高知県大川村で常任理事会開催【AQUA209号】

高知県大川村で常任理事会開催
吉野川水源の日本一小さな村をBMプランで再生へ


 四月二一日~二二日、BM技術協会常任理事会が、協会の自治体会員である高知県大川村で開催され、同村が取組む畜産現場等の現地視察や、取組みへの提言が行われました。
 四国・吉野川の源流地域であり、人口四八〇人を切った「日本一人口の少ない村」大川村では、平成一九年度から高知県畜産試験場が開発した「はちきん地鶏」生産に取組んでいます。同村では、この地鶏生産と資源循環型社会づくりへのBMW技術の活用を、村を上げて取組む方針です。取組みに当って、協会への協力要請があり、これを受けて常任理事会開催の運びとなりました。
 二一日に開催された「はちきん地鶏」生産施設等の現地視察会には、協会常任理事及び事務局と㈱匠集団そらから一一人が参加。同村関係者や、県畜産試験場関係者からも約二十人が参加し、地鶏生産施設や、堆肥場、和牛生産施設、生物活性水施設等を視察しました。参加した常任理事からは、鶏の飼育環境や飼育技術、施設、飼料をはじめ、堆肥管理、人材育成や商品開発等、様々な視点からのアドバイスや提言が行われました。また、今後、協会として、大川村の取組みに協力していくことを確認しました。

 高知竜馬空港から車で約二時間ほど急峻な山道を抜け、大川村に到着した常任理事一行は、「ふるさと村公社」学習室に集合し、村からブリーフィングを受けました。
 まず、大川村の合田司郎村長から歓迎挨拶がありました。「大川村は、県の最北端に位置し、北側は愛媛県に接している。日本三大暴れ川・吉野川の源流であり、その水源を涵養する山々に囲まれている。ピーク時に約四千人いた人口は、銅山の閉鎖や、四国の水がめ『早明浦ダム』建設による村の大部分の水没などにより、四七三人にまで落ち込んだ。二〇〇五年に、離島以外の日本の市町村の中で最も人口が少ない村となった」と大川村の概要と歴史について説明がありました。
 大川村役場事業課の明坂健喜課長補佐からは大川村における農業の現状と「大川村BMいきいきプラン」についての説明がありました。
 大川村の農業用地は、水田九・七ヘクタール、畑八八・七ヘクタール、ハウス一・九ヘクタール。「はちきん地鶏」養鶏は、二一年度には、四万羽出荷、二二年度には十万羽出荷体制にする計画だそうです。
 「大川村BMいきいきプラン」は、村内資源循環型社会を目指し、若者から高齢者までが生き生きと暮らせる社会として、①村内全体で有機廃棄物をトータルに資源化する②一般家庭・耕作農家・畜産農家から出る有機廃棄物をそれぞれの発生源で資源化(ミニリサイクル)③各発生源で行うミニリサイクルは、堆肥センターで、総合的に結びつき村内全体のリサイクルを確立する④村内循環型有機農業を推進することにより、地域の水、自然環境を守る⑤有機農業の活性化により、安全な食品を地域内に供給し、村民の健康増進を図る⑥生態系の自然浄化作用をモデルとし、環境への負荷をできる限り軽減する――という構想になっています。プランの実現化にむけては、短期、中期、長期の目標を定めていくことを基本戦略としています。
 次に、村議会の朝倉慧議長から大川村の大幅な人口減少や、村づくりの経過と、今後の産業振興等、展望についてお話がありました。またBMW技術を活用した村の再生へ向け、協会への協力要請が行われました。具体的な協力要請事項として、①飲水改善施設の設置及び技術指導②畜産排泄物処理施設の設置及び技術指導③土佐はちきん地鶏生産施設の改善対策指導④土佐はちきん地鶏販路拡大対策の指導⑤その他関連技術の指導――が、上げられました。
 この後、常任理事や村関係者、県畜産試験場関係者ら、お互いの自己紹介を終えたあと、全員で大川村のはちきん地鶏の鶏舎、土佐赤牛(褐毛牛)の牛舎、堆肥センター、BMプラント等の視察が行われました。

 視察の後は再び、「ふるさと村公社」学習室に戻り、高知県畜産試験場の長坂直比路中小家畜課長より、高知県の養鶏状況、はちきん地鶏選択の経緯、高知産地鶏の詳細などについて解説がありました。
 続いて、BM技術協会礒田有治事務局長からBM技術の概要と理論について解説が行われました。
 その後、各常任理事から、大川村の地鶏生産施設、和牛生産施設、堆肥場等の状況を視察した感想と村への提言が、以下の通り行われました。
向山茂徳常任理事「養鶏は地面の下と上が大事であり、換気がすべて。地面の下には二~三センチ位よい堆肥を敷いて、微生物の力で雑菌をおさえる。現在、給餌は人間が行っているが、機械を導入して人間は他のところに使うべき」
佛田利弘常任理事「まず、いいものをつくる。他と同じものではもう消費者に相手にされない。そして人をつくる。各担当で業務を引っ張っていく人をはっきりさせ、権限を与えて育てる。最後に仕組みをつくる。技術体系や社会の要求に応える構造をつくる。都会に支配された時代は終わった。過疎を優位性に変えていかなくてはいけない。これからは過疎が日本を支える」
山本伸司常任理事「とても安いか、とてもこだわった商品でないと売れない時代になった。大川村では、こだわった商品をつくる必要がある。自給率を考慮し、飼料米等で育てた豚肉は二割高くても売れる。たえず鶏を研究し、技術研鑽していくことが重要。言われたことだけをやっていてもホンモノのいい鶏は育たない。大川村にはポリシーはあるがそれを実現させる技術をこれから確立する必要がある」
伊藤幸蔵常任理事「現状でも、BMの施設等はあるが、それがうまく活かされておらず、もったいないといういうのが第一印象。枠はつくられているがうまく運用されていない。技術を持った人づくりが急務」
向後武彦理事「間伐材などの地域資源を有効利用できる木質チップボイラーをハウスに導入してはどうか」

 最後に、BM技術協会として大川村の環境保全型農業による村の再生に協力することを約束して閉会し、場所を移しての懇親会となりました。懇親会では、より、具体的なアドバイスや、提案がなされました。(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年06月01日01:45

「土と水の学校」有機栽培講座を京都で開催【AQUA209号】

関西BM技術研究会「土と水の学校」有機栽培講座を京都で開催


 三月二一日 、京都にて、関西BM技術研究会主催、~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。「土と水の学校」講師の小祝政明氏、BM技術協会礒田有治事務局長を迎えて、生活クラブ生活協同組合大阪、生活協同組合生活クラブ京都エル・コープの職員及び組合員や、生産者など二一人が参加しました。
 午前中は、ハウス栽培トマトを生産する中井さんの圃場で現地検討会を行いました。以前「褐色根腐れ」病が発生し、接ぎ木などの対策をしたそうですがうまくいかず、土にふすま、ぬかを入れビニールで密閉し嫌気状態にして褐色根腐れ菌を殺す、土壌還元消毒をしたところ病気が落ち着いたそうです。
 小祝講師からは、もともと水はけが悪い土地では、「褐色根腐れ」になりやすいが、土質が柔らかく改善されて団粒構造になれば土壌還元消毒を行わなくても「褐色根腐れ」は防げる。団粒構造ができると、水の拡散速度がコントロールでき、根が呼吸できるようになると解説がありました。土がどのくらい軟らかいのか、実際に鉄管を土に刺して確認しましたが、抵抗もなく三〇センチくらい鉄管が土中に入りました。
 「トマトの根元から五センチくらいのところにうぶ毛が生えているのは良好な生育を示していて、この毛によって虫もつきにくい。定植して一ヶ月にしては葉の色がしっかりでている。鉄分などのミネラルがきちんと入っているからだろう。葉の上の方がやや色抜けしているのは若干のマンガン欠乏の症状だが、チッソ・リン酸・カリ・石灰・苦土の多量要素とその他ミネラルなどの微量要素のバランスがとれ、以前に比べて、意図した施肥通りに養分を吸うようになったのでは。葉脈の中央部が持ち上がるのはチッソが効き過ぎだがそうなっていない。葉はお椀型になるのが正常」等の講評が小祝講師から行われました。
 また参加者からの感想・意見もだされ、ハウス内の黄色い防虫シートを安価に製作する方法などについて提案もありました。
 中井さんのトマト栽培における今後の課題は、追肥のタイミングなどの肥培管理だそうです。

 午後からは、生活クラブ京都エル・コープの会議室に移動し、小祝講師から詳細な有機栽培技術の講演がありました。「圃場に正しくつくった堆肥を入れていけば、土を団粒構造にできる。団粒構造になっていないと植物の根が酸素不足になり、土中の養分をきちんと吸うことができない。高品質多収穫を目指すには正しい堆肥を入れて、団粒構造に土壌改善することが肝要」などの有機栽培の基礎的事項から、分子式を使用した、植物内で起こる光合成による化学変化の仕組みについてまでの、多岐にわたる内容でした。
 続いて、礒田BM技術協会事務局長の講演になりました。BMW技術の基礎について、また「土と水の学校」の概要と目的が説明され、BMW技術と有機栽培理論の融合によって品質と収穫量が飛躍的に向上した、各地のBM技術協会会員生産団体の成果について、紹介が行われました。
「生物性、化学性、物理性のバランスがとれた良質の土づくりを行うには有機堆肥と生物活性水の活用が効果的。また、様々な創意工夫で、生物活性水は多目的に利用可能」とまとめがありました。
 質疑応答の時間も充分にとられ、高度な有機栽培理論が理解しやすく参加者に解説された「土と水の学校」でした。(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年06月01日01:43

タンチョウの里・釧路湿原の水と土を守ろう【AQUA209号】

タンチョウの里・釧路湿原の水と土を守ろう

パルシステム『こんせん72』牛乳の産地、北海道・厚岸町で「牛の健康と環境を考える学習会」を開催


 四月一二日、北海道根釧(こんせん)地区の酪農家(牛の健康と環境を考える会:石澤元勝代表)と、パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会の共催により「牛の健康と環境を考える学習会~牛の健康は、よい土、よい草、よい水から」が厚岸町で開催されました。JA釧路太田、厚岸町役場、標茶(しべちゃ)町役場、ホクレン釧路支所や、厚岸・別海・標茶・浜中・中標津各町の酪農家など約四〇人が参加しました。同学習会は、パルシステムの『こんせん72牛乳』を根釧地区から供給し続けていくために、流域の土と水を再生し健全な生産環境をつくる学習会活動の第一歩として開催されたものです(アクア三月号一面参照)。
 まず、参加者は、『こんせん72牛乳』生産農場でマイペース酪農(注1)に取組んでいる石澤牧場に集合し、昨年、レインボー・パル基金によって導入されたBMプラントなどの現地視察を行いました。㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部部長から、BMプラントの概要、牛の糞尿から悪臭をなくす生物活性水の効能などが解説されました。参加者からは、牧草への液肥として使用する場合の方法や、プラントの処理能力・コストなどについて質問がありました。
 続いて厚岸郡厚岸町の「本の森 厚岸情報館」に移動して、講演会となりました。

生協組合員との連携を基に環境保全型酪農を地域で進めよう
 はじめに石澤牧場の石澤元勝氏から挨拶があり、二八年前に「こんな牛乳を子どもたちに飲ませたい」とはじまった「こんせん牛乳」の産直運動と今学習会の趣旨説明がありました。「七二度一五秒の低温殺菌『こんせん72牛乳』(八七年)を実現するために生産者は牛舎の掃除や器具の洗浄、乳搾りのときに牛の乳房を拭くなど、清潔な環境と細菌の数の少ない生乳づくりを心がけてきた。生協組合員から牛の乳房を拭くためのたくさんのタオルが、そして組合員の子ども達から『いつもおいしい牛乳をありがとう』と手紙や絵が送られてきた。しかし近年はそうした産地と生協組合員のつながりが忘れられはじめていることや、根釧地区においても酪農からの糞尿が、環境汚染源となっていることを踏まえ、ここで環境保全のためにどう酪農家や行政が行動するべきか、根釧地区酪農の現状を考え直したい」と石澤氏は、話しました。

生産者との協力関係をより強固なものに
 次に「環境保全型農業を進める産直で、都市においしい牛乳を」と題し、パルシステム生活協同組合連合会の那須豊産直開発課長から講演がありました。
 パルシステムと根釧地区酪農生産者の関係と歴史、パルシステムのレインボー・パル基金二〇〇八年度助成活動対象として、BMW技術を利用した飲水改善プラントが石澤牧場に導入された経緯、『こんせん72牛乳』を根釧地区からこれからも供給し続けていくために、生産者との協力関係をより強めていきたいという展望が語られました。参加者からは今後の生乳の価格推移と消費者ニーズの変化について、生協としてどのように捉えているか、などの質問がありました。

流域の土と水の再生が牛の健康につながる
 続いて、礒田有治BM技術協会事務局長から「飲水改善で、牛を健康に 完全堆肥化と液肥で、よい草地に」と、BMW技術を利用した環境保全型酪農と、流域の土と水をどのように再生していくかについて講演がありました。
 「現状の一般的な酪農では、牛が食べる牧草の収量をあげるために化学肥料を使用していると聞いている。根釧地区の場合は、夏場に霧が多く発生するため、日照量も少なく、植物の光合成が充分にできないことが考えられる。そうすると硝酸態チッソが多く含まれた牧草になる可能性がある。そうした牧草を食べると母牛の体内で硝酸態チッソが血液中のヘモグロビンと結合し、酸素欠乏を引き起こすため、牛が貧血状態に陥る場合があり、牛の健康に影響を及ぼす。しかし、牛の糞尿を、BMW技術によって良質な堆肥と液肥や生物活性水にし、堆肥で先ず土づくりを行い、液肥や生物活性水を使用して、牧草栽培に利用すれば、環境への負荷が減少し、良質の牧草ができ、コストダウンも図れる。よい牧草を与え、飲水改善によって生命体にとってよい水を飲ませることによって、牛も健康になる。また、地域の資源を活用したミネラル豊富な堆肥も生産者の工夫次第で、開発できる。BMW技術を利用することで、根釧地区の土と水を再生し、酪農における多くの課題と流域の環境問題を解決できる可能性がある」という礒田事務局長の説明に参加者から多くの質問がありました。
 北海道の道東では、酪農業の糞尿をそのまま、土地に散布することにより、河川が汚染され、沿岸漁業にも影響を与えていると言われています。一番ひどいときには、河川を水源とする上水道まで影響を与え、人間の飲水はミネラルウォーターに頼るような深刻な状況になっていたそうです。
 農業と環境問題、経済の大きな矛盾の一端が、道東地域の酪農にうかがえますが、そのなかで、まず石澤牧場に導入されたBMW技術の果たす役割がこれから注目されそうです。
 アイヌ語ではタンチョウ(丹頂鶴)はサルルンカムイ(湿原の神)と呼ばれるそうです。日本最大の湿地、釧路湿原はタンチョウをはじめとした貴重な野生動物や植物が多く、国立公園に指定され、九四年にはラムサール条約の登録地域にもなっています。美しい湿原とその水を守る健全な酪農環境のために、行政、生産者、流通、消費者が協力して取組んでいく必要性が再認識された学習会でした。(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年06月01日01:41

 
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