【AQUA210号】バナナ生産農家に生物活性水で発酵させたBM堆肥が定着

タイにおけるBMW技術普及の現状
バナナ生産農家に生物活性水で発酵させたBM堆肥が定着
~資源活かしたBM肥料・液肥開発も進む~


PAN PACIFIC FOODS CORPORATION LIMITED  木村 俊夫


 昨年の七月二九日、タイでは第二号となるBMW(生物活性水)プラントがタイ南部の無農薬ホムトンバナナ産地の中心組織であるチュムポン県ラメー郡トゥンカーワット農園経営農民会の敷地内に設置され、開所式が執り行なわれました。
 プラント完成後、農民会では生物活性水の無償支給、BM堆肥・液肥の製造などを通じてバナナ生産者の栽培コスト削減支援を進めており、早速プラントが有効活用され始めています。最近までこの第二号プラントには第一号プラントのあるペッブリー県バンラート郡で製造されたBM鶏糞堆肥が原料として使用されていましたが、四月下旬に、㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長が訪タイされ、農民会のBM堆肥も原料として使用可能なレベルになっているとの太鼓判をいただいてからは、農民会で作ったBM堆肥を生物活性水の原料として使用し始めています。

バナナ生産農家に普及するBM堆肥
 現在までに、BM堆肥はバナナ生産農家を中心に評価が定着しつつあり、受注も安定してきています。バンラートのバナナ生産者で継続的に使用しているのは二一名にのぼりますが、資金力の無い生産者はなかなか継続して使用できていないのが現状です。一方、チュムポン県のバナナ生産者は雨季の始めに集中して発注する傾向があります。
 ただ、今年度の販売量そのものは前年比でほぼ半減しています。サイアム・タクミ社(タイのBMW技術普及会社)の前年度総会の方針に基づいて在庫の縮小を進めてきたことで、年初の販売量が減ったことが第一の原因。次に年度半ば頃より化成肥料の市価高騰が進み、農家(バナナ農家に限らず)の化成肥料離れが進んで厩肥としての鶏糞の需要が高まったことが原料である鶏糞の需給逼迫に繋がったことが挙げられます。この結果、プラユーン養鶏場以外からの鶏糞原料の調達が非常に難しくなりました。一時期には注文に生産が間に合わない状態に陥り、牛糞も調達して堆肥を製造することにしました。またホムトンバナナの出荷残渣も破砕機にかけて堆肥原料として利用することにしました。
 牛糞堆肥の質についてはいくつかの研究資料によれば鶏糞に比べて燐酸とカリが豊富ということなので、特に味を良くするという面においてはバナナにはむしろ適しているかもしれないとの仮説の下に製造に取り組みました。最初の試作品は二〇〇八年の早い段階で出来上がり、作付け後五~六カ月目のバナナに試験的に導入しようとしましたが、六月にチュムポン県で発生した突風被害の緊急支援で、産直協議会により大量の堆肥注文をいただいたために、これらの試作品もすべて緊急支援に回すことになりました。それもあって、この時の牛糞堆肥は十分な結果のフォローができなかったため、現在作り直しているところです。他にも、鶏糞との混合堆肥、麹を混ぜた牛糞堆肥の二種類を製作しています。
 バナナ残渣肥料はバンラートのある生産者が土壌改良目的で使用しており、サンヘンプというマメ科の緑肥を同時に撒くなどして工夫しています。
地域資源を活かして、
BMボカシ肥料とBM液肥を製造
 このほか、サイアム・タクミ社はバナナ栽培実験用に、ボカシ堆肥と液肥を製造しています。ボカシ堆肥は二〇〇八年九月、一一月、一二月の三回に渡り製造し、最初の二回分(米糠とBM堆肥、生物活性水を原料にしたもの)はチュムポン県に送られてバナナ生産者に無償でサンプル支給されましたが、堆肥の出来そのものが芳しくなかったようで、期待された効果は確認されませんでした。三回目のものはこれに魚粉を混ぜて製造したもので、ペッブリー県内のバナナ生産者にサンプルとして無償配布しました。現在、効果をフォロー中です。
 一方液肥は海老の殻、魚のアラ、バナナ残渣、「味の素」の製造粕の四種類を原料に生物活性水を混入し、曝気しながら製造したもので、アミノ酸液肥としてバナナの生育促進効果を期待したものです。二〇〇八年一一月と二〇〇九年二月の二回に渡り、製造し、チュムポン県に持ち込んで実験を行っているほか、一部はバンラートの出荷作業員に無償で支給し、マナオ(タイのライム)や野菜などに試験的に使用してもらっています。
 ペッブリー県のバンラート地域における生物活性水のホムトンバナナ栽培への直接の利用は、残念ながらあまり普及はしていません。ほとんどがBM堆肥という形での導入で、生物活性水をそのまま圃場に使うケースは二~三圃場に限られています。多くの生産者が、プラントから水を運搬するための車両を持っていないというのが最大の原因です。また生物活性水は、たいていの場合潅水の際に水と一緒に混ぜて使用するという方法がとられているため、その方法も一般の農家にとっては少し手間のようです。
 鶏糞原料の価格が上昇している今、今年度は牛糞を代替原料として導入していくことで対応していくことになりそうです。現在、各産地でバナナの生産拡大が積極的に進められており、新規生産者が増えてくることが予測されるため、BM堆肥の宣伝と同時に需要増に備えて生産体制を整えていきます。一方液肥については、バナナへの効果はまだ確認されていませんが、他の作物ではポジティブな結果が得られていますので、今後商品化する可能性は十分にあると見ています。今年度はさらにデータを確実なものにして商品化の見通しを立てていきたいところです。

Author 事務局 : 2009年07月01日21:24

【AQUA210号】「ウェル&グリーンファームのだ」をパルシステム千葉組合員が視察体験

「ウェル&グリーンファームのだ」をパルシステム千葉組合員が視察体験
NPO支援センターちば 遠藤尚志

 五月三日、地域循環型農業を目指し、BMW技術が導入されている千葉県野田市の「ウェル&グリーンファームのだ」(生活協同組合パルシステム千葉と、NPO支援センターちばが運営)の視察体験がパルシステム千葉組合員を対象に開催されました。
 本企画は、NPO支援センターちば主催の、親環境型の米作り親子農業体験「お米づくりツアー二〇〇九in 野田」(後援:パルシステム千葉、指導・後援:㈱野田自然共生ファーム)開催に併せて実施したもので、「お米づくりツアー」に参加した生協組合員一七家族四二人が「ウェル&グリーンファームのだ」の視察体験に参加しました。
 野田市江川地区での田植え体験を終え、「ウェル&グリーンファームのだ」に到着した参加者は、最初に園芸福祉農場、次に昨年、地域循環型農業をすすめるために導入された生物活性水施設を見学し、最後にBM技術協会が企画している~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座で学んだ有機栽培理論とBMW技術の融合によるBM応用実践ハウスでの野菜の収穫体験に参加しました。
 まずは、二〇〇六年から取組んでいる園芸福祉農場にてNPO支援センターちば・遠藤と「お~い船形促進隊」(退職者ボランティア組織)代表の桐山昌之さんより、障がいを持つ人や高齢者や大人や子供、誰でもが参加できるような農業、農園づくりを目指している「ウェル&グリーンファームのだ」のこれまでの経過について説明を行いました。その後、生物活性水施設では、BM技術協会の礒田有治事務局長から、有機栽培や生物活性水についての基礎的な説明を行いました。最後に、応用実践ハウスでは、パルシステム千葉の宮城直氏から、山梨県の白州郷牧場で研修を受けたサンチュ栽培や、生物活性水の応用実験についての説明の後、実際にサンチュやシュンギク、チンゲンサイの収穫体験を行いました。
 多くの参加者、特に子供たちにとっては、野菜がどのように作られているのかを見ること自体が初めてだったようですが、これまで野菜嫌いだった子供がハウスでの「BM野菜」収穫体験の後、サンチュなどの野菜をもりもり食べるようになったといった感想が、視察体験をした組合員から寄せられています。
 今後も親子農業体験「お米づくりツアー二〇〇九 in 野田」では、六月、八月に「草刈りツアー」八月末に「稲刈りツアー」、九月には「収穫祭ツアー」が予定されており、それにあわせて有機栽培理論とBMW技術の融合によって栽培された野菜の収穫を実際に体験してもらいながら、有機栽培やBMW技術について紹介する企画を進めていく予定です。

Author 事務局 : 2009年07月01日21:22

【AQUA210号】竹田純一氏講演「地元学へようこそ」

筑波山系「流域生態系再生」調査研究・学習プロジェクト 講演会

竹田純一氏講演「地元学へようこそ」
 五月二五日、茨城県水戸市、生活協同組合パルシステム茨城にて、「地元学へようこそ」と題して、NGO「里地ネットワーク」の竹田純一氏による講演が行われました。筑波山系「流域生態系再生」調査研究・学習プロジェクトの一環として、流域の現地調査に当り、その調査手法を学ぶ学習会として実施されたものです。竹田氏の講演要旨は、以下の通りです。
地元学の手法、意義、効果
 「地元学とは、五千分の一地図を持って、地域を見て歩く住民参加プログラムで、地域の人たちがその地域の暮らしや自然、互いの関係やつながりを再発見するために使う『手法』だ。
 たとえば、集落の水源や水の流出先、森林の様子、集落にいる動物や食べられる植物など、生活にまつわるものを調べていく。また、地域の神様や昔の農具、料理、遊び、言い伝えなどをみんなで確認する。見つけたものを地図の中にその土地の言葉で記録していく。そうしてできあがる地図は『人づくり・ものづくり・地域づくり』に活かせる材料になる。
 外部スタッフなど『よそもの』が加わることで、地域をさまざまな視点で見るきっかけになり、住民には当たり前で普段見落としてしまっている価値に気づくことができる。また、子どもからお年寄りまでが参加することで、文化の継承に結びつく。
 さらに地元学を行うことによって集落全員のコミュニケーションを形成し、地域の人々が共通体験を持つことができる。住民が共通意識を持てれば、地域づくりに向けていろいろなことが動き出す。里地は持続可能社会のシンボル。そこにある資源を活かして暮らしが成り立っていることを、みんなで共有し合い、考え、広げていく。
 すると、外部の『よそもの』が投げ掛けた地域づくりを、いつの間にか地域の人たち自らが率先して行うようになっていく。そこから地域の持つ潜在的な力が現れてくる。地元学を実践して、再確認したさまざまな価値が地域づくりのために活用されていく」。
 質疑応答では、「行政とどう関わったらよいか?」などの質問が出されましたが、竹田氏からは具体例を多く挙げた説明があり、今後の筑波山系流域調査にも活用可能なことが多く学べた講演会でした。
(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年07月01日21:21

【AQUA210号】第1回「田んぼの生きもの及び水質・土壌調査」を実施)

 五月二四日(日)、茨城県茨城町にて、筑波山系「流域生態系再生」調査研究・学習プロジェクトの一環として「第一回田んぼの生きもの及び水質・土壌調査」が行われました。プロジェクトの実行委員会を構成する生活協同組合パルシステム茨城、茨城BM自然塾、らでぃっしゅぼーや㈱、パルシステム生活協同組合連合会、NPO法人生物多様性農業支援センターBM技術協会の他、ゼネラルプレス等から、四一人が、調査に参加しました。
 同プロジェクトは、昨年の茨城県田中一作邸のBMWシステムの生態系調査の発展形として、良質の水をつくる花崗岩を産出する、筑波山系を水源とする河川流域に沿って、下流の涸沼までの水系の生態系や環境、それに基づく農業、漁業、また文化について、調査・研究するもの。今秋、茨城で開催されるBMW技術全国交流会の活動の一環としても、展開されています。
 具体的には、筑波山系の水系のもととなっている岩石調査や、流域の水質や、生態系を構成する生きものはどう変化しているのか、流域の農業や生活がどう影響を及ぼしているのか、また、その中で水田の持つ多面的役割やBMW技術の活かし方等について、流域をフィールドに、幅広い参加者を対象として、調査研究・学習活動を実施していく予定となっています。

調査地点と調査方法
 今回の調査地点は涸沼前川中流域に位置する、茨城町馬渡の清水澄BM技術協会常任理事のBM水田、涸沼川下流域に位置する、涸沼に近い茨城町下石崎の大場農園の水田の調査をしました。
 調査地点となっている「清水BM水田」は、暗渠に、茨城県稲田産の花崗岩と、粘土を五、六百度で焼いて砕いたものが埋設されています。焼かれた粘土は、軽石のように細かな気泡ができ、また磁力を帯びるためバクテリアが住み着くのに適した環境になっているということです。この暗渠にはエアレーション設備が設置され、水田の水はこの暗渠からポンプで引き上げられて、また水田に戻るという循環をしており、水田自体がBMWプラントと同様の構造となっています。
 もう一方の調査地点となっている大場農園では、慣行栽培の水田と無農薬不耕起栽培の水田の二カ所で調査を行いました。
 大場農園に近い涸沼は、上流の笠間市を水源とする涸沼川や大谷川などが流れ込み、海と通じ、淡水と海水が混ざりあう汽水湖となっています。また、シジミなどの生産も盛んな湖です。
 今回の第一回調査では、生きもの調査については、動物と植物調査を行いました。動物調査は田んぼの中を一列に並んで入り、観察するラインセンサスと、あぜや水路、田んぼの土の中などを幅広く観察するランダム調査を行いました。ラインセンサスではあぜから四メートル離れた地点と一五メートル離れた地点に柱を立て、その中間の一一メートル(約一二~一三株)の距離を約〇・九メートル(幅三条)の範囲で観察し、生き物の種類と個体数を調べました。面積にすると約一〇平方メートル(約〇・一アール)の調査範囲になります。
 あぜや水路ではカエル、魚類の採取をして、バットやミニ水槽に入れ、「田んぼの生き物図鑑」を使用して種類を同定しました。
 植物調査では、花の咲いていない植物は判別が難しいので、花の咲いているものに限定し、花の色ごと(白、黄、赤、青、緑、その他)に選別して、葉の枚数やその他の特徴から「田んぼの生き物図鑑植物編」を使用して同定しました。同定できないものはダンボールと新聞紙で挿み、標本として持ち帰り、後で詳細に調べます。
 清水BM水田と大場水田の生きもの調査で確認された動植物は、表1のようになりました。
 水質・土壌調査調査は、各水田の①用水②水田水③排水の水と、各水田の土壌を採取し、水質調査(BOD・COD、成分分析等)と土壌分析を実施しました。土壌分析の結果は表2の通りとなっています。
 今回は、雨天下での調査でしたが、水田の動植物が筑波山流域のなかでどう水環境に関わっているか、地域の人々と一緒に考えていくスタートになる調査となりました。
 調査結果は毎回まとめられ、今秋に行われるBMW技術全国交流会で発表される予定です。
 今後の「田んぼの生きもの及び水質・土壌調査」は、第二回が六月二八日(日)、第三回が七月二五日(日)に予定されています。
 参加ご希望の方は、パルシステム茨城、組合員活動支援課・増子まで(電話〇二九|三〇三|一六一六)
   (報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年07月01日21:16

 
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