【AQUA220号】日本農業者大学校同窓会が韓国視察

日本農業者大学校同窓会が韓国視察
楊平郡の親環境農業とBMW技術現場を訪問


 日本農業者大学校、創立四〇周年記念行事の一環として二〇一〇年二月一六日(火)~二月一九日(金)に、佛田利弘BM技術協会常任理事を団長とする総勢二一人の視察団が、韓国で行われている農業者教育、親環境農業政策、農産物販売体系などの調査及び農業者との交流のために韓国農業視察旅行を実施しました。

報告 SOLAインターナショナルコリア
イ・スンミン


 最初の訪問先は韓国の農村振興に関する事務を管掌する京畿道の水原(スウォン)市に位置している農村振興庁でした。農村振興庁に到着した訪韓団は振興庁関係者の方々の歓迎を受けて会議室に集まり、担当者から現在、農村振興庁が進めている農業の付加価置と所得向上について、特に、食糧、食品、バイオエネルギー、環境、最先端緑色技術など多様な分野で研究領域を広げているという話をうかがいました。農業振興庁の全般的な紹介と現況について説明を受けた後、振興庁が製作した広報映像を視聴しました。続いて、韓国農業の過去と現在、未来が見られる大規模な農業科学館の見学をし、韓国農業の行政全般と行政区域別の詳細について学びました。

 次に視察した所は京畿道の華城(ファソン)市にある三年制+一年専攻深化過程の国立単科大学で、農漁村発展の一環で一九九七年に設立された韓国農水産大学を訪問しました。大学総長をはじめ教職員、学生たちとの懇談会の席では、総長のあいさつ、佛田利弘訪韓団団長のあいさつに続き、学生たちとの対話になりました。その後、韓国農水産大学の学內施設等を見学しました。夕方には韓国伝統料理店で懇親会が開かれました。韓国農水産大学側から訪韓団に対する歓迎の挨拶があり、乾杯で懇親会が始まりました。韓国農水産大学の学生たちからの、日本語による簡単な自己紹介の後、双方の対話の時間をもちました。そして、最後にはお互いに用意した記念品の交換を行い、韓•日間の連帯関係を一層深めて行くことを約束し、次の再会を期して懇親会が終わりました。

 翌日一七日午前、京畿道華城市の京畿道農業技術院の視察を行いました。技術院側の歓迎を受けて会議室に集結した訪韓団は担当者の歓迎あいさつの後、政府の親環境農業の政策と基本方針について、京畿道農業技術院から説明を受けました。親環境農業の重要性についての映像をみた後には、質疑応答と情報交換の時間を持ちました。農業技術院内の韓国農業博物館を見学し、韓国農業の風習と農法、農機具などを見て、在来農業から現代農業につながる韓国農業の歴史を学びました。また現在、新品種開発をしている様々な農産物などを紹介され、京畿道農業技術院の親環境を基本とした、未来の韓国農業について知ることができました。

 続いて、牙山(アーサン)市のプルンドル営農組合を訪れ、担当者の案内を受けて組合で生産される製品と生産施設の見学をしました。低温貯蔵庫、物流センター、オーガニック副産物貯蔵庫等の全般的な食品加工及び流通過程について紹介を受けました。組合内の施設と生産過程を見学した後、会議室に集合してプルンドル営農組合法人の代表イ•ホヨル会長の歓迎あいさつがありました。営農組合の現況紹介、現在営農組合の食品加工及び学校給食、全国で最初の有機専用RPC(共同乾燥調製施設)、農費を節約することができる営農事業団の新設及び直営農場運営、農業共同体の実現についての説明を受けました。そして、営農組合のシステム構造の説明と、この形態になるまでは多くの時間と努力と苦労があった話をうかがいました。特に、現在の組合が設立されるまでに、幾多の難関を乗り越えるくだりでは訪韓団側から拍手があがりました。また、訪韓団側から、韓国のこのような法人を設立しようとすれば多くの努力と現実的な難関がたくさんあり、日本政府が学ばなければならない部分が多くあるという意見があがりました。
 いろいろな話し合いと有意義な時間を持った後、訪問記念写真を残して京畿道揚平郡へ移動しました。
 揚平に着き、夕方にはミン•ビョンチェ前揚平郡守を含め、揚平郡農業技術センター関係者の方々の歓迎を受けて夕食を共にしました。ミン•ビョンチェ前揚平郡守の歓迎あいさつを始まりに参加者は談笑しながら楽しい夕食を過ごしました。

 翌一八日午前、揚平郡農業技術センターのキム・デス所長の歓迎を受けてセンターの視察をしました。キム・デス所長の訪韓団歓迎のあいさつに始まり、揚平郡農業技術センターの概要、技術センターの理念及び推進方向について紹介がありました。特に、揚平郡農業技術センターが志向する農業者の所得向上と親環境農業の技術向上のために、農業技術教育及び開発と模範事業推進、科学営農施設を利用した親環境農業の支援を中心的に実施していること、これを基盤として日•韓の間の交流が一層、活発で親密になるように望んでいるというお話がありました。キム・デス所長のセンター紹介の後には、揚平郡が志向する親環境理念を紹介する映像をみました。視聴の後には揚平郡で生産された果物と茶菓を試食しながら、質疑応答形式で、訪韓団と揚平郡農業技術センター側との話し合いの時間になりました。次に農業技術センター内の施設を見学しながら施設の概要及び各部署の担当業務や役割の説明を聞きました。有用な情報などをメモをしながら熱心に説明を聞く訪韓団の姿も見られました。特に、揚平郡のBMW生物活性水プラント施設を見学した時の、親環境農業の一環で揚平郡ではBMW生物活性水を一般農家に無料で提供しているという説明では、農業技術センターの推進力と運営システムに対して羨ましいという声があがりました。BMWシステム原理を直接目の当たりにしながら大変勉強になったという方々もいました。センター視察の後、BMW生物活性水の代表的な事例農家であるダンノモ韓牛農場を見学訪問し、視察旅行は終了しました。


農業者大学校同窓会韓国農業視察調査を終えて
   BM技術協会常任理事 佛田 利弘
(㈱ぶった農産社長、元農業者大学校同窓会長・参与)

 農業者大学校は、昭和四二年に農林省が自立した農業者育成を目的として農村から農業を改革できる教育を行うために設立された農業者教育専門機関(設立:東京都多摩市 現在:茨城県つくば市)です。世界的視野で考え、地域で行動する(Think global act local)理念のもと、一二〇〇人の卒業生が全国で活動しています。この同窓会は、単なる学校の同窓会とは異なり、ほとんどが農業者であることから任期五年の同窓会長退任時に海外における農業の実態を知る視察調査を行っています。その、訪問先と調査テーマは、前任の同窓会長が決めることになっています。前回は、デンマーク(団長:石澤直士元同窓会長)、前々回は、キューバ(団長:金子美登元同窓会長)へそれぞれのテーマを持って訪問してきました。今回は、五年前に韓国国立農業専門学校へ農業教育に調査に行ったことをふまえ、さらにその教育がどのように進められているか、また、韓国農業の新たな姿とその戦略について触れる機会とするために韓国を訪問先として選びました。韓国は、BMW技術の普及も進んでおり、親環境農業政策の枠組みの中でどのように位置づけられているかについても関心があり、陽平郡を視察することにしました。
 視察先は、このほかに、戦略的な人材育成を行っている韓国農業水産大学とさらに韓国政府として農村振興庁を訪問しました。
 今回の訪問のメンバーは、金子美登(一期生)、坂井涼子(三七期生・同窓会長)、佐内哲郎(元教官)、峯村正文(一期生)夫妻、水落重喜(一期生)夫妻ほかの同窓会員とその関係者に生田BM技術協会理事長の参加をいただき、計二一名での参加でした。視察のコーディネイト・通訳は、そらインターナショナルコリア代表取締役の河さんにお願いをしました。
 韓国は、すでに農業においても明確な成長戦略を打ち出しており、親環境農業と価値農業という二つの視点でのアプローチを行っています。陽平郡は、郡レベルでの新たな農法の開発とその化学性の検証を行いながら、その技術の定着を進めています。その中で、BMW技術は、重要な戦略技術として、農業技術センターの実験プラントとして導入されています。生物活性水の利用が研究と農業者を結ぶ機能を果たしている現場に触れました。なぜ、BMW技術が公共セクターの政策として、韓国の農業社会に受け入れられるかは、政治的要素も関係するのでしょうが、明らかなその成果の事実的検証が具体的に行われているところにあります。定性的な成果をいかに定量的に評価をするかという考え方も、その普及に貢献していると見られます。
 参加者からは、その技術導入の戦略性の凄さに、日本の農業政策との違いを強く感じたという感想が漏れ、その世界的な農業技術や教育の習得についても、ベンチマークの手法の意図的な取組に感服をしました。日本では、BMW技術に触れたことのない参加者も、この陽平郡の取組やプラントをみて、理解を新たにしたことでしょう。
 今後、農業者大学校同窓会としても、更なる農業の構造変化にどのように対応するかが求められており、様々な技術や考え方の理解を進めることが必要であると思われます。
 BMW技術の更なる世界的昇華と日本国内における国内的深化が求められているように感じます。このような国内外の農業者に理解が進む技術であることを感じた機会でもありました。

アジアBMW交流会 韓国・楊平郡で10月開催(予定)

 今年、一〇月四日(月)~六日(水)、韓国・楊平(ヤンピョン)郡でアジアBMW交流会が、楊平郡主催、「BMWアジア連帯」主管で開催される予定です。アジアBMW交流会では、BMW技術に取組むアジアの国々が、学術発表、技術交流等を行う計画です。
 BMW技術の普及が著しい韓国では、昨年、ハ・ジョンヒ協会海外特別理事から、アジアでBMW技術に取組む国々と連帯する組織「BMWアジア連帯」が必要ではないかという提案があり、韓国内での協議を経て、日本のBM技術協会へ提議が行なわれ、常任理事会でも了承されました。
 「BMWアジア連帯」は、昨年一二月に韓国楊平郡で開催された、韓国BMW自然循環技術協会交流会で、正式に結成されました。会長には、韓国楊平郡のBMW技術普及に大きく貢献したミン・ビョンチェ初代楊平郡主が就任し、推進委員長には、イ・ヒョンボク協会海外特別理事が就任、事務局は、㈱そらインターナショナルコリアに置くことが決定しました。同時に、アジアBMW交流会を開催することが決定し、現在、関係者による開催内容の検討が行われています。
 韓国・楊平郡では、二〇一一年に、世界有機農業大会(IFOM主催)が開催されることが決定しています。交流会を主催する楊平郡は、アジアBMW交流会を世界有機農業大会のプレ大会として位置づけ、準備をすすめています。

Author 事務局 : 2010年05月01日11:39

【AQUA220号】堀本農園、生物活性水施設の稼動開始

堀本農園、生物活性水施設の稼動開始
兵庫県ではじめてのBMWプラント

報告 株式会社匠集団そら 星加 浩二

 堀本農園における、生物活性水プラントの設置工事は、平成二十一年十二月に五トンのホーロータンク四基の設置を済ませ、二十二年二月にエア配管などの設備工事を完了し、引き続き培養調整を行ってきました。堀本農園での培養調整は、完熟堆肥を原料に農業用水を利用しています。
 約一ヶ月かけて四基のタンク全てが満水になり水質検査を実施しました。最終槽の生物活性水で亜硝酸、大腸菌の検出がないことを確認し、利用開始ができるようになりました。このプラントでは、一日あたり五百リットルまで使用できる設計になっています。また、このプラントでは、生物活性水の原料として完熟堆肥のほか、イチゴへ供給される栽培養液の排水を再利用することも考えています。
 出来上がった生物活性水は、イチゴの栽培溶液の潅水設備を利用して、イチゴの各栽培ベッドごとに、自動的に希釈倍率や供給時間を制御して、供給できるようになっています。
 堀本さんは、これまでに五百リットルの生物活性水を数回潅水しており、気温が上がってきたこの時期に例年では増えてくる灰色カビ病、うどん粉病などの病害が広がってこないなど、すでに効果が見えてきていることを、実感しています。今後は、収量のアップや、イチゴの糖度アップなどに期待を寄せています。
 この堀本農園では、観光イチゴ園というお客さんとの関係を大切にするため、イチゴの安全安心を追求しており、生物活性水はその実施に有効な手段となります。プラントは入り口に設置してありますので、来園したお客さんにも見学してもらい、堀本農園での栽培への取り組みについてアピールできるようにと考えています。またイチゴだけでなく、サツマイモやジャガイモ堀りの畑もイチゴハウスのそばにあり、収穫体験も行っているので、生物活性水の活用場面が広がっていきます。また、地元の農業青年クラブの仲間にも生物活性水を活用してもらうようにして、BMW技術を広めることも考えているようです。


観光イチゴ園 堀本農園 堀本 誠司


 堀本農園「せいちゃんといちごちゃん」では、イチゴ狩りをやっております。消費者の方にどうやってイチゴが作られているか見てもらい、さらには摘みたての美味しいイチゴを食べてもらいたいという思いで始めました。そして安心で安全なイチゴを食べてもらいたいと思っています。そのために今まで、重曹と同じ成分の農薬等、毒性の低い農薬を選ぶようにしたり、去年からは電解酸性水(食塩又は塩化カリウム使用)を使用したり、今年からは硫黄のくん煙を利用して病気をおさえてきました。さらに丈夫なイチゴを作るため、夢のひとつでもあったBMW技術の導入を考えました。ビニールハウスの規模拡大に踏み切るか考え中でもあった私は、今ある規模で、病害のない健康な作物を育て、収量アップと秀品率の向上をしていくため生物活性水にも期待しています。
 私は農業者大学校在学中の半年間の研修で、白州郷牧場で勉強しました。直売所や加工場が建設されていた時期でした。最初に農場の野菜をみて、「農薬を使ってないのになんでこんなにきれいなんができるんや。」と農薬を使わないと虫食いだらけになると思い込んでいた当時の自分は、驚き、感動したことを覚えています。また、こんな野菜づくりを自分もやりたいという夢が持ちました。それからの半年間、白州にどっぷり沁みてました。自然学校「キララの学校」を経験して、イチゴ狩りの夢が生まれたので、白州の仲間に感謝しています。
 私の住んでいる兵庫県にはすぐに見学に行けるプラントがありません。自分の仕事の忙しさの中で、BMW技術の知識が薄まりつつあった私は、数年ぶりに、加古川市の4Hクラブである加古川農業青年クラブのメンバーと、白州郷牧場へまだ建設中のプラントの視察へ行きました。BMWプラント導入の決断にはそう時間はかかりませんでした。
 この度、出来上がった生物活性水プラントは私の農園の目立つ出入り口に設置してあります。来園されるお客さんに「この大きいタンクはなに?」と聞かれることが多くなりました。これから生物活性水の良さをもっと沢山の人に知ってもらえればと思います。

Author 事務局 : 2010年05月01日10:41

 
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