秋田県小坂町 ポークランドグループ JAかづの 常任理事会で視察 【AQUA202号】

資源循環と食料自給に向けた地域づくりに行政と生産者が連携

秋田県小坂町 ポークランドグループ JAかづの
地域連携の取組み 常任理事会で視察

 九月一日~二日、秋田県小坂町及び鹿角市において、BM技術協会の常任理事会と常任理事による現地視察会が開催されました。現地視察会では、豊下勝彦常任理事が代表を務めるポークランドグループが取組むBMW技術を導入した養豚や、堆肥づくり、BMデモプラント、野菜作りや飼料米実験、小坂町がすすめている菜の花栽培による資源循環の取組み、JAかづのの飼料米づくりやBMW技術を活用した野菜栽培等を視察しました。
 現地視察会は、一日の午後から始まり、最初に小坂町がエコタウン構想の一環としてスタートしたバイオディーゼル燃料の製造施設を視察しました。小坂町は現在、生ゴミを堆肥化して農地に返す取組み(ポークランドの堆肥施設で、生ゴミの堆肥化に協力)や、遊休地で菜の花を栽培し、菜種油を作り、さらに家庭等で使われた油を回収しバイオディーゼル燃料を作る、という二つの取り組みを行っています。
 町に一〇カ所ある集積所から回収された廃油は、町職員の手作りによるプラントでグリセリンとバイオディーゼル燃料に分離され、濾過されます。製造されたバイオディーゼル燃料は現在、町の公用車一台とポークランドの配送車一台に試験的に利用され、現在、データを収集しています。
 続いて昨年完成した町の菜種油製造工場を視察しました。農家の休耕地に菜の花を植えてもらい、収穫した菜種をここで菜種油に加工しています。菜種油は「菜々の油」という商品名で販売が始まり、昨年の菜種でしぼった油はすでに完売状態だそうです。小坂町では、遊休地を活用した栽培した菜種を原料にした菜種油が家庭で使用された後に回収され、バイオディーゼル燃料となって、農機具を動かし、資源が循環することを理想としています。
 続いて視察したポークランドでは、最初に事務所の入り口脇に七月に完成したBMデモプラントを見学しました。BMW技術を使った水の循環をコンパクトにまとめたデモ施設と、生物活性水プラントを訪問者が気軽に見学できるようになっています。
 デモ施設は、山の沢水が、魚が泳ぐ池に注ぎ、水生植物が植えられたビオトープを通って、生物活性水が流れ込むミニ水田を経て、岩石槽で再度浄化され、家畜用の飲水として利用されるというBMW技術を活用した水の流れを分りやすくコンパクトにまとめた施設になっています。沢水が注ぐ最初の池にはBMWリアクター塔が設置されています。
 入り口の通路をはさんだ反対側には生物活性水プラントがあり、地元の農家の人が自由に使えるように外部に取り出し口が設けられています。
 次に新しく作られた豚舎や、飲水改善プラント、堆肥施設、新しくバイオベッド豚舎に改装される堆肥施設を視察しました。養豚施設視察後は、ポークランドグループで取り組む、野菜、飼料米のほ場を見学しました。二・四町歩の畑でニンジンなどを栽培していました。今年は、雨、低温で様々な被害がでているということですが、ポークランドのBM堆肥を入れた畑ではニンジンが大きく生長していました。飼料米の実験ほ場では、区画ごとに堆肥の投入量を変えたり、肥料内容を変えた実験が行われていました。担当の板橋一成さんは、概ね順調に生育しており、この地域では反当たり八俵収穫できればよい方だが、一〇俵は収穫できるのではないかと話しています。
 二日は、常任理事会終了後、JAかづのが管轄している飼料米のほ場と、JAかづの組合員のキュウリ圃場等を視察しました。飼料米の栽培ほ場では、ポークランドのBM堆肥を使用しながら、六町歩で「ふくひびき」という品種を栽培しています。ここで収穫された飼料米がポークランドの豚の飼料となり、「こめ豚」として、パルシステムに供給されています。キュウリは路地で栽培されていて、元肥として有機肥料の他にポークランドのBM堆肥を使用しています。生物活性水も灌水時や葉面散布に利用されています。今年は「土と水の学校」有機栽培講座で学習した施肥設計を行った結果、昨年より天候が悪いものの、収量は昨年よりも上がっている、と生産者から報告がありました。 (報告:長倉徳生)

Author 事務局 : 2008年11月01日17:37

第4回「BMWシステム生きもの調査」 【AQUA202号】

 茨城・田中一作邸、第4回「BMWシステム生きもの調査」を実施しました

 9月26日、茨城県鉾田市の田中一作さんのお宅で「BMWシステムによる資源循環型水田の生物多様性調査及び研究」における第4回目の「田んぼの生きもの調査」が行われました。同調査は、パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会、生活協同組合パルシステム茨城、NPO生物多様性農業支援センター、茨城BM自然塾の共同研究として実施されているものです。

 田中さんのお宅では、生物活性水プラントを中心に、廃棄物を出さない循環型のシステムが整備されています。家庭から出る排水→浄化槽→BMW生物活性水プラント→田んぼや家庭菜園や鶏舎→収穫した野菜や鶏卵→田中さん一家の食卓、そしてまた家庭から出る排水…という具合です。
 そんな田中さんのお宅の田んぼとその周辺に生息する生きものを明らかにして、このシステムの有効性や課題を見つけたいという目的で、今回の調査が始められました。NPO法人田んぼの理事長、岩渕成紀さんの指導のもと、調査を行っています。
 稲刈りを目前に控えたこの日、田中さん宅の田んぼの稲は、たわわに実って頭を垂れていました。まず顔合わせと調査内容の説明が行われ、さっそく作業にはいりました。毎回調査に参加している参加者を中心に、一六人の参加者が手分けして調査を進めました。
 最初に、水質成分分析のための採水をします。これまでは、浄化槽、生物活性水、田んぼ、田んぼの暗渠排水の四か所からの採水でしたが、今回は池の水も調べることになりました。それぞれの水温やpH、EC(電気伝導度)、DO(溶存酸素)、ORP(酸化還元電位)を、専用の測定機器で測定します。また、試薬を使って窒素、リン酸、カリ、苦土、鉄などの含有量を調べます。田んぼの土壌成分についても、土壌成分測定器で調べました。
 成分調査と並行して、生きもの調査を進めます。網で稲の上をすくったり、田んぼの周辺を探したりして、生きものを採取しました。そして、浄化槽、生物活性水、池、田んぼの中に、どんな生きものがいるかを探します。ルーペを使って確認し、名前を記録しておきます。
 それから、稲の生育状態を確かめるために、稲を一株抜き取っての調査も行いました。
 午後から、今回の調査結果を確認、これまでの調査結果との比較を行いました。
 生きもの調査では、三八種類の生きものが見つかりました。田んぼでは、イトミミズはいましたが、ユスリカがいなくなっていて、新たにヒルが見つかりました。田んぼ全体に換算すると、イトミミズが20万匹、ヒルが5万匹いると考えられます。
 水質調査の結果からは、これまでよりDO(溶存酸素)が高くなっていることがわかりました。水質成分調査では、今回、リン酸と苦土が全体的に少なくなっていました。土壌成分調査は、前回までとほぼ同様の結果となりました。
 稲の生育調査では、二株で植えた稲が三八本に分けつし、それぞれの茎は、100~120センチメートルにまで育っていました。稲穂についている米の粒数は、全部で4,740となりました。ここ数年、豊作が続いていたのですが、今年は、かなり少なくなっているとの報告でした。原因としては、前年の稲刈りの後、堆肥を30キロほど、田んぼに投入しましたが、反当換算で、窒素成分が15キロ以上、投入されたことにより、その窒素が生育後半になって効いてしまい、生殖生長への転換の遅れと、イモチ病の発生につながり収量が減少したと推測されます。田中さんの田んぼの場合は、堆肥の投入は余計で、生物活性水が流れ込むだけで充分だったことが、分りました。
 報告では、前回と前々回のBOD(生物化学的酸素要求量)とCOD(化学的酸素要求量)調査の結果を確認しました。これは水質指標の目安になるもので、浄化槽、生物活性水、田んぼ、田んぼの暗渠排水の水を、専門の施設で分析したものです。それによると、田んぼ以外の水は、BODは一桁代と低い数値を示しており、BMW技術によって、水の浄化がしっかり行われていることの証となりました。
 その後、調査で発見された外来種の生きものが話題になり、岩渕さんから「隔離された田中さんのお宅だから、外来種を排除して、日本古来の豊かな生態系を取り戻すことが可能」との話がありました。
 今回までの調査のまとめ方についても話し合われ、できるだけわかりやすく報告しようということで、調査の終了となりました。
 得られたデータは、毎回まとめられ、今秋のBMW技術全国交流会で発表される予定です。

Author 事務局 : 2008年11月01日17:35

西日本BM技術協会 BMW技術研修会・第16期総会開催報告 【AQUA202号】

農作物の生理を知って豊かな土づくりを!
-----その鍵となるのがBMW技術

 九月五日、西日本BM技術協会主催のBMW技術研修会及び第一六期総会が福岡市博多区の博多パークホテルで開催され、総勢五二人の会員が参加しました。
 今年度、西日本BM技術協会が開催した二回の研修会は、いずれも耕種農家向けになっていました。今回は第一六期総会と同時開催ということもあり、耕種農家と畜産農家が一緒に学ぶ研修会として「堆肥づくり」をテーマとしました。研修会の講師は、~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座の講師でおなじみの小祝政明さん。作物の生理を知ることを通して栽培に活かすという論理立てで話を伺いました。
 はじめに、BM技術協会事務局長の礒田有治さんが「畜産農業は飼料の高騰、耕種農業は肥料をはじめとする資材費の高騰と、厳しい経営状況に置かれている。地域の資源を生かし、循環させていく技術として、今こそBMW技術を生かしていくことが重要」と述べ、畜産の堆肥を活用した資源循環型の「飼料米」づくりに取り組んでいる東北の会員の事例や、BMW技術の実践・成功例として、山梨県白州郷牧場での野菜作りの実践例をスライドを交えながら紹介し、「耕作農業で高品質・高収穫を実践するには、良質堆肥による土づくりが基本となり、その上で施肥設計や生物活性水の活用がポイントになる」とまとめました。
 続く小祝政明さんの講演の演目は「堆肥づくりと有機栽培理論」です。前半は植物の生理(光合成、呼吸の仕組みなど)の解説がありました。植物は炭水化物の生成と分解を繰り返していることを化学反応式で解説しました。「土づくりには『物理性』・『生物性』・『化学性』という三つの要素が必要。『物理性に優れた土』とは通気性・排水性・保水性が確保されている土。その土の中の有機物を分解して養分や土壌団粒をつくったり、土壌病害を抑制して品質を向上させるのが微生物の働きによる『生物性』。それを土台として初めて施肥設計『化学性』が成り立つこと、そこにBMW技術の効果が発揮される」という理論が提起されました。後半は「堆肥づくりについて」具体的な解説が行われました。「堆肥づくりに必要な原料はスタートの段階でC/N比(炭素と窒素の比率)を調整し最適な状態にしておき、これにより団粒構造を発達させる微生物の効果を最大限に得られる」、「堆肥づくりの設備については、エアレーションで一定量の空気が隅々まで流れることが必要」。エアー配管や温度、水分管理のポイントと改良方法について図で分かりやすく説明がありました。
 最後に、「今後は、単に『有機栽培作物』であるということよりは、作物の中身・質に価値が置かれるだろう。BMW技術で中身・質共に完成度の高い有機栽培が可能になる」とまとめが行われ、講義は終了しました。BMW技術の実践例やBMW技術の基礎を学習できた、内容の濃い、実りある研修会となりました。
 研修会後は、第一六期総会が執り行われました。荒木隆太郎会長の挨拶から始まり、二〇〇七年度活動報告と決算・監査報告、二〇〇八年度活動方針と予算について、全会一致で承認され、西日本BM技術協会の二〇〇八年度の活動が新たにスタートしました。

Author 事務局 : 2008年11月01日17:32

「土と水の学校」有機栽培講座報告 【AQUA202号】

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座報告
 BMW技術の活用と有機栽培理論の学習で、有機栽培技術を確立していく~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が全国各地の協会会員の生産者や団体で開催されています。各地からの報告を紹介します。

茨城県 茨城BM自然塾
多多納 勝行
BMW技術は、有機物をアミノ酸にする有効な技術

 八月四日、茨城BM自然塾で~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。
 講座は、午前中に圃場視察を行い、午後は、現在課題になっている夏場の(ホウレンソウ・コマツナ・ミズナ)栽培の問題をおり込んだ講義を講師の小祝政明先生にしていただきました。当日は一八名の会員にご参加いただき、午前中は清水農園の水田と今年から初めて取り組んだエダマメの圃場を視察しました。
 水田については、小祝先生から初期成育は順調でよく分けつしているが、途中、米糠除草を実施したことにより発生したガス湧きで、外側の根がやや焼けてしまっているのが残念とのご指導をいただきました。
 続いてエダマメの圃場では、非常に花つきがよく素晴らしいが、いかんせん花が咲いた後の一番水が必要な時期に干ばつの影響を受けてしまっているとのご指摘をいただきました。エダマメの葉が立ってしまっているのは、水分不足で葉から水分が蒸散しすぎるのを抑えるため太陽光を遮光調節しているそうで、灌水時期の目安になるとご指導いただきました。
 午後の講義では、①「BMW技術が植物の生育に具体的にどう役に立つのか」、②「夏場の葉物栽培はどこに注意すればよいのか」、③「参加者からの質問」の三構成で行われました。
 BMW技術についてはボカシ作りを一例としてあげ、たんぱく質等でできた有機資材を植物の吸える状態であるアミノ酸に分解させるのに有用な技術であると、図解を交え解りやすくご説明いただきました。
 夏場の葉物野菜の栽培については、三三度以下に葉の温度を下げることが必要で、葉の温度を下げるには葉の蒸散作用を妨げない為に、なるべく下のほうから風をあて、ハウス内をカラッとさせることがポイントと指摘されました。
 参加者からの質問では、知識を吸収したいという参加者の熱意から活発に質問が出され、一つ一つ丁寧にお答えいただきました。回を重ねるごとに、参加者も手ごたえを感じている様子で、BMW技術と有機栽培理論がメンバーに確実に根づいているのを感じることができました。


千葉県 パルシステム千葉・NPO支援センターちば
生活協同組合パルシステム千葉 宮城 直

作物診断や堆肥・肥料の判定方法等を学習

 パルシステム千葉、NPO支援センターちばでは、千葉県野田市に於いて、園芸福祉農場等をはじめとする生産を中心に据えた地域コミュニティづくりに取組んでいます。今年の春にはBMW技術を導入し、地域資源の循環を見据え、健全な作物の生産を広げていくことを目指しています。その一環として、BM技術協会が取組んでいる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座を園芸福祉農場のボランティアや、地元生産者、生協・NPO関係者を対象に連続で実施しています。
 その第三回目の講座を八月五日、千葉県野田市にて「土と水の学校」有機栽培講座in野田として開催しました。同講座の講師の小祝政明先生・礒田有治BM技術協会事務局長をお招きし、園芸福祉農場の方々や地元生産者が参加しました。
 講座はまず、現場講習として、園芸福祉農場での圃場診断から始まりました。小祝先生からは、キュウリ、ピーマン、ショウガの葉色や雑草の根張りの状態を説明いただきました。「土の物理性は良く病気の傾向も軽度だが微量ミネラルが不足」との診断で、対応方法についても丁寧にアドバイスいただきました。
 次に園芸福祉農場でも一部利用している堆肥の生産現場である野田市が管理している堆肥センターを見学しました。堆肥の原料は、ほとんどが市民の庭の剪定枝や街路樹などの木質チップのため、炭素分が非常に多く、土づくりには良いものの、堆肥が完成するまでに時間がかかりすぎるとの指摘が小祝先生からありました。原料に鶏糞を加えると良い堆肥となり、時間も三分の一でできることなどを提言いただきましたが、堆肥センター職員によると、そのことは承知しているが窒素分の多い原料を使うことは施設設置時の条件(臭いなど)があり、現状での改善は市民との調整が困難であり課題になっているそうです。
 最後に生物活性水や土壌分析により施肥設計を行っているインゲンの実験栽培ハウスでの現場講習を行いました。ハウスの風通しが悪いことによる高温と遮光ネットによる陽光不足が顕著で、栽培技術以前にハウス環境の改善が必要との指摘を受け、さっそく翌日からハウス環境の改善を行いました。
 その後、地域の公民館に移動し、二時間ほどの講義を行いました。講義では、土の構造や、微生物の働き、ミネラル先行の施肥設計、肥料の種類と、良質堆肥の見分け方や作り方、多量成分と微量成分とその性質等を学習しました。また、分析器を使用した堆肥の熟度の判定方法や、現在使用している肥料の表示の見方や、性能の見分け方等も学習しました。
 盛りだくさんの内容でしたが具体的で分りやすく、園芸福祉農場の方々は、さっそく有機栽培で学んだ内容を大根の作付けに取り入れています。また堆肥も自分たちで作ってみたいとの声も上がっています。

Author 事務局 : 2008年11月01日17:29

 
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