【AQUA218号】ネグロス島・カネシゲファームでBMW技術復興へ

フィリピン・北ルソンのイザベラ州に続き
ネグロス島・カネシゲファームでBMW技術復興へ

報告 株式会社匠集団そら 秋山 澄兄

 昨年の八月にフィリピン・ルソン島北部のイザベラ州カワヤン町の堆肥センターに、農民組合連合コルデヴが管理する生物活性水の施設ができ、BMW技術の普及が本格的にフィリピンで始まりました(アクア二一四号参照)。
 この北ルソンでの生物活性水施設の工事が始まった同時期に、ネグロス島にあるカネシゲファーム(注1参照)では、NPO法人APLAの現地職員である大橋成子さんの夫で、ナヨン村の村長でもあるアンボ氏を中心に、バランゴンバナナの生産団体、BGAのチッタ氏、ビボット氏、そして数名の研修生(近隣の農家等の息子)達の手によって、農場施設全体の復興に向けての作業等が始まっていました。
 アンボ氏は山梨県の白州郷牧場をモデルに、カネシゲファームを立て直す意向を持っており(昨年五月に視察に白州を訪れている)、養豚と耕作の連携、堆肥作りと、それらの基礎となるBMW技術を中心にした有畜複合の資源循環型の農場にしていくことを目標にしています。
 そこでまずは、一九九六年に設置され、現在は稼働停止となっている生物活性水施設を復活させることになり、昨年一二月一八日~二二日に、椎名盛男BM技術協会常任理事と、私が現地を訪れ、生物活性水施設の復旧作業とカネシゲファーム全体の構想図についての話し合いが、アンボ氏ら現地側と持たれました。

 すでに現地では子豚が約二〇頭、放牧の鶏が数十羽飼われていました。この他、研修生たちの小さな畑などがあり、ナスやキュウリ、サンチュ等が栽培されていました。
 また、現地でマスコバド糖を生産しているATC(オルター・トレード・コーポレーション)社の大きな堆肥センターがあり、今後はそこも借り受け、堆肥づくりに利用していくとのことでした。

 現地側とは、生物活性水施設は既存のタンクを修復し、配管等を一からやり直して再稼働させることを確認しました。さらに豚舎の排水を利用しバイオガスを抽出するプラントをつくり、その消化液を原料に生物活性水を作ることに決定しました。
 消化液はそのまま液肥として耕作にも利用されます。生物活性水施設からは、ランポンプ(無動力揚水機)などの自然の力を利用した機材を導入し、豚舎、堆肥舎等に配管していく予定です。
 さらにソーラーパネルや風車(乾季のネグロスはとても風が強い)を利用したクリーンエネルギーの導入も話し合われ、これらを全部一度に導入するのではなく、アンボ氏を中心としたカネシゲファームスタッフのペースにあったやり方で、少しずつ実現していくことも併せて確認しました。このことは彼らにとってとても大事なことだと思います。

 まず今年は、生物活性水施設を再稼働させる㈱匠集団そらと、バイオガスのシステムと施設を導入する現地のエイド財団(数多くのクリーンエネルギーシステムの開発をオランダ人のオーケー氏を中心にネグロスから世界に発信している)とでカネシゲファームの軸となる施設整備を整えることになりました。
 農業指導についても椎名常任理事が今後も関わって行くことが確認されました。この取り組みがネグロス島及びフィリピン全土の有機農業の発展のために動き始めたと言ってもよいのではないでしょうか。ただ、焦らずに彼ら農民の手でじっくりと取り組んでいけるようにサポートできることを願っています。

(注1)カネシゲファーム:一九九五年に逝去された故・兼重正次氏(当時、生活協同組合連合会グリーンコープ事業連合専務理事、BM技術協会常任理事)にちなみ、カネシゲファームと命名された。兼重氏は、一九八八年生協グリーンコープの設立、一九八九年ATJ(オルター・トレード・ジャパン)社の結成に尽力された。今年、設立二〇年となるBM技術協会の結成と技術の普及に多大な貢献をされ、一九九三年から協会常任理事に就任した。
 一九九五年当時、民衆交易を通じて、ネグロス島から日本に輸出していたバナナが病虫害で壊滅的な打撃を受けた。カネシゲファームは、その対策の一つとして資源循環型農業を普及するため、堆肥センターやBMW技術を導入したモデル農場として、ATJ社が開設した。同ファーム内には、民衆交易や農場建設に尽力された兼重氏を偲ぶ、カネシゲメモリアルパークがある。

Author 事務局 : 2010年03月01日12:16

【AQUA218号】BMファーマーズマーケット第2回

BMファーマーズマーケット第2回
青森県 ~ときわ産直品直売所~ 食彩ときわ館

所在地:青森県南津軽郡藤崎町大字榊字和田65-8
電 話:0172-65-3660
定休日:8月13日の午後・8月14日・年末年始
営業時間:午前9時~午後6時(冬季は午前9時~午後5時)
販売品目:卵、野菜、加工品など


 生産者が、農産物を地元で供給するという直売所やレストラン出店等の展開が全国各地で進められ、協会会員産地でも様々な取組みが行われています。そこで、協会会員産地が進めている直売所等の取組みを「BMファーマーズマーケット」と題してご紹介していきます。第二回は、~ときわ産直品直売所~「食彩ときわ館」です。常盤村養鶏農業協同組合の石澤直士代表理事組合長(BM技術協会常任理事)にお話をうかがいました。常盤養鶏農業協同組合は、飼料用米を配合して育てた鶏の卵「こめたま」に関する取り組みで、食料自給率の向上に貢献する企業・団体などを表彰する「フードアクションニッポン・アワード2009」の最優秀である大賞を受賞されした。また、農林水産大臣賞も合わせて受賞されました。

 「食彩ときわ館」は、五年前にオープンしました。店舗面積は約四〇坪で、建物全体の総面積は六〇坪です。おかげさまで売り上げは、この五年で毎年二五パーセントずつ伸びています。開館当初の売り上げ目標は年間五千万円でしたが、二〇〇八年に、その倍の一億円以上の売り上げを達成しました。現在は月平均で約九〇〇万円くらいです。
 常盤養鶏協同組合の卵、鶏肉と豚肉、その加工品、地元の人がつくった野菜、総菜やお菓子などを販売しています。販売商品の八割くらいはこの地域で採れるもの、この地域の生産者のものです。
 スタッフは、館長を含めて五人。幹線道路沿いで、交通の便では恵まれている場所だと思います。売り上げの一五%くらいが卵です。白い卵よりやはり赤い卵が売れます。野菜はアスパラガスが一番よく売れます。次いでニンニク、トマトなど。冬場の地場野菜もこの辺はけっこう多いですし、やはり産直直販は、つくる意欲を持った生産者が地場にいないとだめですね。
 米は津軽ロマンの減農薬減化学肥料の特栽米を販売しています。加工品では常盤村のトマトを使ったトマトジュースの評判がよいですね。鮮度のよい卵を使ったマヨネーズもまろやかで好評です。八峰園のリンゴの木をチップを使ってスモークした、スモークベーコンはお薦めの逸品です。またジャンボシューマイも有機タマネギなど質の高い材料を使っていておいしいですよ。今後の課題は加工品の見栄えをどうよくしていくかですね。
 今の若い人は味の濃い卵が好みのようですが、こういう卵や肉の食べ方はおいしいよ、と料理の仕方の提案もしていきたいですね。たとえば丸鶏なら、ときどきのご馳走として、ローストチキンやサムゲタンなどのレシピをつけて。

 お客さんは、地元藤崎町の人が三割、青森市からが三割、弘前市からが二割くらいですか。購買層は中高年が多く、リピーター率も高いです。一般に道の駅などでは観光客がみやげものを買う場合が多く、産直の商品はそれほど売れないのですが、この「食彩ときわ館」では、産直のものが欲しくてわざわざここまで来てくださるお客さんが多いですね。青森や弘前から来た人の「あそこのものはいい」という口コミでお客さんが広まりました。

 商品の鮮度は重視しています。卵も最大で二日しか置きません。基本は一日ですね。それ以後は全部もって帰ります。最初はけっこう廃棄しましたよ。常盤村養鶏協同組合の一番新しい卵が手に入るのが、「食彩ときわ館」ですよ、というメッセージも出しています。スーパーと同じでは、わざわざお客さんが来てくれませんから、鮮度がよくて価格の安い品物を常に置く必要があると思っています。また、ポイントカード(二年前に発行後約五千枚中現在リピート数千名)も発行しています。

 当初は、産直施設は他にもこの近辺にたくさんあるのでやるわざわざ必要はない、という声がありました。しかし、新商品をまずここで試してみる常盤村養鶏農業協同組合のアンテナショップとして、三年かけてなんとかモノになればいいと思ってはじめました。今は、当初反対していた人たちが一番一生懸命やっています。
 地元の弘前市、青森市の店舗にも三〇ヶ所ほど「食彩ときわ館」のようなコーナーが設けられていますが、かといってバッティングするわけでもありません。こういうスタイルはまだまだ伸びるでしょうね。
 すこし安くしても質の劣るものを出せば、お客さんは離れていきますし、それを取り戻すのは大変なことです。本質的な部分の品質はきちんと貫いていかなくてはいけません。アメリカから来る養鶏飼料も、nonーGMO(遺伝子組み換えでない)のものと、そうでないものでは質がぜんぜん違ってきています。今こそきちんとしたものを出さなければいけない。そこをお客さんに理解してもらえれば、必ず受け入れられると思っています。

Author 事務局 : 2010年03月01日12:14

【AQUA218号】中国江蘇省にBMW技術モデル農場が誕生

中国江蘇省にBMW技術モデル農場が誕生
江蘇省常熟市の「みどり農場」

報告「みどり農場」代表・㈱華和 取締役 戴 海燕

 中国初のBMW技術導入事例となった上海長江農場の生物活性水施設建設の仲介役となった㈱華和では、昨年七月に「常熟農業科技有限公司」を設立し、江蘇省常熟市郊外に約三ヘクタールの土地を借り、「みどり農場」と名付けた有畜複合の循環型農場をつくりました。中国語で“米豆犁農場”と書きます。農場は、上海市から約一〇〇キロの距離に位置しています(位置図参照)。
 この「みどり農場」に昨年末、BMW技術による養鶏用の飲水改善施設及び生物活性水施設が完成しました。中国でのBMW技術の普及の拠点となるモデル農場にしていきたいと考えています。
 「みどり農場」では、昨年秋に農場の土地整備工事が終わった時点で、早速、BMWプラントの設置にとりかかりました。農場側が施設の基礎工事を行い、水槽や配管用のパイプ等の資材を現地調達しました。日本の㈱匠集団そらからは、BMW施設に必要な資材を用意していただき、中国に送っていただきました。一一月には、㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長が「みどり農場」に来訪され、星加部長の指導のもと、華和の職員と一緒に飲水改善施設と、生物活性水施設の設置作業を行い、培養調整を開始しました。その後、一二月中旬に、星加部長が再び「みどり農場」に来訪され、生物活性水の検査を実施しました。生物活性水は透明度があり、無臭で、大腸菌群も検出せず、EC、pH、亜硝酸等のデータも正常範囲と判定され、完成していることが確認されました。
 飲水改善施設及び生物活性水施設の設置時は、人が立てないような強風かつ低温の悪天候の中での作業となりました。星加部長、大変な悪天候の中、ご指導いただき、ありがとうございました。

◆「みどり農場」設立の目的
 中国では、経済の著しい発展とともに環境破壊や、食の安全などの問題がますます深刻になっています。しかし、農業現場に入るとやはり経済効果にばかり関心が高まり、自然環境保全と農業生産との調和を図る技術の研究は、二の次となるのが実態です。
 「みどり農場」は、日本の優れた環境保全技術であるBMW技術を中国国内に普及していくことを目的に、モデル農場として設立しました。多くの中国農業関係者や、消費者に、この「みどり農場」を通してBMW技術を知ってもらい、この技術から生まれた農産物等の恩恵を受けながら、自然環境保護への意識が高まっていくことを期待しています。
BMW技術は、地域生態系を再生する総合的な技術で、この技術を普及していくには、まず「みどり農場」を資源循環・環境保全の新たな農業モデルとして、完成させることが急務です。昨年末に飲水改善と生物活性水のプラントが完成しましたが、これから「みどり農場」は、BMW技術に取組む先輩の方々の生物活性水の応用経験等を生かしながら、新たな研究も進めていきたいと考えています。

◆みどり農場の概要と今年度の計画
 現在、「みどり農場」は、採卵食肉兼用種の平飼い養鶏(五〇〇羽飼育)と、チンゲン菜、ホウレンソウ、ニンニク、ブロッコリ、カリフラワー等、地元の在来種野菜を中心に露地野菜栽培に取組んでいます。また、堆肥づくりは、鶏糞と稲ワラを原料に生物活性水を活用して、堆肥づくりを行っています。
 農場のスタッフは、農業専門家の徐建一さんと、㈱華和の職員の張雪さん、学生アルバイトの三人ですが、周辺の農家も作業の手伝いにきてくれています。
 今年の計画としては、畜産分野では、
①平飼い養鶏での飼育規模を二、〇〇〇羽に増やす予定です。
②養鶏の経験を積みながら、周辺住民への配慮を行いながら、養豚を開始します。三〇頭規模からはじめ、徐々に頭数を増やし、二〇〇頭飼育までを目標にしています。踏み込み式飼育法を採用する予定です。
③発酵飼料づくりを開始します。
 野菜栽培分野では、
①土づくりに全力投入し、現状の減農薬栽培から徐々に無農薬、無化学肥料栽培に転換していきます。
②生物活性水の使用区、未使用区を設定し、対照実験を行います。
③地域に適した優良品種野菜を選定するため、少量、多品種の栽培に取組みます。
 この他、土づくりに必要な堆肥やぼかし肥づくりや、農産物の販売ルートを模索します。

◆中国におけるBMW技術の普及と今後の展望
 中国でのBMW技術導入は、二〇〇四年に、日本でBMW技術と出会い、同年、長崎浩協会顧問、椎名盛男協会常任理事を始め、協会のリーダーが上海で、中国側とBMW技術に関する懇談会を行ったことがきっかけとなりました。二〇〇五年には、上海長江農場で、中国で第一号となる生物活性水施設が完成しました。それから五年余り、ほぼ毎年、中国側の有識者が日本のBMW技術現場の視察を行い、また協会の清水澄常任理事や、向山茂徳常任理事、礒田有治事務局長らに、中国現場の指導や、講演などを実施していただきました。昨年、一一月には、生田喜和理事長、伊藤幸蔵副理事長に、いち早く「みどり農場」にお越しいただき、土づくりや、堆肥づくり等を指導していただきました。
 今回、BMW技術モデル農場が完成したことにより、この技術に関心を持っている中国人は実物を見ることが可能になり、よりBMW技術を理解しやすくなります。また、日本のBM技術協会メンバーの方々からのご指導も受けやすくなります。今後は、中国におけるBMW技術の普及活動は発展していくものと考えています。
 近年、中国でも食の安全問題に対する関心は、日に日に高まっています。人々は、お金持ちになりたいとはいえ、やはり健康には、気を遣っています。ただし、農業や漁業で確かな安全を保証する栽培・飼育技術や養殖技術等を研究している機関や現場は、非常に少ないのが現状です。特に畜産現場では、土や水や空気を汚し、その上、薬漬けというのが現状です。BMW技術の活用により、畜産の悪臭や、土や水の汚染を解消し、さらに抗生物質等の薬品を使わずに育成した鶏や豚等の畜産品は、消費者に大歓迎されるでしょう。もちろん、安全な食品を生み出したBMW技術に対し、農家や行政の関心が高まるでしょう。BMW技術が普及すれば、結果として、環境を守る目的を達成します。それが私達の願いです。
 この度「みどり農場」に飲水改善及び生物活性水施設が完成したこと自体は、まだ、BMW技術の入り口に立ったに過ぎないと思います。これからが、本当の始まりですので、BM技術協会の皆様のより一層のご指導と、ご支援を頂くよう、よろしくお願い申し上げます。

Author 事務局 : 2010年03月01日12:12

 
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