茨城・田中一作邸、第2回「BMWシステム生きもの調査」を実施しました 【AQUA200号】

パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会、NPO生物多様性農業支援センター、生活協同組合パルシステム茨城、茨城BM自然塾 共同研究


 今年、五月一六日から始まった「BMWシステムによる資源循環型水田の生物多様性調査及び研究」における第2回目の「田んぼの生きもの調査」が、六月二四日、茨城県鉾田市の田中一作さんのお宅で行われました。これは、パルシステム生活協同組合連合会、BM技術協会、生活協同組合パルシステム茨城、NPO生物多様性農業支援センター、茨城BM自然塾の共同研究として実施しているものです。
 田中さんのお宅は、生物活性水プラントを中心に、廃棄物を出さない循環型のシステムが整備されています。まず、家庭から出る排水は、浄化槽を通ってBMWプラント(生物活性水)に送られます。生物活性水となった水は、田んぼに流れ込んだり、汲み上げて家庭菜園の野菜や果物の栽培に使われ、鶏舎では鶏の飲み水になります。そして、収穫した野菜や鶏卵は、田中さん一家に食され、また排水となって循環する、という具合です。非常にバランスよく水が循環している一例と言えるでしょう。そんな田中さん宅の田んぼとその周辺にはどんな生きものが生息しているのか|それを明らかにすることで、このシステムの有効性や課題を見つけたいというのが調査の目的です。NPO法人田んぼの理事長、岩渕成紀さんの指導のもと、生きもの調査だけでなく、田んぼの水質調査、土壌調査も行っていきます。

 第二回目の調査となったこの日、田中さん宅の田んぼには、五月二三日に田植えをした稲が、青々と並んでいました。水面には、水が見えないほど水草が浮かんでいます。たくさんの生きものを発見できそうな予感がして、心がはやります。
 まず顔合わせと調査内容の説明が行われました。今回から、NPO生物多様性農業支援センター発刊のガイドブック『田んぼのめぐみ一五〇 生きもの調査・初級編・二〇〇八』を使って調査を進めることになりました。調査の方法や、生きものの写真や説明文が掲載されていて、生きもの調査に最適の一冊です。このガイドブックの中の「生きもの調査の予想と結果シート」のページで、これまでに見たことのある生きものをチェックしていきます。カエルだけでも様々な種類のカエルがいるのには驚きでした。この日の参加者は一七人。全員で手分けして、調査を進めます。
 水質調査では、浄化槽、生物活性水、田んぼ、田んぼからの排水を調査しました。田んぼについては、専用の測定機器を使って、五ヵ所のPH、電気伝導度などを測定しました。また、試薬を使ってそれぞれの鉄分などの成分含有量を調べました。土壌調査では、田んぼの五ヵ所の地点から水底の土を採取し、土壌分析器で含まれる成分を調べました。
 水質、土壌の成分測定の間に、生きもの調査を進めます。左手にミニ水槽、右手に網を持って、生きものを採取するのです。浄化槽、生物活性水、田んぼの周辺、田んぼの中がターゲットです。田んぼの中の生きもの採取は、ラインセンサスという手法で行いました。田んぼの片側に一列に並び、一斉に同じ方向に向かって採取しながら進むものです。そうすることで、生きものをまんべんなく採取することができます。また、田んぼの土壌にいる生きものについても、個体数を調査しました。
 その結果、生物活性水の中には多く含まれているイトミミズなどの生きものが、田んぼにはあまり生息していないことがわかりました。講師の岩渕さんは、田んぼにいるフナなどの魚類が、エサとしているからではないかと推測していました。また、田んぼの土壌検査によると、前回五月一六日よりも、PHが低くなり、カルシウムが減っていました。植えられた苗が生育し、根が張り始めたからと考えられます。予想どおりの結果に、満足して調査を終了することができました。
 得られたデータは、毎回まとめられ、今秋のBMW技術全国交流会で発表される予定です。 (取材:東條美香)

Author 事務局 : 2008年09月01日20:12

韓国・楊平郡で「土と水の学校」を開催 【AQUA200号】

BMW技術と有機農業を通じ、日本と韓国の農民の連帯を

そらインターナショナル・コリア
代表  ハ・ジョンヒ

 七月八日~九日、日本のBM技術協会の後援により、韓国の京畿道(ギョンギドー)楊平郡(ヤンピョングン)で、~自然学を実践する~「土と水の学校」が開催されました。韓国・全国農民会及びアサン・ハンサリムの生産者や、楊平郡の生産者、郡職員ら約六〇人が参加し、日本からは椎名盛男常任理事、生田喜和常任理事、礒田有治事務局長、講師の小祝政明先生が訪れました。
 八日は、最初に私から「自然の生態系を再現したBMW生態システム」というタイトルで、土とバクテリア(B)、石とミネラル(M)、命と水(W)の働きと関係をシステム化した、BMW技術の原理と仕組みがどんなに生態的なシステムなのかについて、説明を行いました。
 続いて、小祝先生から「BMW技術と有機栽培理論」というタイトルで、光合成をはじめ植物の生理や、酵素とミネラルの働き、天候による化成栽培と有機栽培の生育の違い、有機栽培におけるBMW技術の働きなどについて講演していただきました。講演の内容も興味深いもので、わかりやすく、とても情熱的な講演でしたので、三時間以上の講演中、参加者も集中でき、時間があっという間に過ぎたと大変喜んでいました。小祝先生の講演の間には、礒田事務局長より、日本の「土と水の学校」の現況や実績などについても、写真やデータを利用して説明をいただき、参加者の興味と理解をより高めました。
 講演終了後は、全国農民会忠南道連盟のチャンミョンジン事務総長より、自分たちは今回の「土と水の学校」に、全国農民会忠南道連盟の主催と忠清南道の後援で、品目別分課委教育「BMW農業国内研修」としてアサン・ハンサリム生産者の外、約四〇人で参加したと報告しました。日本側を代表して挨拶に立った椎名常任理事は、「日本のBM技術協会では、四年前から『土と水の学校』を実施していますが、この学校で習ったことと、BMW技術を融合すれば、有機農業で栽培しても高品質・多収穫ができることを、多くの生産者が経験しています。BMWシステムは、生態系を回復するシステムです。この技術を通して韓国と日本の農民が連帯し、お互いに豊かになることを期待します」と語りました。
 午後は、楊平郡の農業技術センターのBMW担当者のベクテヒョン氏とキムゼドク氏の案内で、BMWシステムを利用しているソゾン面稲作グループと、農業技術センターで運営しているBMWプラント、有畜複合農業と直売所とレストランを運営しているダンノモ農場を視察しました。
 担当者のベク氏は「楊平農業技術センターのBMWプラントは約九年前に導入され、現在一日二トンの生物活性水が生産されています。去年から農家からの生物活性水の利用需要が急激に増えて、量が足りなくなってしまったので、来年は楊平郡の予算で一日四トン生産できるプラントをつくる計画です」と説明しました。
 次に訪問したダンノモ農場は、韓牛を約二百頭、田んぼ五百坪、野菜千五百坪の規模で有畜複合農業をしながら、直売場では韓牛の食肉を販売し、レストランでは、最高級の牛肉と、農場で栽培した有機米と有機野菜を提供しています。ダンノモ農場のイ・ヒョンボク代表は、「家畜や作物が幸せになるようにしてあげれば、牛や米や野菜が、自分にお金を稼いでくれます。それによって、私も生活にゆとりができましたし、経済的にも豊かになりました」と、自分の農業に対する哲学を述べました。参加者全員が、ダンノモ農場は韓国の中でも最高のモデル農場だと、感心していました。ダンノモ農場の視察で八日の日程が終わりましたので、品目別分課委教育「BMW農業国内研修」として参加した全国農民会とアサン・ハンサリム生産者の方々は、大満足の表情で帰途につきました。

 土壌分析と施肥設計を実習
 九日は、楊平郡でBMWを活用しているダンノモ農場のイ代表や、楊平郡オクチョン面事務所のイ・サンホ所長や、生産者、(株)そらインターナショナルコリアのスタッフが参加して、正しい土壌分析の方法、正しい施肥設計について、小祝先生から講演を受けました。ダンノモ農場の田んぼの土と、老人福祉施設ウンビヌリの金代表の梨畑の土を参加者で実際に分析しながら、施肥設計まで学習し、これから韓国でも続けるべき、「土と水の学校」のための予備知識を覚える、とても有益な時間でした。
 最後に、韓国での第一回目の「土と水の学校」の開催のためにご後援くださいました日本のBM技術協会と、遠いところご協力にわざわざお越しくださいました椎名様、生田様、礒田様にお礼を申し上げます。そして二日間とても情熱的に教えてくださいました小祝先生にも深く感謝を申し上げます。

Author 事務局 : 2008年09月01日20:06

第18回BMW技術全国交流会成功に向け「キックオフ集会」を開催 【AQUA200号】

千葉BM技術協会   第12回定期総会

 七月五日、千葉BM技術協会第一二回定期総会が、香取市の(農)和郷園で、開催されました。今年は一一月二一日(金)~二三日(日)に、千葉県で第一八回全国交流会が開催されます。この交流会の実行委員会は千葉BM技術協会で組織されており、今年の総会は、交流会成功に向けた「キックオフ集会」を兼ねての開催となりました。
 総会は、二〇〇七年度活動報告及び会計報告、二〇〇八年度活動計画及び予算、役員選出について協議され、全ての案件が承認されました。
 総会終了後は、第一八回BMW技術全国交流会の「キックオフ集会」が開催されました。
 冒頭、向後武彦千葉BM技術協会会長(和郷園副代表理事)から、「全国交流会をより活発な交流の場としたい。各団体においてはしっかりと情宣を行って欲しい」という決意表明が行われました。その後、全国協会の事務局長でもある礒田有治千葉BM協会副会長から全国交流会開催の意義や、概要の説明、秋田県の(有)ポークランドの実践事例と、茨城県・田中一作邸のBMWシステムの取組みと、現在行っている調査の紹介が行われました。また、昨年の交流会内容をDVDを見ながら全員で確認しました。
 続いて、全国交流会で講演や発表が予定されている地元・千葉関係の内容についてプレゼンテーションが行われました。
 パルシステム千葉の松永美智子理事からは、講演をお願いしているちば生物多様性県民会議の手塚幸雄氏の紹介と、県民会議での宣言文を読み上げ、千葉県の生物多様性戦略の紹介を行いました。
 続いて、千葉県の取組みについて、交流会で発表予定のパルシステム千葉、新生酪農(株)、(農)和郷園から取組み内容の紹介が行われました。
 パルシステム千葉の岡田哲郎氏からは、パルシステム千葉とNPO支援センターちばが、野田市で取組んでいる園芸福祉農場の内容について、次いで新生酪農㈱の鈴木猛氏から、BMW技術を活用し、桂牧場(酪農)を拠点とした地域循環型農業のモデル化計画について、それぞれ報告が行われました。最後に向後会長から、和郷園の事業概要や、資源循環型農業の取組みについて紹介が行われました。
 キックオフ集会の結びとして、全国交流会の副実行委員長であるパルシステム千葉の平野都代子理事長から「交流会の成功に向け、力を合わせて頑張っていきましょう」と、挨拶が行われ、集会を締めくくりました。
 キックオフ集会は、全国交流会を活発な交流の場にするという全体の意識が高まった集まりとなりました。全国交流会を有意義なものにするため、どうか多数の皆様の参加をお待ちいたします。
(報告:生活クラブ生活協同組合千葉 樋口謙二)

Author 事務局 : 2008年09月01日20:05

2008年度全国理事会を開催 【AQUA200号】

 六月三〇日、東京・神楽坂の研究社英語センターで、全国から二四人の理事が出席し、BM技術協会二〇〇八年度全国理事会が開催されました。
 全国理事会では、二〇〇七年度活動報告及び決算・監査報告、二〇〇八年度活動方針及び予算、役員の補充、会則の変更について、提案と協議が行われ、それぞれの議案が承認されました。承認された方針、役員の補充は、以下の通りとなっています。
●二〇〇八年度活動方針
①地域の土と水を再生する活動
 地域の土や水を、生態系の土や水に再生する活動を農業、生活、地域づくりの現場で展開する。山から海に続く川の流域で、生産現場や生活現場で利用する水や土を総合的に生態系の水や土に再生する活動や、それらを通じた地域づくり、学習活動等を「地域の土と水の再生(活動)」と称し、これに賛同する団体、人々と連携し、BMW技術の活用を図りながら、社会システムとしての「ミクロコスモス」のモデルづくりを目指す。
②地方協会の組織化
 各県及び地方単位で、組織化されていない地域について、学習活動や地域の土と水を再生する活動を展開しながら、地方協会の設立を図り、協会活動の普及を目指す。
③海外BMW技術普及活動への連帯
 海外でのBMW技術普及活動に、連帯していく。
 なお、今年度は、以上の全体方針の他、常任理事会と事務局の方針がそれぞれたてられました。常任理事会では、協会が直面する課題の検討を、事務局では、全国交流会や「土と水の学校」等学習会活動の開催、広報活動の充実等を方針として掲げています。
●役員の補充、海外特別理事の創設
 役員の補充として、理事に長野有機生産者連合代表の清水保氏が選任されました。
 また、今回、海外との連帯をさらに図っていくため、協会役員に新たに海外特別理事職が創設され、韓国のダンノモ農場代表のイ・ヒョンボク氏、そらインターナショナルコリア代表のハ・ジョンヒ氏が海外特別理事に選任されました。海外特別理事職の新設に伴い、会則の変更も行われました。
 
6月度常任理事会を開催
 
  六月三〇日、全国理事会に先立ち、常任理事会が開催されました。全国理事会議案の確認、第一八回全国交流会開催内容の検討、入退会申請等が審議されました。
(新入会員)
法人会員=埼玉県・㈱タケイ個人会員=静岡県・興津丈晴(敬称略)

Author 事務局 : 2008年09月01日20:03

国産採卵鶏を守る緊急集会が開催されました 【AQUA200号】

 七月四日、東京・大手町のJAホールで、「国産採卵鶏を守る緊急集会」が開催されました。現在、国内で飼育されている採卵鶏の九〇%以上は、外国産鶏種となっており、国産鶏のシェアは、六%に過ぎません。同集会は、日本の気候風土の中で育種した「種」を守っていくことを、広く社会にアピールしていくために開催されました。主催は国産採卵鶏を守る実行委員会で、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、パルシステム生活協同組合連合会、(有)鹿川グリーンファーム、常盤村養鶏農業協同組合、(農)黒富士農場、BM技術協会等で組織されました。当日は、報道関係者を含め、実行委員会団体や関係者二一六人が集会に参加しました。集会では、基調講演や実践報告、国産鶏卵の生産者価格の提案が行なわれ、最後に集会宣言が読み上げられました。

Author 事務局 : 2008年09月01日20:03

自然学を実践する「土と水の学校」報告 【AQUA200号】

宮城県 みやぎBM技術協会

 今年、三年目を迎えた~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座inみやぎは、六月二三日、小祝政明先生、礒田有治BM協会事務局長を迎え、約二〇名の生産者が参加し、大郷町内及び迫町で開催されました。
 水稲、トマト、キュウリ、ナス、の栽培状況を中心に見てまわり、その後約一時間の講習会を聞きポイントを確認しました。
 水稲は三年目を迎え、土壌のPHも六・八前後に安定して、根の白さ、太さが変わってきました。稲の姿も茎が太くガッチリしていて丈夫になっています。確実に苦土(マグネシウム)や石灰(カルシウム)を施肥し続けてきた結果が出ていると感じました。土壌分析の結果、施肥する量も年々少なくなってきているので、確実に蓄積されているのだと思いました。去年は、稲の葉色に騙されて追肥の時期が遅れていましたが、今年は順調に苦土と貝化石の追肥と、チッソの追肥を行えました。
 しかし、今年も乗用除草機による除草がうまくいかず、雑草が残ってしまい、今後の課題となりました。小祝先生には、有機肥料と生石灰を使った除草方法を教えてもらいましたので、来年は雑草の無い稲作を行いたいと思います。
野菜の水管理の重要性を再確認
 トマトも今年で三年目になり、昨年指摘のあった潅水と換気の対策として、複条栽培ではなく単条栽培にし、ハウスの両端の換気対策を行いました。その結果、ハウス内の換気が良くなり、例年に比べ、カビの発生が少なくなりました。
 しかし、初めての単条栽培なので、初期の潅水量が多くなり、樹勢が強くなりすぎてしまいました。その後、潅水量を抑えたのですが、今度は抑えすぎによって、カルシウムが吸収できなくなり、尻腐れが若干みられました。小祝先生には、天候によって潅水量は変わるので、水分計を使って水の動きを把握することが必要だとアドバイスをいただきました。
 キュウリでは、センチュウ対策もよくできていて、ミネラル、微量要素も十分だったのですが、潅水量が不足していて、曲がりがあるキュウリが多く見られました。潅水が水道水ということもあり、今後どのように水源を確保するかが大きな課題になりました。
 ナスは、ハウス栽培のものは、葉の大きさ、色とも良く、実の付き方も良好でした。ただし、葉が込みすぎていたので、中のほうに光が入るように整枝をと、アドバイスをいただきました。樹の勢いが良いので、追肥を遅れないようにすれば多収量、遅れれば減収と今後の管理次第で明暗が大きく分かれるので、良い結果になるのが楽しみです。
 一方、露地のナスは、雨不足の為、葉も小さく養分がうまく吸えていない様子でした。すぐ傍に水路はあるのですが、水路の水が濁りすぎているのを見た小祝先生はこの水はかけないほうがよいとのことでした。
 乾燥し過ぎた圃場では、雨が降ると窒素が一気に効いてしまうので、できればこまめに潅水することをすすめられました。隣に植えてあったキャベツは、密植していたので雨が降ったら病気が一斉に広がる可能性があるので要注意とのことでした。
 今回の勉強会では、水の大切さを改めて教えられました。必要なミネラルや微量要素を施肥して潅水しても、作物がどのくらいの水分量で生育していくかについては、考慮していませんでした。
 それに、露地栽培に関しては定植時には潅水するものの、その後は天気任せにしていたので、良いものを作るためにはやはり水は欠かせないものだと再確認しました。
 今後は生物活性水とBM菌体を圃場に散布するなど、生育初期に勝負できるような環境作りをしていきたいと思います。
(報告:大郷グリーンファーマーズ 熊谷剛介)

福島県 会津うまいもの塾

 六月二四日、福島県会津地域で米生産者十三名が参加して、会津うまいもの塾主催の「土と水の学校」有機栽培実践講座が開催されました。講師は小祝正明氏です。
 今年のテーマは「気象に左右されない良質米の安定生産」です。昨年、八月から続いた高温とその後の台風により、いもち病がほぼ会津全域で発生、特に喜多方市熱塩加納町では「三十年余の米生産経験上でも初めて」という人も出たほどの減収に見舞われました。
 地球温暖化の影響なのか、少しずつ米生産に異常が出てきて、生産適地の移動を予感させる今日ですが、良質米をその地の自然条件に見合った量は生産しよう、というのが講座の狙いです。
 まず最初は参加者全員の圃場巡回です。その圃場の生産者が秋耕ない、育苗、施肥設計、田植え日などの説明をした後、講師から現在の生育状況がなぜそうなっているかの解説を受けました。取組初年度の生産者を除いては、根の太さや色が全員揃っていて、講座の成果がようやく今年出ました。生育がやや遅れている以外、これまでのように葉色が悪く、根の色も焦げ茶というのが見当たりませんでした。
 ただし、やや窒素過多気味、植え付け本数のムラ、炭酸ガスの過剰発生などがあり、個別に対応策のアドバイスを受けました。中でも炭酸ガスの過剰発生は、過剰な酵母発酵によるもので、PHの低下及び窒素が稲ワラ分解に優先的に使われていて、生育が遅れる可能性が高いので、落水して酵母菌の密度を下げることになりました。
初期肥効をどう高めるかが課題
 巡回後の講義では、施肥設計はほぼOKの段階に来たので、初期肥効をどう高めて安定させるかの検討に入りました。雨で秋耕いが出来ない場合、窒素を吸わせないようにするため、酵母菌からバチルス菌に変えたらどうかと小祝氏からアドバイスがありました。
 なお、初期生育確保やガス発生に関連して、「田植え後一週間ぐらいで田んぼを乾かしている例があるが、大丈夫でしょうか」との質問があり、「乾すのは早くても問題がないし、一週間以内でもOKです」との回答を受けました。
 食味向上、収量確保では、まず秋肥・春肥で茎数を確保し、穂肥で千粒重、食味を確保する。その施肥のタイミングが重要とのことで、講座終了後から定期的に茎数の調査などを行うことになりました。
 今後、それぞれの地域の自然条件、圃場条件の適した生育管理を行うことで、秋の収穫がどうなるか、次回の講座の時点では成否が出ています。
(報告:会津うまいもの塾 代表 佐藤邦夫)

Author 事務局 : 2008年09月01日20:01

有機認証取得がはじまりました!第10回 【AQUA200号】

第10回 新潟県・謙信の郷
富永幸司 さん
 BM技術協会では、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。三年前から会員の各産地で取組まれている、~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについてどう捉えているかインタビューを行うシリーズ、第十回は、新潟県の謙信の郷で稲作やイチジクに取組む富永幸司さんです。  (まとめ:井上忠彦)

 ―――有機認証を取得しようと思った動機をお聞かせ下さい。
富永 高度成長期、この辺りの山に産廃施設やゴルフ場の建設をする話が持ち上がって、その反対運動を地域でやったことが環境や有機農業について考えはじめるきっかけになったかもしれないですね。当時は右翼や機動隊なんかが来たりして大変でした。ここの水源を守っていくこともそのころから考えはじめました。
 山を守る応援をしてくれた「緑の学校」の長谷川先生の話をみんなで聞いているうちに仲間意識もできてきたのかな。ごく自然に有機農業になってしまいましたね。
 そして平成四年頃、特栽米制度ができて農協などを通さずに自分で米を売れるようになったじゃないですか。それなら有機の米をつくろうと思いまして。米はただうまいだけじゃだめなんじゃないかと。
―――有機で稲作されてきて、いままでどんな取り組みをされましたか?
富永 岡山大学の岸田先生が鴨農法をやられているということを聞いて、わざわざ見に行ったりしました。やっぱり関東とこの辺は土が違うんですよね。ここはもともと粘土が強いところで、トロトロ層もしっかりしてない。
 有機稲作もはじめのうちは、米糠とくず大豆だけでいいんですよ。何年かはいい状態でいける。でもそのうち面積が増えてきたりすると管理がおろそかになって失敗する。わたしも地区の役をやっていて忙しかったときにやりました。
―――今年も鴨農法をやられていますね。
富永 マルチとかいろいろ試してきましたけど、長くつくってきてやっぱり鴨かなというのがひとつの結論としてあります。
 鴨は田んぼに入れた資材を足で攪拌してくれたり、稲の根腐れのもとになるようなことの緩和をしてくれます。ガスが沸くような状態だと稲の根が出にくいですから。鴨を入れてもイトミミズやユスリカを減らしてしまうというようなことはないでしょう。土壌条件はそんな簡単なものじゃない。でもオタマジャクシやタガメは鴨が目の敵のように食べますね。
―――「土と水の学校」も謙信の郷で定期的に開催されていますね。どんな効果がありましたか?
富永 いい苗をつくっても、いい圃場条件をつくらないとだめだと、小祝先生によくいわれます。こんなに根が赤い稲じゃだめで、粘土質をつきやぶっていくような稲をつくらなければ、と。それぞれの土地にあった有機農法があるし、いろいろ技術的なことはあるんだけど、問題は有機だと収量がなかなか確保できないことです。
―――今後、有機栽培米の販売価格は変わるとお考えですか?
富永 まぁ、横ばいじゃないですか。問題意識のある主婦なんかはすこしづつ増えていくでしょうけど。
―――生物活性水はどのようにお使いですか?
富永 「謙信の郷」の井澤さんのところから持ってきて生物活性水を十日に一回くらいイチジクに散布しはじめています。やりはじめたのは今年からなので、去年おととしと比べてどう変わってくるかを楽しみにみています。病気の入り方とか。
 田んぼの方は活性水をぽたぽたと点滴のように落とすことを以前やってみました。でも蛎殻を入れたり、いろんなことを同時にしているので、単純にAB比較ができないんですよ。
 野菜の場合は、いろんな研究事例からすごくよくなったのがわかるけど、米の場合収量や食味がすごく変わったかといわれるとはっきりわからないところがある。いろんな取り組みを一緒にやっているからどれの効果なのか。
―――行政に対してどんな要望がありますか。
富永 老後の楽しみの農業、小さな規模の農業だって切り捨てないでほしいですね。大規模化して借金に追われたくないですよ。後継者がいるところは大規模にやっても維持できるでしょうけど。
 有機の堆肥だってなかなか手に入れられません。農協が粉砕したもみがら堆肥を買って入れてる人もいますけども絶対量が少ない。 昔は牛、山羊、豚、馬、鶏などをみんな飼っていたし、臭くても当たり前に糞をつんで残飯残滓も入れて堆肥をつくっていたんですけどね。
 一年のサイクルも決まっていて、冬は俵を編んだり縄をなったり、酒屋に出稼ぎに行ったり。そんな中で農業で生きていく伝統みたいなものが受け継がれてきたのかもしれないですね。
 今は鶏を飼おうと思っても近所から鳴き声がうるさいといわれるし、薫炭をつくりたいっていうとぜんそくの子がいて煙がだめだとか、洗濯物が汚れるといわれてしまいますよね。さみしいところもあります。
―――有機農業の今後のあり方についてはどう思われますか?
富永 妻は、なんでこんな苦労してるんだろう、いったい誰のためにやってるんだろうといったりします。ここまで身を削ってやる必要があるのかと追い詰められたりもしました。作業はきつく、収量も少なくて、われわれのこの苦しみは米を食べてもらう不特定多数の人にわかってもらえていないと思う。二、三年前がそんな深刻さのピークで、その後ちょっと面積を減らしました。
 有機の人は働き過ぎだっていわれますよ。他の人は田んぼにでていないのに、うちは一日中田んぼの見回りをしたり鴨をかまったり。でもわたしは自分の生き方はこれでいいんだな、とごく自然に思えます。いつの間にかそうなりました。
―――これからの抱負はどんなことですか。
富永  今年は「究極の米」をつくろうとしています。有機JASで鴨農法無農薬の「はさ掛け米」(※注1)を。
 自分としては今も十年前も二十年前も同じですね。温暖化でこのままじゃ大変だ、壊滅的だとか今はいってるけど、オイルショックの時だってトイレットペーパーを必死に探したりして、これからいったいどうなっちゃうんだ?って感じだったでしょ。
 でも、大変なことはいっぱいあっても、まんざら捨てたもんじゃないっていうのが世の中なんだと思います。

注1:「はさ掛け米」  昔ながらの稲の乾燥方法で、横に渡した竿に稲を掛けて天日と風で自然乾燥させるもの。米の水分量を適度な状態に保ち、過乾燥させることがない。香り、甘みがあり冷めてからも味が落ちない。

Author 事務局 : 2008年09月01日20:00

 
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