同研究でBMW技術とクロレラ培養による飼料作り、肥料研究等と実験農場に取り組んでいる。

 生田喜和生活クラブ大阪顧問は、ATJ(オルター・トレード・ジャパン)とBMW技術の両方について、九州のグリーンコープ故・兼重専務から全国生協酒会議で紹介されたことがキッカケだったと述べられた。フィリピン民衆交易と国内産直での共通性は、技術にあるという。農薬・抗生物質・化学肥料などを使わない農畜産業を推進することは、地球環境を保全する行動でもある。これには、生産者と生活者ともに技術が求められる。また技術とは人格の表現でもある。BMW技術のさらなる普及を協会として継続的に取り組みたい。またご自身の引篭もり体験から仕事の無いことの辛さを語り、仕事の大切さを語られた。その仕事の意味とお客への技術提供のこだわり。何のために誰のために仕事をしているかを意識することで生きがいを見出せるという。

 豊下勝彦ポークランドグループ代表は、三三歳のときに農協の共済担当から養豚の経営責任者に抜擢された。秋田県小坂町でのJAの大規模養豚において、当初予定された糞尿処理システムの失敗を経て、公害の無い農場建設を一九九三年にJAから任された。そこで全国を視察研究し米沢郷牧場、常盤養鶏、綾町などのBMW技術と出会い、その資源循環思想に触れてこれを導入すると決意した。具体的には飲水改善、生物活性水の細霧、洗浄水活用、堆肥活用のほか、堆肥やおがくずなど地域の資源を活用した豚舎(バイオベッド豚舎)に使用している。今後はバイオベッド豚舎を拡大し有機農業の野菜、飼料米つくりを広げて循環型社会の建設に取り組んでいく。

 宮崎利明グリーンコープ連合担当(西日本BMW技術協会事務局長)は、一九九〇年に当時の故・兼重専務からBMW技術に関する三部作のビデオを見せられたのがキッカケだったと話す。生産者とともに山梨の黒冨士農場、白州郷牧場を視察するとともに、長崎の南有研とやまびこ会で導入を決定。そして養鶏、養豚農家に導入が進んだ。その後、紅会中村養豚場の生物活性水を供給する体制を構築したが、青果生産者への導入がなかなか進まず、昨年一二月にグリーンコープ連合の理事会でBMW技術を使う生産者を優先的に取り扱うことを決議した。この技術はあらゆる農法・農業技術と親和性があると考えており、農業を考える原点であるという。水とミネラル、そして微生物は生命の根幹であり、その相関を技術の基礎として組みたてることが重要である。農法の研究においては、酵母使用や堆肥、ミミズなどが多く語られているが、それがなぜ良いのか悪いのか、BMW技術はその評価に対する考えを深めることができる。

まとめ
 「BMW技術の先輩たちと話すと何を言っているか良く分からない」という声を聞く。じつは私もそうだった。禅問答を仕掛けられているようで、すごいことを言っているとは感じるのだが分からない。そういうストレスを感じてきた。だが、あらためて今回パネリストの話を聞いて腑に落ちた。良く分かった。そして感動した。まとめて聞くことが良かったのだと思う。

 既存の農業方法などは講習や本で勉強できる。植物の生理と栄養学。西洋科学的だ。栄養素の三元素を基礎に、不足するものを化学肥料などで施肥すれば育つ。実もなる。ウイルス、細菌、病害虫には殺菌剤や殺虫剤を散布し、その原因を取り除く。原因と結果がシンプルで分かりやすい。作業も効率的だ。農業技術が体系化され、農業資材も大量生産、大量消費にあわせて開発されている。これをJAなどの指導に従い生産することとなる。誰でもやれる。

 ところがBMW技術は違う。まず生物と水とミネラルの相関関係から考える。しかもバクテリアという見えない生物の関与を想定している。そしてそれはその地域固有の土や水や岩石との関係を抜きには考えられない。従って、基本原理は言葉で説明できるが、実際の場面ではそれぞれやってみないとわからない。これは全国どこでも一律に解説し適用できる農業技術と大きく異なっている。ある種、焼き物や伝統文化に似ているともいえる。基本形は言語化できるが、実際にマスターするには自分でやってみないとわからない。体得することで実現する。技術の考え方が異なる。

 日本の伝統芸能の世界では、弟子に教えない。家の掃除や片付けなど雑用をさせながら、弟子に芸能の世界への入り口を体感させる。そこから技能へと高める。それも自ら習得させる。師匠から盗むのだ。ここには弟子の心の問題と考え方や肉体の鍛錬が問題となっているのだが、それは言語化して教えない。本物の伝統文化とは、自ら考え鍛えそして師匠から学ぶという不可欠の教育課程がそびえる。真の農業技術もそれに似ていると思う。

 既存の農業技術は大量生産と低コストにより、ほぼ価格だけが問題となっている。その結果、本来の生命生産としての食べ物作りが軽んじられ、衰弱させられてきた。しかし農業こそ世界の貧困と飢餓を救い環境を守る守護神である。そこには生命の不思議な曼荼羅の世界があり、豊かな実りの世界がある。この生命の根幹である水とミネラルとバクテリアの世界をより多くの農業者が体感し、体得する技術の進化が求められている、これがパネリストたちの共通の願いであると思った。仲間たちの精進を望みたい。

Author 事務局 : 2013年05月01日19:56

 
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