【AQUA248号】第9回韓国BM技術交流会開催

テーマは「人間と地球の環境を生かす親環境農業の実現」

 九月二〇日~二一日の二日間、韓国・慶尚北道(ケイショウホクドウ)・槐山(ケサン)郡農業技術センターにおいて、第九回韓国BM技術交流会が開催されました。参加人数は両日合わせて約二〇〇名、日本からは伊藤幸蔵理事長、生田喜和常任理事、秋山澄兄事務局長、匠集団そら・星加浩二氏が参加しました。今回の開催は槐山郡の主催で行われ、実行委員会事務局に槐山ハンサリム生協、槐山ハンサリム畜産営農組合法人、韓国BM技術協会。

今大会開催の主旨とテーマ
 BMW自然循環システム技術は、韓国では約一五年前に導入されてから今まで技術の蓄積が行われ、行政・農業者・韓国BM協会の三者の協同によるBM生物活性水プラントの成功事例が、親環境農業に適用するに普遍的で容易だという点から、交流会を開催して技術を共有するということで、テーマは「人間と地球の環境を生かす親環境農業の実現」となっています。
 一日目は、「自然環境への危機感、その危機を打開するための韓国親環境農業(有機農業)の未来、そして親環境農業技術の核となるBMW技術を皆で普及し広めよう」と鄭相黙(ジョン・サンムク)韓国BM技術協会会長の挨拶で始まり、来賓挨拶として閔丙采(ミン・ビョンチェ)元楊平(ヤンピョン)郡郡主、金成勲(キム・ソンフン)元韓国農林部長官、最後にBMW技術協会・伊藤幸蔵理事長が「第九回韓国BM技術交流会の開催、おめでとうございます。今後も日本、韓国そしてアジアの皆で手を取り合って、BMW技術の普及と技術の向上に努めていきましょう。」と続きました。
 事例発表は楊平郡農業技術センター、槐山郡農業技術センターの自治体を軸とした親環境農業とBMW技術の普及状況、地元槐山郡の二人の生産者による実践報告が行われました。
 懇親会では各地域でBMW技術を実践する人達が、決意表明をするなどBMW技術、親環境農業への熱い思いを皆で語り合い、最後は韓国民衆の歌を合唱して幕を閉じました。
 二日目は洪城(ホンソン)や済州(チェジュ)島など韓国内の生産者による実践報告が行われました。午後からは槐山郡農業技術センター内に新設されたばかりの生物活性水プラント、ハンサリム生協の食肉加工工場、槐山ハンサリム畜産営農組合法人飼料工場、雪雨山農場にて視察が行われました。
 韓国BM技術協会は今年の春に、今後の活動をより活性化させるため、協会を法人化し、新役員の選出を行いました。ニ日間の日程を終え、ニ代目の会長として新しく就任された鄭(ジョン)会長の「今後の韓国の親環境農業、韓国農民運動の柱として韓国BM技術協会が貢献できるように活動して行く」という言葉が確かなものだと感じました。韓国のBMW技術運動も日本と同じく、次の歴史を作るべく新しい時代に突入したのではないでしょうか。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年12月01日16:14

【AQUA248号】フィリピン北部ルソン生物活性水プラント導入

フィリピン・北部ルソン生物活性水プラント導入 〜BMW技術が地域資源利用の循環型農業へのあしがかりに〜

 八月二四日から二八日の間、フィリピン・北部ルソン地方・ヌエバビスカヤ州マラビンバレーで生物活性水設置工事が行われました。
 現地でサツマと呼ばれる温州みかんとポンカンを中心に、約六種類の柑橘類を生産しているギルバート氏の農場内に設置されたプラントは、土木槽で一槽が約五・五t(日生産量五五〇リットル)が四槽と、約八tの貯留槽があります。原料はギルバート氏本人が代表を務める「CORDEV(コルデヴ:野菜や果物とそれらの加工品などの生産者組合組織)」で生産している堆肥を使用。この堆肥は約三年前に設置された同じく北部ルソン・カワヤン農業センターの生物活性水プラントの生物活性水を使って製造されているものです。
 また、すでに工事中の豚舎とバイオガスプラントが完成し、肥育豚(一二頭)が入り次第、ネグロスのカネシゲファームのように豚糞尿排水でバイオガスを抽出し、活性水の原料をスラッジ(抽出液)にする予定です。
 ギルバート氏とBMW技術が出会ったきっかけは、二〇一〇年の北部ルソン・カワヤン農業技術センターに生物活性水プラントが導入されたことでした。「CORDEV」の堆肥を作るためにプラントは導入され、メンバーである生産者をはじめギルバート氏はその堆肥を使用しています。これまでは正直なところ、あまりBMW技術を理解しておらず「なんとなくいいかもしれない…」程度の認識で使用していたとのこと。
 その後、ネグロス島のカネシゲファームを訪れた際に、同農場のBMW技術を軸とした農場の循環システムを実際に目のあたりにしたことにより、BMW技術への認識が変わり、同ファームのアルフレッド・ボディオス氏のアドバイスや勧めもあって、システム自体を自分達の地域に取り入れたいと考えたそうです。カネシゲファームの実践は昨年の全国交流会での報告もありましたが、スラッジを大量に畑へ撒くことにより土壌改良が進み、以前に比べると野菜の収量が上がっているだけではなく、品質も向上しています。生物活性水は豚や鶏の飲水への希釈、畜舎の洗浄、野菜作りとフルに活用しています。
 ギルバート氏の圃場は約七ha、生物活性水は圃場潅水、葉面散布、接ぎ木などに利用、もちろん豚舎洗浄や豚の飲水にも利用していきます。その他にも米や野菜(ほぼ自家消費)も多く作っているので、これらにも利用することを検討しています。堆肥もスラッジを利用することにより、長い時間をかけて山を降りて買いに行かなくてすむようにもなります。
 地域への拡散については、まずは自分と家族(兄と従兄)で実践し、地域の農民たち(ほとんどが柑橘農家)に実際に見てもらうことからはじめるとのこと。自分達の目で確かめてもらうことが、一番効果があると考えているようです。この地域は花崗岩、石灰岩が豊富な山々に囲まれています。銅やモリブデンなどを採取する外国資本の鉱山開発会社もありますが、搾りとるだけで環境には負荷をかけ続けています。豊かなマラビンバレー地域全体の環境を守ることにBMW技術導入の意味があり、その実践が農村地域をより豊かにしてくことを願っています。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年12月01日16:12

【AQUA248号】フィリピンにてプラント定期点検

フィリピン・ネグロス島
〜フィリピンにてプラントの定期点検を実施

 一〇月七日から一三日までの七日間、フィリピンのBMWプラント定期点検を行いました。この点検は匠集団そらとNPO法人APLAとの間でのメンテナンス契約によるものです。
 また、八月にプラント設置工事が行われた北部ルソンのギルバート農園の生物活性水プラントの培養調整も合わせて行いました。点検と培養調整は、匠集団そら・星加と秋山事務局長、カネシゲファーム総責任者のアルフレッド・ボディオス氏の三名で行いました。
 プラントは順調に稼働、生物活性水も順調に仕上がっていました。若干、色が薄いのですが引き続き、最終槽から第一槽目に少しずつ戻しているので、この記事が出る頃には完全に仕上がっていると思われます。豚舎の方もほぼ完成されており、一〇月末には肥育用の豚が入ったとの連絡をもらいました。これから糞尿排水が溜まって行けば、バイオガスの抽出とスラッジ(抽出液=液肥になる)の確保、そして生物活性水の原料になっていきます。ギルバート氏はすでに収穫を終えた圃場(柑橘類)に堆肥と活性水の散布を始めているとのことでした。
 後半の四日間はネグロス島へ移動し、カネシゲファームの点検を行いました。ここにはバイオガスプラントと連結された生物活性水プラン(五〇t×三槽と一〇t×二槽(自然石槽)、日生産量五t)と、飲水改善(五〇t×二槽)のプラントがあります。生物活性水は原料にスラッジを使用している影響で、特に一槽目のSS(浮遊固形物)が多く見られました。しかし第三槽を採水してしばらく置いておくとSSはすぐに沈殿し、艶のある綺麗な生物活性水です。EC値(電気伝導率)は一・四三mS/cm、亜硝酸態窒素は陰性、日本に持ち帰って検査をした結果、大腸菌、サルモネラ菌も出ていませんでした。生物活性水は飲水改善プラントへ約五〇倍稀釈で投入され、豚や鶏をはじめとする動物達の飲水と豚舎の洗浄に使用しています。プラント全体としては問題なく稼働していたのですが、SSの量が多いことが気になるので、思い切って土木槽の掃除を提案しました。
 稼働開始から約二年、通常の生物活性水プラントより早いスパンかもしれませんがカネシゲファームでは土木槽の掃除にとりかかることになりました。まず一槽目はすべて畑に液肥として使用し、すべて土木槽下部のドレンバルブから抜きます。沈殿物はかなり多いものでした。一槽目を掃除したあと、二槽目の上澄みを一槽目に移動させてから今度は二槽目の掃除です。沈殿物は同じようにドレンバルブから抜き、二槽目を掃除したら三槽目も同じように繰り返します。その後は一〇日間の培養を経てから活性水を再度、完成させる予定です。
 また、今回は一二月に行われるバイオガス発電の実験に向けて、ガスのメタン濃度を計測しました。計測方法は二酸化炭素と硫化水素の量をガス検知管で測定し、メタン濃度を算出する方法です。二酸化炭素の測定値が三二%、メタン濃度は発生したバイオガスから二酸化炭素濃度(三二%)を除いた残り六八%と考えられます。六八%のメタン濃度であればエンジンを回すことができるとのこと。硫化水素の量は〇・一%で、これは脱硫装置を作る際のスケール等を決める目安となります。(山梨大学 御園生教授の指導による)この測定を基にエンジンの最終調整に入るとのことでした。
    (報告:匠集団そら 星加 浩二)

Author 事務局 : 2012年12月01日16:10

【AQUA248号】九州のプラント巡回

 九月一一日から一三日にかけて、九州にあるプラントの巡回をしました。いずれも西日本BMW技術協会事務局の宮﨑事務局長、事務局の内山氏、匠集団そらの星加と協会事務局長・秋山の四名で巡回しました。
 はじめに大分県日田市にあるアーム農園を訪問しました。アーム農園の訪問は七月に予定されていたのですが、七月に熊本県を中心に大きな被害をもたらした豪雨の影響で延期となっていました。
 アーム農園は梨の専業農家、二六〇aで幸水、豊水、あきづき、新高、新興などを栽培、プラントは導入されていないのですが、昨年から中村養豚場の生物活性水をテスト使用しています。
 実験内容の詳細についてはアクア七月号の「西日本BMW技術協会・第二〇期総会および研修会」の報告にあったように、梨の多くは同じ品種の花粉では受粉しない性質(自家不和合性)があるため、花の咲く時期に他の品種の花粉を一つ一つ人工的に交配させる作業が必要になるので、混植園で生物活性水を使用した無交配の試験区と、生物活性水を使用しないでこれまで通りの人工交配を行った試験区で、結果がどのようになるのか調べています。代表の半田氏は「まだ最終の収穫が終わっていないので、はっきりとした結果はでていないが、生物活性水を使い人工交配させていない方もしている方と変わりがないと思う。生物活性水を使用している方は土の状態も良く、木も元気に見える。収穫が終わり次第、収量や秀品率などのデータを出してまとめますので、もう少し待って下さい。」と凄く楽しそうに話していました。また、「生物活性水を使用した方の秀品率が少し低かったとしても、人口交配させる労力と費用を考えれば、それはそれでまかなえるような気がしている。決して楽すると言う意味でなく、ただでさえ手がまわっていないので、手がすけばその分を圃場の管理や木の剪定にまわしたい。」とのこと。
 次に訪問したのは福岡県筑後市にある、田村ポートリー・ファーム(採卵鶏二五、〇〇〇羽)と中島養鶏場(採卵鶏一〇、〇〇〇羽)を訪問しました。両養鶏場には飲水改善プラントが設置されています。両農場とも原水は地下水を汲み上げて利用。近隣は住宅に囲まれていますが臭いが問題になることはほとんどないとのことでした。
 翌日、熊本県宇城市の那須ファーム(採卵鶏七〇、〇〇〇羽)と庄村養鶏場(一五、〇〇〇羽)を訪問しました。両農場には飲水改善プラントと生物活性水プラントが導入されています。
 那須ファームの那須代表は「本場と分場のそれぞれに飲水改善プラント、本場に生物活性水プラントが設置してあります。飲水は自然落下式で全鶏舎に水を配水するため、プラントから一七メートル上に設置されたタンクにポンプで送ります。その送水の際に薬注ポンプを使って生物活性水を一〇〇〇倍希釈で添加しています。」とのこと。さらに稀釈した水は夏場の鶏舎への散布、鶏をオールアウトした後の鶏舎洗浄、堆肥の発酵促進等にも利用しており、農場全体で消臭効果がみられるとのことでした。生物活性水プラントは土木槽(一槽が約七t×六槽)で、日生産量は約七〇〇リットルになります。那須ファームの生物活性水はEC値が若干低かったのですが、生物活性水のできは良いものでした。匠集集団そらの星加氏から今後は第一槽目への堆肥投入をもう少しこまめにしてもらうことなどの指導がありました。
 庄村養鶏場でも同様に生物活性水の水質検査をしましたが、こちらはEC値が一・一六三mS/cmで色ツヤ含めてとても良い生物活性水ができていました。庄村養鶏場でも那須ファームと同じく一〇〇〇倍希釈で飲水に添加していました。ここではプラントに空気を送るブロアの調子が二台とも悪いとのことで、機械本体を分解して点検をおこないました。故障ではなく、一部消耗品パーツが破損していることがわかったのですが、すでにこのパーツは生産停止となっていて、いきているパーツ同士を組み合わせて使い、もう一台は新しく購入した方がいいということになりました。こうしたことが巡回・点検してわかっていくことに、この取り組みの意義を感じます。ちなみに那須ファームと庄村養鶏場の生物活性水は共に自社の鶏糞堆肥を利用しています。
 宮崎県の小林市に移動して、有限会社丸忠園芸組合を訪問しました。丸忠園芸組合は地元の生産者の野菜を販売、加工販売する組織です。集荷場に設置された生物活性水プラント(土木槽七t×五槽とその間に自然石槽二槽)からは生産者が生物活性水を持っていけるようになっています。税所代表は「生物活性水の基本的な使い方は圃場に施肥してから一〇aあたり三〇〇リットルを散布、葉面散布には三〇倍で使います。昔、嫁さんに花の苗にいいから原液をかけてみろと言って、全部枯らしてしまったことがあって、苗や生育不十分のものへの使用は避けています。」とのこと。原料は近隣の養豚場の豚糞堆肥を利用しています。
 最後に訪問したのは宮崎県綾町の有機農業開発センター、ここには生物活性水プラント(五tホーロータンク×四槽)が設置されています。原料は有機系堆肥を使用しているとのことで、地域の養豚場から出る豚糞堆肥は利用していないとのことで少し残念でした。現在は二〜三軒の農家が利用しているだけで、あまり活用されていないとのことでした。プラント自体はきちんと管理されていたのですが、管理担当の方に話しを聞いてみると「担当者が何度か変わってしまったこともあり、管理方法が曖昧になってしまっている部分もあるし、利用方法そのものがわからなくなっているのが現状」とのこと。
 今後、農協や生産者とも相談して、あらためて説明会や、学習会をやる必要性を感じました。
(報告:BMW技術協会事務局 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年12月01日16:08

 
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