茨城・田中一作邸のBMWシステムの生きもの調査始まる 【AQUA198号】

パルシステム連合会、BM技術協会、NPO生物多様性農業支援センター、
パルシステム茨城、茨城BM自然塾が共同研究

 田中一作さんのお宅では、生物活性水プラントを中心に家庭の廃棄物を出さない循環型のシステムが作られています。家庭から出るすべての排水は合併浄化槽を通ってBMWプラントで生物活性水となり、家庭菜園での野菜栽培に使われるほか、オーバーフローした生物活性水は、家の裏にある一〇坪ほどの田んぼに流れ込むようになっています。さらに、田んぼから浸透した水は、鶏舎に流れ、採卵鶏の飲み水となります。
 この田中さんの田んぼや生物活性水施設で、「BMWシステムによる資源循環型水田の生物多様性調査及び研究」を、「田んぼの生きもの調査」の手法等を用いて実施する事になりました。調査はBM技術協会がパルシステム生活協同組合連合会からの委託事業として実施し、NPO生物多様性農業支援センター、パルシステム茨城、茨城BM技術協会との共同で行われます。一六日に行った調査が第一回目で、今後、稲刈り後の一〇月まで計五回の調査を行う予定です。

 この日は、顔合わせと調査の趣旨、概要の説明が行われました。講師を務めるNPO法人田んぼの理事長、岩渕成紀さんは、田中さんの家は循環のシステムはコンパクトにまとまっている、この形を農村集落に普及させていければと話しました。茨城BM自然塾の清水澄塾長(協会常任理事)は、窒素、リンが田んぼに棲む植物、動物によって分解されることがわかった、こうしたことを分かりやすく一般に伝えていくためにもこの調査の成果は大切、と調査への期待を語りました。
 田んぼに場所を移し、各種測定機器を使いpH、溶存酸素、電気伝導度などを岩渕さんを中心に測定し、並行してドクターソイルによる土壌分析用の土壌の採取、土壌、水中の生きものを調査するためのサンプルの採取を行いました。
 測定したデータはその場で記録用紙に記載し、採取した土壌もその場で窒素、リンや各種ミネラルをどれだけ含んでいるかの分析を行いました。生きものの生息数を調査するために採取したサンプルは網に移し土を水で流した後、トレイに広げ生物の数を虫めがねを使い、一匹ずつ数えます。
 土の中からは、多数のイトミミズが見つかり、そのほかにヒル、フナ、モノアラガイなどが確認されました。田んぼの中、五カ所からサンプルを採るのですが、場所によって違いがあり、生物活性水が流れ込む付近で採取した土壌からは、多くのイトミミズが見つかりました。平均するとイトミミズは一平米あたり三五五匹生息していることが分かりました。また、フナは一平米あたり一〇匹以上棲んでいることが分かりました。
 こうしたデータは、調査終了後まとめられ、今年のBMW技術全国交流会で発表される予定です。        (報告 長倉徳生)

●今後の調査予定
8月22日(金)、9月24日(水)、10月17日(金)
※見学ご希望の方は、BM技術協会事務局までご連絡下さい(電話03・5211・0681)

Author 事務局 : 2008年07月01日13:10

中国・蘇州訪日団がBMW技術導入現場を見学 【AQUA198号】

㈱華和  戴 海燕

 中国の上海から、西におよそ百キロメートル離れた蘇州地域に 『樹山村』という集落があります。総面積六平方キロメートル、耕地面積約三〇〇ヘクタール、 二〇〇七年度現在、五五六戸、総人口が一、八二二人の村です。

 蘇州市政府はこの村を『蘇州市生態農業モデル村』として自然環境を保護していく政策を決定しました。この政策の執行に当るのは、『蘇州新(しんこう)農業観光開発有限公司』です。
 昨年、上海で華和と共同出資して作った『上海逸和農業科技有限公司』の黄青代表が蘇州市政府にBMW技術を紹介したところ、この蘇州新農業観光開発有限公司が樹山村にBMW技術の導入を検討しています。
 このため、五月一一日に、蘇州新農業観光開発有限公司・副総経理の蔡建新氏ら四名が、BMW技術の現場を実地見学するために来日し、黄青代表と私が見学に同行しました。
 一行は、一二日に、山形県の米沢郷牧場を見学に訪れました。協会常任理事の伊藤幸蔵さんと阿部均さんから、米沢郷牧場が取り込んでいる資源循環型農業についての説明を受け、稲の育苗圃、果樹園、生物活生水プラント、堆肥センターなどの見学を行いました。  
 訪日団のメンバーである王農梅氏からは、資源循環について、次々と質問が行われました。また、経済面の循環に関る農産物の販売にも興味津々のようでした。王氏は中国江蘇省における有数な土壌の専門家でもあります。かつて有機栽培茶にEM菌の研究を行ましたが、よい結果が出なかったようです。王氏は米沢郷牧場の見学で、BMW技術にある程度納得したようです。ただし、畜産を見られなかったのが残念でした。
 一三日には、茨城BM自然塾の田中一作さんが行っているBMW技術を活用した生態系と一体となった自給自足のシステムを見学しました。田中さんご夫妻からは、家庭雑排水など、身近な廃棄物から生物活性水をつくり、耕作や畜産に活用する循環型の暮らしの説明を受けました。訪日団一同、できた生物活性水に大いに興味を持ち、大きなペットボトル一本に詰め、持ち帰っていました。団長の蔡建新氏は、鶏舎を見学して、悪臭のないことに感心していました。また、田中さんご夫妻の環境を大切にし、自然と共生する暮らし方に共感し、是非、このシステムを導入したいと田中さんに話していました。
 交流しながら、田中さんが飼育している鶏の味の濃い美味しい卵や、茨城BM自然塾の米川修さんのサツマイモを一杯頂いた上、持ち帰りました、一同大変おいしいと好評でした。
 その日の夜、BM技術協会の礒田有治事務局長にお忙しい中、訪日団の泊まるホテルまでお越しいただき、BM技術協会の目標や、BMW技術の説明、今回視察した二事例のポイント等の解説を受けた後、交流が行なわれました。
 一四日は訪日団が、関西視察に向かったため、黄青代表と私で千葉県の和郷園を訪問し、トマトや、キュウリのハウスの見学を行いました。和郷園理事で千葉BM技術協会の向後武彦会長から、品種や土づくりの方法、栽培法、ハウスの作り方などを詳細に説明いただき、今後、中国でBM農場を展開する時のために非常に参考になりました。
 今回、見学にご協力いただいた皆さんに心からお礼を申し上げます。

Author 事務局 : 2008年07月01日12:35

韓国で「BM幸福づくり」討論会を開催 【AQUA198号】

~韓国楊平郡の親環境農業の核となるBMW技術~

㈱匠集団そら 秋山澄兄

 四月二二日~二三日、韓国の楊平(ヤンピョン)郡で、韓国でのBMW技術と協会を今後どのように活用、発展させていくかについて考える「BM幸福づくり」討論会が開催されました。同討論会は、楊平郡のダンノモ農場のイ・ヒョンボク代表や、そらインターナショナルコリアのハ・ジョンヒ代表らが呼びかけ人となって開催されたものです。二二日は、楊平郡農業技術センター・親環境農業教育会館で討論会、二三日は、楊平郡のBMW技術導入農場等の視察会が行われました。

 韓国では、これまで記念行事以外でBMW技術に携わる方々の集まりは初めてとのことでした。参加者はBMW技術を利用する生産者が、イ代表をはじめ一五人、そらインターナショナルコリアのハ代表、ソウ氏、農業技術センターのハンセンター長とBM担当のペク氏、韓国農政新聞のキム氏ら。日本からは椎名盛男常任理事と、匠集団そらから秋山が参加しました。そして、楊平郡元郡守(郡守は日本の知事にあたる)のミン・ビョンチェー氏、現郡守のキム氏が挨拶に訪れました。討論会は午後五時から途中夕食を挟んで、夜一一時近くまで行われました。
 討論会では、最初にキム郡守から「BMW技術交流に関する第一回の討論会が楊平郡で開かれたことに対して、大変うれしく思います。楊平郡にBMW技術が導入されて一〇年近くなり、どんどん発展していますが、もっと活性化できるように自分も頑張りたいと思います」と挨拶があり、続いてミン元郡守、楊平環境農業―21推進委員の副委員長であった権五均氏、農業技術センターのハンセンター長からも挨拶が行われました。日本から参加した椎名常任理事は「BMW技術は畜産の臭いを取る、ハエを取るだけのものではなく、エントロピーの増大によって崩れていく生態系を修復する技術としての役割を果たすものでもあると日本でも認識され始めました。今日は皆さんが楊平で生態系の村を作ると言う事で、それを勉強する為に訪れました。宜しくお願いします」と挨拶しました。
 討論会では、生産者などから、BMW技術を生産や自然生態系の再生へどう活かしていくか、また農業経営や生き方に至るまで、様々な意見の交換が、夜遅くまで続きました。

生物活性水の利用農家は九八〇戸、年間使用量六五〇トン
 二三日の視察会では、まず最初に楊平農業開発センター・オクチョン面(注:面は、日本の町村にあたる)プラント(生物活性水プラント)を訪れました。現在、楊平郡には四ヶ所にプラントがあり、そのうちの一つがこのオクチョン面のプラントで、牛糞を原料にした生物活性水です。直接ここに生物活性水を取りに来る生産者の他、楊平では農業開発センターの職員がタンクローリーで各生産者を回り、無料で配給しています。現在、利用農家は九八〇戸を超え、年間使用量は昨年、六五〇トンを上まわったとのこと。楊平郡農業技術センターの地域での役割は農家への技術の普及や、課題の改善、農村組織の管理など。BM技術はその中で大きな役割を果たしていると農業技術センターBM担当のペク氏は話していました。

韓国の親環境農業のメッカとなっている楊平郡
 ここで簡単に楊平郡と楊平のBMW技術導入経過について触れておくことにします。
 楊平はソウルを中心とする首都圏二千二百万人の水がめ(八堂湖)があるため、一九七〇年代から昨今までの約三〇年間、開発が一切禁じられていました。地元では不満が大変大きくなっていたそうです。一九九五年から八年間楊平郡の郡守であり、この会合に挨拶にも訪れた、ミン前郡守が、一九九八年四月、韓国で最初に楊平郡を「親環境農業地域」と宣言し、地元のNGOと一緒に有機農業による農村建設をすすめ、二〇〇七年一〇月には国の財政経済部で実施した優秀特区の最終評価の結果、楊平郡親環境農業特区が大賞を受賞しました。今や韓国の有機農業のフロントランナーとして評価を得るまでになりました。
 首都圏の水源地ということで三〇年間何もすることのできない地域として犠牲を強いられていた楊平郡は、行政と地域住民が一体となり、今は名実相伴う有機農業が盛んな地域となったのです。今までの蓄積された経験と実績を足場として自然、生態、環境、文化がよく保全された生態幸福都市の基盤をしっかりと固めています。
 また、一九九八年、楊平環境農業-21推進委員会」の権副委員長(当時)の勧めと案内により、日本の「夢産地とさやま開発公社」と「米沢郷牧場」などのBMW先進地を視察しました。BMW技術に魅了されたミン前郡守は、楊平郡にBMWプラントを導入する政策をとり、一九九九年一一月、最初に楊平郡オクチョン面にBMWプラントが建設されました。その後二〇〇二年には、ヤンドン面養豚団地の「ピッグランド」堆肥センターの中の悪臭やハエなどの抑制及び優秀な堆肥の製造に使われるBMWプラントが建設されました。
 プラントの管理は楊平郡農業技術センターが行っており、最近、有機農業のための農業資材として生物活性水の効果が知られはじめ、生産者の需要が大きく増えているそうです。二〇〇七年度は、前年に比べ、使用量は二五〇%の増加となり、生産者の利用上の便宜と円滑な普及のために、大規模の有機農業団地には大きい容量のタンクを設置し、注文量を配達して供給しています。さらに農業開発センターと郡では、国の補助を受け、来年、日量四トンを生産する大規模な生物活性水プラントの建設を予定しています。畜産農家だけではなく、耕作農家の需要も広がっているそうで、ニラや米作りなどに効果が出始めているとのことでした。
 このようにBMW技術は、楊平郡の親環境農業の推進と親環境農産物の生産に大きく役立っています。BMW技術は行政(自治体)が主管して事業を繰り広げる時にもかなり効果的だということがよくわかります。そらインターナショナルコリアのハ代表は「親環境農業のメッカとして大きく注目を浴びている楊平郡のおかげで、韓国でのBMW技術の普及と発展にもっと加速がつくと期待しています」と語ります。

●ダンノモ農場
飼育環境の向上が、肉質向上、経営の向上に
環境、教育への取組みで生態系の保全目指す
 次に訪れたのはダンノモ農場です。ここには韓牛が二〇〇頭(うち繁殖九〇、去勢肥育八〇、子牛三〇)飼育され、他にレストラン、食肉販売店、教育施設(環境学校を構想中)、有機栽培による水田、畑などがあり、総面積は七千坪となっています。農場から少し離れた町の中に、スーパーマーケットも経営しています。同農場には飲水改善と生物活性水のプラントがあります。プラント設置以前は楊平郡から生物活性水の供給を受け、その効果を確認していました。その後、そらインターナショナルコリアの支援を一部受け、二〇〇四年に韓国で初めての「畜産農家普及用飲水改善及び生物活性水プラント」が導入されました。「ハエ、臭いの抑制効果はもちろんだが、一番驚いているのは、飼料効率、発情率の向上、特に母牛は五産以上一〇産を超える場合もある」とイ代表は話します。牛舎の床はオガコなどは使わず、二~三年に一回床を取り出して、良質な堆肥を製造しています。
 ダンノモ農場の韓牛は、高級肉にランクされており、農場内のレストランと直売所以外に京畿道一帯の韓牛専門の販売場などを合わせて、年間五〇頭が消費されています。「自分が責任を持って育てた牛を消費者に食べて貰いたい、レストランや直売をやることにより消費者の声がダイレクトに伝わってくるから、それが牛の育成にも役立つ」とイ代表は話します。ダンノモ農場は休日になるとソウルやその近郊からの大勢のお客さんで賑わいます。来年はソウルから新しい鉄道が通ることになり、ダンノモ農場のすぐそばに駅ができるそうです。開発も少しずつ進んでいて、ソウルへの通勤圏になる可能性もあり、さらにソウルからは大勢の人々が訪れることになりそうです。
 イ代表は「BMW技術を導入することにより、経営面は確かに良くなった。これからは環境や教育への取り組みをすることにより、楊平の環境・生態系を守ることに尽力を注いでいきたい」と今後の抱負を語っていました。

ダンノモ農場(肉牛)とトルボー農場(養豚)が経営するスーパー「ヘオルム」
肉と有機野菜・米・果実の売れ行きが好評
 討論会の前日、このダンノモ農場とトルボー農場が経営するスーパー「ヘオルム」にも視察に行く機会を得ました。トルボー農場は楊平郡に隣接するヨジュ郡にあり、規模は養豚で二千五百頭、豚舎以外に堆肥舎、排水施設、生物活性水施設等があり、敷地面積は千五百坪。豚尿を原料に液肥と生物活性水を生産しています。生物活性水は残飯加工飼料(発酵飼料)を作る時に使用、他にも豚舎・堆肥舎に散布、家畜薬品会社(この会社が地域の畜産・園芸農家などに供給)にも納めているそうです。生物活性水を利用することにより発酵飼料のできが良く、飼料費用の節約、良質の堆肥の生産・販売により収益は上がっているとのこと。豚の発育状態が良くなり、丈夫に育ち、腸が厚くて長くなり下痢が減るといった効果や、消化吸収率が高まる効果が出ているそうです。この農場の中には大きなビニールハウスがあり、その中を尿処理水が小さな川が土の上を溝を切るように流れていて、川の周りでは野ゼリ、サンチュなどが育っています。水の流れは最後に池へと流れ込み、まるでBM自然ミニプラントとも言えるようなものでした。このハウスは人が集まる時によく利用しているそうで、ダンノモ農場と同様に、この農場にも人が集まれるスペースがあり、しかもそれらはとても過ごしやすいスペースであったことが印象的でした。
 話をスーパー「ヘオルム」に戻します。このスーパーではダンノモ農場の牛肉はもちろんのこと、有機野菜、米、果物などを中心に売られていました。値段は韓国にしてはやや高めですが、ここ数年でよく売れるようになってきたそうです。有機農産物を利用した加工品の取扱いも始め、今年の一月に行われた「韓国BMW技術導入一〇周年記念行事」の視察の際に訪れた、済州島のウンモル農園のキムさん(アクア二月号参照)のみかんジュースもよく売れているとのことでした。土地柄、水も空気も奇麗で、ソウルからもそう遠くはないと言う事で、別荘などが増え、上層階級の利用者が増えたことも要因のひとつですが、韓国全体で有機農業への関心が高まっていることが売れ行き好調の理由のようです。。最近、野菜は特に売れ行きが良いそうです。
地域生態系の再生とともにある経済
人と人とをつなぐBMW技術
 ちょうど韓国を訪れた時、米韓のFTAの問題がニュースなどで話題になっていました。日本も同じですが韓国でも農業は深刻な問題を抱えており、苦しい状況が続いています。だからこそ、皆で連帯し、力を合わせて頑張ろうと、生き抜く術のひとつとしてBMW技術の輪を広げて行こうと、今回の会合が開かれたのではないかと思います。単なる経済効果だけでなく、地域の生態系の再生をはじめ、環境・教育問題への取り組み、人と人とのつながりなどの要素がBMW技術の中に存在していることを改めて感じました。冒頭にも書きましたが、韓国ではBM技術を利用している人の集まりをするのはこれが初めての試み(記念行事は除く)です。「韓国人の気質からいくと、みんなで力を合わせて協力し合い物事を進め、組織を運営していくのは、これまで難しかったが、今回の『BM幸福づくり』は生産者の協力体制を作っていく、始まりのその始まりで、これから先もっと、楊平が拠点となりBM技術運動の輪を広げ、しっかりとした組織を築き上げていきたい」とそらインターナショナルコリアのハ代表は、話します。
 また、イ代表とハ代表は「韓国ではまだこれから、これから本当の意味でのBMW技術運動を始めていけることを願っている」と期待を込めて話していました。

Author 事務局 : 2008年07月01日12:30

 
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