【AQUA232号】西日本BM技術協会 研修会・総会報告

「原点に返る、BMW技術」を再び確認

報告:西日本BM技術協会 事務局

 六月三日(金)に「西日本BM技術協会 第一九期総会および研修会」が福岡市のホテルニューオータニ博多で、五七名の参加で開催されました。
 総会では、①一一月に福岡市で開催される「第二一回BMW技術全国交流会」を成功させること、②BMW技術の普及を図ること―の二点が今年度の活動方針として確認されました。
 当日、糸島市で開催された現地研修会の様子と合わせてご報告します。

糸島BM農法研究会で現地研修会が開催されました
 福岡県糸島市の糸島BM農法研究会で「現地研修会」が開催され、一九名が参加しました。
現地研修会には、西日本BM技術協会の会員やグリーンコープの職員のほか、まだ西日本BM技術協会の会員ではありませんが、生物活性水に関心を持たれている南阿蘇村役場・農政課、下郷農業協同組合、アーム農園の方々も参加されました。

一、宮本道興さん(パッションフルーツ・カラーピーマン)
・生物活性水は灌水と葉面散布に使用している。設置したタンク(五〇〇〇ℓ)に生物活性水と雨水を入れ、五〇〇倍液~一〇〇〇倍液にして使用。
・パッションフルーツは去年から定植を始め、八アールのハウスに今年は約三万個がなっている。暖房は焚かないで、二重カーテンで対応している。
・苗の時期に生物活性水をかける。効果は病虫害が出ない感じ。無農薬で栽培している。
・カラーピーマンは、播種時の浸漬、育苗期や定植時の灌水に一〇〇〇倍液を使用。生育時は五〇〇倍液を散布。病害虫に強いピーマンができる。
・虫除けになるか、ということでハウス内にアイスプラントを植えている。
Q:畝にふとんの綿のようなものを敷いているのは?
A:草除けと、夏場の温度を上げないため。
Q:生物活性水の使用量は?
A:昨年は有料だったので五〇〇ℓ。五〇〇~千倍に希釈して使った。今年は無料なので二・五トン確保し、すでに二トン使った。
Q:たくさん使うと効果があるのか?
A:害虫の防除には効果があると思う。グァバにアブラムシが湧いたので一〇〇倍液を掛けたら、いなくなった。

二、柴田周作さん(ミニトマト)
 まず、柴田さんの自宅のすぐ側にあるBMプラントを見学しました。柴田さんは家族三人のし尿の処理をプラントで行って生物活性水を作っています。柴田さんいわく「トイレに始まり、トイレに終わるBM農法です」。
・し尿は、トイレ下の一五〇〇ℓタンクに移動。そこから、四〇ℓをプラントの最初のタンクに送る。タンクは五基で、最初のタンクに入った汚水は、約五〇日かけて最後のタンクに移動する。
・できた生物活性水は、使わなければトイレの下のタンクに戻す。こうすれば、生のし尿はすぐに分解のサイクルに入る。プラントには、夏でもハエはいない。
・生物活性水は、堆肥作り、発酵肥料作り、作物を育てるために使っている。
・うちの農園では、作物だけではなく「生き物にとってもいい生物活性水で土の環境を整える」という考えで、全体に染み渡るように数日散布する。二〇〇倍液を一日四トン。
・一週間散布し、生物活性水で発酵させた堆肥を軽く鋤き込んで、また三~四日散布している。
・ミニトマトには、播種期:一〇倍液、鉢上げ期:五〇倍液、生育期:二〇〇倍液で灌水している。定植時には、圃場全体に二〇〇倍液を噴霧する。
Q:なぜBM農法が良いのか?
A:この農法は、特定の菌や資材を買わなくてもいい。全部、自分の周りにあるものを利用できるので、自分らしいやり方ができると思う。農業とは、そんな普遍的なものを使って営んでいくもの、という思いがある。また、このやり方だと作物が元気だから、農薬なんてあんまり必要ない。
Q:無農薬で栽培しているのか?
A:防虫はどうにかなるが、殺菌が難しい。ベルクートを一回、あとは希釈した生物活性水や木酢を掛けている。完全無農薬には、まだまだ修行が足りない。

三、溝口竹治さん(白ネギ)
 溝口竹治さんは、現在「糸島BM農法研究会」の会長をされています。
・白ネギ(根深)は、無農薬で栽培している。品種はホワイトタイガー。ちょうど、一週間前に植え付けをしたばかりである。一ヶ所(ひとつの穴)に五本を定植する。
・九月の始めにマルチを外して土寄せを何度かやり、今年の一一月から収穫をする。
・三年前までマルチをせずに、植え付けは機械でしていた。しかし、夏場の除草が大変なのでマルチに変えた。マルチにすると植え付けは手作業になる。それでも除草しなくて良いので、この方法が良いと思っている。また生育もマルチの方が進む。
・生物活性水は播種後に一〇〇〇倍液を一反に五〇〇ℓ散布している。定植後は、雨の日に一反に四〇ℓ、原液を溝から流し込んでいる。

ホテルニューオータニ博多でも研修会を行いました
 午後四時からの研修会はホテルニューオータニ博多に場所を移し、総会に先立って開催されました。
 今回の研修会の発表者四名で、いずれも個人・グループで耕種農業を営んでいます。

一、宮﨑事務局長の挨拶
・本日の資料としてお渡しした『耕種農業における生物活性水の使用ガイド』は、生物活性水を初めて使用する生産者に「○○倍に希釈して、○○リットル散布して」という使用事例を知らせることでBMW技術の入り口を広くしたいという考えから、BMW技術全国交流会での発表やグリーンコープの生産者の使用事例を基に、BM技術協会と相談しながら作成しました。今後は、テスト使用を行った生産者からの情報を追記して、「ガイド」の情報をより豊富にしていきたいと考えています。
・『生物活性水(尿処理水)の散布量と肥料成分の関係について』は、これまでは生物活性水を希釈して使用することが多かったので必要ありませんでしたが、最近では韓国や後で報告のある熊本県愛農会野菜部の渡辺さんのように濃い濃度で使用して効果を出している例が増えてきたことから、作成しました。
・尿処理によって作られる生物活性水には多くの肥料成分が含まれます。肥料として多めに使用する場合は、この表を基に、生産者で計算・判断をお願いします。
・また、今年度は生物活性水を無料で提供していますので、研修会を聞いて興味を持たれた個人・グループは西日本BM事務局までご連絡ください。

二、秋山澄兄さん(BM技術協会、白州郷牧場)の報告
 秋山さんは山梨県北杜市にある白州郷牧場で野菜作りをされています。白州郷牧場での使用事例と全国の事例を報告していただきました。
・BMW技術は、まだ技術が完全に確立されているとはいえません。皆さんが考えて、楽しんで使用していくなかから、皆さんの手で確立していくものだと思っています。
・白州郷牧場では、発酵鶏ふんと生活雑排水を原料にした二種類のプラントがあります。
・播種前の圃場散布(一反当たり一トン)、苗を作るときの種子の浸漬(二〇〇倍~四〇〇倍に希釈)、育苗時の灌水(希釈して毎日)、病害虫予防のための葉面散布、栽培中の灌水などに使用しています。
・効果としては、発芽の揃いや根張りが良くなります。葉菜類は葉の厚みが増し、果菜類は着果が良くなります。キュウリに二本なり、三本なりが増えるのは、BMW技術の特長です。
・病害が発生しにくく、広がりにくくなります。キュウリに褐斑病が出たときに原液を使ったら、広がりが止まりました。根菜類は畑に流し込んでいますが、虫がいなくなり、病気が出なくなりました。
・目に見えて養分の吸収が良くなります。ただし、養分が多く吸収されるので、養分の補給(追肥)が必要となり、白州郷では生物活性水と一緒にアミノ酸系の肥料を使っています。追肥をすると花づきが良くなります。柴田さん(糸島BM農法研究会)の圃場で見たミニトマトの花の咲き方は、いかにもBMW技術を使っているという咲き方でした。
・その他の使用事例では、茨城BM自然塾ではサツマイモの粒揃いが良くなったため、規格外が減って出荷量が一二〇%に増えました。またジャガイモでも玉揃いが非常に良くなり、そうか病が減ったとの報告があります。
・果樹のデータは少ないのですが、青森県の八峰園(リンゴ)では灌水と葉面散布で、秀品率が一五%上がりました。米沢郷の横山さん(リンゴ)でも、摘果時期の前に樹全体に生物活性水を撒いたところ、秀品率が上がったとの報告があります。
・BMW技術は、マニュアル通りにやってもいいし、自分で工夫を凝らしてやっても楽しくやれるものです。生産者が使い方をいろいろ工夫できるのが、BMW技術の醍醐味です。

三、柴田周作さん(糸島BM農法研究会)の報告
 糸島BM農法研究会は、福岡市のすぐ隣の糸島市にあるグループで、構成メンバーは養豚家(紅会)四名と野菜農家六名で構成されています。
・生物活性水を使用すると作物の発芽・発根の促進、作物の生長促進、病気予防(特定の病原菌の繁殖予防)、堆肥・有機肥料の発酵促進などの効果が得られます。
・小ネギを栽培している泊善文さんは、、一反当り一〇〇ℓの生物活性水を希釈して散布していますが、これにより収穫後の畑に残った根が早く土に戻ります。夏場は、太陽熱消毒の前にも散布しています。また、発芽してから一〇〇〇倍液を一~二回、ビニールハウスの天井から吊るしたパイプで散布しています。生物活性水を使用することで、元気な小ネギができています。
・にらを栽培している平野武美さんは、播種前に一〇〇〇倍液に二四時間浸して発芽を促進させています。定植後に五〇〇倍液を散布すると、活着が良くなります。収穫後は、ただちに五〇〇倍液をじゅうぶんに散布して土づくりを心掛けています。そのことで、収穫のサイクルが早くなります。平野さんは「ニラ作りをして一七年目になりますが、連作障害が出ないのは生物活性水のおかげ」だと言われています。
・白ネギ・サニーレタス・スイートコーンを栽培している溝口竹治さんは、現在糸島BM農法研究会の会長です。白ネギでは、播種後一〇〇〇倍液を一反に五〇〇ℓ散布しています。定植後は、雨の日に原液を一反に四〇ℓ、溝から流し込んでいます。
・宮本道興さんはカラーピーマンと七草を栽培しています。カラーピーマンでの使用方法は、播種時に一〇〇〇倍液に六時間浸漬、発芽率は九九%です。育苗期には一〇〇〇倍液で週一回灌水。定植時は、定植穴に一〇〇〇倍液をたっぷり灌水。生育時は定期的に五〇〇倍液を散布します。葉の厚みも増し、病害虫に強い、甘いピーマンができます。
・柴田周作さんはミニトマトとほうれん草を栽培しています。ほうれん草では堆肥の散布前に、圃場全体に生物活性水の一〇〇〇倍液を散布します。そうすることで、葉がとても厚くなり、生で食べても苦味のない濃厚な味のほうれん草ができます。柴田さんはドクターソイルを使って、メンバーの土壌診断も行っています。
・小川武臣さんはブロッコリーを栽培しています。育苗期に一〇〇〇倍液を四~五回灌水。定植期には鶏ふん堆肥を反当り三トン入れています。堆肥には生物活性水が十分含まれているので、生育が良くなります。
・糸島BM農法研究会では、西日本BMのメンバーの横手さん(たまご生産者)や紅会(豚生産者)のBM堆肥で土作りをし、生物活性水を定期的に散布しています。生物活性水を使うと作物が病害虫に強くなり、甘みも増しておいしくなります。BMW技術は、作物が元気においしく育つために欠かせないものになっています。

四、渡辺洋一さん(熊本県愛農会野菜部)の報告
 熊本県愛農会野菜部は、熊本県上益城郡で活動しています。
・同じ愛農会のメンバーの清村養豚場で作られた生物活性水(尿処理水)を使用しています。また、清村養豚場の中にメンバーの六人が共同で堆肥場を建て、使用しています。
・玉ねぎの場合、定植の一〇日前に生物活性水(尿処理水)の原液を反当り六トン散布し、その後豚糞堆肥を七〇〇kg散布します。収穫した玉ねぎは二五〇g~三〇〇gと玉太りが良く、小玉はほとんどありません。
・人参は播種の三〇日前に原液を反当り六トン散布し、堆肥を一トン入れます。二月二〇日に播種をして五月二一日に収穫した人参で、一番大きなものは一五〇gありました。
・大根も播種の一〇日前に原液を反当り六トン散布します。栽培している他の作物(ほうれん草・白ネギなど)も同様に六トン散布しています。
・清村養豚場から持って帰った生物活性水(尿処理水)を自宅で曝気して精製し、葉面散布などに使用しています。玉ねぎは二月の葉面散布で、反当り一〇〇ℓ使用しました。
・BMW技術に出会って一三年になります。畑で作物を作ってお金を稼ぐ人間にとって、微生物をいかに活性化させるのかが、最大の問題です。私はBMW技術のおかげでいいものができていると思っています。

五、鹿毛智昭さん(中村グループ)の報告
 鹿毛さん(久留米市田主丸町)は、今年から生物活性水をテスト使用しています。
・今年初めて生物活性水をナス・ニンニク・ボカシ肥に使ってみました。
・生物活性水を一〇〇倍液~一五〇倍液にしてナス苗に三回葉面散布を行ったところ、葉の立ち方が今までと違い、ナス苗の生育が早まったように思えました。
・生物活性水は三月に一トン注文(無料)しましたが、効果がありそうだということで四月に二トン追加注文しました。そして、ナス畑のすぐ横に自作の生物活性水を希釈する装置を設置しました。
・三アールのニンニク畑にも、一五〇倍液~二〇〇倍液を三回散布しました。もう少し早く生物活性水のことを知っておれば、更に秀品率の高いニンニクができたのではないかと思います。また、季節にも関係するのか知れませんが、今年はさび病が発生しませんでした。
・ボカシ肥料や堆肥の水分調整にも一〇〇倍液~二〇〇倍液を使用しています。発酵速度が早くなり、味噌こうじのようにいい匂いがする、今までにないボカシが出来上がりました。
・これからいろいろな経験をして、BMW技術を身に付けていきたいと考えています。

第19期総会が開催され、「第21回BMW技術全国交流会」の成功とBMW技術の普及を図ることが確認されました
 ホテルニューオータニ博多(福岡市中央区)において、「西日本BM技術協会 第19期総会」が開催され、五七名の会員・オブザーバーが参加をしました。
 総会は緒方利光さん(やまびこ会)の開会の挨拶の後、荒木隆太郎さん(南高有機農法研究会)の会長挨拶が行われました。

荒木会長挨拶
 「今年は、西日本BM技術協会のエリアで『第二一回BMW技術全国交流会』が開催されることになりました。先ごろの東日本大震災ではBM技術協会の会員の中にも相当な被害を受けられた方もおられます。
 更にその後の福島第一原発の放射能漏れ事故では、出荷制限や風評被害に苦しんでおられる会員の方もいらっしゃいます。そうした中で、今年度の開催をどうするかという議論もありましたが、被害を受けた会員の様子をそれぞれから発表いただき、みんなで励ます場にするためにも、予定通り開催することになりました。全国交流会に向けて、会員の皆さんに何かとご協力いただくことがあると思います。よろしくお願いします。西日本BM技術協会としては、昨年の総会で確認した『原点に返る、BMW技術』という立場から、今後も皆さんのご協力を得ながらBMW技術の普及を目指して活動を進めたいと思います。」

 その後は荒木会長司会進行のもと、議題の討議と各種報告が行われました。全国交流会において、予備費として一〇〇万円の予算を計上し、東日本大震災などで被害を受けた東北・関東の会員の参加費の助成や全国交流会の関連費用として使用することなどが承認されたほか、BM技術協会が法人化を目指していることなども報告されました。
 総会・研修会がすべて終わると、全国交流会が行われる予定の会場で懇親会が行われました。 (「西日本BM技術協会会報」より抜粋)

Author 事務局 : 2011年07月01日23:48

【AQUA232号】BMプラント点検

BMプラント点検 〜フィリピン(ネグロス・北部ルソン)

 六月一二日~一九日の八日間の日程で、フィリピン・ルソン島北部とネグロス島にある生物活性水プラント(ネグロスは飲水改善プラント含む)の点検に行ってきました。
 この点検はNPO法人APLAの依頼により一年に一回行われるものです。匠集団そらの星加とBM技術協会の秋山の二人が行きました。
 最初に訪れたのは、マニラより飛行機で北へ約一時間、カワヤンという町にある生物活性水プラントです。約三年前に農業省の技術センターに設置されたプラントで、農事組合法人CORDEVが所有し、管理しています。現地に着いてすぐにCORDEVに出荷する生産者を中心とした学習会に参加しました。事前にAPLAから、あらためてBM技術について説明をしてほしいと言う依頼があり、星加がBM技術の概要を、秋山が生物活性水の実践事例を説明しました。CORDEVでは生物活性水を堆肥作りに利用し、生産者に提供しています。また、生産者が生物活性水を持ち帰り(CORDEV事務局が配布しているケースもある)、田畑や庭で飼っている豚や鶏に利用しています。米の病害が減り収量が上がった、大豆の収量が上がった、豚や鶏の臭いがなくなり病気もなくなってきたなど、効果が出ているが、では生物活性水そのものは一体何なのかという理解が薄いようでした。液肥や菌床を溶かしこんだ溶液と思っている生産者もいましたが、今回の学習会でBMW技術に対する理解は深まったようでした。対比圃場を作って、その効果をはっきりと比べてみる、より効果的に利用してみる等の意見や、使っていなかった生産者が使ってみたいと言う声が上がりました。CORDEVからは生物活性水が足りなくなってしまうのではないかという不安の声も上がっていました。
 学習会後は有機大豆の圃場へ行きました。生産者はパガドゥワン村の村長キャピターナ氏、女性です。自分が体を壊したこともあり、最近になって有機農業に転換したとのことでした。有機大豆は荒れた土地の多いこの地域の奨励作物となっています。この村でも一七五の農家がこの有機大豆の取り組みを始めようとしているそうです。生物活性水の使い方は、主に植えつけてからの潅水に生物活性水(原液)を利用するとのことでした。一回に五トンの生物活性水を散布するとのことで、CORDEVの配給を待っているとのことでした。生物活性水を使った圃場と使わなかった圃場を比べると、使った圃場では収量が増え、長期間収穫ができるとのことでした。生物活性水を潤沢に使えない状況も踏まえ、今後は二〇〇倍希釈にして作付け前も含め、土壌潅水してはどうかと秋山の方から提案しました。また、種子浸漬や葉面散布などの基本的な使い方の説明もしました。土壌は決して良くはなかったのですが、大豆の根はしっかりと張っていて、茎も葉もしっかりとしていました。キャピターナ村長はBMW技術を学びながら有機農業の取り組みを村でも広めていきたいと話していました。

 翌日はプラントの点検とCORDEV、カネシゲファーム(KFRC)、そしてAPLAを交えて、今後の北部ルソン、そしてフィリピンにおける今後のBMW技術の活動についての話し合いが持たれました。
 まずは点検ですが、プラントは順調に稼働しており、生物活性水もしっかりしたものができていました。暑さでブロアの調子が悪く、モーターを交換するとのことでした。水質の簡易検査や曝気の調整など、星加が丁寧に説明しながら点検は進みました。
 点検が終わり、会議室にて話し合いが行われました。この話し合いには、CORDEVのトム・フェルナンデス委員長、生産者(みかん等の柑橘類)でもあるギルバート・クミラ副委員長、事務局のハニーベス・プレズ氏、北部ルソンにBMW技術を導入するきっかけを作ったグレッグ・ラシガン氏(CORDEVメンバー)、KFRCコーディネーターのアルフレッド・ボディオス氏、APLA共同代表の秋山眞兄氏、同事務局長の吉澤満美子氏、同フィリピン担当デスクの大橋成子氏、星加、秋山、以上の一〇名が参加しました。その議事録をまとめたものを記載します。

 「昨年八月に、フィリピンでBMW技術を進めるに当たり、ネグロスはフレッド氏、北部ルソンはグレッグ氏が担当することになった。また将来的にBMW協会フィリピンを設立し、フィリピンにおけるBMW技術の統括を行うことが話し合われたが、フレッド氏とグレッグ氏との間で情報交換は簡単にできても、北部ルソンの現場の状況が分からないため、北部ルソンから上がってくる課題に関しては、判断をすることが難しいと感じている。
 現在の課題として、
①BMWプラントの管理と維持の問題がある。生物活性水の品質を安定させること、それを管理することが必要。簡単にニセモノのBMWプラントが作られる可能性もある。
②情報やリソースの不足。
③情報交換、経験共有の場が無い。
 以上の三点があげられた。
 この課題を中心に議論を進め、次の方針で進めていくことを確認しました。
 CORDEVにてBMW導入後、様々な人が興味を持ち、実験的に使い始め、またCORDEV理事会の中でも商業的に製造し、普及していきたいという意見もあるが、まだ大規模に進めていく段階ではない。もう少し生産者が経験を積み、実験を行い、フィリピンでの実例の蓄積を行っていく必要がある。BMW技術を適応する作物も多岐にわたるので、作物ごとの効果を検証していく。BMW技術実践者間での経験を共有する場を設立し、またそれはネグロス側とも共有し、フィリピンにおけるBMW技術の効果を実証していく。
 そこで、BMWを使う農家自身が、BMW技術を習得し体得していく必要があり、CORDEV内で経験や実証を積み上げていく。そのために、トム委員長、ギルバート副委員長、グレッグ氏の三名が自分の農場にプラントを設置し、生物活性水の使用の実践者となり実験実証をしていく。すでに設置されているBMプラントの生物活性水は、今後もCORDEVが行っている有機肥料生産に活用し、CORDEVのメンバーで生物活性水利用を希望する農家に配っていく。CORDEV内のBMW技術担当者として、トム委員長を選任する。担当者は、プラントの管理だけではなく、BMW技術についての理解を深め、BMW技術実践者の状況をフォローし、情報交換ができる場を設置する。また日本及びネグロスとの連絡担当者となり、年に二回レポートを作成し、報告する。このことをCORDEV理事会でも承認する手続きを行い、APLAに報告する。BMW技術協会は、これまでと同様にAPLAを通じてCORDEV(北部ルソン)、KFRC(ネグロス)に技術支援を継続していく。BMW協会フィリピン設立に関しては今後も関係者で協議を続け、期が熟した時に設立する。」
(議事録作成:APLA吉澤事務局長)

 話し合いが終わり、トム氏の圃場を訪れました。トム氏はKFRC同様に豚の排水でバイオガスをとり、抽出液(スラッジ)を原料に生物活性水を作ることを計画しているとのことでした。庭先養豚が盛んなフィリピンでは、この形がいずれスタンダードになるような気がします。

 北部ルソンからマニラを経由し、ネグロス島バコロドまで移動し、そこから車で一時間、KFRCを訪れました。昨年一二月に常任理事を中心とした視察ツアーがあり、それ以来の訪問です。豚舎と平飼いの鶏舎、飲水改善プラントが新しく設置されていました。圃場もさらに拡大し、整備されていました。四年前に私と星加で訪れた時は、ここは「廃墟」でした。それを思うと、ここまでの復興と躍進はまさに感動的です。研修生を含めたスタッフ達の顔つきが違います。以前に比べると、自分達の取り組みに確信を持っているように感じました。飲水改善プラントはパルシステム連合会のレインボー基金の補助を得て設置されました。鶏、豚、アヒルなどの家畜、そしてスタッフの飲水用になっています。順調に稼働を始めていました。生物活性水プラントも同じく順調です。豚舎ではちょうど、豚の出産が始まっていました。二頭の豚が出産し、一三頭、一一頭の子豚が生まれました。どの母豚も一〇頭は下回らないようです。滞在中に何度か豚を買いにくる人を見かけました。子豚の評判がよく、すでに四二頭の予約が入っているとのことでした。豚や豚舎を活性水で洗浄し、飲水改善された水を飲み、異臭もない。健康的な子豚達の評判は口コミで広がっているとのことでした。放し飼いで農場中を駆け巡っていた鶏やアヒル、七面鳥などは、放牧場付きの平飼い鶏舎を作り、区分けして飼うようになっていました。荒れ地を開墾し、スラッジを流しこみ、新しい畑を耕していました。今後の課題としては土作り、畑の管理、安定した収量を目指すために品目をある程度絞って作付して行くことなどです。特に土作りや畑の管理については、生物活性水の使い方などを交えて、意見を交換しました。
 以上ですが、フィリピンでのBMW技術の普及は、時間をかけ着々と進んでいるようでした。フィリピンBM協会設立も、将来、そう遠くはないと思います。今後もフィリピンにおける、有機農業者の自立、農業者達のネットワークの拡大にBMW技術が大きく活用されることを望みます。

BM技術協会 事務局 秋山 澄兄

Author 事務局 : 2011年07月01日23:44

 
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