【AQUA222号】山梨県白州郷牧場に有機JAS専用育苗ハウス完成

全国で3カ所の100パーセント補助により、山梨県白州郷牧場に有機JAS専用育苗ハウス完成

山梨県北杜市 白州郷牧場 代表
(BM技術協会常任理事)椎名 盛男

 有機JAS専用の育苗ハウスが国の一〇〇%補助で完成しました。全国で三カ所認められたうちのひとつです。これまで有機JAS専用の育苗所は、ほとんどありませんでした。ここ山梨県では、著しく果樹に偏った農業政策もあり、野菜の育苗事業は皆無でした。
 白州郷牧場では、ここ五年をかけて培土づくりと育苗を研究してきました。あまりにもJASの専用培土は高価格で、巨大メーカーが握っており、しかも、下請け、下請けへと外注され、ついには何が何だかわからなくなり、末端では仕様書さえ発行できない有様でした。国の有機農業推進法と現場の状況は、あまりにも乖離しています。

 また、有機農産物は未だ〇・一六%くらいしか流通していません。結局のところ、有機JASはJAS有機認証団体の認証を受けた――その名を借りた海外農産物と加工品の輸入の道を拡大しただけでした。
 有機認証の精神は、その根幹に立ちかえるべきです。近代国家とは、まとめていってしまえば、民族国家のことです。同じ国家の民族は平等な国民として扱われ、大切にされるということです。何が大切にされるかといえば、兄弟としての血と命でしょう。
 食べ物と水は命の根本であり、命脈です。これを損なう農法は、同じ兄弟の命を傷つけ、山河の自然を損ない、命の命脈である水を汚染していきます。これは犯罪であり、世が世なら許されることではありません。
 私たちは、水源の里である北杜市白州にあって、土と水を汚染しない農法を続けて来ました。それが農民としての人道と信じているからです。
 私たちは南アルプスの森の腐葉土と黒富士農場のBM堆肥で、ぼかしを基本としてつくり、ミネラルをアレンジし、PH調整をして培土づくりを研究してきました。ここ二年の成果は満足のいくものであり、購入苗よりは土地っ子の苗が、はるかに丈夫で強く、多収穫をもたらすことがわかりました。
 幸い、四五〇坪の有機JAS専用ハウスが国の支援を受け、空からサンマやイワシが降ってくるような天佑を受けました。これから、北杜市全体へJAS有機の苗を供給していきたいと思います。

Author 事務局 : 2010年07月01日01:21

【AQUA222号】高松農場で生物活性水プラントの設置工事がはじまりました

報告 ㈱匠集団そら 星加 浩二

 北海道恵庭市にある高松農場で生物活性水プラントの設置工事がはじまりました。
 高松さんは、白州郷牧場で二〇〇一年から二〇〇四年まで農業研修をしていました。白州郷牧場では、いろいろな作物に日常的に生物活性水を栽培に活用していたので、その効果については、実感を持っていたそうです。
 白州郷牧場の研修を終えて二〇〇四年に出身地の北海道に戻り、一町歩くらいで路地栽培ができる農地を探していましたがなかなか条件に合うものが見つからなかったそうです。そのとき水耕栽培をしている人と知り合い、現在の土地を借り受けて同じようにハウスでの葉菜の水耕栽培に二〇〇五年五月に農場を開設して取り組みました。
 ハウスは一反の広さで、水耕のベットが一一列二二ロットに分かれています。
 栽培品目は水耕栽培の特色を活かし生食できるサラダほうれん草や、小松菜、水菜を組み合わせて栽培しています。
 収穫した葉物は、札幌の生協コープさっぽろの店舗に出荷しています。サラダほうれん草は食感も良く人気があるそうです。
 
 二〇〇七年頃から水耕栽培のためどうしても湿気が多いのと密植のため、ベト病がホーレン草に出始めたそうです。白州郷牧場での研修時に菌体を利用して病害を抑えていた体験をもとに、生物活性水を取り寄せて菌体を作り通路に散布するなど対策をしてきました。ところが昨年秋には白サビ病が発生し、やむなく殺菌剤を使用したところベト病まで併せて出てしまったそうです。昨年は、和郷園グループのハウスキュウリ栽培など生物活性水を潅水に活用した栽培技術の研修のため、神崎農園に訪れ生物活性水の効果を確認しました。そして白州郷牧場ではふんだんに使用していた生物活性水を、自分のハウスでもプラントを設置して気兼ねなく利用できることを検討し、生物活性水施設の導入を決めました。

 プラントの構成は、ばっ気槽として三千リットルのステンレスタンクを利用しています。周年での栽培のため生物活性水は年間を通して利用するので、冬季に凍結の心配がないようにハウスの中に場所を確保して全部で五基のタンクを設置しています。ばっ気用のエア供給は電磁ブロアを使い、微細な気泡がでる散気管を取り付けています。
 花崗岩、軽石をばっ気槽内に設置し、生物活性水の原料としては、ポークランドグループの堆肥「十和田BMコンポ」を使います。設備工事完了後すぐに培養調整に入り、七月中旬には、水耕栽培への利用が開始できる予定です。
 高松さんは「ようやく設置もでき生物活性水の製造が始まった。もっと早く設置をしていれば、ベト病にも十分対応できたのでは。これから生物活性水の希釈倍率を変えていろいろと栽培に使っていきたい」と話していました。

Author 事務局 : 2010年07月01日01:20

【AQUA222号】BMW技術基礎学習会がパル・ミート山形事業所で開催

報告 株式会社パル・ミート山形事業所長 阿部 富子

 五月十九日「BMW技術基礎学習会」を㈱パル・ミート山形事業所で開催しました。
 山形県の中央、村山市にある㈱パル・ミート山形事業所は、パルシステム直営の食肉加工(ハム・ソーセージ)工場です。一九九九年四月、新工場と共にBMW排水処理プラントを設置して工場から出てくる排水を浄化しています。
 今回の学習会開催については、今年第二十回BMW技術全国交流会を山形県で受け入れることになり、BMW技術をより多くの生産者に知ってもらうことと、山形事業所排水処理施設で製造できる生物活性水と活性汚泥の脱水汚泥の利用について考えることを目的として、山形事業所で開催しました。
 参加者は山形県内の果樹農家、畜産農家、㈱パル・ミートの職員など、後継者や新規で取り組みを考えている方二四名が集まりました。はじめに山本伸治BM技術協会常任理事より「BMW技術の学び方」について、BMW技術が分からない初心者の方へ、①社会のあり方、②環境破壊、③地球、大地、岩石、水、微生物の循環について、④地域の核について、お話がありました。続いて、椎名盛男常任理事より「BM技術協会の活動の歴史と技術の概要」と題し、BMW技術誕生の経緯、自然循環の原理について説明がありました。人間が壊してきた自然浄化作用を、BMW技術を利用して人工的に再現する手段、循環の仕組みについて学びました。次にBM技術協会副理事長の伊藤幸蔵さんに、米沢郷牧場グループで実践している「自然(資源)循環型農業集団サイクルシステム」について、事例を交えたお話をしていただきました。地域の畜産農家から出た糞尿は堆肥として田畑へ→田畑から出た残渣は家畜の餌へ→と、耕畜循環の機能が構築されており、地域環境を守りながら農業を営む仲間を増やし、地域の核となっていること。田んぼの生きもの調査など地域や組合員とのふれあいの中で自然浄化作用の仕組みをより多くの方へ広めていることなど、興味深い事例報告をたくさんいただきました。
 最後に、㈱匠集団そらの星加さんより、山形事業所の排水処理施設について説明がありました。学習会に参加した果樹農家の方は、この排水処理施設から出る余剰分の脱水汚泥を、畑に散布してみたいと早速申し出てくださいました。興味を持ち、行動に移してくださる方がいたことは、今回の一番の収穫でした。山形事業所でも生物活性水と脱水汚泥の成分検査を行い、活用方法を地域の生産者と共に考えて、生物活性水の有効活用を通じて、地域に元気の種をまいていきたいと思っています。

Author 事務局 : 2010年07月01日01:19

【AQUA222号】「根釧地区マイペース酪農学習会」が開催

報告 ㈱匠集団そら 星加 浩二

 「私の考えるホンモノ牛乳」と題して北海道厚岸町 石澤元勝氏(根釧みどりの会会長)の学習会が開催されました

 パルシステム生活共同組合連合会新農業委員会の主催で五月一一日(火)、東京都文京区の全林野会館で学習会「根釧地区マイペース酪農学集会」が開催されました。「こんせん72牛乳」の産地、北海道根釧地区で酪農を営む石澤元勝氏を講師として、放牧を中心として自給可能な飼料である牧草を与えるマイペース酪農と北海道酪農業界の現状について会員生協、役職員など七〇名が学習しました。

 石澤氏の講演は、「私の考えるホンモノ牛乳」と題して、写真を紹介しながらはじまりました。最初にパルシステムの組合員から送ってもらった搾乳時に牛の乳房を拭くためにつかうタオルが、毎日どのように使われているのかが紹介され、組合員の皆さんへのお礼をつたえました。そしてパルシステム生活協同組合連合会が活動を助成しているレインボー・パル基金で二〇〇八年度の助成活動によりBMW技術「飲水改善施設」の導入の経緯を説明しました。

 石澤氏が営む石澤牧場は、北海道厚岸町で放牧を中心とした酪農経営を実践しています。石澤氏は、「根釧地区の寒い気候は作物が十分に育たない環境で、牧草だけが栽培できる厳しい地域。この牧草を牛の飼料とすることで、牛乳や肉に換えて人間が食べられる食物にしてくれます」と話しました。北海道の酪農の現状について石澤氏は「テレビCMや牛乳パックでは必ず放牧されている牛の姿が利用されていますが、生産量の半分は大規模経営による多頭飼育・多量搾乳の生産者が占めています。牛舎から一度も出ることのない飼育環境で穀物飼料の給餌を高めることで搾乳量を増やすという効率を追求し、搾乳ロボットまで使われるような酪農です」と語りました。
 それに対し、石澤氏の進める「マイペース酪農」は、搾乳牛一頭に対し一ヘクタールの牧草地を利用し、年間を通しまた昼夜にかかわらず牛を放牧させ、牧草を中心に牛を育てています。「牛にできることは牛に任せるのが基本です。それにより牛を健康に飼育することができ、農政などに振り回されない自立した酪農を営むことができています」と、基本的な考えを示しました。

 マイペース酪農の生産性は、道内の一般的な大規模酪農が一頭当たりの年間搾乳量一万リットルに対し、五千〜六千リットル程度にして、牛への負担を少なくし、一頭が生涯で出産する回数は平均二・七三産に比べておよそ二倍の五〜六産あり、健康で長く飼養するといいます。
 また農業収入も、穀物飼料の購入や畜舎施設などにかかる経費を抑えられることから、農業所得との差がほとんどなくその農業所得率は多頭飼育の農家に較べ、よいことがデータの比較でわかったとのことでした。特に飼料が高騰した二〇〇七年は、ある農協の平均所得を上回ったそうです。石澤氏は「マイペース酪農に取り組む前は、毎日朝早くから夜遅くまで働かなければならず子育ての時期は子供と接する時間も十分取れなかったのですが、現在は時間の余裕もでき、人生を優先した生活を送ることができています」と話しました。
 また、マイペース酪農ではできるだけ余分な資材の投入を押さえることにしており、多頭飼育の牧場では、牧草地への化成肥料の大量投入や、牧草の更新に除草剤を散布するなど環境への影響も大きいが、マイペース酪農ではその心配もない経営ができるとのことです。
 奥さんが牧場の牛乳を加工したチーズも参加者にふるまわれ、なごやかな雰囲気の中、北海道の酪農の現状が良くわかる学習会となりました。

Author 事務局 : 2010年07月01日01:17

【AQUA222号】韓国におけるBMW技術の現状を学んで

長期BMW研修in韓国
報告 ㈱匠集団そら 岸 直樹

 四月一二日から二三日の一一日間、韓国へのプラント視察、研修に行ってきました。SOLAインターナショナル・コリアのハ代表に案内していただき、韓国スタッフ一同と共に行動させていただきました。主な視察先は事務所のある馬山(マサン)より車で三、四時間かけ楊平(ヤンピョン)、金浦(キンポウ)にある農業技術センターを中心に韓牛農場や地方農家に設置されたプラントのメンテナンスや設置工事に参加させてもらいました。ダンノモ農場では牛舎の横にレストランを設け牛舎を見ながら食事ができるといった、日本には珍しいスタイルの農場もありましたが、これも生物活性水のおかげで牛舎の臭いがほとんどしないからこそ実現できるものだと思います。プラントの技術は日本から教わったものでもあるのであまり日本のものと変わりませんが、行政が農家に支援してBMW技術の施設導入に協力したり、生物活性水を供給するタンク車をもうけたり、その生物活性水の利用の積極性が日本より関心をもっていると感じました。また、韓国でBMW技術に支持があるのは他の微生物施設に比べ、BMWプラントの運営費が圧倒的に安くトータルコスト面で優れていることが、農家が支持している理由の一つだそうです。
 キンポウ農業技術センターでは今までのタンクプラントではなく新しい形のプラントを設けていました。このプラントは全面ステンレスパネルで組み立てられ、中にハシゴがついており直接降りられるようになっています。通常のものよりも高価なもので、資金に余裕のあるところや高級感を見せたいところなどにはこのスタイルのプラントを提案して増やしていくそうです。

 プラントの電気設備に関しては慶南大学にお邪魔して教授より電気に関する講義をしていただき、実際に使われている電気設備を見せてもらいました。韓国では日本よりも送電圧が高いので電気のトラブルは非常に危険なため電気設備設置には安全対策に十分配慮が取られていました。

 プラント以外では、SOLAインターナショナル・コリアの活動実績や方針、組織の在り方を説明してもらいました。挨拶を第一に、組織内のチームワークを大切にし、会社としての利益よりもBMW技術の普及のために、お客さんの要望に無償で応えたりもします。韓国そらは、ハ代表をはじめ、スタッフ一丸となってBMW技術普及に取り組んでいる印象を受けました。日本においても韓国に負けないよう協力しつつ、BMW技術の普及に取り組んでいければと思います。

Author 事務局 : 2010年07月01日01:16

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.