自然学を実践する「土と水の学校」報告 【AQUA199号】

●長崎・南高有機農法研究会
西日本BM技術協会 共催 有機栽培講座
  ジャガイモのソウカ病対策
  有機肥料の散布方法もポイント
 長崎県南島原市で六月四日、~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が、南高有機農法研究会(南有研)と西日本BM技術協会の共催で開催されました。講師には、「土と水の学校」講師の小祝政明氏を迎え、南有研と西日本BM技術協会からは、二五人が参加しました。
 最初に昨年、ソウカ病対策として乳酸菌を活用し、効果を上げた南有研生産者のジャガイモの圃場を巡回しました。今年は同じく乳酸菌を活用したものの、ソウカ病が発生しました。その原因を特定するため、小祝氏は、生産者に昨年と栽培方法が変わったか、どのような施肥方法を行ったかを訊ね、原因を明らかにしていきました。その結果、有機肥料の散布方法、乳酸菌の投入量が今回のソウカ病発生につながったものと想定しました。
 続いて、ジャガイモ生産者が、鶏糞を材料につくっている堆肥現場を巡回しました。生産農家がもらってきた鶏糞そのものが未熟なため、臭いがあり、このまま圃場に投入すると、病原菌の繁殖につながることが指摘され、堆肥場の改善案が示されました。
 圃場巡回を終えた後の小祝氏の講義では、今回のソウカ病発生の原因が解説され、その対策を総合的に検討しました。とりわけ、病気が発生している圃場では、無菌状態の有機肥料をそのまま散布することは、病原菌の増殖につながり、病原菌に対抗する菌を有機肥料に混ぜてから散布することが対策として有効であることが指摘されました。
 続いて、西日本BM協会から今回参加した会員を対象に植物生理、とりわけ光合成の仕組みについて解説が行われ、植物生理に基づいた施肥設計の重要性が強調されました。その後は、参加者の代表的な栽培作物を例に、パソコンを使用した施肥設計講習が行われました。初めて、パソコンを利用して施肥設計を行った参加者からは、「是非、自分も試してみたい」と感想を述べていました。(報告:礒田有治)


●新潟県・謙信の郷
  育苗培土の検証とイネミズ対策を検討
 六月一四日、謙信の郷のメンバーの水田を巡回し、技術的課題の検証と対策の検討を行う「土と水の学校」有機栽培圃場巡回検討会が開催されました。
 今回の目的は、昨年、実施されたBM活性堆肥による水稲育苗用培土づくりと、生物活性水を利用したプール育苗実験を基に行われた今年度の育苗の検証と、昨年から大発生しているイネミズ対策の検討です。

 最初にメンバーの圃場の巡回し、生育状況を観察しました。栽培に紙マルチを使用している圃場では、葉色が落ちて生育の停滞が見られます。停滞の原因はイネミズの発生と低温です。次に観察した圃場は、合鴨と、除草機使用による圃場です。合鴨の圃場は、順調に生育していましたが、除草機使用による圃場は、イネミズの大発生のための停滞が著しく、根が抜けてしまうため除草機も押せない状況で、雑草が繁殖しています。
 最後に観察した圃場はイネミズ対策として、合鴨農法を全面導入しており、イネミズ害を完璧に抑え、かつ除草効果も大いに上がっており、生育は抜群に良好です。
 全般に、秋耕いによる水田の藁処理は問題なく、ガス沸きも発生していませんが、全員イネミズの大発生には困っている状況でした。
 巡回終了後は、地元の集落センターで、巡回に参加した礒田有治BM技術協会事務局長を交え、検討会を行いました。
 最初に昨年の実験に基づき、BM活性堆肥を利用した培土による今年の育苗結果を検証しました。メンバーの報告では①市販の有機育苗培土にありがちな育苗期間中のカビの発生や、病気の発生は一切見られなかった②昨年の実験では育苗中に肥料切れは見られなかったが、今年は肥料切れが見られた――というものでした。肥料切れについては、何が昨年の実験と違ったかを検証するとともに、各地で行われている育苗事例をもとに、課題を検討しました。
 次にイネミズ害対策を検討しました。一つめは、まず根本的にイネミズ個体数を減らす方法、二つめは、イネミズに負けない健苗づくりです。健苗づくりについては最初に検討した培土づくり、そして育苗中の管理を検討し、さらにプール育苗中の生物活性水のより有効な使い方、つくり方について意見交換を行いました。
(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2008年08月01日21:30

BMW技術を活用した有機栽培に着手 【AQUA199号】

パルシステム千葉・NPO支援センターちば
~自然学を実践する~「土と水の学校」初級編 有機栽培講座in野田を開催
 
            NPO支援センターちば 遠藤 尚志

 二〇〇四年からパルシステム千葉とNPO支援センターちばが中心となって進めてきた野田市における「園芸福祉」農場では、今年から地域循環型システムの展開を実践するため、BMW技術を導入し、複合型の農場作りを進めています。
 一月にBMWプラント(生物活性水)を野田市の生産者宅に設置し、二月からは、関係者でプラントに岩石等の設置作業を行い、生物活性水の培養を開始しました。三月には生物活性水が完成し、それを記念して「BMW技術プラント視察・研修会」を開催しました。また、この間「BMW生物活性水の作り方」「地域の微生物を生かすBM菌体づくり」「栽培段階での使用に関する利用法」等のテーマで生物活性水を有効利用していくための実践技術研修会を、㈱匠集団そらやBM技術協会の指導で、これまで三回開催しています。
 そこでいよいよ、野田市においても、BMW技術を作物栽培に活かし、健全な作物を生産する有機栽培技術を実践する―――ことを目的として、地域の循環型・有機栽培を目指す方たちとともに「有機栽培講座」の開催と「栽培実験」に取組むこととなりました。
 こうした背景のもと、六月八日(日)、「~自然学を実践する~『土と水の学校』初級編 有機栽培講座in野田」を野田市船形自治会館、野田市園芸福祉農場にて開催しました。講師には、体積法による土壌診断や植物生理に基づく施肥設計による有機栽培手法を全国で指導されている「土と水の学校」講師の小祝政明氏をお招きし、講座には野田市の生産者、園芸福祉農場「お~い船形」ボランティアの方々や、パルシステム千葉、NPO支援センターちば職員らが参加しました。
 講座は、圃場の見学、その後、講義という形で進められました。前半の圃場見学では、最初に園芸福祉農場である「お~い船形」(畑四・五反)の栽培状況を確認しました。施肥状況をチェックした後、作物の葉の色や水のはじき方、育ち具合から、どういった肥料が不足しているのかについて、畑の中を実際に歩きながら一つ一つの品種について小祝氏のアドバイスや指摘をいただきました。
 次に、生物活性水やBM菌体等を活用した有機栽培実験を行う圃場(ハウス八〇坪)を確認しました。同圃場では、実験区と地元従来の栽培方法による対照区を設け、インゲン、ホウレンソウを栽培する予定です。こちらは、これから栽培を行うため、これまでの施肥状況と土の確認だけでしたが、それだけで前作の育ち具合や問題点を的確に言い当てる小祝氏に参加者一同驚きの様子で、有機栽培における肥料の重要性について理解が深まったのは間違いありません。
 後半の講義では、まずは最も基礎となる植物の光合成の仕組みから始まり、アミノ酸とミネラルの働きについて有機栽培の基礎となる部分の解説を小祝氏からいただきました。化成と有機は何が違い、どういうメリット、デメリットをもっているのか等、これまで経験でしか把握していなかった部分について極めて理論的に納得することができ、参加者も目からウロコの様子でした。
 午後には、今後の「栽培実験」にむけて、具体的にどうやって施肥設計を実施したらよいか、実験圃場の土壌分析データ等を例に、パソコンを使用して、研修を行いました。
 今後は、七月に今回学習した有機栽培理論と生態系を再生するBMW技術とのコラボレーションで、貴重な水資源を守ることにも考えを及ぶす事を総合的に学ぶ「BMW技術基礎講座」、そして八月には、「有機栽培技術講座・実践編」を開催する予定です。この一連の講座とともに地域循環型農業の確立を目指して取り組みを進めていきます。

Author 事務局 : 2008年08月01日21:28

韓国・盧武鉉前大統領の故郷「ボンハ」村を訪問 【AQUA199号】

農村を豊かで美しいものにと、自ら農業に取組む前大統領
韓国・盧武鉉前大統領の故郷「ボンハ」村を訪問
そらインターナショナル・コリア  ハ・ジョンヒ

 韓国には農村で農業に取り組む前職大統領がいます。二〇〇三年二月から今年の二月まで大統領職を遂行して故郷に帰った盧武鉉(ノムヒョン)前大統領がその人です。
 盧前大統領が帰郷した「ボンハ」という村では、大統領退任後から今まで、連日、盧前大統領に会うため全国各地から尋ねてくる訪問客で殺到(現在約四〇万人以上)しています。最近韓国では「ノムヒョン烈風」、「ノムヒョンブーム」という言葉まで生まれています。もう「盧前大統領」は、官邸に閉じとめられて会うことのできない想像物ではないわけです。
 ボンハ村は韓国慶尚南道金海市進永邑から四・五キロ離れている烽火山(ボンファサン:標高一四〇メートル)の麓に位置する、柿と稲作が栽培される典型的な田舎村です。烽火山ののろし台の下にある村だということで「ボンハ(烽下)村」と呼ばれるようになった小さな村です。
 先月の五月三一日には、BM技術協会の椎名盛男常任理事と生田喜和常任理事が、ボンハ村を訪問し、前大統領に会いに来た全国各地の訪問客と一緒に、盧前大統領に会いました。
 訪問客への演説の中、盧前大統領は「ゆっくりするために帰郷したわけではありません」 と、ボンハ村に帰った理由を説明しました。「農村共同体の復元」、或いは「農村観光化」を念頭に入れているようでした。そのために帰郷の直後から盧前大統領は、まず烽火山の麓に、金海市の名産として知られている将軍茶を植え、村の所得源として準備をしている外、村の人たちと一緒に「親環境農業生産団地の推進委員会」を構成し、今年から八千平方メートル余りの田んぼに合鴨を約二千五百羽を放して合鴨農業を始めるなど、農村の未来を考える長期的な計画を繰り広げています。
 また、ボンハ村の自然河川であるファポチョン(花捕川)の生態系を復元するために、ボランティアの人たちと一緒に川の掃除に出かけるかと思えば、二万余のモクズガニを放流するなど、自然浄化のための作業にも積極的に参加しています。ある秘書官の話では、「盧前大統領は過労による病気を何回もするぐらい無理をしているが、この事業に対する意思がはっきりしている」と言います。
 そして、この日、盧前大統領は、「今はこの生態系の復元のための事業が長たらしく感じられるかもしれませんが、五年、一〇年後に生態系が復元できれば、子供たちが思う存分遊べる環境が提供できるし、これから世の中を担っていく子供たちにとっては農村と自然は、世の中が回る理知がわかるようにする豊かな体験の場になります」と、農村を豊かで美しいものにつくるべき理由を説明しました。
 盧前大統領の話を聞いてから、盧前大統領の生まれた生家を見に行きました。生家は小さい部屋二つと台所が一列に並んでいるスレート屋根のレンガで建てられていました。みすぼらしい家ではありましたが、ここの土や石、水などは訪問客に最も人気があり、訪問客の中の一部は、庭の石や土をビニール袋に入れて持って帰るし、また、大統領を輩出したところの水は特別だろうという思いで水を汲んで持って帰る人もいると言います。
 昼食のメニューは村のお母さんたちが運営しているお店で、牛肉のグッパとチヂミを食べました。ドブロクも一緒に飲んだらもっとおいしく感じられました。丁度その時、ボンハ村を取材に来た、韓国の公営放送局であるKBSの記者たちからインタビューを依頼され、椎名常任理事が代表としてインタビューに応じました。「ここには何をしにお出でになりましたか」という質問に、椎名常任理事は「韓国の前職大統領が田舎に帰郷して村づくりをしていると聞いたので、見学に来ました」と答えました。「日本にも盧前大統領のように、ふるさとに帰って農業をやる総理がいますか」という質問には「いません」と答えました。
 食事をしてからは、合鴨農法を予定している田んぼ道を散策しました。田んぼから見える村の風景と烽火山を眺めながら、これから変化していく村の様子を期待して見学しました。
 この日の同行は、釜山生協の理事長のイさんと組合員のチョンさん、河東郡の公務員のキムさん、そらインターナショナルコリアの徐、そして私が一緒でした。皆とても穏やかで快い一時を過ごして帰途につきました。

Author 事務局 : 2008年08月01日21:26

無農薬バナナ残渣でBM堆肥づくり 【AQUA199号】

タイ・ラメー郡に生物活性水施設が完成
    パン・パシフィック・コーポレーション  木村俊夫

 タイのチュンポン県ラメー郡のトゥンカーワット農園経営農民会は、バナナの残渣を利用して有機堆肥化することを目的に、生物活性水施設を導入しました。
 同農民会のあるラメー郡は、首都バンコクから約五〇〇キロ南下した場所に位置します。
 同農民会は、今年、日本に無農薬ホムトンバナナの輸出を始めて、ちょうど一五年目を迎えます。二〇〇八年六月現在の会員数は六二四名。このうちホムトンバナナ栽培中の会員は二一八名。総栽培圃場数三〇六圃場。総作付け本数三九万二七六〇本。栽培地区はチュンポン県北部からスラタニ県の中部地区まで広域に及んでおり、一八の生産地区に分けて栽培管理がなされています。現在は週に二〇~四〇トン近くの無農薬ホムトンバナナがPPFC(パン・パシフィック・フーズ・コーポレーション㈱) を通じて日本へ輸出されています。
 同農民会では、以前からバナナの残渣を利用して有機堆肥化し、畑に戻したいと考えていましたが、今回、BM生物活性水施設の導入に踏み切った背景には、最近の化学肥料及びガソリン価格の高騰が影響しています。タイでは昨年末頃から化学肥料の価格が高騰してきており、多くの生産者が困難に直面していました。今まで一部の生産者がペッブリー県バンラート農協からBM鶏糞堆肥を導入していましたが、同農民会とは北に三五〇キロも離れています。BM鶏糞堆肥も最近のガソリン価格高騰による輸送コストの上昇で価格が上がってしまい、購入をあきらめる生産者も出始めました。
 バナナの出荷作業で生じる週四~五トンにもおよぶバナナ残渣の「BM堆肥化」に成功すれば、格安で優良の堆肥を生産者に供給できるようになります。さらに生物活性水で個々の生産者も堆肥を作るという循環が出来上がります。この事について理事会で話し合いがなされた結果、「こんな良いことは是非やるべきだ」という話になり、満場一致で生物活性水施設導入の決定が下されました。
 設置工事はパルシステム生活協同組合連合会のレインボー・パル基金の助成を受け、㈱匠集団そらの技術指導のもと、サイアム・タクミ㈱の手により今年四月初旬から施工を開始しました。プラントはすでに完成し、現在は生物活性水の培養調整とプラントの試運転を行っています。予定では七月初旬頃に堆肥の製造に取り掛かり、年内からの活用を目指しています。このことはすでに多くの生産者の間で話題になっており、待ち望む声も多く聞かれています。彼らの期待を裏切らないためにも、一日も早く実現させたいところです。

BMW技術導入で「環境保全型農業の推進」を
トゥンカーワット農園経営農民会 理事長 チャッチャイ・パイサーン

 現在、タイ国民の寿命は昔と比べて非常に短くなってきています。その大きな原因として、食糧の品質低下が挙げられると思います。昔は化学物質を使わず、自然の力のみで作物を育てていました。その時代のタイ人は、健康でとても身体が丈夫だったと言われています。ところが現代は汚染された環境の中で育ち、日々化学物質にまみれた食糧を口にしています。寿命が短くなるのも、当然と言えば当然の結果です。このまま今の状態が続くとするならば、タイの将来は決して明るいとは言えません。
 この問題を解決していくにあたり、まず改めるべきは食糧を生産する側の人間の心です。自分の作った作物を口にする人々のことを考え、真に安心・安全な食べ物を作る努力が必要です。そのためには、自然と共生するという、人間本来のあり方に立ち戻る必要があります。自然を支配しようとする今のあり方では、安心・安全な食べ物を作ることはできません。
 今回のBM生物活性水施設の導入は、自然を生かす農業を実践していく上での、重要な一歩になると思います。BMW技術は農民会理念の一つである「環境保全型農業の推進」にも適合しており、今後、我々の扱うホムトンバナナの更なる品質の向上につながると信じています。生物活性水、BM堆肥の製造が実現した暁には、農民会をあげてこれをホムトンバナナ生産者に普及させると同時に、他のさまざまな面にもBMW技術を生かしていきたいと考えています。
 最後に、今回のBM生物活性水施設の施工に際し、「レインボー・パル基金助成事業」の助成対象に我々を選んでくださいましたパルシステム生活協同組合連合会には、この場を借りて深くお礼申し上げます。このBM生物活性水施設が、タイ農業のレベルアップに最大限活用されることを心から期待しています。

Author 事務局 : 2008年08月01日21:23

有機認証取得がはじまりました!第9回 【AQUA199号】

第9回 新潟県・謙信の郷
秋山一男さん

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。三年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。アクアでは、有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第九回は、新潟県の謙信の郷で、稲作やシイタケに取組む秋山一男さんです。  (まとめ:井上忠彦)

―――昨年、有機農業基本法が成立しましたが、これについてどうお考えですか?
秋山 有機農業基本法をはじめ、世論としてはこれからもっと有機へっていわれているけど、行政側からの実質的な動きや取り組みってまだほとんどない。福島あたりじゃ有機JAS取得の費用を県が負担するとかになっているようだけど、新潟は遅れている。
―――有機で稲作する場合、一番大変なのはどういうことですか?
秋山 除草かな。しばらく止めていたんだけど去年から鴨を入れるようにした。今年は三百羽入れた。一反歩に十羽くらいの勘定だね。カラス対策には釣り糸を張っている。今年はすこしカラスが少ないかなぁという感じもするし、今のところ被害はあまりない。鴨の入れ方もいろいろあって、細切れに入れたりするとカラスにやられやすい。入れる時期もすごく大事。他には、米糠とくず大豆を入れている。うちの場合は田植えと同時に米糠一二〇キロくらい撒く。その後五日から一週間の間にペレットの米糠を一反歩に三、四〇キロ追肥。くず大豆は四、五〇キロくらいかな、それからまた一週間くらいして米糠、くず大豆。あとは除草機。ほんとにだめなら手除草もやる。結果はかなりでていると思う。でも土地柄かコナギはどうしてもでてしまうね。
 大変といえば有機の場合、肥料をはじめ、資材費がかなりかかる。有機の肥料は普通の三倍くらいかかるものね。
 農薬の飛散の問題は、ここの集落は有機でやってる人が多いから比較的いい。二十五戸のうち四戸くらいの割合で有機。上越市ではダントツに多いし、跡を継ぐ若い者も多い。でも若い人もこだわりと技術がともなっていかないとだめだね。
―――今後、有機栽培米の販売価格は変わるとお考えですか?
秋山 変わらないんじゃない。でも有機についてはうちもこだわりがあるし、それだけの需要もあるからね。うちのコシヒカリは評判がよくてもっと欲しいといわれるよ。コシヒカリBL(※注1)は使ってない。有機の連中はほとんどそうだよ。
 それから県の「減減栽培米」(※注2)っていうのは五割減でいいんだけど、われわれが出してる「減減栽培米」は九割減だからかぎりなく有機に近い。肥料にしても有機肥料を使うし、ほんとうに特殊な場合を除いて農薬も使わない。でもその特殊な場合に撒く除草剤ってのは、これは効くんだよ(笑)。すごいね。有機の米だとそれを撒けないからこの通り苦労してるんだけど。
―――有機JASの書類管理はどうされていますか?
秋山 息子がやっている。ありゃ大変だ。だいたいパソコンできないひとには有機JAS取得は無理でしょう。認証には費用もかかるし、本当の純利益って考えてみたらかなり低いんじゃないの。
―――シイタケで有機JASをとることも考えてらっしゃいますか?
秋山 方向としては有機になってきている。ただJASを取ってもそれだけのメリットがあるかどうか。シイタケも最近は燃料が高くなってるから大変。農機具にも使うし、暖房にも使うし。うちは冬期には灯油を三百リットルを使う。
―――石油価格はあがる一方ですね。
秋山 もうコストがぜんぜん変わってきた。包装資材のラップ類も上がるし。でも価格に転嫁できないからね。自由相場だから、需要と供給で販売価格が決まるわけで。われわれ生産者が十円もうけるのってかなり大変で努力が必要なんだけど、流通の方だとさくっと何十円も中間利益をとったりする。だいたい小売り・流通が儲け過ぎなんだよ。生産者なんて至って真面目にやってるのに、途中でラベルを勝手に張り替えたり、悪いことやって儲けてる(笑)。有機米は消費者の立場からすればやっぱり高いと思うんだろうけど、慣行米に比べて資材費や作業の手間を考えたら、むしろ安い。
―――行政に対してどんな要望がありますか。
秋山 米あまりといわれるけど、有機に変えるとどうしても減収するわけだから、その分を減反のカウントに反映させるとかしてほしい。
 有機関連団体の組織をもっと強くして、県なり国なりにもっと要望していくべきだと思う。それに三十代四十代の担い手をどう増やしていくか。将来の農業を真剣に考えていく組織が必要だね。農協みたいな営利団体じゃだめだよ。
―――有機農業の今後のあり方についてはどう思われますか?
秋山 昔は牛を飼ってたんだけど、本来、有機をやるような人は牛の三、四頭も飼って、田畑を刈った草をその牛にやって、糞を堆肥に使って、みたいなことをやるべきだと思っている。うちはシイタケの林に堆肥にやってるし、発酵鶏糞も自分でつくっている。あんまり近代的な設備・作業所でやってるのって都会の消費者の眼からすると有機のイメージと違うと思うかもしれない。牧畜を一緒にやる有畜複合農業も国レベルで推進したほうがいいと思う。

注1:コシヒカリBL ――― いもち病の抵抗性遺伝子を連続戻し交配し、抵抗性を持つように改良されたコシヒカリ。品種登録上はコシヒカリと別の品種。流通過程においてはコシヒカリと表示され販売される。
注2:減減栽培米 ――― 栽培期間中、化学合成農薬使用が慣行栽培の半分以下・化学肥料使用が慣行栽培の半分以下の栽培の米。

Author 事務局 : 2008年08月01日12:12

 
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