【AQUA244号】山口県柳井市河村農園

地域で広げる耕畜連携の輪〜山口県柳井市 河村農園

 五月八日~九日の二日間、山口県柳井市の河村農園の生物活性水プラントを巡回しました。今回の訪問は、プラントの稼働確認と約一年に渡る、パルシステムレインボー基金の事業取り組みの報告を受けることでした。また、西日本BM技術協会事務局の宮﨑氏と内山氏、匠集団そらの星加氏も同行しました。
 生物活性水プラントは五〇〇Lの農業用ローリータンク五つを使用したもので、貯留槽として別に一つのタンクを加え、全部で六槽です。原料はポークランドグループのBMコンポストの浸み出しです。
 畑での実験は一〇倍に希釈した生物活性水を潅水、散水(葉面散布)に利用、栽培品目は葉物を中心にキャベツや白菜、スイカなどです。また、自家製堆肥(落ち葉などが主体)の発酵促進には原液で利用しています。河村さんは「感覚的な部分もあるけども葉物のキャベツやホウレン草には効果があった。虫食いも少なく、しっかりとした美味しいものができ、直売所での評判も良かった、スイカや一口メロンなどは骨粉などの燐酸含有の多い有機肥料と組み合わせて使ったところ糖度が増し、かなり効果的だと思う」と、まだ実感としては薄い感触は否めないので引き続き、試しながらやって行きますとのことでした。今年は春先から実験ができるので稲作での取り組みも始めます。対象区を設け、育苗時の散水、代掻き時と出穂前の活性水の流しこみに利用し農協の食味テストで違いがでるかどうかを試すとのことでした。少しでも優位差が出れば、来年はさらに一歩踏み込んで取り組みたいと慎重な河村さんでした。

~耕畜連携、地元の資源活用~
 今回の訪問の理由は冒頭の二つの理由に加え、もう一つありました。河村さんは昨年からBMW技術の取り組みを始めるに際し、BMW技術の理念の本筋でもある、「地域未利用資源の活用」と「地域内での耕畜連携」の検討も始められていました。その「系」ができそうだとの報告を受けて、畜産農家と花崗岩の山を訪問しました。
 河村農園から車で二〇分ぐらいの場所に斎藤牧場というユニークな取り組みを行っている繁殖牛の畜産農家があり、そのユニークな取り組みの話を聞かせてもらうことになりました。斎藤牧場は黒毛和牛の親牛八〇頭(目標一三〇頭)、その取り組みは冬場に近隣農家へ妊娠中の母牛をレンタルし、田んぼ(畑)で放牧してもらいます。「この取り組みは祖父の代から始めています。身重の母牛を預けることは、多少のリスクがあるように感じられるでしょうが、ほとんどそのようなことはなく、餌代などのコスト削減、地域とのつながりと言う意味では大きいです」と斎藤代表。この他にも稲作二〇ha(うち飼料米八ha)、を作付け、近隣の田植えや稲刈りの請負などもこなしており、そのお陰でホールクロップや稲藁等が集まってくるとのことでした。
 その後に堆肥場(切り返し)を見学しました。堆肥は木材チップ(おがこ)と籾殻、稲藁を副資材に製造されていました。二〇haの自分たちの田んぼ以外にも地域の農家で利用され、足りなくて困っているとのことでした。足りないと言うよりは、利用する時はみんな一緒に利用するし、使わない時はみんな使わないので利用のバランスが良くないとのことでしょう。これは九州のプラントを巡回した時に清村養豚さんと熊本愛農会で出た課題と同じでした。堆肥の状態は、水分が少し足りないことと、もう少し発酵が進めば完熟になるかどうかというところで、宮﨑氏から「河村さんの生物活性水を利用して水分調整をすればどうでしょう、きっともっと良くなるのでは」と提案があり、早速始めることになりました。河村さんの生物活性水もここの堆肥を原料にして作る予定です。このように斎藤牧場では地域循環の系がなされているところでしたが、河村さんの取り組むBMW技術が加わることによって、より良質の堆肥ができることや、技術の地域普及にひろがりがでることに希望が持てます。
 次に訪れたのは河村家が代々守ってきた山です。柳井市は山口県の南東部に位置し、沿岸部、内陸部、半島・島嶼部からなり、総面積の半分以上が山地丘陵地で占められ、その山々(丘陵)は花崗岩で形成され、豊かな伏流水に富んでいる地域です。河村家の山は海岸に近く、標高は約一五〇メートル(河村農園は海抜〇メートルに近いとのこと)、花崗岩の山でした。傾斜の険しい山肌を上がること数十分、積り積った腐葉土の下に花崗岩がありました。この花崗岩は比較的軟らかくて、むき出しになっているところはボロボロとくずれるようでした。先程訪れた斎藤牧場のすぐ脇には真砂土(花崗岩がくずれて砂になったもの)が多く取れるとのことでしたが、ここは腐葉土に覆われていることが原因かどうかわかりませんが、しっかりと岩石が採掘できました。奥地先生(岡山大学准教授)に聞いたところ、四国の北部から中国地方にかけては「領家帯」という地層で、比較的若くて柔らかい花崗岩がその層をなしているとのことでした。
 BMW技術を広め始めた当初は、地域の岩石を採掘(調査)しによくみんなで歩いたと言う話を先輩から聞いたことがあります。地域未利用資源の活用、循環、人とのつながり=BMW自然循環システム、決して大きいな系でありませんが、逆に見やすくて、わかりやすい形でここ柳井市に広がる可能性があります。
   (報告:BMW技術協会 秋山澄兄)

Author 事務局 : 2012年07月01日22:44

【AQUA244号】中国上海訪問記

〜アジアからのBM便り〜

 五月二五日から二九日まで、BMW技術協会の椎名常任理事と白州郷牧場の岸氏と㈱匠集団そらの星加が中国上海へ、BMWプラントの導入のため現地へ調査に訪問しました。
 まず最初に訪れたのは、上海市内から車で約四〇分ほど郊外にある、上海逸蔬菜果専業合作社の新しい農場です。現地についてすぐに黄青理事長の案内で、建設中のパッキングセンターと冷蔵施設がはいる配送センターの屋上から全体を見渡しました。約九haの敷地では、果樹園となる場所には桃が植えられていて、 その他にビニールハウスも五〇棟が建てられており、まだ本格的な栽培が始まっていませんでしたが、一部のハウス内ではスイカが栽培されており、まだ小さいスイカが葉蔭のあちこちに見受けられました。
 この農場は、上海市内の住民をターゲットに会員を募り、有機栽培野菜の供給する会員制の組織を作ることを目的にしています。またそれだけでなく農場のある場所は上海市内からのアクセスも良く、近くには古い町並みを再現した観光施設もあり週末にはたくさんの観光客が多く訪れる地区にあることもあって、お客さんに収穫作業などの農業体験もできる観光農園としても考えているそうです。農場の中には、小高い丘に独立したコテージをいくつか建てて、宿泊もできる施設も考えています。
 農場の栽培管理は、山東省から農家を呼び寄せて農場内の居住棟に入居できるようになっています。農場開設にあわせて九家族を新しく雇用して栽培を任せるそうです。給料は出ない代わりに、ハウス、農業資材、有機たい肥などは農場が支給し農家の負担はない他、できた作物は全量買い上げてそれが収入になる仕組みになっているそうです。栽培品目は年間で一七〇種類の栽培計画に従って栽培することになっています。農家は自分の栽培技術と日常の管理に努めて品質と収量を上げれば上げるほど収入が増えることになり、やりがいに応えるようになっています。
 黄理事長は、この農場での有機栽培を成功させるためにBMW技術を是非導入したいと思っています。
 全国交流会にも参加し、BMW技術についても情報収集に熱心です。常熟市にあるみどり農場にも何度も伺い、中国でのBMW技術の実践例にも触れています。
 九月一日の農場オープンに向け、プラントの設置を進める計画です。

常熟市みどり農場
 ㈱華和が経営する常熟市のみどり農場に、BMWプラントの稼働状況の確認も含めて訪問しました。
 当日は、㈱華和の徐社長に案内していただき、卵肉両用の平飼養鶏や野菜栽培圃場を見学しました。
 みどり農場には、飲水改善施設と生物活性水施設が設置されており、養鶏と耕作に活用されています。農場内には、行政が主導してモデル農場づくりに取り掛かっており、ビニールハウスが建てられていました。養豚をはじめる計画もあります。早速養鶏場の見学と併せ、飲水改善施設の稼働状況を確認しました。また、生物活性水施設の点検では、生物活性水が薄くなっており、一槽目へ定期的に堆肥を投入し、EC(電気伝導度)値を上げるように管理することを話しました。

和郷園との技術提携がすすむ
   上海交通大学の実験農場を訪問
 千葉県旭市の和郷園は、上海交通大学とミニトマトの水耕栽培について技術提携を進めています。
 黄理事長の農場から車で二〇分くらいの場所にある農場へ、和郷園の向後理事と現地法人である和郷園(上海)商貿有限公司の楊総経理の案内で、黄理事長と椎名常任理事、白州郷牧場の岸氏と訪問しました。
 ハウスではミニトマトの栽培実験は準備に取り掛かったばかりでした。黄さんの農場で導入予定の生物活性水も、野菜栽培で効果について関心があり、成果が期待されていました。
     (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2012年07月01日22:43

【AQUA244号】国内プラント動向

広島県安芸高田市美土里町堆肥利用組合 堆肥センター

 五月一日に広島県安芸高田市にある美土里町堆肥利用組合の生物活性水プラントを訪れました。ここではプラントの管理を含め堆肥センターの状態があまり良い状況とは言えませんでした。市の地域営農課担当の方の話しによると「導入時の担当の方々がこぞって退職されてしまい、引継ぎもままならないうちに二〇〇四年に市町村合併があった。合併の中で予算確保の難しさ等の問題もあり、堆肥舎の撹拌機の修理もできずにいるので、いい堆肥ができているとは言いにくい状況です。この時期(田植えや畑作が始まれば)になれば、利用は増えていくと思いますが、全体的には利用する方が減ってきていて、堆肥を持て余している状態が続いている」とのこと。その中でも生物活性水は堆肥の水分調整で利用しているとのこと。先月号でお伝えした山形県長井市とケースは少し違いますが、同じような理由で取り組みが停滞あるいは滞ってしまうか否かというところです。特に美土里町は過疎や高齢化問題を抱え、その他の取り組みに関しても厳しい状況のようでした。行政での取り組みは、韓国の楊平郡の例もありますが、日本でも高知県の高知市土佐山、津野町、熊本県の南阿蘇村、JAささかみ、JAかづのなどがBMW技術の取り組みを行っています。これらの事例をモデルに再度取り組みをできないか、今年の全国交流会は高知県での開催ですが、実行委員会は行政関係の方と生産者を主体に形成しています。何かひとつこのような問題解決または、情報交換の中で一歩踏み出せるようになるような大会になることを望みます。

香川県琴平町  山下農園

 五月二日は金毘羅さんで有名な香川県仲多度郡琴平町にある山下農園へ訪問です。
 山下進氏と奥様(千代子さん)のお二人で、稲作と平飼い養鶏を主体に経営をしています。地域の子供達との交流、体験学習、約一〇年継続している「れんげ祭り」等の地域活動にはその身を投じ、地域の農業者と消費者を結ぶ取り組みに力を入れています。
 山下さんは、福岡県の福岡西部生協に勤めていましたが、お兄さんが亡くなられたことを期に実家の琴平町に戻り、実家の農家を継ぎました。山下農園にBMWプラントが導入されたのは平成五年(一九九三年)、飲水改善プラント(二tタンク二槽)と生物活性水プラント(二tタンク四槽)、生物活性水の原料は鶏舎の発酵鶏糞です。福岡時代にお世話になった、グリーンコープの元専務・(故)兼重氏の紹介でプラントを導入したとのこと。本人曰く「私はBMの会員としては劣等生です(苦笑)、自分たちの活動を進めて行くことに多くの時間をとられてばかり、技術の実験などはたいしてやれずにいるし、ただただBMW技術、生物活性水を使用しているだけでいます」とのこと。山下農園の周辺は田畑も多いですが比較的、民家も多い地域です。ほとんどの農家が兼業で有機農家は皆無、自身の取り組みを進める中で農家の仲間が地域内にいないのは寂しいですが、それでも地域の子供たちへの体験学習などを通じて、仲間を集めながら努力されてきたことが会話の節々に伝わりました。
 しかしながらここにきて、ご自分の築いてきた繋がりや活動を再度見直し、大きく変わらなければいけないと感じているとのことでした。
(報告:BMW技術協会  秋山澄兄)


北海道根釧地域(別海町)の川畑牧場で飲水改善プラントが稼働開始

 北海道根釧地域(別海町)にある「川畑牧場」にて飲水改善プラントの設置工事が完了しました。
 「川畑牧場」は根釧みどりの会のメンバーで、同会へのプラント導入は石澤牧場、三友牧場、岩崎牧場、渡辺牧場に引き続き五件目となりました。
 工事の前後には他の四つの農場の定期メンテナンスも行いました。川畑牧場の工事には岩崎さんと三友さんも手伝いに来てくれました。
 飲水改善プラントは一槽が三tのステンレスタンクを三本使用、二槽目にリアクター塔を設置、各槽には軽石と花崗岩、蛇紋岩を投入しています。リアクター塔を二槽目に入れる理由は、一槽目は塩素を抜くための槽として設定し、岩石は投入しますがリアクター塔は二槽目に設置しています。
 広い根釧地区ではありますが、上水道のインフラ整備はほとんどの地域で整っているとのことで、プラントを導入している他の牧場も同じように二槽目にリアクター塔を入れるようにしました。
 川畑牧場は成牛が四六頭、牧草地は五六ヘクタール、となっています。川畑さんは関西の出身で約一〇年前にこの地へ入植し就農した酪農家です。
 マイペース酪農は牛を牛本来の生態にもとづいて飼育する取り組みです。親牛一頭当たり牧草地一ヘクタールを利用、牧草を主体にして輸入濃厚資料は殆ど使わず搾乳量も五〜六,〇〇〇リットルと/年間(一頭)程度にし、牛への負担を少なくし、健康で長く飼養することに主眼を置いています。人のためになってくれる家畜を健康に飼育することができるように、生態系の飲み水に変えて飼育するBMW技術の考え方にもマッチしています。
 BMW技術は二〇〇八年の石澤牧場への導入をきっかけに広がっています。メンテナンスで訪問した際に石澤さんは「導入してから乳房炎の発生が減少し、発生しても治りが早い。乳量も増えたし、牛舎の臭いも変わった。」と話していました。
石澤さんは生物活性水のミニプラントも導入し、飲水に添加しています。バンクリーナーへの散布等へも利用して行くとのこと。生物活性水は牛の原尿を原料にしていましたが、堆肥の浸み出し液を原料に変更したとのことでした。
 根釧地区においては酪農からの糞尿が地下水を汚染してきた結果、家畜のみならず、人も上水道を頼らざるを得ない状況とのこと、道東地域の沿岸部の漁業にも深刻な影響を与えているとのことでした。このような環境問題への取り組みやお互いの情報交換等を活発にするため、根釧みどりの会では月に一度、各生産者のところに集まり学習会などを行っているとのことでした。
    (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2012年07月01日22:41

【AQUA244号】みずがき山ふるさと振興財団の設備工事完了

山梨県北杜市の(財)みずがき山ふるさと振興財団で生物活性水施設の設備工事が完了


 山梨県北杜市の(財)みずがき山ふるさと振興財団の温泉施設「増富の湯」で生物活性水施設の設備工事が完了しました。
 「増富の湯」はラジウムを多く含む数種類のかけ流しの源泉が自慢、雄大な山々に囲まれた日帰りの温泉施設です。周囲の森で「森林浴」、お風呂上がりの「整体」、月に一度の中国医学から見た「健康づくり教室」、食堂では医食同源に基づいた「自然料理」など、さまざまな「温泉療養プラン」などがあります。
 今回のプラント設置の目的は大きく分けて三つあります。一つめは温泉の上がり湯での生物活性水の利用です。生物活性水を二〇〇倍〜三〇〇倍に希釈して添加する予定です。支配人の小山氏が自ら自宅のお風呂で試し、保温など効果があると実感され思いついたとのこと。二つめは温泉のお客様を対象に「土に触れあい、有機栽培の野菜を自分で収穫し、施設内のレストランで食する」という「温泉療養」と「食」とをコラボレーションしたプログラムに活用することを計画しています。堆肥作りと畑の潅水などに利用します。三つ目は山梨大の御園生教授が取り組む、クロレラの培養液としての利用です。この取り組みは同じく山梨県内の黒富士農場と白州郷牧場でも行われていて、クロレラ培養した生物活性水をそのまま堆肥作りや潅水に利用し、クロレラの入っていない生物活性水との比較実験も行います。生物活性水プラントのすぐ横にクロレラの培養設備が設置されています。
 今回のプラントは、農業用のタンク五基(一槽一〇〇〇L)を利用して設置しています。原料は山から流れてくる沢水とBM活性堆肥(黒富士農場製)を原料にして調整に入りました。第一槽目にはBMWリアクター塔を設置、各槽には軽石と花崗岩、蛇紋岩を投入しています。春から秋にかけてはクロレラの培養もあるので沢水を利用しますが、秋から冬は源泉を利用して生物活性水を作る計画です。ミネラルたっぷりの源泉がどのように変化するのか楽しみです。また原料となる堆肥も自家製の堆肥に切り替えて行く予定です。     (報告:㈱匠集団そら 星加浩二)

Author 事務局 : 2012年07月01日22:27

 
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