【AQUA229号】フィリピン、KFRCをBM技術協会・白州郷牧場スタッフが相次いで訪問

肥育用豚舎の増築と飲水改善タンクの設置工事開始

 早朝五時半。カンラオン火山の頂上から朝日が昇り始める頃、牛や水牛が研修生をたたき起こすかのように鳴き出し、放し飼いのアヒルや鶏が農場を駆け回り始める。朝露に濡れたバナナの葉や野菜畑には、まだうっすら霞がかかり、新鮮な緑の匂いが立ち込めてくる。
 小屋から三々五々、寝起きの研修生が畑に飛び出していく。六時には、まるで「メシの時間だぁ」と言わんばかりに、静まり返っていた豚舎から盛大な豚たちの大合唱が始まる。
 動物たちは研修生にとって自分の家族のようなものだ。牛やヤギを草場に繋ぎ、二〇〇羽を越える鶏やアヒルにエサを与え、日差しがやわらかい早朝のうちに野菜畑の草取りや収穫を始める。炊事当番は、台所から「おーい、カボチャとニガウリもってきて〜」とおかずになる野菜を畑に出ている仲間に叫んで、せっせと八人分の食事の支度にかかる。人間がやっと朝食にありつけるのは、太陽が高くなった八時過ぎである。カネシゲ・ファームの朝は毎日こうして始まる。
 草だらけの農場を開墾してから今年三月で一年八ヶ月を迎えた。
 「開拓者」の第一期研修生六人は昨年九月に卒業した。四人はそれぞれ出身地に戻り、農場から連れて行った豚やヤギ・鶏を増やしながら、小さな有畜複合の農業を実践している。一期生のうち二人は養豚技術や農場運営を将来担いたい、と農場に残り、次に入った二期生たちと兄弟のように寝食を共にしている。
 農場の循環の核であり、経営的基盤にもなる養豚は、最初に導入した子豚二四頭が母豚に成長し、二回目のお産を迎えた昨年の暮れからようやく順調に計画だった運営ができるようになった。昨年は交配技術が不足していたため、生まれてくる子豚の数がまちまちだったが、昨年暮れからは毎月二〜三頭の母豚が平均一二頭〜一三頭を出産、死亡率も一〇%を割るまでになった。
 子豚や肥育用豚あわせると常時一〇〇頭ほどの豚舎の洗浄に、毎朝五〇トンタンクからの生物活性水がポンプで惜しみなく使われている。その洗浄水(糞尿)は再び第一槽のプラントに戻り、バイオガスを作り、生物活性水タンクへと流れていく。食事当番のたびにバイオガスで自慢の豚肉を料理する研修生エムエムの口癖は「豚の力はすごいなぁ」。

 昨年一二月、BM技術協会がよびかけた一〇人の訪問団がカネシゲ・ファームを訪れた。副理事長の伊藤幸蔵氏、常任理事の椎名盛男氏、清水澄氏、向山茂徳氏に加え、黒富士農場の水上勝利氏、山梨大学の御園生拓氏、ジーピーエスの小川年樹氏、長野県炎屋(かぎろひや)の宇野俊輔氏、事務局から井上忠彦氏、秋山澄兄氏というBMW技術の大先輩たちから、きめ細かい指摘や愛情溢れる提言や感想を頂いた。
 五ヘクタールの農場を訪れる人は通常一時間もかからずに視察するが、上記の先輩たちはじっくり三時間以上もかけて、まるで自分の農場のように隅々まで丁寧に見てくださった。そして「カネシゲ・ファームは心配しなくても大丈夫だよ」という言葉にスタッフや研修生は大いに励まされた。
 今年二月には、匠集団そらの星加浩二氏と岸直樹氏が、バイオガスの研修で訪問、続いて白州郷牧場の元気なスタッフ四人が農場で作業を一緒にしながら研修生と交流した。
 カネシゲ・ファームの研修生は四人のために仕事を用意し、まずは内藤光さん、坂田裕美さん、土橋貴法さん、白崎森夫さん全員が子豚の去勢に挑んだ。使用するのは薄い髭剃り用カッターのみ。「傷がすこし大きかった」と担当のジョネルは消毒液を大量にかけていたが、これは問題なく完了。続いてカラバオ(水牛)を使った野菜畑の耕作。最初は水牛の扱いになれず牛も人もヨロヨロで、農場の研修生たちは大笑いだったが、そのうちカラバオと気のあった坂田さんと土橋さんは上手に土を起こしてくれた。この畑には今、青梗菜が目をだしている。
 「白州郷牧場とカネシゲ・ファームを兄弟・姉妹農場にしよう」と最後に皆で話し合った。若い研修生たちは日本に同世代の農業の仲間が生まれたことが「ものすごくうれしい」と語っていた。

 現在農場は、肥育用豚舎の増築と飲水改善タンクの設置工事で忙しい。今年に入って毎月三〇頭以上の子豚の出産が続いているが、農場に買い付けにくるバイヤーたちの注文に出荷が追いつかない状況が続いている。飲水改善タンクが完成すれば、これまで人力で飲水を飲ませていた労力が軽減し、鶏・牛・ヤギとすべての動物に改善された飲水を常時飲ませることができる。
 農場のこうした設備が完了する今年四月から、近郊の農家や関心ある農民を招いて、カネシゲ・ファームの経験を外につなげていく「ルーラル(農村)キャンパス」(農民学校)を本格的に開始したいと考えている。

 農場には故兼重さんの石碑がある。研修生たちは毎週一回、落ち葉を拾い、花の手入れをしている。一七歳〜二〇歳の研修生たちは、兼重さんが足繁くネグロスを訪ね、民衆貿易や循環農業の道筋を作ってくれた時期に生まれた子どもたちだ。今年は、日本でネグロスキャンペーンが開始されてから二五年目を迎える。紆余曲折の二五年だったが、これからのネグロスの農業を担っていく二〇代の若者たちが着実に育っていくこと、そしてもっと多くの若者が、のびのびと学びあい、将来は彼ら自身が運営する農場をスタッフたちは夢見ている。

報告:APLAフィリピンデスク大橋 成子

Author 事務局 : 2011年04月01日23:55

【AQUA229号】常任理事会より

 BM技術協会の法人化は、昨年初頭より常任理事から法人化作業チームを編成し、話し合いが行われてきました。法人化に向けての意義・方針・体制、約二〇年の間に積み重ねられた歴史を振り返りながら、議論は続けられてきました。昨年一一月には山形での全国交流会の際に開催された「全国理事会」において、BM技術協会は次年度を目標に法人化に向かうことが確認されました。今年一月の常任理事会において、伊藤副理事長から法人化作業チームを再編し、あらためて法人化に向けて、詰めの作業に入って行くことが提案され承認されました。その後、再編された法人化作業チームでは、三月の常任理事会(震災の影響で四月に延期)までに法人化後の活動方針(計画)、事務局の体制などをまとめ、再度、提案書を作成する作業に入りました。今後は次回常任理事会の承認を経て、七月の全国理事会にて議案として提出、そこで承認をされた後に「社団法人 BM技術協会」の誕生ということになります。以下は法人化に向けての提案書の冒頭分です。

 BM技術協会及び、匠集団そらは、資本主義ビジネスをしているのではなく、ソーシャルビジネスと社会運動をしてきました。日本の環境問題と農業問題にとって、BMW技術は、その解決手段として社会的必然性をもっていると考えます。約二〇年間に及ぶ活動において積み重ねてきたものを確固たるものに意味づけするためにあらためて原点に帰る、さらに「技術」「理念」や「知識」そして会員の連帯をより有効的に活用して行く上で、BM技術協会は社会に対して有効な技術をもった組織として「任意法人」から社会的使命を果たせる「社団法人BM技術協会」への変更をここに提案します。

 今後の動向につきましては、またAQUA誌面にてご報告させて頂きます。

Author 事務局 : 2011年04月01日23:53

【AQUA229号】北海道妹背牛町で 生物活性水プラントが稼働開始

 北海道雨竜郡妹背牛町にある有限会社田村農園で生物活性水プラントが稼働を始めました。三月一一日に設置工事に取り掛かり、三月一四日から培養調整を始めました。

 プラントは三千リットルのステンレスタンクを使って、ばっ気槽としています。タンクは、製造に六基使って貯留槽として三基設置しています。プラントは冬季にも凍結をしないように花卉栽培ハウスの中に設置してあります。
 ㈲田村農園は、ハウスで花卉の栽培を行っています。栽培用の施設は、ビニールハウスが全部で五一棟あり延面積五一〇〇坪となっています。そのうち三〇棟は冬季間も使用しています。主な栽培品目は、スターチス、カラー、アジサイなど六種類で、そのうちスターチスが約八割となっています。出荷先は、農協を通して、関東や関西の花卉市場に出荷されているそうです。
 代表取締役の田村昌之さんは、協会の伊藤副理事長、木内常任理事と農業者大学校で同期生です。その関係から、早くから生物活性水を米沢郷牧場から送ってもらって栽培に使っていたそうです。また、ホーロータンクを入手して生物活性水プラントの設置も検討されていたそうですが、今年になりプラント設置に取り組みました。

 プラント設置の時は、東日本大震災の地震があり、設置していたステンレスタンクも中に溜めていた水が配管取付穴からこぼれるほど大きく揺れるなかで配管工事を行なっていました。
 三月一三日に第一槽目のタンクから培養調整を始め、四月二六日に第六槽の生物活性水を水質検査に出すことができました。現在は第九槽目まで満水になっています。
 でき上がった生物活性水は、花卉栽培の苗作りに使い始めています。田村さんは、「灰カビ病・スリップスなどの病害虫対策や、スターチスの枝数が増える」ことなどに期待を寄せています。
 また地元妹背牛町の農業グループで、㈱らでぃっしゅぼーやなどにお米を出荷している「ファーマーズクラブ 北の雪月花」でも、早速今年の苗作りに使ってもらっています。北の雪月花の代表市川智さんが育苗で使って効果が表れた稲の苗を見せてくれました。
 品種は「おぼろづき」のポット育苗で根巻きが良くなっているのがわかります。
 一枚の田んぼが五町歩もある、だだっ広い田んぼでの田植えはこれから始まるそうです。
報告:㈱匠集団そら 星加 浩二

Author 事務局 : 2011年04月01日23:51

【AQUA229号】北海道恵庭市 高松農場での生物活性水の活用事例

 北海道恵庭市の高松農場では、昨年の生物活性水プラントの設置後、生物活性水を水耕栽培に利用してきました。

 栽培しているほうれん草、小松菜は生で食べられるサラダほうれん草、サラダ小松菜として、生協やファミリーレストランに出荷されています。
 高松さんは、播種の時に、生物活性水を希釈して散布しているそうですが、発芽も良く主根たくさんの細かい根が出てくるようになり、水耕ベットに移してからの発育も良くなったそうです。また生物活性水は、細霧装置で葉面に散布したり、水耕溶液に添加して利用しています。また水耕ベットには、花崗岩や軽石を設置しミネラルの供給ができるようにしています。収穫時まで最初の双葉がきれいに残ってパッキング時の作業が楽になってきたそうです。
 高松さんは、灰カビ病やべと病に効果が出る事を期待しています。
報告:㈱匠集団そら 星加 浩二

Author 事務局 : 2011年04月01日23:48

 
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