【AQUA258号】中国地方と高知県の「BMWプラント」巡回点検報告

中国地方プラント巡回
 八月二十七日から二十九日の三日間で中国地方島根県、岡山県のプラントを生田常任理事、秋山事務局長と巡回点検をしてきました。

◆島根県斐川町 池田農場
 最初に島根県斐川町の池田農場を訪問し、家庭の雑排水を合併浄化槽の一次処理水を原料にした生物活性水施設プラントを点検しました。
 ホーロータンクを四基設置してあります。原料が一次処理水なので色は少し薄く、EC値を測定してみると〇・四mS/cmでした。亜硝酸態窒素は、合併浄化槽からの処理水では〇・一mg/Lと検出していたのが、第一槽では〇・〇〇五mg/Lとなり第二槽目からは検出しませんでした。生物活性水は濁りもなく状態は良好でした。生物活性水はトイレの流し水として再利用されています。
 生物活性水は、最終槽からオーバーフローして自宅前の田んぼに排水されます。池田さんから「自宅前の田んぼにモリアオガエルが戻ってきた。周りの田んぼでは見つからない。」とのことで、自然生態系が田んぼに帰ってきたのではないかということです。

◆岡山県真庭市蒜山高原
 蒜山酪農農業協同組合
 ジャージー牛で有名な蒜山高原にある酪農協で、組合員の牧場で生まれた子牛を買い取り、育成牧場で育成しています。また全国的にも珍しいジャージー牛の雄牛の肥育もしています。ミルクプラントではジャージー牛乳のほかヨーグルト、アイスクリームなどの加工製品も製造しており、併設されているレストランで味うことが出来ます。
 BMWプラントは、使わなくなったバンカーサイロを活用して土木槽とし、飲水改善施設と生物活性水施設が一体となっています。平成九年から稼働を始めています。
 生物活性水施設を点検すると、EC値が〇・二七mS/cmと低く色も薄くなっていたので担当の野尻さんへ堆肥の定期的な交換をお願いしました。
生物活性水は、育成牛舎に散布ラインがあり、凍結してしまう期間を除いた四月〜十月まで散布しています
 育成牧場では、体験学習としてジャージー牛の乳しぼりなどで年間九五〇〇人の子供たちが訪れるそうです。

◆高梁市川上町堆肥センター、
JA美星食肉加工場
 岡山県高梁市の㈱三美産業の妹尾相談役(協会理事)の案内で、川上町のきじまる堆肥センターに設置している生物活性水施設を点検しました。
 プラントは、ホーロータンク四基を据え付けています。生物活性水の原料はここで製造される牛糞が主体の原料「きじまる堆肥」を利用しています。毎週木曜日に堆肥を交換しており、EC値は〇・八四mS/cmとなっていました。堆肥を交換すると第一槽には泡立ちも多くなるそうです。タンク間の移送は、水中ポンプを利用しています。
 生物活性水は堆肥づくりの攪拌発酵槽へ毎週一・五トンを散布して使っています。堆肥の年間製造量は八百トンになっていますが、前﨑センター長は、「川上町でも畜産農家の減少により原料糞の入手が困難になっている。」と話されていました。堆肥は果樹農家や耕作農家が利用しており、生物活性水もブドウ栽培に利用している農家もいるとのことです。

◆JA美星食肉加工場 排水処理施設
 美星町にある食肉加工場(ハム・ソーセージ)に設置した排水処理施設を維持管理している三美産業の伊達専務さんに案内していただきました。
 原水槽、流量調整槽、曝気槽、沈澱槽、汚泥培養槽などがコンパクトにまとめられた施設で、曝気槽槽の活性汚泥の沈降性などを見せてもらいました。処理施設からは、臭気も無く処理水も良好でした。この施設から出る余剰汚泥は、他の排水処理施設の種汚泥として有効に活用してるそうです。
      (報告:匠集団そら 星加浩二)
高知県プラント巡回
 八月六日〜八日の三日間、高知県のBMWプラントの巡回を行いました。巡回には大川村役場の長瀬憲章氏も参加、匠集団そらの星加浩二氏も同行し三名で五つのプラントを訪問しました。

◆高岡郡津野町
 津野町は、高知県の中西部に位置し、四万十川の源流点があることで知られる町です。
 町の堆肥製造施設に生物活性水プラントがあります。五tのホーロータンクが五槽、堆肥の発酵促進、水分調整に利用されています。農家の利用は少なく、米茄子の生産者と米の生産者が少しだけ利用しているとのこと。堆肥は牛糞を原料に副資材としておがくずを利用して製造され、地域内の農家を中心に利用されているとのこと。
 昨年の高知での全国交流会で発表された豊田庄二さんの米茄子を栽培しているハウスを訪問、米茄子はちょうど切り戻しの時期を迎えていました。豊田さんは津野町の堆肥製造施設で製造された堆肥を一〇aあたり三t施用、生物活性水は潅水時に毎回五〇〇倍で使用しています。花つきの良さや木の太さなど、収量を含め生物活性水を利用していないところとは差が出ているとのことでした。

◆高岡郡四万十町(旧十和村)
 四万十町は高知県の西南部にあり、窪川、大正、十和の三つの町村が合併してできた町です。以前は二つの養豚場があり、飲水改善、生物活性水、簡易尿処理のプラントがありました。堆肥の製造も行われ、お茶栽培や米、ししとうなどの栽培に生物活性水とともに利用されてきました。
 ところが数年前に二つの養豚場の方が続けて亡くなられ養豚場は閉鎖となってしまいました。現在は、近隣の肥育牛農家の牛糞を原料に堆肥を製造、この堆肥を生物活性水の原料としてプラントを稼働しています。生物活性水の利用は全体的量としては少ないものの、一〇名ぐらいの農家の利用があります。
 ししとうやピーマン、菜の花などの栽培に利用されているとのことでした。生物活性水プラントは土木槽で一槽が五tで五槽、日生産量は五〇〇リットルです。

◆土佐郡大川村
 大川村は高知県北部にあり、一九七七年完成の早明浦ダムにより、村役場を含め旧村の大部分が水没し、ピーク時に約四千人いた人口は白滝鉱山の閉鎖とダム完成による集落の水没などがあり、二〇一二年現在の人口は四四四人、日本の離島以外の市町村の中で最も人口が少ない村になりました。
 大川村には「大川牛」と「はちきん地鶏」の二つのブランドを持っています。その両方の農場に飲水改善プラントと生物活性水プラントが設置されています。
 大川村ではBMW技術基礎学習会が開催されました。参加者は大川村、はちきん地鶏と大川牛の生産をおこなっている「むらびと本舗」の職員と大川村で生物活性水を利用している農家、とさやま開発公社の職員を合わせて八名でした。参加者の中には生物活性水を長年利用されている方もいて、あらためて基礎的な部分を学ぶことができて良かったという声もありました。
 学習会の後には各プラントの点検が行われました。プラントは順調に稼働していましたが、堆肥の完成度がいまひとつの状態で、なぜこうなってしまっているかも理解できていないようでした。製造されている堆肥は乾燥しすぎていて、充分発酵ができていない状態であるということと、水分調整含めて生物活性水をきちんと散布するようにとアドバイスをしました。
 生物活性水プラントは二施設ともに五tのホーロータンクが五槽、日生産量は五〇〇Lです。

◆高知市〜夢産地とさやま開発公社
 高知市の北部にある土佐山地区(旧土佐山村)は鏡川の源流であり、高知県におけるBMW技術の中心でもあります。夢産地とさやま開発公社は今年の四月より一般財団法人として再スタート、若手の職員も多く、有機の里を宣言したこれからの土佐山の地域づくりに無くてはならない組織です。
 土づくりセンターに導入された生物活性水プラントは昨年一二月に倍の規模に拡大し、五tのホーロータンク五槽が二つのラインがあり、日生産量は一tとなっています。堆肥製造ラインも拡張され、堆肥の製造も一・五倍になっているとのこと。生物活性水は主に堆肥製造ラインでの散布に利用されていますが、農家での利用がまだまだ少ないので、堆肥を含めて、利用促進していくかが当面の課題となっているとのことです。

◆高知農業高校
 高知市の東側に隣接する南国市にある県立高知農業高校には昨年、生物活性水プラントが設置されました。学校内で製造している堆肥の発酵促進と臭いの抑制に利用されています。プラント設置前は近隣住民からの苦情もあったようですが、いまはまったくないとのこと。プラントは二tのFRPタンクが四槽で日生産量は二〇〇リットルです。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年10月01日12:58

【AQUA258号】BMW技術全国交流会に向けて、新潟県で学習会を開催

 一一月に行われる、BMW技術全国交流会に向けて、八月一八〜一九日に現地岩石調査を含む、第二回BMW技術新潟学習会と第五回実行委員会が開催されました。
 学習会と現地調査は「阿賀野川流域の岩石と水とミネラルの循環」と題して、岡山大学の奥地拓生准教授を講師としてお迎えしました。

①現地岩石調査
 八月一八日の朝九時から一七時まで、新潟県阿賀野市の笹神地域を中心に現地岩石調査が行われました。全国交流会実行委員会のメンバーを中心に奥地氏を含む一〇名が参加、笹神(五頭山)の東側、福島県との境にある飯豊山系の山間にある内之倉ダムの花崗岩をはじめ、阿賀町津川での石灰岩、緑色凝灰岩(グリーンタフ)など、阿賀野川流域における岩石と地層、ミネラルの循環の解説をいただきました。

②学習会
 一九日は九時から一二時までJAささかみの二階大会議室で学習会が開催され、JAささかみの職員や地域の生産者の方など総勢約三〇名が参加しました。
 はじめに前日の現地調査を受け、奥地准教授による講義が行われました。フォッサマグナを流れる阿野川流域は、五頭山の九千万年前に形成された花崗岩、飯豊連峰の二千万年前の花崗岩、阿賀町津川の千五百万年前の緑色凝灰岩や笹神の凝灰岩(笹神丘陵魚岩)など、同じ流域に多様な岩石が集まっている。そしてそれは多様なミネラルの宝庫となり、豊かな水となり流れ、流域を潤している。
 「土から生き物へ、生き物から土へ」というミネラルの小循環があり、「地殻から岩石、岩石から海、海からまた地殻へ」というミネラルの大循環がある。BMW技術は自然生態系のバイオリアクター・システムをコンパクトに再現し、「生態系の水」「生態系の土」を作る、これは小循環を速めることができるということでもあるが、大循環の存在があるということを忘れずに、と結ばれ終了しました。
 次に伊藤幸蔵BMW技術協会理事長から「BMW技術の基礎」の講義が行われました。ささかみでは初めての基礎講座ということもあり、プラント担当者の方などを中心に熱心に講義を聞いていました。

③第五回実行委員会
 学習会終了後に五回目となる実行委員会が開催されました。開催案内を発送するにあたり、交流会、視察や懇親会などの細部の詰めや、交通アクセスなどの確認等が行われました。開催案内はすでに会員の皆様のお手元に届いていると思いますが、九月三〇日までにお申し込みをしていただきますよう、宜しくお願いいたします。
 (報告:BMW技術協会事務局・秋山澄兄)

「今回の現地調査で観察した
  阿賀野川流域の岩石」
  岡山大学准教授 奥地拓生

・花崗岩
 阿賀野川の水をはぐくむ岩石の代表である飯豊山系の花崗岩を、内の倉川のダム沿いに露出している岩壁を訪ねて観察した。花崗岩を割って観察することにより、数種類の鉱物の存在を確かめた。

・石灰岩、砂岩、泥岩、  チャート
 昔の太平洋上で海底に堆積したこれらの岩石を、阿賀野川沿いの小川にてまとめて観察した。そしてひとまわりに数億年の時間を要する、海から陸へのミネラルの循環の様子を知った。

・グリーンタフ
 今から一五〇〇万年前の日本海の誕生と拡大のときに起こった、活発な火山活動により、日本列島各地に厚く堆積した火山灰の地層がグリーンタフである。その典型的な産地として知られる津川町を訪問して、川沿いにあって明るい緑色に変色したグリーンタフ層の観察を行った。

Author 事務局 : 2013年10月01日12:56

【AQUA258号】2013年度「BMW技術協会全国理事会」が開催されました

2013年度「BMW技術協会全国理事会」が開催され、
活動方針、予算案、議案すべてが承認されました。

 七月一六日(火)に二〇一三年度BMW技術協会全国理事会が開催されました。全国理事会は一般社団法人法で言う社員総会にあたります。常任理事、全国理事一三名の出席(一九名の委任状)により、二〇一二年度の活動報告、決算報告、二〇一三年度の活動方針、予算案と四つの議案すべてが承認されました。
 また、常任理事は任期満了に伴い改選となり、前任からの引き続き一〇名と新しい常任理事が三名、一三名の就任が承認され、伊藤幸蔵理事長も継続しました。
  理事長 伊 藤 幸 蔵
  常任理事 向 山 茂 徳
生 田 喜 和
清 水  澄
豊 下 勝 彦
木 内 克 則
渋 澤 温 之(新任)
西 村 大 輔(新任)
渡 部 孝 之
佛 田 利 弘
石 澤 直 士
緒 方 大 助
浦   克 稔(新任)
 さらに新しく相談役を設置、山本伸司 前常任理事の就任が承認されました。

◆二〇一三年度の活動方針
 今、私達は激動の時代を歩んでいる状況にあります。東日本大震災からまだ遠い復興への道のり、福島第一原発事故がもたらした様々な実害は深い爪痕を残すどころか、原発の再稼働によってさらに塩を塗りたくるというようなことになっています。新しい政権に変わり、半ば強引とも感じとれる経済政策やTPP加盟の問題、揺れ動く国際社会の問題をあわせて考えれば、まさに世界全体の未来が不透明な状態に憤りを感じてしまいます。
 しかしBMW技術協会は、このような時だからこそ諦めることなく、持続可能な社会と環境、地域、そして農業を守っていくために、皆で力を合わせて、行動を共にしていきます。BMW技術は自然浄化作用の仕組み(循環系:物質循環)を人工的に再現する技術です。私たちはこの技術を手に、地球生態系を理解するとともに、地球環境保全型の農業、暮らし、地域社会づくりを皆で目指します。

二つのキーポイント
①「次世代への継承〜未来の創造」
 若手・担い手を中心とした技術・意識の底上げを軸にBMW技術基礎セミナー、各地の学習会や視察交流等を継続していきます。学習会等でBMW技術の基礎を重視して学び、実践していくことにより、技術を皆で考え、共有することができます。あらためて「ほんもの」を作るということを考え、日々の糧(技術向上)としていくことができます。同時に情報の交換などもおこなわれ、お互いに新しい発見があり、新しいネットワークが広がります。これは先人達が築いてきたBMW技術を継承していくことでもあります。

②「BMW技術は技術と理念の両輪」
 昨年、高知で行われた第二二回BMW技術全国交流会(テーマ「食の安全と安定を求めて〜生産者と消費者をつなぐBMW技術」)の伊藤幸蔵理事長の基調報告において、BMW技術は「技術と理念の両輪であるということを再認識する必要がある」とありました。技術に驕ることなく、しっかりとした理念を持ち、どんな手段(技術)を選択するのかと言うことを含め、個々が自分の意志で考え、広い視野を持ち、各地域を作っていくことを理想としていきます。さらには「地球の環境を守る」という観点がぶれることなく、BMW生態系システム(BMW技術自然循環システム)の推進をともに考え、深化させていきます。これまでの長きに渡る活動の歴史と基本方針を基礎に「技術が人やその営み、環境を支え、人を作り、人がより良い環境と未来を創造できる」ということを具体化し、他団体との連携を取りながら日本全国、アジア各国にBMW技術(技術・理念)を手にした、仲間の輪を広げることを推進していきます。BMW技術協会には全国の農業者、消費者、物流組織や自治体など幅広い分野で活動する団体を含め、協会の活動を支える約三〇〇の会員がいます。このようなネットワークの多様性を持った団体は多くありません。その根強いネットワークを再確認し全国組織の強化にも努めていきます。
   (報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2013年10月01日12:54

 
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