【AQUA226号】「野田・循環型社会システムづくり研究会」の発足と基礎講習会「土づくりと堆肥と有機栽培①」の開催

「野田・循環型社会システムづくり研究会」の発足と基礎講習会「土づくりと堆肥と有機栽培①」の開催

千葉県 ウェル&グリーンファームのだ 遠藤 尚志

1、はじめに
 「ウェル&グリーンファームのだ」は、パルシステム千葉やNPO支援センターちば等の支援の下、千葉県野田市船形地区において、BMW技術を活かした地域循環型の有機栽培技術の学習や研修を行うとともに、地域の資源を有効活用したミネラル豊富な野菜作りの実証研究をテーマに、有機栽培の実践に取り組んできました。二〇一〇年九月一八日より、これらの成果をもとに、次のステップとして地域資源を活かした資源循環型の生産・社会システムモデルを構築し、その基礎となる堆肥づくり研究を地域の方々とともに進めていく目的で参加者を募集し、一四名のメンバーで「野田・循環型社会システムづくり研究会」を発足させました。

2、研究会の目的
 研究会では、BMW技術を活かした良質堆肥及びイネや野菜・花卉等、育苗用良質培土づくりに関する基礎研究を進め、同時に地域の食品残渣や畜産糞尿、市民の生活残渣等を利用する地域循環型資源利用とその技術システムの開発を目指し、あわせて地域循環型有機栽培体系の一環システムを確立し、地域循環モデルづくりを実践するため、以下の内容で取り組むこととしています。

a.堆肥場(堆肥施設)の稼働による地域資源の有効活用
地域資源(畜産牛フン、米糠、もみ殻、キノコ廃床、おから、醤油粕等)を利用した堆肥、肥料、培養土、飼料づくり
b.生物活性水の高度利用による有機栽培技術の確立
使用目的別生物活性水の開発(品質向上、収穫量向上、病気予防等)目的に特化した生物活性水の開発
c.地域資源利用の高品質堆肥・肥料・有機培養土・生物活性水の開発
地域の生産者、資源提供事業者との共同開発による高品質堆肥の開発、高品質堆肥や有機資源を活用した有機培養土の開発(一貫した有機栽培体系の確立)

 地域資源とBMW技術を活かした良質堆肥づくり及びイネや野菜・花卉等育苗用培土づくり、その成分調査、実証実験等の基礎研究を行い有機栽培技術の確立を目指しています。

3、研究会の取り組み
 これらの目的を達成するために、研究会は以下の取り組みを進めています。

a.堆肥や培養土材料となる地域資源調査
 地元の畜産生産者(糞尿)、食品メーカーによる残渣(醤油滓、おから)、米生産者(籾殻、糠)、茸生産者(菌床)などが堆肥原料として提供されることになりました。
b.BMW技術を活かした堆肥及び培養土づくりの基礎研究および実習
 (有)千葉自然学研究所、(株)ジャパンバイオファーム(小祝政明先生)等の専門家の参加及び協力で、一〇月までに五回の堆肥づくり実習を開催しました。また一〇月一二日には、基礎講習会「土づくりと堆肥と有機栽培①」講座が、一一名の参加で開催されました。講師は、ジャパンバイオファームの小祝政明先生。今回は、今年度に予定している全四回の講座の一回目ということで、「有機栽培と堆肥、堆肥作りの基本」として、まずは有機栽培の基礎についての講義が行なわれました。
 今回の学習会は、有機栽培における植物生理の基礎や土壌の団粒化の仕組みについてまず再確認し、さらに九月より実際にスタートしている種堆肥づくりの現場を視察しつつ、小祝先生から堆肥づくりにおける具体的なアドバイスをいただく形で進められました。まず「堆肥原料の比率や投入する菌については全く問題ないのでは」との感想をいただきましたが、ただ堆肥の温度変化の記録表を見てすぐに「温度が高すぎる」といった指摘を述べられ、そこから堆肥の水分量やエアー量の重要性を確認しました。また実際に種堆肥を水でぬらして、手で練りながら堆肥のぬめり具合の感触を確かめるなど、「理論を勉強するだけでなく、実際に感覚として起きている現象を理解すること。そうした理解がないと、起きている現象の原因がわからないので、改善ができない。」といった指摘をされました。課題としての堆肥の温度管理については、次回堆肥の本仕込みの際の注意点を再確認しました。

 また今後の活動としては、以下の取組みを予定しています。

c.良質堆肥・培養土の裏付けとなる成分分析調査
 堆肥等作ったものは、各種研究機関等の分析による科学的な評価を目指しています。
d.出来上がった堆肥及び培養土による栽培基礎実験
 実験農場、研究会参加メンバーによる栽培実験の取り組みを来春から行うことにします。
e.研修を通じて地域循環モデルのネットワークづくり
 研究成果を組織化し、地域循環モデルによる栽培・ブランド化等に取り組みます。

4、研究会の成果物
 その成果として、
a.地域資源が循環し、地域の土や水の保全・再生に寄与する生産様式の確立。
b.それらの生産様式を市民や生産者が体験できる体験・研修のモデル農場づくり。
c.園芸福祉による障害者の自立に資し、地域循環型有機栽培体系のネットワークの定着を図り、研究会の実験を通じて実践した成果を組織化し、野田市における地域循環型有機栽培技術と地域循環型モデルによるシステムづくりを実現し、ネットワークの核を形成することを目指し活動に取り組んでいます。

Author 事務局 : 2010年11月01日02:34

【AQUA226号】第20回BMW技術全国交流会、山形県で今月開催

第20回BMW技術全国交流会、山形県で今月開催
〜まほろばの里・資源と人間の輪と技術が循環する地域システム創り〜

「第20回BMW技術全国交流会開催にあたって」
第20回BMW技術全国交流会 実行委員長(米沢郷牧場)
伊藤 充孝

 これまでBMW技術全国交流会は、受け入れ団体や協会会員の協力を得て毎年欠かさず一九年間開催され、様々なテーマのもと日本全国さらには韓国やフィリピンといったアジアの国々からBMW技術を実践している人々の報告や、テーマに沿った基調講演などが行われ、「BMの人々」にとって重要な情報交換・交流の場であり続けてきました。
 また、一〇月四日〜六日には韓国楊平郡で第三回亜細亜BMW技術交流会が開催され、韓国におけるBMW技術十三年間の事例発表やBMW亜細亜連帯の発信を韓国楊平郡にて行う宣言がありました。このように日本で生まれたBMW技術の交流がアジアを中心に広がっています。その歴史ある二〇回目の記念大会をここ山形県にて開催できることは大変光栄なことと感じています。

 今大会のテーマである「まほろばの里・資源と人間の輪と技術が循環する地域システム創り」は実行委員会メンバーにて何度も話し合いを続けていく中で、これから私達が生産活動を続け生活していく上で重要なキーワードが多数挙げられ、それらを組み合わせ二〇回記念大会に相応しいテーマにと考えられたものです。

 まほろばの里とは古事記や万葉集に出てくる言葉で「周囲を山々で囲まれた、実り豊かな土地で美しく住みよいところ」という意味です。
 ここ山形県の置賜地方は、奥羽の美しい山並みに囲まれ豊富な水資源の恵みをうけ、盆地には肥沃な耕土が拓け、四季折々の多彩な風景が展開される豊かな自然環境を有し、一帯には洞窟や岩陰群、そして古墳群が点在し、縄文創期(約一万年前)から人々が住み、地域の恵まれた条件を生かした生産と生活のかたちを築き、現代のまほろばの里と呼ばれている所です。
 山があり、水があり、土があり、生き物がいる。そして豊かな生活の環境があり、それを支える生産活動がある。気候や形に違いがあっても日本全国どこにでもある風景・環境です。当たり前のこと過ぎて私達はその恵みの有り難さを忘れてしまっているような気がします。
 一万年の歴史・人々の温かい心・みどり豊かな豊穣の里。このまほろばの里の歴史を学び、BMW技術を通し人々が技術を学び・交流することで、これからの地域創りを考え、何を次の世代に伝え残していくかを参加者全員で話し合えれば、良いBMW技術全国交流会になるのではないかと思っております。


第20回BMW技術全国交流会
 副実行委員長
(パルシステム生活協同組合連合会常務執行役員、BM技術協会常任理事)
山本 伸司


 今年、一〇月に生物多様性国際条約締結国会議が名古屋で開かれた。この条約は一九九二年ブラジルで調印され、現在一九〇ヵ国とEUが調印している。ただアメリカのみが調印せずアメリカを入れない国際的な重要会議となっている。なお、生物多様性とは生態系、種、遺伝子の三つのレベルで、「生物多様性の保全」「生物多様性の構成要素の持続可能な利用」「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分」を目的としている。これまでの環境破壊と生物の大量絶滅を深刻に受け止め、多国間での防止を行おうとしているものである。

 しかしすでに一八年前からのこうした取組みだが、実態は熱帯雨林の破壊と穀物栽培の拡大などが止まらない。水質汚染と温暖化による珊瑚礁の崩壊。そして日本国内での大量農薬使用や化学肥料の使用による生態系の破壊や土壌の破壊。この問題は依然として不気味に進行している。
こうした生態系の破壊を押しとどめるためには、いままでの経済発展のあり方を転換しなければならない。それは、大量生産、大量消費型の資源浪費と廃棄、食のあり方の転換である。低コスト型の農薬多投、化学肥料依存。さらに遺伝子組み換えの単一種の食糧生産。外国に依存する飼料や加工原料生産からの転換が必要となる。
 しかし、このことはわが国でも家畜生産から野菜、果物などの飼育、栽培方法の見直しが求められる。そして本来の自然生態系のあり方に学ぶ農法の開発と定着が必要となる。そしてこのことにより深い生命への畏敬と共感、学びが農業に求められるのではないかと思う。

 開催地の米沢郷牧場の故伊藤幸吉さんは、米沢郷牧場の創立から「北のまほろば」を夢見ていた。五千年前からの遺跡にみられる自然との共生の豊かな東北の古里。狩猟と栽培と持続可能な知恵の住居。こうした里山が、大量生産、農薬多投で侵され滅びていくことに抵抗し、新たな「まほろば」の建設を目指したのだ。それは、有畜複合経営の「農の曼荼羅」の世界である。

 さて、一作年、有機農業推進法が成立した。しかし、国内有機農業はむしろ逆境にある。リーマンショック以来のデフレ経済は、販売価格を際限も無く下げ続け、国内有機農産物は結局高いとして販売低迷しているのが現実である。さらに、複雑な有機認証システムと狭隘な地域での農薬汚染による事件事故の多発。良心的な農業生産者ほど苦境に立たされている現実がある。

 こうした現実を転換する方向とは何か。
 私たちの生き方の転換こそ求められている。金銭的価値と経済成長、簡単便利とあらゆる道具の家電化、情報化により、これを求め踊らされること。こうしたなかでの知識や利益の競争。そこから逸脱し、自分自身の命と向き合い、そして食べることの価値を再発見すること。この食からみえる食べ物の生産へと接近すること。食べ物を大切にいただくこと。このことから、農の尊厳と生命生産の真理へと導かれていけると思われる。こうした食と農の価値と生命の価値、このことを基本とした社会こそ近未来の新たな社会像となるのではないかと思う。

 BMW技術に求められているもの。
 それは、いち農業技術にとどまらない豊かな生命観、自然観を育む行為の全体である。一人ひとりがその地域で、多様で工夫にあふれた農の取り組みを実施しながらつながっていく。これこそ、生物多様性の求める未来である。生物多様性とは、すなわち人と社会の多様性を育むことそのものなのである。その深い世界の心棒にBMW技術はなりたい。BM技術協会はオープンで、多様で豊かなフォーラムを提供していきたい。

Author 事務局 : 2010年11月01日02:32

【AQUA226号】高知県大川村で生物活性水プラントが稼動を始めました

高知県大川村で生物活性水プラントが稼動を始めました。

㈱匠集団そら星加 浩二

 高知県土佐郡大川村にある「土佐はちきん地鶏」の養鶏場で生物活性水プラントの設置工事が終わり、稼動し始めました。
 平成二一年四月二一日に常任理事会が開催されたときに、「BMいきいきプラン」の推進で村内の資源循環型社会を目標として、協会への協力要請に基づきBMWプラントの設置が進められてきました。(「AQUA」209号参照)
 「土佐はちきん地鶏」の生産は、新しく村内に設立した株式会社むらびと本舗が運営しています。
 「土佐はちきん地鶏」は、種鶏として土佐九斤の雄と大軍鶏の雌を交配したできた雄と白色プリマスロックの雌を交配させて、採卵した有精卵を、農場内の孵卵設備で孵化させた初生雛から飼育している地鶏です。この孵化施設からは、自農場だけでなく芸西村にある「土佐はちきん地鶏」生産者にも供給されています。現在種鶏は千七百羽が種鶏棟で飼育されています。孵化した初生雛は、育成棟を経て生産棟に移されます。飼養期間は八〇〜九〇日齢、二・五〜二・六kgで出荷されています。出荷先は県内のスーパー、飲食店と、関西や中部地域にも拡がっています。年間の出荷羽数は一〇万羽を目指しています。
 ここで利用されている鶏舎は、以前トマトの水耕栽培で利用されていたハウスを改造して鶏舎にしたものです。現在種鶏棟が一棟、育成棟が一棟、生産棟が四棟が整備されています。この他にもこれから整備をしていくハウスが四棟あります。また、BMWプラントと併せて新しく建設された堆肥舎も稼動を始めています。
 生物活性水プラントは、鶏舎のそばに新しく建てられた施設の中にばっき槽として五トンのホーロータンクを五基並べて構成しています。生物活性水の原料は、ポークランドグループの堆肥「十和田BMコンポ」を使って培養調整を行いましたが、今後は「はちきん地鶏」の鶏糞をもとに完熟発酵堆肥を製造して、生物活性水の原料に切り替えていきます。
 生物活性水は、鶏舎内の環境整備や床作り、堆肥舎での鶏糞の発酵促進や環境整備、飲水改善施設への添加などに活用されます。
 さらに十一月中には、鶏舎に供給されている飲水施設にもBMWシステムを導入したプラントが稼動します。

Author 事務局 : 2010年11月01日01:33

 
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