【AQUA215号】第19回BMW技術全国交流会、茨城県大洗町で開催

人々の連携で流域の「いのち」と「農・食・くらし」を守ろう

第19回BMW技術全国交流会が「水が育む『農・食・くらし』~筑波山系から涸沼へ『いのち』の物語」をテーマに一一月二○日(金)から二一日(土)の二日間、茨城県大洗町の大洗ホテルで開催されます。


「茨城県での全国交流会開催にあたって」
第一九回BMW技術全国交流会実行委員長 清水 澄

 一九九六年以来、茨城県で二回目の開催となる今交流会のテーマは、実行委員会での議論を経て「水が育む『農・食・くらし』~筑波山系から涸沼へ『いのち』の物語」としました。茨城県を象徴する山「筑波山」は、ミネラルが濃縮された岩石である花崗岩帯でできています。筑波山系を水源とする涸沼川流域は、ミネラル豊富な水が流れ、昔、豊かな生態系がありました。
 茨城BM自然塾は、地域の仲間で作る「茨城町 水と自然を守る会」とともに、この涸沼川流域の環境改善を一つのテーマとして取組んでまいりました。
 昔の涸沼川流域の豊かな生態系を知る古老たちに、聞き取り調査を行いました。古老たちは、「一九七〇年前後は、四季折々、七〇~八〇種もの淡水魚や海水魚が獲れ、涸沼の豊かな恵みをもらっていた。しかし、高度成長時代から、人々の生産・生活は変わり、流域の開発も進み、現在、当時の流域の風景は、大きく、様変わりした」と話します。
 日本三大汽水湖といわれる涸沼は、この三〇~四〇年の間、涸沼に流れ込む河川から生活雑排水や工場排水、農業排水等によって、涸沼の水質を悪化させるとともに、ヘドロを堆積させ、魚介類の生息に悪影響を与えてきました。「茨城町 水と自然を守る会」が長年続けてきている水質調査結果は、このことを如実に示しています。
 この涸沼の環境悪化をなんとか食い止めよう、また、地域の水や土を守ろうと、茨城BM自然塾は、BMW技術を駆使して、畜産糞尿の資源化による耕畜連携農業、水田を活用した水の浄化、家庭雑排水の資源化、ヘドロの堆肥化等の実践や研究を行ってきました。
 家庭雑排水の資源化の実践例が、田中邸菜園(鉾田市)です。田中邸菜園はBMW技術を土台に、家庭雑排水で生物活性水をつくり、その生物活性水を水田や、養鶏、耕作に利用する等、雑排水を家庭内から一滴も外に出さない仕組みが完成されています。
 昨年、茨城BM自然塾は、BM技術協会、NPO法人生物多様性農業支援センター、パルシステム生活協同組合連合会、生活協同組合パルシステム茨城とともに、この田中邸菜園の生物多様性や水質・土壌を調査しました。結果は、排水の水質改善や生態系の保全・再生について、好数値が得られました。
 今年は、フィールドを涸沼川流域とし、昨年の調査団体に、新たに、らでぃっしゅぼーや株式会社の参加と、有機栽培あゆみの会の協力をいただき、筑波山系「流域生態系保全・再生」調査研究・学習プロジェクトを立ち上げました。涸沼川流域の岩石調査や、水田の生物多様性及び水質・土壌調査等を実施し、貴重な体験とデータを得ました。水質改善や生態系の保全・再生にBMW技術が有効であることの証明が、数値的にも裏付けられつつあることを確信しています。
 調査段階で、地域の方々にも参加を呼びかけ、活動に加わっていただきました。この調査・学習活動や、BMW技術の普及を通じ、流域の水質浄化や、地域生態系の再生につなげ、次の世代に豊かな流域環境を残していきたいと考えております。
 自然浄化の仕組みを土台としたBMW技術は、生態系を再生できる技術として、以前より行政に取り入れられています。高知県の鏡川、四万十川、吉野川流域で、地方自治体会員を中心に、水源や河川環境を守る活動の実践がそれです。そして、その現場を視察した韓国楊平(ヤンピョン)郡では、ソウル市民の水源を守るため、BMW技術を活用した『親環境農業』に地域を上げて取組んでいます。さらに、北海道・根釧地区では、酪農家を中心に、牛の健康と、健全な土壌や水を守る活動にBMW技術が活用され始めています。
 河川の流域には、多くの人々の生産や生活の営みがあり、人間の都合で、流域の地域生態系や環境を悪化させるという現実があります。BM技術協会は、生産や生活、地域のあり方、技術のあり方を変えていくことを協会設立以来掲げ、資源と人と技術が循環し、流域の水や土を保全・再生する活動を国内の各地域や、アジアの国々で実践してきました。
 今交流会では、どの地域にもある流域の水が育む多様な『いのち』と、それらに支えられている『農・食・くらし』を切り口に、会員及び関係者の皆様が取組んでおられる実践活動の発表と交流を通じ、BMW技術に取組む国内外のそれぞれの地域で、どのような活動を行い、また連携して展開していけるのか、共に考えていく場とします。

「茨城県での全国交流会開催にあたって」
第一九回BMW技術全国交流会副実行委員長 小谷 悠子

 茨城県は、首都圏の一角に位置しながら、霞ヶ浦や筑波山など水と緑豊かな自然や広大な平地を有し、気候が温和で恵まれた条件の下で農業・漁業の一大生産拠点として、首都圏の食料供給に重要な役割を担っています。
 今回、茨城でBMW技術全国交流会が開催されるにあたり、筑波山系の水系のもとになっている岩石調査を行うと共に、涸沼までの水系をたどり、流域の農業やくらしが水質にどう影響を及ぼしているかなど、生態系の保全・生物多様性再生のための調査・研究を行う活動に参加し、貴重な学びの場を得ました。
 筑波山系の岩石はミネラル豊かな花崗岩帯であり、豊かな水のもとになっていることを学び、一方では生活雑排水や工場排水、農業排水が水質を悪化し、多様な生物体系を壊している事実を改めて確認しました。
 戦後の六〇年余りで、私たちの暮らしは急激な変化を遂げ、便利で豊かな生活が出来るようになりました。電化製品が家庭の主婦を家事労働から解放し、テレビ映像で娯楽を楽しみ、時間・経済・労働の効率を上げ経済の急成長を遂げました。その影で合成洗剤・農薬・添加物などの化学製品があふれて一気に環境破壊をもたらし、青く澄んだ地球を病んだ星へと変えてしまい、今もなお環境を破壊しつつあります。
 「いのち」や「くらし」よりも利便性が優先された結果、地球温暖化が進み近年の異常気象は干ばつや大雨を各国にもたらし、食糧確保さえ危ぶまれる不安の広がる未来です。
 協同組合は、全ての人々の暮らしに貢献することが大きな使命です。
 パルシステムグループでは、資源循環型社会づくりに向けての政策方針を持ち、食の基盤である農業・漁業の健全な成長発展を目指して、地球環境保全に取り組むとともに国内自給率向上を求めて今年度も引き続き「100万人の食づくり」運動を展開しています。
 地域で「いのち」の源である水や土を保全・再生する技術を支援し、消費者にも広く認知していただけるよう努めて参りたいと決意いたします。

Author 事務局 : 2009年12月01日16:33

【AQUA215号】BMファーマーズマーケット第1回

 生産者が、農産物を地元で供給するという直売所やレストラン出店等の展開が全国各地で進められ、協会会員産地でも様々な取組みが行われています。そこで、協会会員産地が進めている直売所等の取組みを「BMファーマーズマーケット」と題し、今号から紹介していきます。第一回は、ポークランド「桃豚」直売所、COMOMO(こもも)です。㈲ポークランドの豊下勝彦代表取締役(BM技術協会常任理事)にお話をうかがいました。

秋田県 ポークランド桃豚直売所 COMOMO(こもも)
所在地:〒017|0201
秋田県鹿角郡小坂町小坂字上前田4|5
電 話:0186|29|4004
FAX:0186|29|4022
営業時間:午前10時~午後7時(平日)
日曜は午後6時まで
定 休 日:毎週月曜日・年末年始
販売品目:精肉、調味料、米、野菜など

 ポークランド桃豚直売所、COMOMO(こもも)は、昨年の一二月一三日にオープンしました。店名は、小坂町の「こ」と桃豚の「もも」をあわせて命名されました。
 いままで生協などの流通を通して「桃豚」を販売していましたが、地元のお客さんが直接買える店舗がありませんでした。地元ですぐに「桃豚」が手に入る店をつくりたい、小坂町に来た人にお土産として買っていってもらえる店にしたい、と思ってはじめました。
 去年のオープン日には、一時間で豚肉が三〇〇パック売れました。そろそろ開店一年になりますが、需要としては普段使いの豚肉の購入もありますけど、セット物などのギフト系の販売が多いですね。
 また、トンカツの販売を先月からはじめました。この店内で調理しています。家庭が核家族になると、わざわざ家で油を熱して調理するより、お店で揚げておいてもらった方が助かるという声があります。近々、コロッケもはじめます。調理品はスタッフで試食して、衣と肉の相性とか、冷めてから食べた場合の味などをみています。揚げ物以外にも豚肉を使った総菜類を、ビュッフェ形式の量り売りでこれからやりたいと思っています。
 それから「こもも」の店頭では、豚のホルモンも販売しています。豚の内臓は、足が速いので、量販店にはほとんど出していないのですが、この店では好評ですよ。
 店舗においてある野菜類も、ポークランドの農園でつくったものです。無農薬が基本で、協会が取組んでいる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座で学んだ方法で栽培しています。野菜もそこそこ売れています。露地野菜だと、ここらの人は自分の家でつくっているので、需要としてはまだ少ないかもしれませんが、いまは様子をみています。

 店舗面積は約二四坪で、現在、月に約七〇〇万円から八〇〇万円程度の売り上げがあります。当初の売り上げ予測を上回っています。もともとポークランドでは「桃豚の会」という消費者との通販・宅配をやっていましたから、ある程度はお客さんの声が聞こえていたのですが、こんなにも地元に潜在的な需要があったのか、という感じですね。小坂町の人口は約六千人しかいないのですが。
 秋のギフト商品も、去年の売り上げの倍まではいきませんが、目標としていた数を簡単に越えました。
 購買者層で言えば、小坂町は元々鉱山の町なので、鉱山関係の年金生活者の方が多いですね。また、会社員のお客さんはギフト系の商品をよく購入されます。近くの十和田湖への観光のついでに来られるお客さんも、直売所があるからなんとなく寄ってみる、というよりは、はじめから買う目的を持って来てくれる方が多いですね。ポークランドの職員も、仕事の帰りに買っていったりするようです。
 ポークランドでは、来年四月に大規模な加工所をつくる計画がありますので、そちらの方に食育や農業体験ができる施設をつくり、そこで商品販売も行いたいと考えています。もともとポークランドの体験農園はあるのですが、十和田湖観光のコースとしても寄ってもらえるような性格の場所にしたいですね。だいたい一一月から四月は冬の十和田湖観光は止まるのですが、通年来てもらえるようなプログラムを考えています。ここは、東北自動車道のインターがすぐそばにありますし、交通は決して不便ではないですから。
 ハム・ソーセージなどの加工品製造はずっとやりたかったのですが、いままで手が回りませんでした。どうせやるからには無添加など、独自な商品をつくりたいですしね。今、白神酵母系のものを使った、まったく保存料を使わない加工品などを、秋田県の食品研究所といっしょに開発しています。豚自体の商品開発、たとえば飼料米をつかった「米豚」など「桃豚」以外のブランド開発も色々とやっています。BMW技術を使って薬品量を少なくして、健康な豚を育てていますという情報も店内で流しています。また、他のBM産地である、山梨県の白州郷牧場の鶏卵などもこの店で扱っています。

Author 事務局 : 2009年12月01日16:30

 
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