槌田敦氏 講演会から 前編【AQUA205号】

弱者のための「エントロピー経済学」とBMW技術に期待すること
槌田 敦氏 講演会から 前編

 一二月二日、東京・神楽坂で、熱物理学と環境経済学がご専門の槌田敦先生をお招きして、「弱者のための『エントロピー経済学』とBMW技術に期待すること」と題して、BM技術協会主催の講演会が開催されました。槌田先生には、昨年、千葉県で開催された全国交流会のパネルディスカッションで、パネラーを務めていただいたほか、茨城県の田中一作邸を視察していただきました。今回の講演会には、協会常任理事や理事等を対象に、関係者二六人が参加しました。
 その講演内容の概要を今号と、来月号にわたってご紹介します。

エントロピー経済学とは何か
 リサイクルは廃棄物になるのを遅らせているだけで、根本を解決するものではない。また、リサイクルをすることによって他の資源を消費することになる。それより廃棄物は自然にかえせば自然がサイクルしてくれる。そのことをする努力をするべきである。自然への返し方で自然が資源を作りなおしてくれる。我々人間が作りなおすことはない。
 経済とは、物質の法則の範囲内で成立つものである。その中に三つの法則がある。エネルギー保存の法則、物質保存の法則、エントロピー増大の法則である。経済活動をしても、エネルギーや物質は増えない。一方エントロピーとは、活動・変化があれば必ず増大する。エントロピーがいっぱいになれば活動は終わる。エントロピーとは何かと言うと、最近では「究極の毒素」と言うようにしている。その蓄積によって変化や活動は終了する。エントロピーが終わらないものもいくつかある。エンジンなどはそうだが、これは資源を必要とする。資源がなかったら動かない。そして廃熱、廃物が必ず出る。熱機関をはじめ生命、生態系、地球なども活動を維持するすべての物質系はエンジンである。

人間社会もエンジンと同じ
 人間社会もエンジンである。社会の外から資源を入れて、外へそれらを廃棄している。社会の中でも同じようなことがある。需要と供給である。需要と供給で商取引が行われる。そこでものが動くことにより、物質循環になっていく。社会の中で物質循環になっているということが非常に重要である。その物質循環が社会を動かしている。これがアダム・スミスのいう「神の見えざる手」が成立する健全な人間社会である。この商取引では売り手と買い手、双方に余剰の利益が発生する。また、この商取引によって第三者に利益が発生して、このふたつが合わさって経済成長が起こる。

エントロピー経済学の目的
 エントロピー経済学の目的は社会のエンジン活動を維持することである。また、人間社会を動き続けさせることでもある。現代経済学では資源循環型社会が持続可能な方法であると言うが、これらはエントロピーの増大を無視してのことである。よって理論として完結しない。エントロピーをエンジンに例えた話に戻るが、社会活動をすると劣化する。それをまた修理し、元に戻して同じことを繰り返す。これにより社会エンジンを健全に運転できる。しかしここには資源が必要であり、廃物が生じる。ここでいう資源とは金融政策である。課税と規制、これにより修復をはかっている。ところがこの商取引により第三者に利益でなく損害を与えることがある。外部不経済である。汚染で考えればそれをどうにかする費用が必要になる。外部不経済が生じるということは過剰供給であることを指している。科学技術の使用を放置すると、需要が飽和しているのに過剰に生産することになり、失業者が発生する。貿易でも同じである。先進国で過剰生産したものを輸出すると、それを輸入する国は失業も同時に輸入することとなる。規制を緩和すると強いものに産業は独占される。そうすると資金のないものは商取引から排除され失業する。これらにより経済は膨張する。現代経済学は経済膨張と経済成長を混同している。

金融危機・不況の原因と崩壊した「神の見えざる手」
 経済現象は自然現象でない。誰かが何かをしたからそうなっただけで、自然現象ではない。現在の世界は、規制緩和と税制優遇で家計から大企業の経営者と資産家、まとめて富豪と言うが、これに利益が移っていることになる。そして内需が抑えられて外需に利益を求める形になっていくので経済は質的には冷え込むが、量的には膨張することになった。富豪はそこで得た金を投機にまわし、価格を吊り上げ、それを売り抜けた。その結果大金持ちは大儲けし、小金持ちは大損をした。そうした損をした人々がものを買えなくなってしまった。それが今の不況である。そして生産しても売れない結果、庶民は解雇されることになった。経済学者や自然科学者達はこの金融危機が富豪の異常な行為の結果だったことを話そうとしない。なぜなら、経済学者達は富豪の使用人だったわけで、大金持ちがどんどん儲かるようにやってきた。たとえば五〇年前に自然科学者達は石油が三〇年で枯渇すると言い、また世界は寒冷化に向かっていると付け加えて世界に四二九基もの原発を建設した(二〇〇六年データ)。そして富豪達を儲けさせた。この三〇年というのは石油の可採年数の事で、発表当時での技術、価格で計算しただけに過ぎない。最近では二酸化炭素で地球は温暖化すると言い始め、また原発を作り始めた。この二酸化炭素の排出権を売買することでこれらがまた証券化し、富豪が儲かるシステムを考え出した。その結果も失業と貧困である。失業は供給者からの排除であり、貧困は需要者からの排除である。現代はこの失業と貧困によって「神の見えざる手」は崩壊している。その結果、暴動とテロが起きる。

社会エンジンを正常に運転するための外部不経済対策
 さて、何がエントロピー経済学の目的だったかというと、社会エンジンを正常に運転する方法を考えることであった。この方法は、外部不経済対策を厳密に行うことである。それは他人に損害を与えない。また、与えた場合は賠償させることを厳密化する。さらに課税と規制をきちんとすることで収入が得られる。この収入により、失業者・貧困者を救済し、再び商取引に復帰させる。
 日銀は紙幣を増刷しないという規範を守っているが、その代わり国債を買っている。その結果、子孫に利息を負担させることになった。それならば紙幣増刷の方がよかった。日本はかつて世界第二位の資本主義国であった。しかしその実力は年々低下している。歴代自民党内閣はアメリカの国債を買い続けた。その額は五百兆円、税収の十倍にもなる。中国も同じであるが、日本はアメリカの属国になるために、中国はアメリカを支配するために買っている違いがある。豊かな貿易黒字で金を買うべきであった。金の保有は先進国で最低である。
 日本はアメリカの国債購入の他に補助金も出している。その合計は一千兆円にも達する。国債残高はGNP比で日本は一・七九、世界で断然一位である。これだけの負債があるということは子孫の資産を食い潰しているということである。また、さらに赤字国債は六〇年償還である。いずれ子孫がこれを払うことになる。これらの原因者はまず一九八四年の中曽根内閣、次に債務の拡大をした小泉内閣であった。これらを軌道修正するためにも失敗を認め、破産国家であると社会に宣言する必要がある。そうすれば国債と一般会計を切り離すことができる。

弱者が生き延びるためには
 エントロピー経済学とは人間社会エンジンの生理学であり、病理学である。弱者のための経済学なのである。
 最近は、自ら命を絶つ人身事故が非常に増えている。そんな時代になってしまった。それなのに彼らはまだウソを吹いて回っている。昔だったら共産主義者が色々暴露してくれたが、共産主義者が悪いことをしてしまったから、もはや期待もできない。
 どうすればいいのか。富豪達の好き放題から少しでも家族を守るには、そこから離れることを考えなければならない。食べ物は自給する。半日農業をする。それには土地がない。土地を求めるととんでもない山奥になってしまったりして現実性がない。そこで、皆さんがやっているBMW技術が活きてくる。みんなで助け合うように、半農をしながら協同組合活動をしていくのは必要なことだと思う。幸いなことに日本はまだそれができる。途上国は先進国の貿易でひどい目にあわされているので既に無理である。実行には技術が大切である。先駆的技術をどのようにして育てていくのか、というのが今日のもうひとつのテーマである。今できる選挙活動といえば、野党に投票する程度のことしかできない。あとは自分達でどうにかしていくしかないのである。  (以下次号)


槌田 敦 氏プロフィール
 理学博士。一九三三年東京生まれ。東京都立大学理学部化学科卒。東京大学大学院物理課程D2修了後、同大助手を経て理化学研究所研究員。定年退職後、一九九四年から名城大学経済学部教授(環境経済学)、二〇〇六年定年退職。二〇〇五年から高千穂大学非常勤講師。
 著書に「資源物理学入門」(NHKブックス)、「環境保護運動はどこが間違っているか?」(宝島社)、「CO2温暖化説は間違っている」「弱者のためのエントロピー経済学入門」(ほたる出版)など多数。

Author 事務局 : 2009年02月01日15:16

BMW技術をもっとよく知りたい【AQUA205号】

BMW技術をもっとよく知りたい
基礎学習とBM中水施設見学会をドゥコープで開催
生活協同組合ドゥコープ環境委員  柿添 昌子
 
 昨年、一二月一二日、埼玉県白岡町の生活協同組合ドゥコープ白岡センターにて、ドゥコープ環境委員、職員、理事ら一一人が参加し、BMW技術の基礎学習とBMWシステムによる中水施設見学を行う「BMW学習会」が開催されました。講師には、BM技術協会の礒田有治事務局長と、㈱匠集団そらの秋山澄兄氏をお迎えしました。
 ドゥコープ環境委員会には、二つのテーマグループがあります。その一つは、子どもや親に環境のことを伝える「グリーンリーブス」というグループです。石けん学習会や、「こうぬま水と緑を親しむ会」との交流や、マイはし作りや、エコクッキング等の活動に取組んでいます。もう一つのグループは、原発やゴミ問題を考える「ぐるぐるりん」というグループです。具体的には、原発の学習や「六ヶ所村ラプソディ」の上映会、埼玉大学学生ゴミ堆肥化研究会との交流等の活動を行っています。
 今回の学習会は、環境グループ「ぐるぐるりん」が主催したものです。以前にパルシステムが扱っているBM商品を使って、生ゴミの堆肥化に取組んでいたものの、途中で挫折してしまったことがあり、BMW技術のことをもっとよく知りたい、組合員にもっと普及したいという想いから、学習会を企画しました。
 学習会は、まず、昨年一一月に開催されたBMW技術全国交流会で、使用されたオープニングビデオの画像上映から始まりました。礒田事務局長からは、交流会のテーマともなった食料生産環境の危機、経済危機を迎える中で、生産者も都市生活者もお互いにどうサバイバル時代に備えていくのか、その中で今後、どう知恵を出し合いながら連携していくのか、生産や生活、地域共同体の中で、BMW技術の考え方や技術をどう活かしていくのか等を短い時間の中で話していただきました。
 その後、㈱匠集団そらの秋山氏の説明で、BMW技術を活用した白岡センターの中水施設の見学を行いました。白岡センターでは、合併処理浄化槽からの処理水を、BMWシステムによって中水として再生し、トイレの流し水に再利用しています。秋山氏からは、合併処理浄化槽のBODと、中水のBOD数値が紹介され、BMWシステムによって、水の再生と再利用が行われていることや、ドゥコープ蕨センターでの中水施設では、導入後、水道使用量が三分の一になったこと等が報告されました。礒田事務局長からは、この中水は、原料を合併処理水とした生物活性水であり、茨城県の田中邸のように、これを田んぼに活用したり、様々な活用方法があると説明を受けました。
 ドゥコープでは、この中水施設の利用が、現状では、トイレの流し水に活かす以外は、充分生かされておらず、これからの課題だと思いました。
 また、参加者したメンバーからは、「BMW技術が人にとっても、自然にとっても優しくすばらしいものだとわかったが、どのように使ったらよいのか、一般向けに活用法が知りたい」「世界の貧困(食料不足)の解消に、BMW技術が役立つ事がわかり、とても広い視野で活動していることに驚いた」「一年かけてメンバーで生物活性水の使用実験をしてみるのも面白いと感じた」「消毒に塩素を使用することで、水によるミネラルの循環サイクルが壊れてしまうと聞き驚いた」「白岡センターの中水施設でできた生物活性水も、トイレの中水として利用する以外の余分は、下水に放流してしまうのは、もったいないことだと実感した」等、様々な感想が寄せられました。
 今回の勉強会では、時間が短かったこともあり、BMW技術の触りだけしか学習できなかったので、来年度も学習会の継続を検討していきたいと思っています。

Author 事務局 : 2009年02月01日15:15

神奈川ゆめコープで、石澤理事長を講師に「地域の土と水の再生」講演会を開催【AQUA205号】

神奈川ゆめコープで、石澤理事長を講師に「地域の土と水の再生」講演会を開催【AQUA205号】
「白神の夢」は「丹沢の夢」


生活協同組合パルシステム神奈川ゆめコープ 機関運営部企画広報課 平本 博


 生活協同組合パルシステム神奈川ゆめコープでは、昨年の一二月三日、新横浜でBM技術協会の石澤直士理事長を講師に、『世界遺産「白神山地の水を守る農業」地域の土と水の再生を~パルシステム商品から環境を考える~』講演会を開催し、理事、本部の幹部職員、県内各地の神奈川ゆめコープ事業所長(配送センター、営業所、福祉事業所)など六三名が参加しました。神奈川ゆめコープでは二〇〇八年度の組織課題として環境と「食・農」を柱にした政策研究のため、理事会のもとに会議体を設けて学習会や研修会を通じた政策討議を積み重ねて来ており、この講演会はパルシステム連合会の食糧・農業政策や産直産地と大きく強いつながりのあるBMW技術とその実践について組織全体としての理解を深めることを目的としたものです。
 講演会ではまず神奈川ゆめコープ増田和美常任理事の、「BMW技術とその実践についての理解を深め、パルシステム商品との関係を知り、あわせて神奈川での環境と農業を考える」という講演会の取組みに至った趣旨説明があり、映画『白神の夢』ダイジェスト版の上映ののち、石澤理事長の講演が行われました。ハタハタの産卵シーンで始まる豊かな海、白神山地のブナ林と渓谷、映画の舞台となった秋田県八森町で環境保全に取り組む人々の姿の上映と、それに続く白神山地から十三湖、日本海に至るまでの岩木川水系の環境を守る取組み、常盤村養鶏、八峰園を中心とするBMW技術の実践とその成果についての石澤理事長の講演は、パルシステム神奈川ゆめコープがこれからの地域の活動で果たすべき役割について大きな示唆をいただいた内容でした。
 参加者からは、首都圏にありながら相模川(上流は道志川)水系、酒匂川水系、丹沢山塊を自然の恵みとしてもつ神奈川県での環境と食、農への取組みを一層進めて行きたいとの感想も寄せられました。

県内農業の振興と人づくりの第一歩に
 パルシステム神奈川ゆめコープ
  理事長 齋藤文子

 神奈川県は大消費地でありながらカロリーベース自給率三%の都市農業県で、ほとんどの食料を他県と外国に依存しています。産直産地もジョイファーム小田原と首都圏とんトン協議会の二産地のみで産直のパルシステムを謳うにはさみしい限りです。県内の農業の振興と農業者とのつながりを模索しつつ、小田原地域では今ある農地の保全を組合員と一緒に行動し保全する活動「農の学校」に取り組んでいます。BM技術協会の石澤理事長のご講演で、白神山地の自然の中での命の連鎖と循環のシステムから関連してBMW技術の科学性が理解でき、理事・管理職の有意義な学習会となりました。今後の県内での展開の第一歩となるものです。有難うございました。

講演を振り返って
 パルシステム神奈川ゆめコープ
専務理事 大信 政一

 一二月三日に神奈川の地で、世界遺産「白神山地の水を守る農業」地域の土と水の再生を~パルシステム商品から環境を考える~、と題してBM技術協会石澤直士理事長から講演を頂きました。講演には、理事・管理職・事業所長の六三名が参加させて頂きました。 
 現在のBMW技術が「水源から河口まで、流域の土と水を再生する」という広い視点を持ち実践されていること、またこの技術の寄って立つ考え方を知ることができたと思っております。私たちの問題意識としては、環境という視点から、食や農、木や水や土について総合的に理解したいという欲求がありました。この点からも、とても示唆を頂いた講演でした。ご講演いただいた石澤理事長と礒田事務局長に感謝する次第です。

Author 事務局 : 2009年02月01日15:13

百年に一度の経済危機がもたらすもの【AQUA205号】

BM技術協会 理事長 石澤直士

 会員の皆様に新年のご挨拶を謹んで申し上げます。
 まずは、~食料・環境危機に直面し、生産・生活・地域のあり方を変えよう~のテーマで、昨年、千葉県で開催されましたBMW技術全国交流会へご参加頂いた会員を始めとする皆様に改めて感謝申し上げます。また、千葉BM技術協会の皆様には、かつてない多くの参加者を迎えるにあたり大変ご苦労頂きました点、厚くお礼申し上げます。しかも、二泊三日というスケジュールにも拘らず、最後まで丁寧な対応をして頂き重ねて御礼申し上げます。また、内容についても数多くの方々から色々な評価を頂きましたが、その中でも、うれしかったのは、「ようやくBMW技術が理解できた」と言う評価で、関係者一同胸を撫で下ろしている一方、課題もありました。この技術に長く取り組んでいる会員の皆様からは、「BMの原点は、技術の追求にあるのでは」とのご意見も頂きました。これもまた、至極当たり前の事で今後は、更に掘り下げていく事も協会としての大切な役割であると痛感しました。いずれにせよ、三日間の交流会にも拘らず皆様熱心に聞き入る姿に感動したのは、私ばかりでしょうか。本年は、茨城県での全国交流会開催となりますが、関係者の皆様のご協力と一年に一度の再会を楽しみにしております。
さて、タイトルの「百年に一度の経済危機」は、あのトヨタが創業以来、初めての赤字に見舞われるなど、この国を牽引してきた大企業の先行きが見えない中で、早ければ四月遅くても任期満了の九月までには、総選挙が行われますが、政治がこれだけ機能していないとマスコミに騒がれた選挙もかつてないのではないでしょうか。事実、昨年一四七ドルまで行った原油の高騰やその後に起きたサブプライムローンの破綻による金融危機、それに反応してこれだけ早い大企業の自己防衛策の速さは、過去の経験に基づいているとは言うものの、我々末端に居る者にとっては、あまりの速さに振り回されるばかりです。
 例えて言うならば穀物の高騰の中でようやく生産物への価格転嫁が出来たのは、トウモロコシ価格が最高値をつけて半年経ってからにも拘らず、価格の引き下げは、一ヵ月もしないうちに円高還元セールなどという名目で実行され、「申し訳ありませんが我々にはまだ還元されていないのですが」と言うと、「他にも取引先がありますから」と言われる始末。こういう時こそ政治が大切になるのですが、政治家稼業を守る為に精一杯の方々には、現場の声は通らず、「天は自ら助くる者を助く」などと嘯いている現状です。新年早々愚痴を言うつもりはありませんが、今年の景気は、更に悪化することは、間違いないと経済評論家の見方のようです。この景気も地方と中央ではかなりの差が有ることも事実です。それは、人口の動態ですが、地方は流出が続く一方、東京は、今年千三百万人を越えると言われており、益々、格差が拡がる一方です。もちろん都市住民の中でもその格差は広まっていることも事実でしょう。本来は、この様な時こそ農村が受け入れるべきなのですが、疲弊している今の農村には、その余裕すらないのが現状です。そのような中、昨年の千葉県の交流会を見るとBMの仲間達の元気さは何なのでしょうか。空元気なのでしょうか。いや、違います。それは、夢ではないでしょうか。
昨年は、三つの原点のお話をさせて頂きました。改めて述べさせて頂きますが、①食料自給率の向上②堆肥の地域間格差の解消③農薬や化学肥料の削減――これに、BMはどこまで貢献できるのか、それが出来なければミクロコスモスの実現は不可能、というようなことを述べましたが、BMの仲間達に言わせたらそんなのは当たり前の話でとっくの昔にもうやっているという事なのでしょうが、単に、生産者だけでは、ミクロコスモスの実現は不可能で、この未曾有の不景気の今こそ都市住民との連携が必要なのではないでしょうか。今、ミクロコスモスに限りなく近づいているのは、茨城県の田中邸であり、山梨県の白州郷牧場ではないでしょうか。そして地域という点で言えば、ポークランドの取り組みもかなり近づいていると言えるでしょう。また、ファーマーズクラブ赤とんぼの取り組みは、とことん突き詰めた究極の技術追求にあります。併せてその技術普及、及び伝承により、地域の活性化に繋がるのではないでしょうか。いわゆる「架空社会」から「現物社会」へ、「拝金主義」から「経世済民」へ、どんなことを言っても一粒の種を植えると万倍になる。しかも、太陽と水と土に栽培技術とBMW技術が調和したときに。このような職業は農林水産業を措いて他にない。日本のように資源のない国においてその資源は、人と技術と言っても良いのではないでしょうか。そして、世界の中でも類を見ないほど多い資源としての水ではないでしょうか。
 BM技術協会は、技術の面においては更に極める必要はありますが、大切な事は、その技術の普及と後継者への技術の伝承です。その為に研修会を行っていく。今までは、小祝先生の植物の生態に合わせた肥培管理と、それぞれの産地でのBMの活用をやってきたのが現状です。そこで今年の方針は次のように進めて行きたいと考えております。
 ①作物ごとに協会のエキスパートによる講習会開催②昨年までの取り組みの拡大と確立③BMW技術の各作物別使用方法について基本マニュアルの作成準備④事務局体制の整備⑤財政問題の確立に向けた取り組み。
 以上の五項目を柱に、今年度の協会運営を進めて行きたい。もちろん、BM初心者向けの取り組みについては、長崎前会長の講演資料、そして奥地先生の岩石の成り立ち等を基に、「自然観を変え、技術を変え、生産・生活・地域のあり方を変える」というBMW技術とは、なんぞやを今以上に消費者会員に伝えていきたいと考えています。
 皆様、本年もBMW技術の普及と、より一層のレベルアップにご協力をお願いしますと共に、それぞれの皆様の抱く夢が叶うことを御祈念申し上げまして新年のご挨拶とさせていただきます。

Author 事務局 : 2009年02月01日15:12

 
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