記事抜粋タイトル一覧 No160(2005年4月)~185号(2007年5月)

No185 2007年5月号
◆ 「河川流域の生態系の再生」テーマに-世界自然遺産白神山地から日本海まで岩木川流域を視察
No184 2007年4月号
みやぎBM技術協会が設立~地域の自然生態系と調和した農業・生活・地域づくりを目指して~
No183 2007年3月号
生活協同組合ドゥコープでBMW学習会を開催
No182 2007年2月号
バイオマス発電、食糧自給率150%、風力発電15%-成熟した国 「デンマーク」視察訪問記
No181 2007年1月号
岩木川流域の「土と水の再生」への第1歩-藤崎町で農業集落排水処理施設改善に着手、調整稼動始まる
No180 2006年12月号
「第16回BMW技術全国交流会・第2回アジアBMW技術交流会」
No179 2006年11月号
イタリアの食科学大学が日本のスローフードを研修-らでぃっしゅぼーや、白州郷牧場、やまなし自然塾を訪問
No178 2006年10月号
第16回BMW技術全国交流会・第2回アジアBMW技術交流会「地域の土と水の再生を」 
No177 2006年9月号
第16回BMW技術全国交流会・第2回アジアBMW技術交流会「地域の土と水の再生を」石川県加賀市で開催
No176 2006年8月号
バナナ栽培に適したBMW堆肥等の開発に向け、基礎実験がスタート~タイ・ペッブリ郡バンラート地区~
No175 2006年7月号
名水の里~山梨県白州町にBMW技術導入の製菓・大豆加工工場が竣工
No174 2006年6月号
世界自然遺産「白神山地」の青森県・西目屋村でシンポジウム開催
No173 2006年5月号
第二回韓国BMW技術交流会開催
No172 2006年4月号
BMW技術の普及、方向性について情報・意見交換 (株)匠集団そら第13期株主総会開催
No171 2006年3月号
フィリピン・ネグロス島で兼重正次さんの10周年忌
No170 2006年2月号
定年後の新たなライフスタイルの想像-BMW技術応用の農と暮らし-
No169 2006年1月号
新年への期待 子供たちが教えてくれた事
No168 2005年12月号
BMW技術の新たな可能性をさぐる~第15回BMW技術全国交流会報告~
No167 2005年11月号
~ミクロコスモスへの第一歩~農業集落排水施設で悪臭防止実験を実施、消臭効果を確認
No166 2005年10月号
上海同済大学訪日団がBMの現場を見学
No165 2005年9月号
自立した農業と豊かな地域を目指して 農産物直売所「食彩ときわ館」
No164 2005年8月号
各作物別栽培課題に実践指導〜「土と水の学校」第2回学習会開催
No163 2005年7月号
四万十川の豊饒が生む創意ある活動
No162 2005年6月号
中国の上海、崇明島に生物活性水プラントが完成
No161 2005年5月号
栽培時術の向上を目指し、各地で学集会を展開~自然学を実践する~「土と水の学校」開催
No160 2005年4月号
集落の水を再生して地域へ還元しよう -農業集落排水処理施設改善事業に向けて

Author 事務局 : 2007年05月31日21:05

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千葉BM技術協会 青森県視察研修会を実施
「河川流域の生態系の再生」テーマに世界自然遺産白神山地から日本海まで岩木川流域を視察

 千葉BM技術協会は、BM技術協会が提唱している「水源地から河口まで、河川流域の生態系を再生する」取組みを青森県の岩木川を例に考えてみようと、4月7日(土)~8日(日)、青森県の自治体や、常盤村養鶏農業協同組合の協力のもと、「流域の土と水の再生」視察・研修会を実施しました。

 視察・研修会は、世界自然遺産の白神山地から、西目屋村、藤崎町、五所川原市へと、源流から日本海に至る岩木川の流れを人々の生産・生活活動と自然への影響、流域が育んだ文化等を追いかける形で行われました。また、流域の生産活動や暮らしの中で、BMW技術をどう活かせるか考え、技術導入が図られている藤崎町の農業集落排水処理施設や、石澤直士BM技術協会理事長が専務を務める常盤村養鶏農業協同組合のBMW生物活性水プラント等の現場も視察しました。
 同研修会には、千葉BM技術協会会員の農事組合法人和郷園や、生活協同組合エル、生活クラブ生活協同組合、新生酪農等から参加した12人をはじめ、BM技術協会会員のパルシステム生活協同組合連合会、茨城BM自然塾、らでぃっしゅぼーや㈱、太田出版、エフティピーエス㈱からの参加を含め、総勢22人が参加しました。
 青森空港に降りた視察会参加者一行は、昼食後、まっすぐに岩木川の源流となっている白神山地の入り口「西目屋村白神ビジターセンター」へ入りました。そこでまだ40歳という日本で一番若い村長である、関和典氏から西目屋村の現状説明をしていただきました。過疎、特に若年人口の少なさの問題や、経済立て直しのために国や都市部の大企業とどうつきあっていくか、といった日本の地方問題の困難さがよくわかるお話でした。

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 関村長は、昨年5月に西目屋村で開催されたシンポジウム(2006年6月アクア174号参照)で、「我々は川というものが身近にありながら、川というものを遠ざけてしまっているのではないかということにBM協会の方々を通して気づかせてもらいました」と語り、「川の水源というのは、人で言えば頭脳に当たり、我々が一定の方向性を示し、下流域の方々と協力して、岩木川をきれいにし、白神山地の価値をもっと高めていきたい」と話していました。
 その後、白神ビジターセンター内のブナ生態資料や、巨大スクリーンによる世界遺産白神山地についての映画を観賞し、残雪が残る岩木川源流を見学しました。
 西目屋村を後にした一行は、岩木山を横目に見ながら、岩木川を下り、中流域の藤崎町に到着しました。同町では、3月にBMW技術導入工事が完了した常盤地区農業集落排水処理施設を見学しました。施設概要を藤崎町上下水道課の對馬一孝課長補佐から説明をしていただきました。BMW技術導入後、約二週間で悪臭の減少が実感でき、処理施設から土のにおいがしてきたそうです(2007年1月アクア181号参照)。
 次に常盤村養鶏農業協同組合へ向かいました。最初に育苗ハウスで実験が行われている大阪ガス開発による最新のトリジェネレーション発電施設を石澤直士BM技術協会理事長に説明していただきました。トリジェネレーションとは一般のコジェネレーション発電(熱と電力)に加え、発生する二酸化炭素も利用するシステムです(トリプル/三つの略で、養鶏のトリとは関係ありません)。二酸化炭素は時間を決めてハウス内に充填し、苗の発芽状況を改善するために利用しているそうです。
 また、同所で常盤養鶏の生物活性水プラントと大規模な堆肥センターを見学しました。堆肥の周囲には生物活性水が撒かれ、臭いはほとんどしませんでした。

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 陽も暮れ始め、藤崎町から隣町の板柳町ふるさとセンターへ移動し、藤崎町の小田桐智高町長と前五所川原市教育長(旧市浦村村長)の高松隆三氏、トキワ養鶏グループの方々との懇親会となりました。
 小田桐町長からは、「我々のくらしで使用した水が、岩木川を通じ、十三湖へ流れ、そこでシジミ貝が育ち、それを我々は食べている。藤崎町では視察していただいた農業集落排水施設にBMW技術を導入しています。行政の責任として、排水をきれいな水にして、田んぼや川に返す必要があります。今後も流域の町として、また、一町民としての責任を持ち、こうした取組みを流域全体に広げていきたいと考えています」と挨拶がありました。
 続いて高松氏からは「私たちは、川から農業用水や生活用水、工業用水、発電、そして漁業と多大な恩恵を受けています。しかし、一方では、農薬や洗剤の垂れ流しなど、浄化するはずの川が汚れているという現状があります。どんなに水源ではきれいな水であっても、川を守るという事は、上流、中流、下流が一体となって、取り組まなければ、本当の意味で私たち人間も住めない状況になってしまいます」と現状に警鐘を鳴らす挨拶がありました。
 懇親会では、常盤養鶏と八峰園から提供いただいた食材でバーベキューとなりましたが、参加者一同、その美味しさに驚きました。
 視察見学二日目は、高松氏が直々にマイクロバスに同行してくださり、岩木川中流から河口付近の十三湖まで、丁寧な解説をいただきながら見学しました。
 高松氏の解説では、岩木川は世界遺産である白神山地を源流として津軽平野を流れ日本海へと注ぐ、全長102キロもの青森有数の一級河川であり、現在、その水質は県で2番目に汚染されているといいます。世界遺産である白神山地のブナ広葉樹山林で、すばらしい水を作り出しても岩木川の中域は、農薬や化学肥料が使われる水田やリンゴ畑が広がっており、また、弘前市など都市部からのたくさんの家庭生活排水も流れ込みます。汚染された岩木川の最後にある十三湖は日本海の海水と岩木川の淡水が混じる汽水域で、良質の国産シジミが取れる場所です。しかし最近では年々シジミの質や産出量が低下しているそうで、このまま放置すればいずれは採れなくなるかもしれない、とのことでした。
 今回の研修視察会では十三湖の中州にある歴史民俗資料館、五所川原市の「立佞武多(たちねぷた)の館」、旧金木町の太宰治記念館「斜陽館」なども見学し、津軽文化の一端にふれる事ができました。特に十三湖の歴史民俗資料館では、中世、日本海沿岸の交易港「十三湊(とさみなと)」として栄えた同所の記録を興味深く見ました。津軽地方の有力豪族であった安倍氏・安藤氏の拠点であり、この場所から九州や大陸などと交易が行われていたとの事です。

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 今回の視察・研修会を終えて、千葉BM技術協会の向後武彦会長は、「岩木川流域での問題点や、自治体の枠を超えた環境保全、土と水の再生の取り組みを目の当たりにし、あらためて川の大切さ、川につながる広域の大地や小川の環境の重要性を認識しました。これらの事を千葉に持ち帰り、我々の地域で何が出来るかを自治体や職業の枠を超えたテーブルで話し合い、地域ぐるみで何か一つ形にしたいと考えています」と総括されました。
 また、千葉BM技術協会副会長で生活協同組合エルの渋澤温之専務は「今回、BMW技術を活用した岩木川流域の取り組みを視察できたのは、大変貴重な経験でした。特に感銘したのは、行政の理解が非常に深いという点です。環境問題に取り組むには、市民団体だけが力を入れていても、大きな成果を生む事は期待できません。官・民が一体となり協働で取り組むべきです。その先進事例を目の当たりにし、今後、エルコープでも積極的に検討すべきとあらためて感じました。現在、エルコープは千葉県野田市で園芸福祉に取り組んでいます。行政・障害者団体・市民ボランティアが一緒になって参加できる農園作りです。この中にBMW技術を取り入れ環境に配慮した実践を作り上げる事も検討していきたいと思っています」と語っています。
 一方、視察を受入れていただいた、石澤BM技術協会理事長は、「今回の視察研修会では、皆様に、白神山地から十三湖、そして日本海という岩木川の流れを見ていただき、津軽の風土に触れていただきました。参加された皆様と同じ時間をすごせた事で、今後のBM技術協会の生態系を取り戻す運動を理解していただく一助になれば幸いです。また、今回の視察に参加されたパルシステム生活協同組合連合会等が取組んでおられる『田んぼの生き物観察』や、徳江倫明さんが提唱する、農業そのものが環境や食文化を守るという『フードトラスト』運動等々の取組みと一緒に、この国の環境を取り戻し、他の地域のモデルとなる取り組みに出来るよう、お互いに努力していきたいと思います」と今後の抱負を語っています。

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Author 事務局 : 2007年05月31日20:43

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みやぎBM技術協会が設立
~地域の自然生態系と調和した農業・生活・地域づくりを目指して~

 2月25日(日)宮城県の秋保温泉・岩沼屋にて、みやぎBM技術協会の設立総会が開催されました。この日は、あいコープみやぎ・生産者共生会総会の後という事もあり、総勢24名の参加となりました。発起人の一人である大郷みどり会の西塚忠元さんの挨拶に始まり、会則の制定、会費の確認、役員の選出、事業計画を決定しました。

 みやぎBM技術協会は、~自然学を実践する~「土と水の学校」inみやぎの参加メンバーが中心となって設立されました。地域の自然生態系と調和した農業・生活・地域づくりを目指すBM技術協会の趣旨に賛同する宮城県内の農業や畜産の生産者と、あいコープみやぎの組合員(生活者)に呼びかけ、また農業生産者という枠組みにとらわれない地域のネットワークの中で様々なジャンルの方々に呼びかけています。

 みやぎBM技術協会の本年度の重点活動方針は以下のとおりです。
①「土と水の学校」inみやぎを開催し、耕種部門の基礎的技術の研究とBMW技術の融合を図る②畜産部門では、堆肥の改善と環境の改善、応用として草地の管理技術の向上③BMW技術を生活の場で活用するため、生活者への普及を計り、講演会等を行う。また、生ゴミの堆肥化と活用技術の確立を図る。
 これらの活動を通じ、農業分野では循環型有機農業の確立を、生活分野で環境に負荷をかけない暮らしを目指し、活動していきたいと考えます。本年秋には宮城の松島で、第17回BMW技術全国交流会が開催され、全国の会員の皆様が参加されます。
 みやぎBM技術協会では会員をあげて受け入れに全力を尽くしますので、皆様の参加をお待ちしております。

 みやぎBM技術協会の役員は、以下の通りです。

会長 西塚 忠元(大郷グリーンファーマーズ)
副会長 小野瀬 裕義(あいコープみやぎ専務理事、BM技術協会理事)
幹事 菅原 隆一(迫ナチュラルファーム)
幹事 高橋 精一(田尻農産加工)
幹事 小野 奈美子(あいコープみやぎ)
監事 郷右近 秀俊 (大郷グリーンファーマーズ)
事務局 平野 博幸(あいコープみやぎ畜産担当商務)

みやぎBM技術協会設立に当たって

●みやぎBM技術協会 会長 西塚忠元

 BM技術協会の活動は近年、~自然学を実践する~「土と水の学校」の開催等で、耕種分野での発展が著しく、宮城の生産者も皆、大変喜んでいます。生物活性水の応用をはじめ、どのような技術の展開が出来るかがBMW技術の楽しさであり、難しさであると感じています。
 宮城県は長年、あいコープみやぎの小野瀬BM技術協会理事が中心になって技術の普及に努めてきましたが、今回のみやぎBM技術協会の設立を機に、循環型有機農業の確立と技術の生活者への普及に努めていきたいと思います。

●副会長 小野瀬 裕義

これまで懸案であった、みやぎBM技術協会が、今秋の全国交流会開催を契機に発足しました。当面は、耕作農家と畜産農家を中心に、活動を進めていきますが、生協組合員の生ごみ堆肥化等を通じて、福祉農場や生協農園でのBMW技術の応用にも取組んでいきたいと思います。


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Author 事務局 : 2007年04月30日10:57

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世界遺産「白神山地」の水を守る農業・「流域の土と水を保全・再生する」産直運動へ
~生活協同組合ドゥコープでBMW学習会を開催~

 2月7日、埼玉県の生活協同組合ドゥコープ(濱口廣孝理事長・パルシステム連合会会員生協)の主催で、世界遺産「白神山地」の水を守る農業と題した、BMW学習会が石澤直士BM技術協会理事長を講師に、さいたま市のスペース・ドゥで、開催されました。
 学習会では、BM技術協会が白神山地を源流にする青森県・岩木川の流域で展開を始めている「土と水の再生」活動と、その具体化技術としてのBMW技術の適用事例、また、流域の上流から下流まで、連携した土と水を再生する取組みの必要性と、取組みに連帯する新たな産直活動の重要性について、学習しました。

 当日は、組合員30人が参加し、映画「白神の夢」の短縮版と昨年のBMW技術全国交流会で紹介された岩木川流域の上流・中流・下流の町村長のメッセージビデオの上映、石澤理事長による「流域の土と水の再生を」と題した講演が行われました。また、パルシステム商品から環境を考えようと、岩木川流域のパルシステム産直商品(BMW技術導入卵及びリンゴ、十三湖のシジミ)の試食も行われました。参加者からは、「自然の偉大さ、自然を守る大切さを友人達に伝えたい」「生態系本来の機能を持った水にする事が重要だ」「とてもわかりやすく、感動した」等、様々な感想が寄せられました。

映画「白神の夢」~森と海に生きる~
 上映された映画「白神の夢」は、小学生が白神山地をテーマに様々な総合学習を行い、成長していく姿と、それを見守る大人達もが変わっていく姿が描かれています。今回は、本編の短縮版を上映しました。白神山地のブナ林に雨が降り注ぎ、ブナの落葉からできた土と岩石に触れた水が、海に到達して藻場をつくり、そこにハタハタがやってくるというBMW技術のモデルも、得心できる内容になっています。この「白神の夢」を見て感動した石澤理事長が、白神山地を村内に持ち、岩木川源流の村となっている西目屋村の方々に是非見てもらいたいと、関和典 西目屋村長に相談し、同村でシンポジウムが昨年5月に開催されました。

岩木川上流・中流・下流の町村長からのメッセージビデオ
 続いて上映されたビデオは、関 西目屋村長、趣旨に賛同いただき、シンポジウムでパネラーとなっていただいた小田桐智高 藤崎町長、高松隆三 前(旧)市浦村長のインタビューとなっています。上流、中流、下流の人々が協力し、岩木川流域の水と土を守り、再生し、それを次の世代につなげていきたいというメッセージが紹介されています。

「流域の土と水の再生を」
石澤理事長講演

 映画とビデオの上映を受け、石澤理事長から講演が行われました。
 「白神山地の水を守る農業を進める上で、BM技術協会が提唱している『流域の土と水を再生する』活動は、重要な意味を持っています。BMW技術は、水源から河口まで、畜産や耕作農業での活用、加工所、事業所、集落の排水処理や中水利用、家庭生活での活用まで、幅広く、水や土の再生に適用でき、自分達の身近な所から変えていく事ができるからです」と、BMW技術の考え方や内容を、藤崎町の農業集落排水処理改善事例や常盤村養鶏の採卵鶏と果樹・野菜生産の有畜複合農業事例、パルシステム、ドゥコープ等での排水、中水の導入事例等をパワーポイントで示しながら、石澤理事長から解説が行われました。
 流域の土と水を再生していくに当たっては、「現在は、行政や生産者、NPO、消費者等がそれぞれバラバラに動いています。食育基本法ができたり、有機農業推進法ができたり、様々な取組みが行われていますが、それらがどうやって連携していくかを考えた時に、山から海に至る川の流れに視点を当てていく事が重要だと思います。また、川をきれいにするだけでなく、どうやって汚さないようにするかをこれから一緒になって考えていく時期にきていると思います。そして、それができるのは、『流域の土と水を保全・再生する』産直活動ではないかと思います。今日の学習会をきっかけにまた、皆さんと話し合っていきたい」と石澤理事長は語りました。
 最後に、日本列島を大陸から見ると日本海は、湾になるという絵を示しながら石澤理事長は「地球の中で日本海というのは本当に狭い。岩木川も地図にしてみると本当に短い。けれど、この短いところの汚れが海の藻場を壊している。まずは自分の足元からしっかり取組んでいきたい」と、締めくくりました。

ドゥコープ 濱口理事長閉会挨拶

 映画「白神の夢」を見ると、いやになるほどのんびりとしていますが、見終わると、フッと感動します。是非皆さんにも、本編をみていただきたいと思います。自然の大切さ、それから生態系の循環が結局のところ、BMW技術の思想につながります。BMW技術の思想は、私たちのゆがんだ生き方、暮らし方をもう一度見つめ直し、少しずつ変え、本来の姿に戻していこうというものだと思います。ドゥコープで言えば、いのち潤う地域・社会をつくろうという理念であり、パルシステムの理念では、共生の社会をつくろうというものであり、みんな共通する方向があります。今回の学習会を踏まえて、まわりにもっとBMW技術や生態系を守るという事を、広げていっていただきたいと思います。(報告 礒田有治)

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Author 事務局 : 2007年03月31日13:56

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600戸に電力と温水を供給するバイオマス発電
食糧自給率150% 風力発電15% 成熟した国 「デンマーク」視察訪問記

 1月14日から20日までの7日間、厳冬期の農業とエネルギー関連及び福祉施設の視察を目的に、デンマークを訪問した。視察には、農業者大学校の卒業生を中心にBM技術協会の椎名盛男常任理事、見田由布子さんら合計13人が参加した。
 デンマークは、「畜産王国という事情から国内に入国してから2日間は、畜産関連の視察はできない」という、今回コーディネートして頂いたデンマーク農業理事会からの指導の下、入国した当日はホテルに入り、翌日は、朝九時過ぎから二時間弱デンマーク農業理事会の本部でデンマーク農業事情と今回の視察の内容についての説明を受けた。その後、約二時間かけてデンマーク第2の都市オーデンセ市にあるFangel バイオガスプラントへ向かい、翌日からようやく農場の視察が始まった。

肉の自給率は500%、原子力発電は禁止

 デンマークは、私自身今回で2度目の訪問になるが、前回は、見るもの聞くもの全てに納得してこの国の良いところばかりを見てきたように思う。具体的には、九州とほぼ同じ面積4万3094平方㎞(グリーンランド、フェロー諸島を除く)で、人口(535万人)や、風土的には北海道(人口562万人)とほぼ同様である。一人当たりのGDPは、北海道とほぼ同じ約3万ドル。しかし、食糧自給率は、150%で、特に豚肉は、500%近い自給率を誇っている。しかも飼料自給率は85%。そして、協同組合の力がとても強いことが特徴だ。また、原子力発電は禁止(風力発電が電力消費量の15%)になっている。
 実は、原子力発電が禁止になった理由は、国民投票によるもので(ほとんどの法案が一~二%の差で決まるそうだが、この法案だけは大差がついたそうだ)、この一件だけでなくいろんな政策が国民投票によって決定されるそうだ。しかも、80%以上と高い投票率。
すべてが、体制に流されていくどこかの国とは違い、一人一人が自分の考えを持っていてしかもその意見をきちんと伝える仕組みが出来ている、いわゆる成熟した国に感動して帰った記憶がある。そうは言っても、前回訪問した時期は、9月の一番良い季節だった。出来れば真冬のデンマークの状況を見てみたい。糞尿を散布できるのは、春の作物が芽吹いてからであり、冬の間の状態を見たい。本音は、いい所ばかりではないのでは、無理なところもあるのでは、こんな生き方じゃ疲れるのではと、少し意地悪な気持ちもあった。

消費税は25パーセント、教育・医療費は無料

 今回は、飛行機代金以外の全ての経費を現地で支払った。消費税25%の凄まじさをつくづく感じた。だからデンマークの給料は高い(今回の通訳の方に支払うお金は1日日本円で8万円、豚肉カット工場の職員給与は、福利厚生費含めて時給5千円)。けれど、デンマークの人は、出来るだけ買い物はしない(お酒は安いが他は全て高い。水は200円、ガソリンは160円以上)。朝の通勤時間は、自転車が多い。自転車専用道路まである。
 食事の時間は、少しでも安い所を探すが、それでも1人4~5千円はかかる。(イタリア料理のお店でパスタ(ペペロンチーノ)を頼んだが、2千円)。それにしてもこの国の方々は良く働く。彼らに言わせると税金が高いからよく働かなければいけないそうだ。その代わり、教育費、医療費はかからない。

フォルケ・ホイ・スコーレ

 フォルケ・ホイ・スコーレ(Folke hoj skole)は、「一八歳以上の人が誰でも好きな期間に希望する科目を学ぶことができて、試験もなく、資格も与えない。全寮制で教師と共同生活をする。経費は政府の援助でまかなわれて、国家の干渉はない」というもの。生きることそのものを学ぶための学校と言われ、自己の再発見ができる場でもある。国民高等学校とも呼ばれ、地域に根ざした民間の学校である。運営費の70~80%を国が援助しており、自分のやりたいテーマに合わせ、自分独自のプログラムを組み立てられ、約1ヶ月間~1年間のプログラムがある。各学校によっても特色が見られる。

糞尿と食品残渣でメタンガスを製造 ― バイオガス・コージェネ発電と、良質肥料に利用
 いずれにしても、今回は特にデンマークの得意分野である、養豚と酪農を中心に見てきたが、その糞尿からメタンガスを取りそのガスを利用して発電を行い、さらに発生する熱を利用して家庭の暖房や冷房(熱交換により)に利用されている。これは、「バイオガス・コージェネ発電(発電+余熱利用による温水供給)」と呼ばれている。今回訪問したFangel バイオガス社では、オーデンセ市の600戸に電力と温水を供給し、その他に1キロワット約12円で電力会社に売電を行っている。電力と温水を供給している600戸の家庭からは、1戸当たり、年間平均18~19万円の光熱費を頂くそうである。
 メタンガスの原料は、1日当たり180トンの家畜糞尿(豚80%、牛10%、ミンク10%)と、40トンの食品残渣で、1日当たり1万2千㎥のメタンガスが製造されている。発電能力は、800kW/時間となっている。さらに、メタンガスを採ったあとの消化液は、良質の肥料として農家に還元される。また、糞尿だけでは、効率が悪いので近くの食品残渣を有料で引き受けて、メタンガス製造に使用しているが、これも春には散布させて頂くそうである。まさに、循環型を地で行っているのがデンマークである。
 また、デンマークでは、現在、全体の一五%となっている風力発電の割合を、2030年までに、50%までに引き上げる方針となっている。

「間接照明」の大人の国

 最後になるが、日本の照明は直接照明が中心だが、デンマークでは間接照明である。今回同行した椎名常任理事の「日本も、そろそろ成熟した大人の国にならなければいけないのではないだろうか」という言葉が強く耳に残った。二度目の訪問で強く感じた「間接照明」の国デンマークについて、今回は、エネルギーの話を中心にさせていただいた。機会があれば是非一度訪問してみてはいかがだろうか。

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Author 事務局 : 2007年02月28日14:12

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岩木川流域の「土と水の再生」への第1歩
藤崎町で農業集落排水処理施設改善に着手、調整稼動始まる

 青森県藤崎町の常盤地区農業集落排水処理施設では、昨年11月からBMW技術による同処理施設の改善に取組み、現在、調整稼動に入っています。
 同施設の改善事業は、BM技術協会が提唱している水源地から河口まで、流域の「土と水の再生」を図るという、岩木川での具体的取組みの第一歩となります。

 昨年の第16回BMW技術全国交流会は、~BMの原点に戻る~「地域の土と水の再生を」をテーマに開催されましたが、世界遺産・白神山地が源流となっている岩木川の中流域に当たる藤崎町での今回の取組みが、今後、上流及び下流の市町村や人々の連携した活動につながる事を地元及び協会関係者等から期待されています。
 今回の農業集落排水処理施設の改善事業は、㈱NIPPOコーポレーションと㈱匠集団そらとの共同作業で実施されました。2005年10月に同処理施設で行われた悪臭防止確認実験の成功を受けて、実施されたものです。悪臭防止確認実験では、実験開始後、約二週間で悪臭の原因となっている硫化水素や、アンモニアは、検知されなくなり、小田桐智高藤崎町町長じきじきに確認に立ち会っていただきました(2005年11月アクア167号参照)。
 また、BMW技術による農業集落排水処理施設の改善は、昨年の全国交流会での視察コースとなっていた石川県能美市の事例では、悪臭防止の他、安定した処理水質を保つとともに、余剰汚泥の大幅減容に成果を上げ、汚泥処理費用の大幅削減に寄与しています。
 常盤地区農業集落排水処理施設では、調整稼動中の現在、悪臭もほとんどなくなり、5月までをめどに調整が行われ、今後、詳細なデータを蓄積していく事にしています。
(報告 (株)匠集団そら 星加浩二)

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Author 事務局 : 2007年01月31日14:35

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 11月17日、18日の2日間、「第16回BMW技術全国交流会」が、
『~BMの原点に戻る~地域の土と水の再生を』テーマに掲げて 、石川県加賀市で国内外から約250人が参加して開催されました。今回は「第2回アジアBMW技術交流会」を兼ねて行われ、アジアからは、韓国、タイ、フィリピン等から参加がありました。

 交流会は、「地域の土と水の再生を」のテーマ紹介を事例を追って映像化した6分ほどのビデオ上映で幕を開けました。開会の挨拶が佛田利弘交流会実行委員長(BM技術協会理事、(有)北陸自然学研究所・(株)ぶった農産代表取締役)からあり、「今交流会のテーマは、BMW技術の原点に戻り『地域の土と水の再生を』掲げました。この交流会を通じ、自然生態系の循環・浄化システムに学び、それを我々人間の農業生産や生活に活かし、生態系を回復し、地域にも広げていく──というBMW技術の運動を、もう一度皆さんと確認したいと思います」と参加者への呼びかけを行いました。

●講演「BMW技術の概要と今後の展望」
 長崎浩BM技術協会会長は「BMW技術の概要と今後の展望」と題して、生物活性水を例にBMW技術の原理や利用分野の説明、生物とミネラル、土壌腐植の関係について、分かりやすく解説しました。岩石に含まれている各種ミネラルが長い時間をかけて水に溶けだし、植物、動物がその水からバランス良くミネラルを体内に取り込む事の循環原理が分かりやすく、データを使って説明されました。

●基調報告~BMの原点に戻る~「土と水の再生を」
 続いて、石澤直士BM技術協会理事長が基調報告を行いました。畜産の悪臭・公害対策から始まり、畜産糞尿を資源に変え、地域循環型の農業、そして水源地の水を守る活動を展開してきたBM技術協会の活動の経緯が紹介された後、今交流会をBMの原点に戻り、資源と人間の輪と技術が循環する社会『地域ミクロコスモス』を目指し、地域の土と水の再生を図っていく契機としたいとの表明がありました。そして、今後の取り組みとして、流域という観点から農村、都市住民が連携してBMW技術を生かし地域の土と水の再生を進める必要性などを訴えました。

●発表「地域の水を再生する」
 基調報告に続き「地域の水を再生する」をテーマに、四つの発表が行われました。

 ◆「農業集落排水処理施設改善で、排水を生態系の水に」
 農業集落排水にBMW技術を導入し、悪臭防止、汚泥の減容に大きな効果をあげた事例が、㈲北陸自然学研究所の佛田利弘代表取締役から「石川県能美市におけるBMW技術導入効果」と題して報告されました。報告の中で、BMW技術を平成一六年八月に導入後の平成17年度は汚泥の引抜を行う必要がなかった事、悪臭の原因である硫化水素濃度が0,06ppm以下にする事が可能になった事、等が数値を使って紹介されました。

 ◆「BMW技術によって流域の水環境を守る」
 ㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長は「BMW技術によって流域の水環境を守る」と題し、日本全国のBMW技術を導入した食品加工場の排水処理施設、畜産排水処理施設、中水利用施設、農業集落排水処理施設等をBODの減少を数値で示しながら紹介し、これまでの成果を報告しました。

 ◆「農と暮らしが調和したエコライフ」
 島根県池田農場の池田健二氏は、個人が定年後や、新規就農等で、環境を重視しながらBMW技術を活用し、農に取組むライフスタイルの発表を行いました。池田氏はトイレ等、家庭の雑排水を原料にした生物活性水プラントを導入し、家庭排水を出さない暮らしをしているだけでなく、環境に負荷を与えない暮らしの報告がありました。
 
 ◆「環境に負荷をかけない暮らしとBMW技術」
 関西の生協連帯WILLネットの石けん委員会は、「河川・湖沼を汚さない」「加害者にならない」「環境に負荷をかけない暮らし方の提案」をテーマに、合成洗剤・家庭内農薬の排除の一貫として活用されている生物活性水の利用について、今年行った生物活性水の家庭でのモニター調査の結果を、発表しました。調査は、お風呂、洗濯、台所、と3つに分けて行われました。お風呂では、残り湯の臭いが減少したと感じた人が多かった事、洗濯では排水ホースのぬめりの減少に大きな効果があった事、台所では排水口の臭いを感じなくなったとほとんどの人が感じるほど大きな効果があったという報告でした。

●講演「日本列島の形成と北陸地方の岩石と水」
 今交流会の開催地、北陸の岩石をテーマに「日本列島の形成と北陸地方の岩石と水」の講演が、名古屋大学教員、奥地拓生氏によって行われました。なぜ日本列島は花崗岩を主体にしてできているのか。花崗岩に凝縮されたミネラルは長い時間をかけて水に溶け出し、植物、動物の体を通り海に還り循環している事、BMW技術は岩石からミネラルが溶け出すプロセスを早回ししている技術である、と奥地
氏は説明しました。

●海外からのBMW技術事例発表
 ◆タイ・「タイにおけるBMW技術の普及」
 タイのBMW技術の普及について、㈱パシフィック・トレード・ジャパンの木村俊夫氏が発表を行い、養鶏場に作られた生物活性水のデモプラントと堆肥センターの紹介、広がりつつある養鶏、養豚場の飲水改善プラントの報告、養豚場の糞尿から作った堆肥がバナナの生育に効果があった等の報告がありました。

 ◆タイ・「BMW生物活性水を用いた緑豆栽培実験」
 タイ農学局穀物調査研究所・植物病理学者のチュッティマン・パーニッサックパタナー氏からは生物活性水を用いた緑豆栽培実験について研究報告が行われました。三年間続けられてきた生物活性水を使った緑豆の栽培実験で、生物活性水が炭腐病を抑制する事、緑豆の生長を促進させる事、土壌中の細菌数を増加させるという効果が認められた事、化学肥料を施用した土壌では、著しく土壌細菌数が減少する事等が報告されました。

 ◆フィリピン・「フィリピンにおけるBMW技術について」
 フィリピンからは、日本ネグロス・キャンペーン委員会ネグロス駐在農業指導員、吉永紘史氏から報告が行われました。生物活性水を用いた種子浸水や育苗時の生物活性水散布の実験の様子が紹介され、明らかな違いが見て取れました。しかし、土壌の条件が悪く最初の土づくりの所から解決していかなければならない現状や、生物活性水を現地の人にどうやって利用してもらえるか等の課題について、報告が行われました。

◆韓国・「BMW技術を通して家畜と友達になる事」
 韓国のイ・ヒョンボク氏からは「BMW技術を通して家畜と友達になること」と題して、報告が行われました。首都圏の水源地として各種環境規制をクリアし、かつ飼育環境の向上によって家畜の福利を増進するためBMW技術を導入した事、韓牛を飼育している環境にやさしい畜舎やレストラン、カフェが併設されているダンノモ農場の紹介や同農場でのBMW技術の活用方法、イ氏の「家畜をお金に見ないで生命体としてみよう」という家畜に対する考え方などが発表されました。

●BMW技術を味覚で実感
 BM技術協会会員産地・団体の農産物・加工品を堪能
 一日目の講演、発表の後には、懇親会が行われ、タイ、フィリピン、韓国の海外からの参加者の紹介、今回の全国交流会の準備にあたった北陸地方の会員紹介、また次回の第一七回BMW技術全国交流会の開催地の発表等が行われました。普段はなかなか会うことのできない会員同士が、和やかに話をする場面が多く見られました。
 懇親会では、各地の協会会員生産者や団体から提供された農産物や加工品を食材にした料理を堪能しました。山口県・秋川牧園の鶏のムネ肉と高知県・夢産地とさやま開発公社の四方竹をつかった「鶏と四方竹の中華炒め」や千葉県・和郷園のダイコンを使った「風呂吹き大根の鶏味噌」、茨城県・茨城BMのサツマイモを使った「サツマイモのポタージュスープ」等、たくさんの料理がテーブルに並びました。また、山形県・ファーマーズクラブ赤とんぼ、新潟県・久比岐の里農産センターの米で握られたおむすびも出され、好評を得ていました。やまなし自然塾の冷凍桃等の加工品も並び、地元石川県のぶった農産からは、この地方の伝統食であるかぶら寿し等が供されました。
 今回の全国交流会ではBMW技術に取組む各産地や団体から、休憩時間用に飲むヨーグルト(岡山県・蒜山酪農農業協同組合)、お茶(高知県・四万十ドラマ、静岡県・村上園)、コーヒー(東京都・オルター・トレード・ジャパン)、りんごジュース(青森県・八峰園)等、朝食用には牛乳(富山県・新川牧場うしのいえMOOガーデン)等の飲み物も提供され、懇親会、朝食、休憩の場が、お互いの農産物・加工品を味わう貴重な機会となりました。
 
●「新しい生産者会員のためのBMW農法に関する初心者講座」
 交流会の二日目は、パネルディスカッション「新しい生産者会員のためのBMW農法に関する初心者講座」から始まりました。ディスカッションでは『生物活性水の使い方』を題材に、BMW技術に取組んだ経緯などがパネラーから報告されました。長崎会長が司会、石澤理事長がコメンテーターを務め、パネラーに清水澄常任理事(茨城県・清水牧場)、押田明理事(宮崎県・綾豚会)、高草木里香理事(山梨県・白州郷牧場)、豊下勝彦理事(秋田県・ポークランド)、山本優作理事(高知県・夢産地とさやま開発公社)の各氏が、BMW技術に出会ったきっかけ、BMW技術に取り組んだ目的、導入後の変化や生物活性水の利用方法などについて報告しました。 

●技術研究発表
 ◆「微細藻類の高効率培養を助けるBMW天然キレーティング剤の効果に関する研究」
 韓国の金美京教授(嶺南大学校海洋科学研究センター)からは、「微細藻類の高効率培養を助けるBMW天然キレーティング剤の効果に関する研究」と題した、研究発表が行われました。微細藻類の培地に生物活性水を添加すると、細胞の生長や光合成能力が高まり、かつ、その培地で栽培した藻類は機能性食品として、抗ガン効果がある事。また、生物活性水はキレート剤(EDTA)の天然代替物質となる事が報告され、農作物の天然農薬及び液肥の機能が可能である事、畜産業の悪臭除去及び抗生剤機能が可能である事が報告されました。

 ◆「生物活性水による単細胞緑藻クロレラの培養」
 山梨自然学研究所の西村美香氏と山梨大学の御園生拓教授からは、昨年の韓国の金教授の発表をヒントに同研究所と御園生教授とで、共同で進められている生物活性水によるクロレラの培養実験について、研究発表がありました。生物活性水は合成培地に比べて生長が遅いがクロレラは十分に生長する事が分かり、今後は実用化に向けた大量培養システムを構築し、養鶏飼料としての有効性についての試験を行うとの発表が行われました。

●「BMW技術による農法を深化させる」~自然学を実践する~「土と水の学校」報告
 昨年からBM技術協会会員産地で取り組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」の報告は昨年の全国交流会に続いての報告となりました。はじめに礒田有治BM技術協会事務局長が、これまで耕作でのBMW技術の活用は、土壌の物理性、生物性の改善についてはBM堆肥と生物活性水で対応できるが、土壌の化学性の改善については不十分だったという課題が提示され、この課題を中心に「土と水の学校」を開催してきた事を説明しました。

 ◆解説「BMW技術と有機栽培理論」
 「土と水の学校」講師の小祝政明先生からは、「BMW技術と有機栽培理論」と題して、植物生理の解説、BMW技術を用いて作られた堆肥に足りないミネラル分を加える事で理想的な栽培体系ができあがる事、等が解説されました。また、植物生理に基づいた化学性の課題を解決すれば、日本の有機農業技術の中で、BMW技術は有機栽培技術の確立に最も近い所にある技術と評価しました。

 ◆各地の「土と水の学校」取組み報告
  ・十和田湖高原ファーム・JAかづの
 秋田県の十和田湖高原ファームとJAかづのは、キュウリの多収生産をテーマに取り組みを行い、十和田湖高原ファームの板橋一成氏が、発表を行いました。十和田湖高原ファームでは初期成育は非常に順調だったものの、追肥の仕方で失敗し思った通りの結果は出せなかったが、こうした問題をクリアすれば多収穫が達成できるとの感触を得た事が報告されました。JAかづのではキュウリの一節からほとんど二本以上の実がなり、全体的な良品率も向上したという報告が行われました。
 
 ・ファーマーズクラブ赤とんぼ
 山形県のファーマーズクラブ赤とんぼは、米の多収、高品質、高食味生産をテーマに取組みを行い、九月に新代表に就任した北澤正樹氏から報告がありました。低温のため初期の生育が遅れたが、実験圃場の収量は一〇俵と良く、取り組んだ生産者の食味も全体的に良かった事が報告されました。また、来年の課題として、雑草対策をどのようにしていくか、等が上げられました。
 
 ・謙信の郷
 新潟県の謙信の郷も米の多収、高品質生産をテーマに取り組み、金谷武志氏から報告が行われました。謙信の郷ではこれまでのアイガモ、米ぬか除草などの有機栽培技術に今回の土壌分析に基づく施肥管理を取り入れ、それぞれの有機栽培技術ごとに収量、食味の比較などを行いました。金谷氏は「多収しても極良食味を実現できる確信をもてた」と発表を締めくくりました。
 
 ・茨城BM自然塾
 茨城県の茨城BM自然塾は、サツマイモの栽培実験について、多多野勝行氏から報告が行われました。今年は初期成育が後れたものの、イモの形が揃い、良品率も七五%以上と報告しました。収量も反あたり二・五トン以上と、報告されました。栽培を行った米川修さんは、今回苗をまっすぐさす「直植え」と斜めにさす「船底植え」を行い、結果は「船底植え」がイモの形、サイズの揃いも良かった事が報告されました。

 ◆BMW技術による農法の確立に向けて
 各産地からの報告を受け、礒田事務局長は「BMW技術による農法の確立に向けて」と題しまとめを行いました。それぞれのBM堆肥の成分等の特徴を知る事、適正な使用量の大切さと、利用目的に合わせた堆肥の開発について指摘しました。また生物活性水には新たな目的別利用方法があり、開発研究の必要性を、生物活性水の成分データ等を示しながら訴えました。

●総括
総括及び閉会の挨拶を向山茂徳BM技術協会副会長が次の通り、締めくくりました。
 「初心者講座でパネラーを務めた人たちの淡々とした話しにBMを長年やってきた実績と自信を感じました。また『土と水の学校』は実践を通して前に動いているという感じがしました。今回、アジアから大勢の方がきてくれていますが、タイのチュッティマン先生が話した『足る事を知る』という事、韓国のイさんの生産者としての考え方等、印象深いものでした」
 
●現地視察会
 交流会会議終了後は、現地視察会が行われました。能美市の農業集落排水処理施設改善事例と、新しく完成したぶった農産の生物活性水施設を視察しました。農業集落排水処理施設では、匠集団そら・星加浩二プラント事業部長より、BMW技術導入による改良点、効果等について説明を受けました。処理槽のふたは開けてありましたが、処理槽からの臭いはほとんどなく、視察した人達は効果を実感していました。

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Author 事務局 : 2006年12月31日17:01

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スローフード協会(本部=イタリア)や、同協会の本部があるピエモンテ州等がバックアップして設立された食科学大学の学生12人が来日し、9月20日から21日にかけ、BM技術協会会員のらでぃっしゅぼーや(株)や、山梨県の白州郷牧場、やまなし自然塾の萩原フルーツ農園で研修を行いました。

 食科学大学は、2003年に設立され、2年生の修士コースと、1年生のマスターコースがあります。学生達は、食に関する学識を得るだけでなく、地域で培われた、つくり手の経験等を学びます。今回の研修は、2年生のカリキュラムの一環として行われた海外研修で、スローフード協会からの、らでぃっしゅぼーやへの依頼に応え、白州郷牧場、やまなし自然塾の協力で実施されました。
 研修生(イタリア、オーストラリア、アメリカ、スイス、日本の学生)らは、20日朝から、東京のらでぃっしゅぼーや首都圏センターで、BM技術協会理事で、らでぃっしゅぼーや㈱の後藤和明さんから、日本の流通や、会員制宅配、野菜のセットボックス「ぱれっと」のレクチャーを受けました。
 その後、バスで山梨に移動した一行は、白州郷牧場に到着。ここでの研修は、同牧場で子供達を対象に行われている「キララの学校」を軸にした交流という趣向になりました。
 歓迎の宴は日本の(普段の)ごちそう―白州で育った鶏、野菜、卵、その一つ一つに学生たちからは「これは何ていう食べ物か」など質問が続出し、特に野菜料理のおいしさに感激していました。翌朝は、農場を散策し、養鶏場に設置のBMWプラントを始め、農場のシステムを学びました。「両全。両方ともに完全なこと。白州のキララの学校は、農と学びの両方が完全に一致する実践の場としてスタートした」と語った椎名盛男白州郷牧場代表(BM協会常任理事)の講演では、「両全」という言葉が学生たちの心に刻まれました。
 白州を後にした一行は、やまなし自然塾に移動。富士山を見晴らす山梨市のぶどう園・萩原フルーツ農園で農園見学をして後、萩原さんご家族の手塩にかけた、世界一の生食用ブドウを食べました。園主の萩原一さんより、日本でのブドウ栽培の歴史やワインの話をいただき、塾御用達の「自然塾弁当」を楽しみました。「どうだい、うまいかい?」と、小澤博やまなし自然塾会長は、日本のブドウ栽培技術を学生たちに語りかけ、「こんなおいしいブドウ知らなかった」との、一行からの評価を得ました。他方、山梨で三本の指に入るワインの試飲では「十分に楽しめるワインですが、まだ改善の余地がたくさんあります」との学生達からの意見。ワイン生産量世界一の国だけに説得力のある声を受け、小澤会長は「来年は自然塾でイタリアにワインを見に行くよ」と宣言。最後は伝家の宝刀、小澤会長の「尺八」でなごやかに盛り上がり、お開きとなりました。
(報告=Ra dix の会/らでぃっしゅぼーや環境保全型生産者団体 事務局長 竹内 周)

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Author 事務局 : 2006年11月30日15:01

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多彩な活動発表に人々の交流の環を
第16回BMW技術全国交流会・第2回アジアBMW技術交流会
「地域の土と水の再生を」

来る11月17日(金)~18日(土)の二日間、石川県加賀市の片山津温泉で、「第一六回BMW技術全国交流会/第二回アジアBMW技術交流会」が開催されます。

 今年の交流会のテーマは「地域の土と水の再生を」です。毎年恒例の長崎浩会長によるBMW技術の基礎講座は「生物活性水」を題材に、技術の理論から応用を展望します。また、基調報告「~BMの原点に戻る~地域の土と水の再生を」(石澤直士BM技術協会理事長)や開催地石川県で始められた農業集落排水施設の改善について、また生協の組合員による「環境に負荷をかけない暮らしとBMW技術」と題した発表が行われます。
 海外からは、BMW技術の普及が大きく広がる韓国、バナナの栽培実験などが進むタイ、小農民の自立に役立てようと普及を進めるフィリピンから事例発表が行われます。
 また、関わりの深い石と水の関係を北陸地方を例にとり解説する、講演「日本列島の誕生と北陸地方の岩石と水」(名古屋大学環境学研究科教員 奥地拓生)も行われます。
 BMW技術についてこれから学んで行きたい、という人たち向けの初心者講座も2日目に行われます。ここでは、初期の頃からBMW技術にかかわってこられた方々にパネラーになっていただき、BMW技術との出会い、BMW技術に取り組んで何が変わったか、等について分かりやすく経験を話していただきます。
 昨年、韓国の金ミギョン教授から発表がありました「生物活性水を活用した機能性食品培地の開発研究」は参加者から大きな反響を呼びましたが、それを引き継いだ形で進められている山梨自然学研究所と山梨大学の共同研究成果の発表が予定されております。
 新たな生産者グループも加わり、昨年に引き続き取り組まれた~自然学を実践する「土と水の学校」についても、各産地から発表が行われます。昨年に続いて取り組んだ秋田県の(有)十和田湖高原ファームは、土壌検査に基づいた施肥により、路地のキュウリで大きな成果を上げました。今年からコメを中心に取り組みを始めた新潟県の謙信の郷も、今年一年の取り組みについて発表を行います。
 現地視察は、能美市の農業集落排水処理施設の改善事業を中心に行われます。この農業集落排水処理施設は、昨年BMW技術を導入し、悪臭防止、、余剰汚泥の抑制に大きな効果をあげています。

Author 事務局 : 2006年10月31日16:05

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第16回BMW技術全国交流会・第2回アジアBMW技術交流会
「地域の土と水の再生を」
11月17日(金)~18日(土)石川県加賀市で開催

今年もBMW技術全国交流会の時期が近づいてまいりました。来る一一月一七日(金)~一八日(土)の二日間、石川県加賀市の片山津温泉で、「第一六回BMW技術全国交流会」を開催いたします。
 今年は、北陸地方で初めての開催になりますとともに、「第二回アジアBMW技術交流会」を兼ねての開催となります。今開催を北陸地方でのBMW技術普及のきっかけとし、また、東アジアとの連帯を深める交流会にしていきたいと考えております。
 今交流会のテーマは、BMW技術の原点に戻り「地域の土と水の再生を」と題し、交流会を通じ、自然生態系の循環・浄化システムに学び、それを私たち人間の農業生産や生活に生かし、自分たちの周りから、生態系を回復し、地域にも広げていく──というBMW技術の運動を、もう一度皆さんと確認したいと思います。
 具体的には、BMW技術の原理や応用等の講演や、初心者向けの講座を始め、地域の水を再生していく様々な事例や活動、韓国、タイ、フィリピンで取組まれている事例や研究、BMW技術を活用した農法を深化させる各地の取組み等の発表を予定しております。
 昨年の交流会では、「BMW技術の新たな可能性をさぐる」と題し、さまざまな分野で活用されている新たな取り組みと、会員の方々の多様な活動を発表していただきました。昨年、新たな取組みとして発表した農業集落排水処理施設の改善事業は、今開催地の石川県から始まりました。交流会終了後の視察で、その現場が見学できますので、是非、ご覧になっていただきたいと思います。
 また、昨年、韓国の金ミギョン教授から発表がありました「生物活性水を活用した機能性食品培地の開発研究」の発表は参加者から大きな反響を呼びましたが、それを引き継いだ形での、山梨自然学研究所と山梨大学の共同研究発表が予定されております。そして、自然生態系のもととなっている岩石と水の関係について、北陸地方の岩石を事例に、名古屋大学の奥地拓生氏から講演が行われます。
 今交流会では、新しく会員になられた方々から、BMW技術の新たな可能性に挑戦されている会員の方々、そしてアジアでBMW技術に取組む方々まで、幅広く、人や技術の交流が図れる交流会にしたいと、協会及び実行委員一同準備を進めております。
 全国の会員及び関係者の皆様にお集まりいただき、実りある交流会にしたいと存じます。皆様のご参加をお待ちしております。
 
BM技術協会 理事長 石澤 直士

第一六回 BMW技術全国交流会/第二回アジアBMW技術交流会
実行委員長 佛田 利弘

Author 事務局 : 2006年09月30日13:26

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バナナ栽培に適したBMW堆肥等の開発に向け、基礎実験がスタート
 ~タイ・ペッブリ郡バンラート地区~

タイのペッブリ郡バンラート地区で、ホムトンバナナ栽培に適したBMW堆肥等の開発研究を目的にした基礎データ取得実験が7月からスタートしました。
 タイのバンラート農協と、協会会員のパルシステム生活共同組合連合会とは、無農薬栽培のホムトンバナナの国際産直提携を行なっており、提携を通じて、地域循環及び環境保全型農業をすすめていく事等を目指しています。この地域循環及び環境保全型農業の推進という課題を担い、2001年にBMWプラントが現地に導入され、現在、BM技術協会は、パルシステム生活協同組合連合会との連携により、定期的に現地を訪問し、現地の生産者及び関係者らと、BMW技術の普及及び技術研究に取組んでいます。今回の基礎実験もこの取組みの一貫として行われるものです。
 基礎実験では、バナナの栽培に適したBMW堆肥やボカシ肥料、生物活性水等の開発研究を目的に、その前段として、基礎データを取得する事になっています。具体的には、実験圃場を設け、定期的な土壌分析により、バナナ栽培には、どうような肥料成分、ミネラル成分が必要とされているか、定植から収穫までのデータ収集を行なうものです。このデータをもとに、バナナ栽培に適したBMW堆肥等の開発につなげていきます。
 6月28日から7月3日、協会事務局の礒田が、現地を訪問し、栽培実験を行なうバナナ生産者のフーン氏、サイアムタクミ(BMW技術を普及する現地法人)のスカパッド氏、パン・パシフィック・フーズ・コーポレーション(株)(バナナの輸出を担当)の小山潤専務取締役及びヴィー氏、(株)パシフック・トレード・ジャパン(バナナの輸入を担当)の木村氏と実験圃場の確認や、実験の進め方について、協議を行ないました。すでに実験圃場の土壌分析は実施済みで、この土壌データをもとに、マグネシウムやカルシウム等のミネラル施用量や、窒素、燐酸、加里等に関わるBMW堆肥、肥料の施肥量等を4つのパターンに設定する事を決定し、生物活性水の使用法や、作業手順等を協議しました。この確認のもと、現地では、7月下旬から実験が始まっています。
 また、7月2日には、パルシステム・バンラート農協産直協議会総会に出席する日本側メンバー(出席団体:パルシステム生活協同組合連合会、(株)ジーピーエス、東京マイコープ、ドゥコープ、エルコープ、コープやまなし)9人が、生物活性水プラントや、BMW堆肥を製造しているバンラート農協の堆肥センター、BMW堆肥を利用しているバナナ栽培圃場を視察しました。視察参加者は、生物活性水や、BMW堆肥、バナナ栽培等について、現地スタッフや生産者の説明に、熱心に聞き入り、質問も相次ぎました。視察参加者からは、「BMW技術について、よく理解できた」「もっとBMW技術について勉強してくればよかった」「農業は科学なんですね」等の感想が述べられていました。

(報告=礒田有治)

Author 事務局 : 2006年08月31日17:14

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名水の里~山梨県白州町にBMW技術導入の製菓・大豆加工工場が竣工

(株)匠集団そら プラント事業部長 星加浩二

山梨県北杜市白州町台ヶ原に、和菓子製造の金精軒製菓㈱と大豆飲料製造の白州屋まめ吉㈱が新しい工場を竣工させました。その工場排水施設に、BMWシステムが導入されて、これから稼動が始まります。
 6月14日に現地での新工場見学会と会場を移して竣工式が行なわれ、県内外から関係者が大勢集まり盛大な式になりました。BM技術協会からも、向山茂徳副会長((株)山梨自然学研究所代表取締役)椎名盛男常任理事((株)匠集団そら代表取締役)、高草木里香理事((株)白州森と水の里センター代表取締役)が参列しました。
 同工場から出る排水は、日量15トン。うち金精軒製菓㈱からは餅の加工設備の洗浄水が1トン/日。残りは、白州屋まめ吉㈱からの大豆飲料製造ラインの洗浄水です。大豆飲料は、地元産の大豆をまるごと微粉末にして白州の名水を使って仕込みます。そのため大豆の煮汁などは出てきません。排水は、一日の作業が終わり製造設備を洗浄するときに製造ラインに少し残っている原料以外は、製造ライン洗浄水がほとんどです。処理水はBODが20ppm以下となって尾白川に放流されます。 排水処理施設は、(株)NIPPOコーポレーション山梨営業所の協力を得て設置工事を行ないました。 
 この大豆飲料は、試作品が昨年の全国交流会で提供され好評でした。また、山梨の特産であるブドウ果汁なども利用して多彩な大豆飲料も製造することになっています。
 また、白州屋まめ吉(株)では工場のすぐ隣の畑を借りて大豆栽培にも取り組んでいます。はじめての大豆栽培では、圃場の土壌検査も行って施肥設計に基づき黒富士農場から堆肥を運んできて元肥を投入しています。大豆は榑林剛白州屋まめ吉㈱社長みずから播種器を用いて植え付けました。今後は生物活性水の利用もすすめていくことにしています。
 日本のミネラルウォーターの代表産地である白州でのBMの取組みは、意義あることと考えています。

Author 事務局 : 2006年07月31日18:08

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水の再生運動を通じて、流域共同体=ミクロコスモスの建設へ

 ~世界自然遺産「白神山地」の青森県・西目屋村でシンポジウム開催~

5月13日、世界自然遺産・白神山地を村内に持ち、岩木川の源流である青森県・西目屋村で、映画「白神の夢」上映・講演会と、岩木川流域の町村長らと石澤直士BM技術協会理事長が出席したシンポジウムが開催されました。一つの川の上流・中流・下流の市町村が、協力して水を守り、資源を生かし、地域づくり、人づくりを行なっていく重要性が話し合われ、今後、流域共同体として取組んでいく第一歩となりました。
 BM技術協会では、流域として地域ミクロコスモスの具体化を図る事を各地の会員と協力して、地方自治体等に呼びかけていく事を2006年度の方針としています。今回のシンポジウムは、その出発点となります。
 今回の取組みは、これまで会報アクアで紹介してきた映画「白神の夢~森と海に生きる」(※注1)を参考に、河川流域の水や土を守り、資源を生かした新たな地域づくりができないかという石澤理事長の呼びかけに賛同した関和典西目屋村長、小田桐智高藤崎町長、高松隆三五所川原市教育長ら、関係者の協力で実現しました。「好きです西目屋!講演会~白神エコツーリズムを考える ふるさと再発見~」と題して開催されたシンポジウムは、西目屋村中央公民館で開催され、村民160人が参加しました。その概要を紹介します。

≪映画「白神の夢~森と海に生きる」上映・講演会≫

 昨年、愛知県で開催された「愛・地球博」国連館で上映された「白神の夢」の縮小版の上映後、同映画プロデューサーの山下勉氏と、小池征人監督から講演が行なわれました。

■山下勉氏講演要約
[山下 勉氏:東京都出身、日本大学理工学部卒。
演劇舞台装置や大道具制作、環境アセスメントの仕事を経て、近年はそれらの仕事を生かし、映像記録という手法を取り入れながら自然の仕組みに基づいた地域振興策を提案、提言している。]

 この映像で紹介した秋田県の八森町にしても、西目屋村も、どこの農山漁村もそうですが、高齢化が進み、大都市に若い人が出て行ってしまっているのが現状です。そして、その都市でやってきた事が、地球規模で限界までに達して、資源の枯渇や温暖化や海洋の汚染とか様々な問題を起しています。
 一方で、皆さんのふるさとの西目屋村は世界自然遺産に指定されました。ここから流れている岩木川は日本海に流れ、十三湊(※注2)までいきますが、十三湊は、昔は大変な国際都市だったのです。皆さんが代々ここに住み、命をつなげてきた故郷は、どういう経過で、どうダメになり、どこに突き当たって、そして今世界自然遺産という評価を得て、これからどうしていくのか。この事を改革する方向で努力する事がこれから生まれてくるお子さん達や未来の為につながっていくのだと思います。その努力を今やっておかないと、未来の人の豊かさや、生きる自由を奪う結果になると思います。
 そのいい例がアフガニスタンや北朝鮮で、今、飢餓が起こっています。森を壊し、森を食いつくし、そして植物も生えなくなって、その大地に雨が降り、雪が降り、大地が崩れ、泥となって海に流れていきます。結果、近海漁業で豊かだった海の森といわれる藻場を埋め尽くし、魚も寄り付かなくなり、山の動植物はとれない、魚もとれない状況になっています。
 私達は、そういう世界共通の問題を抱えています。そして、その一番の模範となるような生態系の息づきが残っている白神山地は、命のつながりによって成り立ち、それを営々とやってきた場所です。そういう所に皆さんはいます。地球規模でどこの国も抱えている大事な問題の模範となるような資源を、この村は持っているという事です。
 それを未来にどう生かしていくかという事が非常に大事な事だと思います。
 世界につながっている岩木川流域の全市町村が、自然の資源の恩恵を受けて生きる生き方、未来に向けて、失ってはいけない価値観をどう次の世代につなげるかという事が重要です。

■小池征人監督講演要約
[小池 征人監督:山梨県出身。中央大学卒。
水俣病をテーマにドキュメンタリー映画を作り続けている土本典昭監督の助監督を勤めた後、公害や差別、冤罪事件等常に社会的なテーマの作品を作り続けている。作品に「水俣の甘夏」「人間の街─大阪/被差別部落」「免田栄/獄中の生」等がある。]

 この映画をつくる時に調べた資料の中に、非常に感動した記事がありました。それは、白神山地・青秋林道建設反対運動の資料の中にあった新聞記事です。1945年の3月に赤石川の上流に、大然という集落があるのですが、そこが土石流災害に合い、一晩で六七人が死亡し、生き残ったのはわずか10数人という大事件が起こりました。つまり、源流域の山に手をつけたらどういう事になるのかということが書いてある記事です。この記事を見て、赤石川の源流域の人々が、その事をもう一度思い出した訳です。それは人間の体に例えてみれば、脳にメスを入れる事と同じだと、だから木を切ってはいけないのだという事に気づき、わずか1ヶ月で13,000人の署名が集まって、白神山地が残ったのです。 
 西目屋村も全く同じ、源流域の村です。ここに生きている人達が白神山地から日本海にいたる流域をどう考えるかという事が、大変大事だと思います。何故なら、頭(上流)に暮らす人々の生活のあり方そのものが、津軽平野一体の色々なものに影響すると、私は確信を持っています。
 白神山地というのは、ただ大きな山があるだけです。そこからもう一つ考えると、変わらない事が大事なことなのだという事に気づきました。変わらないという事は、そこに安定した人を生かす自然体系や人間社会の関係や、仕組みがあるという事です。だから、ここは、縄文以来の人々から、生き続けてきた命がつながっているのです。自然の仕組みが変わらずある事が、実はそこに生きる人達を永遠に生かす物質的な財産になるのです。その事を私達は違う定規を持ってしまったので、もう一回白神山地の自然の定規に戻って、そこから考えたならば、もっと楽になるのではという事に気がつきました。この映画は、それをテーマにした映画です。

≪パネルディスカッション 「外から見た西目屋村」要約≫

●パネラー
 小田桐 智高 藤崎町長
 高松 隆三 五所川原市教育長(旧 市浦村長)
 関 和典 西目屋村長
 石澤 直士 BM技術協会理事長((農)トキワ養鶏代表理事専務)
●司会
 森内 美夫 NPO法人クッピ副会長

(司会) 岩木川の源流は、西目屋村で、全長は102キロ、その間に藤崎町、旧常盤村があり、最後にシジミ貝のふるさとである十三湖に流れ込んでいます。川との係わりから、その思い入れを紹介していただきたいと思います。
(小田桐 藤崎町長) 今、ペットボトルに入った水が500ミリリットル、120円か130円で売っています。これはガソリンよりも高い値段です。1リットルに直すと300円近くします。それを下流の人は、お金を出して飲まなければいけないという時代です。藤崎町は岩木川の流域にあり、白神の水の恩恵をうけている町です。農業用水や飲水に使わせていただいています。藤崎町は農業の町であり、農産物にはきれいな水が必要です。だから、この水を汚さないように使わせていただいて、またきれいにして、返さなければならないという思いでいます。
 白神山地から流れる水は、岩木川となり、弘前市、藤崎町等を通り、最後は十三湖に注ぎます。そこには、シジミ貝が生息し、我々が汚した水は、最後はシジミ貝が浄化しています。それを我々はおいしいと食べています。だから我々が汚した水は、きれいな水にして返さなければ、やがては自分の口に入ってくる事を認識しておかないと、必ずしっぺ返しを受けます。
(高松 五所川原市教育長) 我々の生活形態は、川の恩恵を受けているのにもかかわらず、生活用水の垂れ流しや、農業で利用される除草剤等の農薬が各河川から十三湖に流れ着きます。特に岩木川は、東北で二番目に汚れている川と言われています。その証拠に田んぼにドジョウがいなくなり、川にメダカがいなくなっています。昭和三〇年頃には十三湖には、白鳥が千羽以上来ましたが、今は多くて五〇羽程度しか来なくなりました。だから、上流と中流と下流の人々が一体となって、川を守らなければならない。いくら上流できれいな川を守ったとしても、途中で汚されてしまえば、やがては人間も住めないような所に変わっていってしまう。上流と下流の価値観を再認識しながら話し合ってほしいと思います。
(石澤 BM技術協会理事長) 農業で一番重要なのは水です。トキワ養鶏でもBMW技術で、畜産の糞尿を宝に変えようということをやってきました。また、高知の最後の清流といわれる四万十川でも、畜産を中心にこの技術が取り入れられています。小田桐町長が昨年のBMの全国交流会で、シジミ貝の話をされ、川の重要性に気づき、その話を関村長に話をさせていただき、今回の会が開かれることになりました。関村長は、日本で一番若い村長で、自らが日本一の村のセールスマンになりたいという方です。
 上流と中流と下流が手を結んでやっていけるか、その第一歩が今日だと思います。
関 西目屋村長 白神+西目屋村で、岩木川の上流という答えがでます。この上流というものをどう生かしていくかという事で、色々答えが出てくると思います。西目屋村の産業は、農業が基本です。つくる事=売れるという芯がないと、つくる楽しみや、意欲がわきません。西目屋村で何かをつくったら、農産物に付加価値がついて売れるというシステムをつくりたいと考えています。今日、映画を見、皆さんのお話を聞いて、西目屋村はどん詰まりではなく、川の上流にいたのだという事に自信を持たなければならないと気づきました。また、小池監督の話によれば、我々は中流・下流の人々の頭脳なのだから、きちんと考え方を持ってやっていかなければならないと思います。
(司会) 皆さんから、川を大事にし、川のエネルギーで町を活性化していきたいというお話しがありましたが、西目屋の村民にメッセージをお願いします。
小田桐 藤崎町長 産業構造は、西目屋村も藤崎町も変わらず、米とリンゴの農業が中心です。あとは付加価値をつけて販売していく事が大事だと思います。ここには、世界遺産の白神と、美しい水、と他にないものがあります。そういう事をセールスポイントにすべきだと思います。藤崎町では、有機農業や減農薬農業を進めており、ドジョウがいて、ホタルがまだいます。こうした事が付加価値につながると思います。
(高松 五所川原市教育長) 九州のある町長は、1,000万円かけてプールをつくるなら、川に1,000万円かけて、子供達の遊び場をつくるそうです。そうすれば、お母さん達は平気で合成洗剤を流せなくなるだろう、ゴミを捨てなくなるだろうという事で頑固一徹で通してきた町長もおられます。先ほどの映画にもあったように地球上の全ての命は、水の中から生まれます。水が無ければ命は存在しません。だから、西目屋村も確かに白神があり、岩木川の源流であるけれども、ただ源流というだけでは、村民の生活に大きな影響を及ぼす事はないでしょう。源流である西目屋村をどういう形で売り込み、付加価値をつけるかが問われるところです。先ず、水に学び、水を生かす方法を考える必要があります。先ほど小田桐町長がミネラルウォターの話をされましたが、これを1トン換算すると約30万円。ところが皆さんが毎日使っている水道水は、1トン当たり月の水道料金にすれば、約250円~300円です。それでも水道料金は高いという。でも水道水の何倍かの水は平気で飲む。景気が悪くて収入がないといいながら、これは何本でも飲む。この感覚が私は少しおかしいのではないかと思います。こういう事を再認識し、世界遺産である白神を活用して生活していけるような西目屋村の新しい生き方がこれから問われると思います。
(石澤 BM技術協会理事長) 川を大事にしていく事を西目屋村から始めていけば、この事自体がブランドになります。この流域全体がブランドになり、そこでつくったものがいいものになっていきます。普通の当たり前のものを、その川の水を使ってつくったという事が一番大事なブランドになると思います。汚い水の所でつくったもの、農薬の流れている川の水でつくったものに、本当の価値があると言えるでしょうか。
 この水を守るきっかけになった今日が、始めの一歩となり、この小さい村からの発信が非常に重要で、歴史に残るような一日になるのではないかと考えています。これだけの皆さんが集まり、お話できた事が、弘前市、藤崎町、板柳町、五所川原市という岩木川の流れにつながっていくと思います。是非、この地域から先ず、発信していただいて、中流、下流につながっていけるようにしていただきたいと思います。
 最後に、映画にも出てきましたが、小学校の子供達が白神山地や地域の事を勉強して、成長し、卒業するときにはとても凛々しい顔になっていきます。だから、西目屋村も子供達を宝物にして、この地域を教育の場として育てていってほしいと思います。それがいずれは希望となり、世界のモデルになっていくのではないかと思います。今日がその第一歩になってくれればと思います。
関 西目屋村長 今日の映像は秋田県八森町の映像でした。しかし、この映像は、日ごろ我々が見ている光景です。母さんがいて、父さんがいて、ご飯を食べているという光景は、日常的に我々の周りにある光景です。という事は、あの映像の中にあるのは我々なのです。その中に色々なヒントがあったと思います。我々は何を大事にしなければいけないのか。我々がどういう地に足をつけて立っているのかという事をこれからも学んでいきたいと思っています。そして、それを一つの方向にまとめていきたいと思います。

※注1:アクア170号8面、172号6面参照
※注2:十三湊(とさみなと)日本海と十三湖に挟まれて延びる砂州の上にあり、中世、当時の最北端の港として、中国との交易をはじめ、国内外の物産がこの地に集まり、大交易港、北の都として脚光を浴びた。

(報告 礒田有治)

Author 事務局 : 2006年06月30日17:50

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第二回韓国交流会開催

(株)そらインタナショナルコリア 河姃姃ジョンヒ

3月30日(木)から3月31日(金)まで、桐山自然学校にて第二回韓国BMW交流会が開催されました。桐山自然学校は現在韓国BMW技術協会の代表、鄭洪圭神父が校長になっている学校で、1992年廃校された桐山小学校をリ・モデリングし、2003年11月に自然学校として開校しました。韓国の大邱を含み、慶尚南北道を中心に年に約3,000人が利用しており、対象や季節に従って多様な体験プログラムが行われる生態学習の場となっている学校です。
 この交流会には、海を渡って日本からBM技術協会の椎名盛男常任理事と生田喜和常任理事がご参加になり、韓国全国からは楊平郡韓江水系営農組合法人の権五均代表をはじめ、楊平郡ダンノモ韓牛農場の李ヒョンボク代表、霊南大学校海洋科学研究所の金美敬教授、プルム農業高等技術学校の大学課程の鄭旻鉄教授、楊平郡農業技術センターの環境農業担当の李サンホ係長と金ゼドク氏、済州緑の命の共同体の真ムンウォン代表、慶州農協環境農業教育院の朴キョンス代表と李ジュン副代表、慶州BM農場の金ムンヨン代表、主催の緑色平和と緑色平和生協の理事や組合員など、韓国の中ではBMW技術を長く使ってきている人たちが中心に参加しました。
 30日に行われた懇親会では、鄭洪圭会長(社団法人緑色平和の代表、慶山天主協会の主任神父)より参加者に対して歓迎と感謝の挨拶を述べ、日本のBM技術協会の椎名盛男常任理事と生田喜和常任理事よりは韓国BMW技術交流会の成功を祈る祝辞がありました。続いては、緑色平和生協からの安全な食材料をつかって緑色平和の理事のお母さん達がつくった料理を食べながらそれぞれ話の花を咲かせました。
 31日の午前9時からは技術発表会がありました。
 最初の発表は桐山学校の趙ナムヒ先生より「桐山学校のBMWシステム」というタイトルで桐山自然学校の紹介と、学校に設置されたおトイレの廃水処理および生物活性水プラント(韓国では点〔生態トイレ〕と呼びます)、そして食堂廃水処理プラント(韓国では〔生態池〕と呼びます)についても説明しました。
 続いての発表は、畜産農家の代表として、楊平郡のダンノモ韓牛農場の李ヒョンボク代表より「有機、環境畜産」というタイトルで、 農民の幸福追求と安全な食べ物の生産のためには家畜の福利を増進しなければならないという内容の発表がありました。
 次に、霊南大学校の海洋科学研究所の金美敬教授より、「生物活性水(BMW)を利用した、機能性生物素材の大量培養のための基礎研究」に関する発表があり、去年日本のBM技術全国交流会で発表した内容とともに、BMWが海洋微細藻類の培養に利用される一般培地のEDTA代替物質を含有していることを最近の研究で証明したことを話しました。
 続いては、慶州農協環境農業教育院の李ジュン副院長より「BMW技術と親環境農業教育 」というタイトルで、BMW生物活性水プラントの導入現況や、有機農業の教育のために全国から訪れる年間四千名余りの農業者や消費者を教育する時に、BMW活用案内書と共に生物活性水を提供するという計画を述べました。
 次に韓国語の通訳で行われた、アルファコープおおさかの生田喜和専務理事の発表では、「アルファコープおおさかの紹介と組合員活動」というタイトルで、アルファコープ大阪の沿革や事業概要、基本方針と考え方、供給形態、産直運動などについて述べられました。特に産直運動に関しては産直運動の足跡や価値、産直品の取り扱い方、主要品目と注文方法、産直品の具体的な消費の計画化と生産の計画化、登録制と長期予約について詳しくご説明になり、緑色平和生協の構成員等にもとても有益な発表でした。
 最後の発表はプルム農業高等技術学校の鄭旻鉄教授より、「BMW方式の生態トイレ」というタイトルで、トイレに適用したBMW処理方式について発表がありました。特に現在プルム農業技術学校の野外トイレと新しく建てた寮に設置されたBMWプラントの場合は、食堂や洗面場、シャワー室でつかった廃水と水洗トイレの排水が全部BMWシステムによって処理され、処理された水は再び水洗トイレの流し水としてリサイクルし、残りは農業につかっていると説明しました。また、プルム学校のBMW循環トイレには便器の隣に水槽を置き、処理された水を入れて金魚を育てていることを紹介し、「私たちが水洗トイレに座って水が流される音とともに、その水のことをさっぱりと忘れるのではなくて、それがどこに行きどうなるのかを考えてみることが、生活の中で環境と共にする第一歩だろう」と述べました。

Author 事務局 : 2006年05月31日17:46

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 BMW技術を普及する事業会社・㈱匠集団そら(椎名盛男代表取締役)の第一三期定期株主総会が、三月二四日、東京・水道橋で、全国から同社の株主となっているBM技術協会の理事ら関係者二九人が出席して開催されました。今回の株主総会は、椎名代表取締役の呼びかけにより、各地のBM協会関係者が広く情報交換を行う場としても設定されました。

 株主総会では、第一三期の決算報告と取締役の選出の議事が提案され、それぞれ承認されました。今回、選出された取締役は、以下の通りです。椎名盛男(重任=白州郷牧場代表)、市丸滋幸(重任=㈱ミクロコスモス研究所専務取締役)、伊藤幸蔵(新任=農事組合法人米沢郷牧場代表理事)、江島鉄郎(重任=農事組合法人綾豚会理事)、山本伸司(重任=パルシステム生活協同組合連合会商品統括本部長)、宮﨑利明(重任=生活協同組合連合会グリーンコープ連合企画本部長兼産直事業本部長)、向山茂徳(重任=㈱山梨自然学研究所代表取締役)。
 議事承認の後、同社の星加浩二プラント事業部長から、協会の活動方針の一つである「地域の水を生態系の水に戻す」農業集落排水改善事業の具体的技術報告が行われました。石川県能美市の技術導入事例では、自治体の負担となっていた処理施設から出る余剰汚泥の処理費用が計画通りに低減したこと、青森県藤崎町で行われた悪臭防止実証実験事例では、約二週間で硫化水素やアンモニア、メチルメルカプタン等の悪臭物質の発生がなくなるデータを得られたことが報告されました。また、現在、神奈川県の㈱共生食品で取組んでいる高密度生物膜生成実験(二頁の記事参照)についても解説が行われました。
 この後、宮﨑取締役の司会により、農業集落排水改善事業等について、今後どのように事業をすすめていけるか、各地の状況説明や、進めていくための方法等、出席者による情報・意見交換が行われました。    
 また、茨城県の田中一作さんや、栃木県の松井眞一さんらの家庭雑排水を利用した生物活性水プラントの普及について、リース方式を活用してはどうかというアイデアや、家庭での雑排水処理プラントについて、踏み込んで検討してはどうかという意見等が出席者から出されました。
 最後に椎名代表取締役が「BMW技術は、畜産の臭いをなくすという初期の段階、畜産と耕作の有畜複合による循環型農業に活用するという段階、そして今後は、河川の上流から下流までを一つの流域共同体と捉え、その水や土を守っていく方向に向かっていく」と述べ、会議を締めくくりました。

Author 事務局 : 2006年04月30日15:41

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 二月一八日、フィリピン・ネグロス島のカネシゲ・ファームで、BM技術協会の設立と発展に、多大な尽力を果たされた故兼重正次さん(一九九五年八月三〇日逝去、当時BM技術協会常任理事、グリーンコープ事業連合専務理事)の一〇周年忌が、日本ネグロス・キャンペーン委員会(JCNC)及び㈱オルター・トレード・ジャパン(ATJ)主催、BM技術協会後援、で行われました。

 兼重さんは、JCNCやATJが現地との連帯によって進めていた(ネグロス島の元砂糖キビ農場労働者が、持続可能な農業と民衆交易によって、自立する)取組みに、バランゴンバナナ生産を組み入れる事を提案されました。そして一九八九年から、ATJを通じ日本の生協等で、バナナの民衆交易が始まりました。また、バランゴンバナナ生産で発生する病害対策と、現地での地域内循環型農業や共同体づくりのため、BMW技術を活用される事を提案され、その拠点農場として、一九九四年に養豚施設と生物活性水プラント、堆肥製造施設を備えたカネシゲ・ファームが設立されました。
 一〇周年忌には、現地からバランゴンバナナ生産者協会や関係者約五〇人と、日本からは主催者をはじめ、一二人が参加しました。BM技術協会からは、椎名盛男常任理事(白州郷牧場代表)、生田善和常任理事(アルファコープおおさか専務理事)、BM技術協会事務局の礒田が参加しました。
 セレモニーは、関係者の兼重さんとの思い出を交えた活動報告から始まりました。
 椎名常任理事からは「兼重さんの遺骨は、三個所に眠っています。彼が生まれた九州と、このカネシゲ・ファーム、そして子供達の教育の場となっている山梨県の白州郷牧場という農場にあります。その白州には、兼重さんが亡くなった時、手帳にあった言葉が記念碑に刻まれています。それは『自然に溶け込んで生きている人は、感動的に美しい』という言葉です。その言葉が、白州で行っている農業と子供達の学校の精神になっています。兼重さんとグリーンコープに出会って、BMW技術は社会化する事ができました」と報告が行われました。
 また、生田常任理事は次いでこう語りました。「兼重さんは、私達生協の先輩というべき、尊敬すべき人でした。兼重さんは会う度に、ATJのバランゴンバナナとBMW技術の事を繰り返し話されていました。そして、ATJの民衆交易と、BM技術協会の農業技術の運動を全国の人に語る伝道師のような方でした。兼重さんが亡くなる直前にお会いした時に、この二つの運動の将来について心配されておられました。そして、ATJが中心となった民衆交易は、九州だけでなく、日本全国に広がっています。また、BM技術運動は、農業や環境問題を解決する糸口として日本中に広がっています。兼重さんが心配された二つの運動が立派に根付いている事を報告いたします」
 それぞれの報告が終わった後、参加者全員で、兼重さんの記念碑に献花や香を捧げ、一〇周年忌は終了しました。(報告=礒田有治)

Author 事務局 : 2006年03月31日16:53

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定年を今年三月に控えた広島県在住の佐原重行(六○ )さんは、新築した家に家庭雑排水を利用した生物活性水プラントを設置しました。定年後はBMW 技術を活用し、自給用野菜や販売用果実をつくりながら、環境に負荷を与えない暮らしを実践しようと、今から楽しみにしているそうです。

BMW 技術との出会い等、佐原さんにお話しを伺いました。(取材・長倉徳生)
佐原さんは、一九四五年に山口県岩国市の兼業農家の家に生まれました。両親は、コメ、野菜等を作っていました。子供の頃、二人兄妹の妹と共に親からそれぞれ五羽ほどのニワトリを自分たちで世話をするようにあてがわれました。自分達で世話をして、家で採れたたまごは近所に売っていました。
佐原さんは大学では、牛を飼い、牧場をやりたかったので、畜産を専攻しました。しかし、大学で実際に牛を飼う仕事に接してみて、「楽しいのだけれどもこれを一生やるのは大変だと考えた」といいます。
その後卒業してからは、広島県立畜産試験場に勤め、飼料作物の栽培と調整利用の研究を行い、農業改良普及員の指導等を行ってきました。

畜産試験場で研究をしていたとき、有吉佐和子著「複合汚染」に出会い影響を受け、ほとんど農薬を使わない飼料作物の栽培に携わっていることを誇りに思っていました。一○ 年ほど前に、大分で完全無農薬の野菜栽培を実践している赤峰勝人氏の著書、「アトピーは自然からのメッセージ」「ニンジンから宇宙へ」等の著作に啓発されて、本人を訪ねていきました。それ以来、「まねをしてみたい」、自分で有機農業をやってみたいと思うようになったそうです。間もなく定年退職を迎えるので、完成したばかりのBMW 生物活性水プラントを活かし、農薬・化学肥料を使わない農業に取り組む決心をしているとの事です。

茨城県でBMW 技術を生活に取り入れ定年退職後、農的暮らしを始めた田中一作さんの本を読んだことがBMW 技術との出会いです。そして、田中さんの家、暮らしを見学に行きました。「有機農業と同じように理にかなっている」田中さんの暮らしぶりに感銘を受け、自分でも実践したいと思ったそうです。定年後に暮らす家を新築する時も田中さん宅のBMW システムを参考にし、プラント原料としてトイレ等の生活排水を利用する形にしました。換金作物としてぶどう栽培にも取り組む予定です。一昨年から試験的に始めた無農薬・無化学肥料での栽培で、糖度が高く食感の優れたぶどうを収穫し自信を深めたといいます。このぶどうを切り口に無農薬・無化学肥料栽培の作物がおいしく健康にもいいことを消費者に訴えていこうと考えているそうです。また、三人の子供にできた二人の孫にも、安全でおいしいものを食べさせてあげたい、と定年後の希望が脹らんでいます。

Author 事務局 : 2006年03月01日11:30

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 『「日本の人口 初の自然減」想定より二年早く』の見出しが二〇〇五年一二月二三日の新聞紙上を賑わしました。政府が予測していた二〇〇七年よりも早まる可能性が高まったそうです。なぜ、人口が減少するのか、どうしたら歯止めがかかるのか等の議論が進められています。この問題についての解説はともかく、昨年いろいろなヒントを頂いたような気がします。

 さて、昨年は農産物にとって、災害のない大変恵まれた年でした。一方で、採れ過ぎた為に価格の付かないと言う、昔から言う豊作貧乏の年でもありましたが、本来豊作と言うのは喜ばれるべきものだと思います。また、畜産の世界では、鳥インフルエンザが、冬場に発生するのでは、と言う予想を覆し、六月に発生し、しかもその後の発生の多さに、政府が方針に一貫性を欠き、越年すると言う不手際で、しかも、確たる証拠もないのにワクチン説を流布していると言うのも如何なものかと考えます。いずれにしても、早期に原因究明を図り解決に努めて頂きたいと思います。また、牛乳の消費の落ち込み、アメリカ産牛肉のなし崩し的輸入解禁。いずれにしても、食べ物が豊富な中での葛藤が続いています。
 「白神の夢」(企画・制作 白神の映画を作る会)をご覧になりましたか。三時間三〇分の超大作、この中で、秋田県八森町の子供たちの成長とその考え方の素晴らしさに私たちは、多くの事を学ばせて頂きました。地域の中に有る普段の生活や景色が実は、普通の事や普通のものが、実は普通ではなくとても大切なものだと言う事を、子供たちが、新鮮な目と真剣な気持ちの中で、砂に水が入るように吸収されて行き、その子供たちを地域の宝物として、大切に育てていく。小学校六年生が、マイナス二度でも醗酵する酵母菌「白神こだま酵母」を使って出来たパンとの出会いから始まり、白神山地の事を学んで行くうちに、この子ども達はもちろん、家族や、地域までもが変わっていく姿を、一年以上の歳月を掛けて記録したDVDです。ご覧になっていない方は、是非一度ご覧ください。
 昨年我が常盤村は、お隣の藤崎町と合併し、高校が一校、中学が一校、小学校が二校、幼稚園一校、保育所が四ヶ所増えて教育施設が五ヶ所から一四になりました。その内の二ケ所の小学校と、お隣の青森市にある中学校の子供たちが、体験学習及び見学に来ました。鳥インフルエンザ騒ぎの真っ最中に、子供たちは、鶏の姿や、卵に驚いたり、喜んだり、帰った後にたくさんの質問が、手紙で着ました。
 本当に基本的な事への質問が多く、例えば、「ニワトリはなぜニワトリなのですか?」とか、その中でも、小学校三年生の「うちのおばあちゃんは朝早くから畑仕事をやって養鶏の仕事をやって家では、家事をやっているのにどうして元気なのですか?」子供たちの観察力と、子供たちとの接点が本当に大切なのだと言う事を教えられました。
 最後になりますが、昨年の岩手大会(第一五回BM技術全国交流会)への評価を色々な方から頂きました。韓国の研究者、金美京さんからの発表、小祝正明さん(ジャパンバイオファーム代表取締役)の土の分析、松井眞一さん(松井ファーム)の生き方、いずれにしても今大切な事は、自分の生き方、そして、家族、次に地域、そこから、都道府県や国へと繋がる事を学んだように思います。目先の事も大切でしょうが、「地域の宝物」をどの様に育んで行き、継承していくのか、これからの数年間がとても大切になると思います。
 皆さんが、この協会に色々な地域の試みや宝物を大切にし、お互いに自慢していくならば、かならずや酉羽ばたいて戌笑う、そのような一年になるでしょう。
 今年一年BM技術協会をよろしくお願い申し上げます。

Author 事務局 : 2006年01月01日16:54

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第一五回BMW技術全国交流会が、「BMW技術の新たな可能性をさぐる」と題して、一一月一八日(金)、一九日(土)の二日間、岩手県盛岡市の温泉地にあるホテル紫苑で行われました。
 全国交流会には、全国各地また韓国、タイとBMW技術の普及が行われているアジアの国からおよそ二五〇名が参加しました。
 アクアでは全国交流会の様子を写真と共に報告いたします。発表内容等の詳細については、後日出版されます発表記録集にまとめられる予定です。(報告者 長倉徳生)

 全国交流会は、実行委員長豊下勝彦氏(BM技術協会理事・(有)ポークランド代表取締役)の開会宣言で始まり、石澤直士BM技術協会理事長の開会挨拶(四頁に掲載)、小田桐智高青森県藤崎町町長の挨拶(五頁に要約掲載)、増田寛也岩手県知事のメッセージ紹介(四頁に掲載)と続きました。
 その後、長崎浩BM技術協会会長の講演「BMW技術の概要と新しい動向」が行われました。BMW技術の概要説明は写真、図を使って初心者にも分かりやすい形で行われました。その後、BMW技術の新しい動向として、今年度の以下の四つの活動方針について解説が行われました。
○地域の水を再生し、地域生態系に戻す
○BMW農法を深化させる
○農業・自然体験教育の推進
○海外各国との連携
 続いて活動方針の一つである「地域の水を再生し、地域生態系に戻す」取り組みである農業集落排水処理施設の改善事例報告が二つ行われました。一つは石川県能美市ですでに完成している例を、佛田利弘協会理事((有)北陸自然学研究所代表取締役)が報告しました。二つ目は青森県藤崎町で行った実証実験の報告を星加浩二氏((株)匠集団そらプラント事業部長)が行いました。実際に稼働している石川県能美市の農業集落排水処理施設ではBMW技術導入によって悪臭防止、余剰汚泥の減容に大きな効果がある事が実証されました。実験を行った青森県藤崎町の農業集落排水処理施設でも、短期間で悪臭防止の効果を示す事ができました。
 次に「BMW技術で新たなライフスタイル~農とくらしがひとつになる生活」栃木県松井ファームの松井眞一氏、「東京・銀座で情報発信~ものづくりの心と文化を届けたい」山梨県やまなし自然塾小野恵子氏(明日香会会長)、「地元で生き、地元に伝える~田んぼや畑で広がる食育の輪」香川県山下農場・山下進氏の発表が続きました。
 松井氏は勤めをやめ夫婦二人で農業を始めた理由や有機栽培での野菜、米作り、家庭雑排水を生物活性水にして、様々な利用をする等具体的な循環型の農業、暮らしについて説明しました。
 小野氏は今年九月にやまなし自然塾が東京・銀座で行った「やまなしの食と水と森の祭典・東京キャンペーン」の報告を中心に、自然塾の活動等を紹介しました。
 山下氏は、なぜ地域で食育に取り組んでいるのかを説明し、当初フリースクールの子供達が作っているバンドの演奏の場として行った「れんげ畑祭り」が今年八回目を迎え地域のイベントとして定着するまでの経緯等を紹介しました。
 一日目の最後には韓国霊南大学校生命工学研究所の金美京(キム・ミギョン)教授による特別講演「生物活性水を応用した微細藻類の培養研究」が行われました。
 金教授は藻類の培養液に生物活性水を添加することによって、アミノ酸の合成率が高まる等の結果を発表しました。
 懇親会では、盛岡さんさ踊りの紹介、会場からの参加で食べたわんこそばの数をきそうイベントが行われました。
 二日目は「BMW技術による農法をどう深化させるか~自然学を実践する『土と水の学校』から」と題して、各地の研究実験の報告等が行われました。
 「土と水の学校」は今年の活動方針の一つである「BMW農法を深化させる」ために、今年の春から各地で続けられてきました。それぞれの産地が対象品目を選び、講師である小祝政明氏(㈱ジャパンバイオファーム代表取締役)の有機栽培理論を適応する形で栽培を行ってきました。
 最初にコーディネーターを務める清水澄協会常任理事((有)茨城BM代表取締役)が有機栽培を基本とした耕作農業の基本理論をまず学んで実践し、BM堆肥や生物活性水の有効利用を図る事が目的、と今回の「土と水の学校」の目的について説明しました。
 「土と水の学校」の講師を務めた小祝氏は「BMW技術と植物生理の実際と理論」と題し、各地の研究実験結果の発表を前に、光合成で作られた炭水化物が植物の体内で様々な物質に変化している事等、植物の生理について解説しました。
 その後、農事組合法人八峰園(青森県)の古川治氏、(有)十和田湖高原ファーム(秋田県)の板橋一成氏、JAかづの(秋田県)営農部佐藤義弘氏、(有)ファーマーズクラブ赤とんぼ(山形県)の浅野厚司氏、(有)会津美里農園(福島)の児島三雄氏、(有)茨城BMの多多納勝行氏の研究実験結果の発表が行われました。
 この発表はこれまで行ってきた生物活性水の利用等BM農法に、小祝氏の有機栽培理論に基づいた体積法による土壌分析を行い、肥料要素や微量要素を適宜、元肥、追肥として与えるものです。使用する資材、量はパソコンを使って決めていきます。
 八峰園ではトマトを実験品目の一つとして選びました。実験の結果、昨年に比べ収量が増えた事、品質が改善された事が発表されました。また、途中尻ぐされの症状が出たが、土壌分析を行い石灰の施用の結果解消されたと報告しました。
 十和田湖高原ファームではキュウリを実験品目の一つに選びました。苗一本あたりの収穫量が一四・〇五キロと周辺の平均収穫量約一〇キロを上回りました。曲がった実が少なかった、との報告もされました。
 JAかづのは、キュウリを実験品目に選びました。収穫前追肥の遅れにより前半収量が少なかったものの、九月、一〇月は収量ものびた事が報告されました。こまめな土壌分析、追肥を行う事によって、多収穫がねらえる、と報告はまとめられました。
 ファーマーズクラブ赤とんぼではコメを実験品目としました。ひとめぼれの紙マルチ栽培の報告では、対象区九・二俵に対し、実験区で一〇・一俵穫れ、初期成育が遅れる心配のある紙マルチ栽培でも多収穫りが期待できそう、と報告されました。
 会津美里農園では、コメ、大豆を実験品目として選びました。水稲の直播無農薬栽培の田んぼでは九・五俵が収穫され、「これだけ穫れれば十分」との評価もあるが、やり方次第では直播無農薬栽培でも高収量が可能、と報告はまとめられました。
 茨城BMでは、サツマイモを実験品目として選びました。収量は反当たり約二トン、形状は形のそろったものが穫れ、紅あずまの特徴である鮮やかな紅色がよく出ていた、と報告されました。
 休憩をはさんで、BMW技術による畜産事例研究の発表が行われました。
 養鶏分野では(有)ヨコテ(福岡県)の横手俊郎代表取締役が「BMW技術によるコクシジウム対策」と題して発表を行いました。
 横手氏は、手探りで生物活性水を活用してコクシジウムを克服した体験を語りました。
 養豚分野では(有)ポークランド(秋田)から菅原幸治氏の発表がありました。バイオベットについての実験、実証についての報告が昨年の交流会に続いて行われました。
 バイオベットは自然浄化作用をつかった糞尿処理システムの事で、床にBM堆肥が使われています。そのため、床に排泄された豚の糞尿は、バクテリアにより分解されていきます。
 今年八月からは新しい豚舎に四〇〇頭の豚を飼育しました。結果は良好で、今後適切な床の厚さ、床材、撹拌方法等を得るために実験を続けていくと報告をまとめました。
 茨城県岩渕農場の岩渕勉氏は「BMW技術の畜産での応用」と題して、繁殖牛の例について発表しました。
 岩渕農場では飲水改善プラントと生物活性水プラントを導入しています。飲水改善の結果、畜舎内の臭気が減った、子牛の下痢が減少した、子牛の飼料効率がアップした、という効果があった事が報告されました。また、生物活性水を堆肥に散布する事により約一ヶ月で放線菌が全体に回るなど、発酵のスピードが上がった事などが報告されました。
 午後からは今年新たに会員になった、小岩井農牧の資料館等を視察し、今年のBMW技術全国交流会を終えました。
 今回の全国交流会では、休憩時間にそれぞれの産地からジュース、ヨーグルト等が提供され、好評をえていました。また、懇親会の席には、「土と水の学校」に参加した産地の生産物などが料理され、試食用に並べられました。

Author 事務局 : 2005年12月01日08:55

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 青森県藤崎町の常盤地区農業集落排水施設で、㈱匠集団そらと㈱NIPPOコーポレーションが共同で新技術を開発し、悪臭防止実験に取り組み、実験開始後わずか二週間で悪臭の原因となっている硫化水素やアンモニアは検知されなくなりました。

 今年度の協会活動方針の一つ、「地域の水を再生し、地域生態系へ戻す活動」の具体化を図るため、㈱匠集団そらでは、昨年から農業集落排水施設における悪臭防止と余剰汚泥の減容をはかると同時に、再生された水を地域に、そして良質な汚泥を農地に還元するためにBMW技術を応用した施設改善事業を進めてきました。㈱匠集団そら及び業務提携関係にある㈱NIppOコーポレーションは、現在、共同で千葉県山田町や青森県藤崎町などでこの施設改善事業導入を提案しています。
 今年七月には協会の石澤直士理事長の地元でもある青森県藤崎町で、農業集落排水処理施設の改善を検討する現地調査を行いました。調査では、「施設での悪臭の発生と、悪臭の主な原因物質となっている硫化水素による施設の腐食が当面の問題」と同町下水道課からお話がありました。
 そこで、小学校が施設の前にあり、悪臭発生に困っている同町常盤地区農業集落排水処理施設で、まずBMW技術による消臭効果を上下水道課に確認していただくため、小田桐智高町長のご理解と担当課のご協力をいただき、今回の実験を提案し進めてきました。
 悪臭除去実験の概要は、濃縮された余剰汚泥の貯留槽内にリアクターシステムを設置して微生物培養調整による活性汚泥の改質を図り、悪臭を防止するものです。
 実験は、一〇月七日に小田桐町長、對馬一孝下水道課長補佐に、実験前と実験後の汚泥貯留槽の臭気を比較してもらうため、石澤理事長立会いのもと、実際の臭いを確認してもらうことからスタートしました。一〇月八日から、汚泥貯留槽にリアクターを設置し、臭気はガス検知管で測定し、データの収集を行ってきました。実験前検出のデータでは、硫化水素濃度は五八ppm、アンモニア濃度は五ppmでした。槽内に顔を近づけるだけで、ムッとくる下水道臭がありました。実験を開始した翌日には硫化水素は検出されなくなりました。アンモニア濃度も徐々に低下し、二週間後の二一日には、悪臭は感じられなくなり、検知管でも検知されなくなりました。二八日には、実験後の臭気レヴェルを実感して頂くため、再度小田桐町長にも確認に立ち会って頂き、実験は終了しました。
 この成功を受けて、㈱匠集団そらと㈱NIPPOコーポレーションは、BM技術協会のリーダーシップのもと普及活動に入ります。
(報告=㈱匠集団そら・星加浩二)

Author 事務局 : 2005年11月01日09:00

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 中国の上海同済大学元副学長、顧国維(グ・グオウェイ)教授ら三名が、九月一六日にBMW技術の現場を実地見聞するために来日しました。一七日には長崎浩BM技術協会会長等から背景説明等を受けた後、一八日から山形の米沢郷牧場、㈱パル・ミート山形工場、秋田の㈲ポークランドを見学に訪れました。
 

見学に訪れたのは顧国維教授(上海同済大学環境科学・工程学院院長)、叶凡所長(イエ・ファン/上海同済大学建築設計研究院研究所所長)、何文遠氏(ヘ・ウエニュアン/上海同済大学環境科学・工程学院)の三名です。
 顧教授は上海崇明島の長江農場にあるBMW生物活性水プラントを見てBMW技術に強い関心を持ち、BMW技術についてもっとよく知りたい、日本の応用現場を見たいと来日しました。顧教授は、廃水処理技術の活性汚泥法の専門家でもあります。
 一七日にはBM技術協会事務所において交流の懇談が行われました。日本側からは、長崎浩協会会長、椎名盛男協会常任理事、菊地董氏、礒田有治協会事務局長が参加しました。顧教授より挨拶と中国の農業排水についての問題点説明が行われBMW技術について学び、日本との交流を進めていきたいとの抱負も語られました。
 長崎会長は、日本の環境汚染の歴史と協会の成り立ちについて説明しました。その中で、BM技術協会は技術の普及だけでなく、BMW技術を使った農産物の流通を通じての「循環」まで関わってきた、とBM技術協会と会員の役割の広がりを説明しました。その後、長崎会長、椎名常任理事が中国側の持っている技術的な疑問に答えるとともに、生物活性水の分析等について提起しました。質疑応答の後、顧教授からは生物活性水について内容物の調査をしてみたい、との希望が語られました。
 一八日には山形県へ移動し、伊藤幸吉代表(協会常任理事)から米沢郷牧場が取り組んでいる資源循環型農業についての説明を受け、見学を行ないました。一九日は、㈱パル・ミートを訪門し、食肉加工場と排水処理施設を見学。曝気槽や活性汚泥の状態を興味深く確認していました。二〇日は㈲ポークランドで豊下勝彦社長(協会理事)からSPF豚とBMW技術の融合について説明を受け、尿処理施設や堆肥施設の見学を行い、今回の見学を終えました。

Author 事務局 : 2005年10月01日15:01

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自立した農業と豊かな地域を目指して 農産物直売所「食彩ときわ館」 青森県藤崎町

 トキワ養鶏、八峰園が会員となり運営にかかわる直売所「食彩ときわ館」が、今年四月に国道七号線常盤バイパス通りにオープンしました。
 土と水と人をつくる自然塾・旬のおいしさをいつもお届けするをモットーにするこの直売所は、現在六〇名の生産者が会員となり、自主的に運営されています。
 ここでは会員のつくった野菜、くだもの、お米、おにぎり、赤飯、花、季節の山菜等が販売されています。会員は農産物の表示、企画、価格を全て自分で決めて、毎朝コーナーに品揃えしております。

生産者として一番気になるところは「お客さんがおいしいといってくれるかなあ」「値段はどうかなあ」という事です。
 食べ方、保存の方法をお客さんに教えたり、逆にお客さんから食べ方、調理方法を教わったりと、顔の見える交流がなされています。
 お客さんの声として、野菜のつくり方は、農薬、化学肥料の使用は‥等安心、安全な部分についての質問が多くあります。会員はこうした来館者の声を大切にし、それを反映できるようなものづくりを心掛けております。
「赤いたまごは赤い鶏から生まれる」をキャッチフレーズにトキワ養鶏では赤いたまご、放し飼いたまご、豚肉、ウインナー・ハム類、赤鶏肉、マヨネーズ、りんご、ニンニク、アスパラガス、トマト、季節の野菜等を館内で販売しています。
 今、食品の様相は大手スーパーを中心に大きく変化しています。地元の小さいスーパーはなくなり、ここにきて安ければ良い、中身は二の次の商品に市場は占有されてしまった観があります。
 一部のスーパーでは有機野菜とか、無添加商品とかありますが、個人的にはポーズだけで販売しているような気がしてなりません。
 トキワ養鶏では「良いたまごとは?」を常に検討しております。答えは、良い環境と水とエサにあると考え、味覚や触覚に訴えながら、良いたまごとは健康な鶏から産まれると信じて、強い丈夫な鶏を育てる事に日々努力しています。
 養鶏を核とした地域循環への取り組みとして地元で取れるもみがらクンタンを鶏舎の敷料として活用しております。このもみがらクンタンを鶏たちが撹拌し、クンタンの吸着効果を高め、鶏糞の臭いがとれます。また、清潔な環境を保つ事ができます。
 使用済みのもみがらクンタンは鶏糞と混ざる事によって養分をたっぷり含み、良質な堆肥づくりの原料になります。鶏、豚からの糞尿は全て堆肥として使われ、りんご、ニンニク、野菜等に使われています。もちろん、地元の仲間に良質な土壌改良材として畑に利用されています。
 いのちの糧である食糧とその基盤である農業、農村の危機がいわれる中で自立した農業と豊かな地域を目指して、会員一同がんばっています。八月二〇日現在、三二、〇〇〇人の方々が来館されています。皆様の来館を心よりお待ちしています。(報告=トキワ養鶏 山内正光)

Author 事務局 : 2005年09月30日16:36

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各作物別栽培課題に実践指導〜「土と水の学校」第2回学習会開催

七月二日から六日にかけて「〜自然学を実践する〜『土と水の学校』」第二回学習会がBM協会の研究実践産地で開催されました。この取り組みは、有機栽培の基礎を学び、農作物の収量の向上や品質アップを図り、併せてBMW技術を活用した農法を深化させる事を目的にしています。
講師は(株)ジャパンバイオファーム代表取締役の小祝政明氏、他に礒田有治協会事務局長が同行しました。
日程は次の通りでした。
七月二日(土) トキワ養鶏、八峰園(青森県)
三日(日)十和田湖高原ファーム JAかづの(秋田県)
四日(月)会津「土と水の学校」実行委員会(福島県)
五日(火)ファーマーズクラブ赤とんぼ、米沢郷牧場(山形県)
六日(水)茨城BM自然塾(茨城県)
 三月から五月にかけて行われた第一回目の学習会では、小祝氏の実践する有機栽培技術の理解、土壌分析結果を基にした施肥設計を学びました。二回目の今回は、各グループが対象に決め栽培している作物の生育結果を確認し、問題点の解決とさらに理論的理解を深める現場での実践を中心にした学習会が行われました。
 最初に訪れた八峰園のニンニク畑では、初期成育の遅れが見られました。昨年の定植時に堆肥の分解、土との混合が十分でなかった事が原因として考えられると、小祝氏から指摘されました。また、苦土が不足しているために葉に赤さびが見られましたが、これらの点を解決すれば改善される、という事でした。収穫が終わりしだい土壌分析を行い、次に備える事が確認されました。
 次に訪れたリンゴ畑は徒長枝について説明がありました。夏至までに枝の成長を止める事が落葉果樹栽培のポイントと、小祝氏から説明されました。対策としては、秋のうちに礼肥・基肥を施し、春には基肥を与えないという事でした。いかに徒長枝がでないように秋に礼肥・基肥を与えるかが大変重要な事だと、小祝氏はいいます。
 トマトのハウス栽培では、苦土、石灰を施す肥培管理をして、実の大きさが揃ってきたといいます。しかし、尻ぐされが見られる事から石灰がきいていないのではと原因を探り、
灌水の量が足りないという事が分かりました。応急的な対策として、石灰分を含んだ灌水を行っては、とアドバイスが行われました。
 トキワ養鶏の会議室に場所を移しての学習会では、肥培管理を行って品質、収量共に改善されたリンゴ農家の例が紹介され、どのようにすると徒長枝を抑えることができるのか
といった説明がされました。また、パソコンを使っての施肥設計の方法について、実際にソフトの数値を動かしながら実践しました。参加者からは有機栽培と化成肥料による栽培の違いについて質問があり、根から炭水化物が吸収できる事の優位性が説明されました。
 三日の十和田湖高原ファームでは、生物活性水プラント、堆肥舎等を見た後、場内に作られている実験用の畑を視察しました。土壌分析を行い、基肥は自家製の堆肥と石灰だけで栽培しているという担当者の説明でしたが、トウモロコシ、枝豆、キャベツなど、概ね順調に生育していました。別の畑に作られているキュウリは、葉色もよく生育が順調という事です。キュウリを試食した小祝氏は「硝酸がなくおいしい」と言っていました。また、こまめに追肥をするようにとのアドバイスがされました。
 JAかづのの生産者が作っているキュウリ(路地)は順調に育っていて、「葉が光っている」と生産者も満足している様子でした。肥培管理をしたものと対象区(一般的な有機栽
培)の葉の厚みをさわってみてくださいとの小祝氏の言葉に、さわった葉の厚みが違うので、皆一様に驚いていました。隣のハウスで作られている慣行栽培のキュウリはウドン粉病がかなり出ていましたが、実験栽培のキュウリには病気が見られませんでした。「節間がせまく、側枝もよくでているので、すごく穫れるだろう」と小祝氏は話していました。
 JAかづののトマト生産者のハウスでは、ハウス内の温度が上がりすぎているため、上部の徒長が見られました。葉が蒸れるために水分の蒸散が少なくなり、こうしたことが起きるという事です。ハウス内の換気を良くするため、ハウスの妻(つま)の部分を解放し風が通る用にする事等が小祝氏からアドバイスされました。
 圃場視察の後に行われた学習会にはJAかづのから九名、十和田湖高原ファームから二名の参加がありました。学習会では、キュウリの葉がなぜ厚くなったのか、肥料に含まれ
るチッソの種類とその中でアミノ酸様チッソが作物の生長に優位である事等が説明されました。
 四日に訪れた会津「土と水の学校」実行委員会のメンバーは三年前から小祝氏に教えを受け、体積法の土壌分析による施肥設計を実践しています。今回、巡回した圃場では、その効果が現れているようでした。それぞれの田んぼから抜いた稲は十分根を張っているものが多く、丈夫な白い根も見られました。直播も行われていて、これも現在の根の成長などを確認すると、十分な秋の収穫を予想させるものでした。対象作物の一つ、柿は葉、枝の様子、徒長も少ない事から、生育は順調と判断されました。小祝氏からは実肥を適宜与える事と、基肥を少し増やしてもいい、とのアドバイスがありました。生産者からは「生理落果が非常に少なくなった」との声が聞かれました。
 枝豆、大豆が栽培されていた新しい畑では、雑草であるアカザの葉の状態から、微量要素が欠乏しているとの診断がされました。
 午後に行われた学習会では、はじめて小祝氏の講義を受ける四名を含め、一八名が参加しました。有機栽培による稲作の基本の講義後に、根の断面を顕微鏡で確認しながら、根の構造、役割の解説、初期にしっかりした根を作る事の重要性の説明等が行われました。
 五日のファーマーズクラブ赤とんぼ、米沢郷牧場では、学習会に先立ち七ヶ所の田んぼを回り、それぞれの生育状況を確認しました。実験区と対象区の差が、根の張り、茎の太
さに見られ、実験は順調でした。この地域の特徴として、土壌に鉄分が多く含まれている事が上げられます。そのため、p Hが低いと酸化鉄が根の回りに付着し、養分の吸収を
阻害するという事です。土壌分析に基づいて苦土・石灰等を使ってp Hを調整していますが、田んぼを回って小祝氏が指摘したのは、硫酸苦土の使用による硫化水素の発生です。
有機物の残った嫌気状態の田んぼに硫酸苦土を入れると硫化水素が発生し、根の発育を極端に阻害するという事です。稲を抜いて根を確認すると、硫化水素によって痛められた根
が一ヶ所で確認されました。今後、稲の施肥設計をするときに、十分気をつけなければいけない事でした。
 途中、対象作物の一つ、キュウリのハウスに立ち寄り、肥料を効率的に吸収させるための灌水の仕方などのアドバイスが行われました。
 午後からの学習会では、水田での硫化水素の発生をいかにして止めるか、を中心に講義が行われました。そのためには、収穫後の稲ワラの秋処理により、稲ワラをよく分解しておくことが重要と小祝氏から説明がありました。また、有機物をアミノ酸に分解するために乳酸菌と酵母を前年に与えるのが有効で、そうした資材の作り方が説明されました。
 最後に訪れた茨城BM自然塾では、小雨の中圃場視察が行われました。清水澄塾長の稲が順調に生育していました。有機肥料では葉の色を落とさない事が重要で、追肥をするようにとアドバイスがされました。サツマイモは根の伸びを確認しましたが、これも順調に生育しており、秋の豊作が期待できるとの小祝氏のコメントがありました。葉の色が変わってきたときに、畝間に苦土とセットで追肥を行うと、ツルは伸びずに芋が大きくなるとのアドバイスがされました。梨園では、木にコケが生えている状態から、土壌の酸性化が指摘されました。苦土を少し増やす事、微量要素が不足している事が指摘さ
れました。
 午後の学習会では、根菜類に焦点をあてて講義が行われました。チッソが切れるとツルの伸びが止まり葉で作られる炭水化物が芋に行くようになる事、いつツルの成長を止めるようにするのがいいのか等が話されました。また、病気の種類によって、それらに対応する微生物資材が違うこと、それらを自分達でどうやって作るか等の説明が行われました。

Author 事務局 : 2005年08月01日16:34

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四万十川の豊饒が生む創意ある活動

 四万十川の中流域三町村が出資して作った、株式会社四万十ドラマが今年の四月より完全民営化されました。BM技術協会会員の由類江秋穂さんが代表取締役社長に就任し、新たな一歩を踏み出しました。
 由類江さんは昨年三月まで村役場に勤め、その間村の自立のために様々な試みを続けてきました。十和村の堆肥センター、生物活性水プラント導入(一九九一年)もその一つです。
 四万十ドラマの取り組みと十和村のユニークな「おかみさん市」等について報告いたします。
(探訪 長倉徳生)
 四万十ドラマは、四万十川の中流域にあたる高知県の三町村、十和村、大正町、旧西土佐村(現四万十市)が出資して一九九四年に株式会社として設立されました。社長はこれまで三町村の町村長が務めてきました。
 九六年には会員制度「RIVER」を設立し、年四回の情報誌発行、会員との交流会を行ってきました。また「自然の学校」(流域に暮らす人が先生となり子供から大人まで知恵や技術を体験する)として、薪を割って五右衛門風呂に入る学校、手作り味噌を作る学校、自分の机を作る学校等とてもユニークな試みを行ってきました。
一方で、水をテーマに人の生き方を語る本「水の本」を出版(糸井重里、筑紫哲也等一八名・一九九七年)、通信販売「四万十川良心市場」の発足(一九九八年)、地域独自の商品としてヒノキの端材を利用した「ひのき風呂」の開発(一九九七年・販売総数二〇万枚以上)等を行ってきました。四月に完全民営化された四万十ドラマは、資本金が一二〇〇万円で、一四〇名の株主の多くは三町村の住民です。
 「ものを作るだけであれば、どこでもやっている。自分たちが生き残るためには、ここから情報を発信しなければいけない」と、地域からの情報の大切さを由類江さんは強調します。また、「(現在)作る側はどこに頼っていいのか分からない。そこに仕掛けを作るのが四万十ドラマです」と、生産者が残っていくための仕組み作りが必要であると話します。この二つの事に、四万十ドラマの主な役割があるようです。
 現在は、四万十流域の茶葉を使ったペットボトルのお茶「しまんと緑茶」をだし、製菓会社には原料として「四万十の栗」を供給して、自然な食品の開発にも力を入れていると
いう事です。
 茶葉はこれまで原料として静岡に出荷していました。「しまんと緑茶」は高知市内を中心に、年間二四万本(定価一五〇円)が販売されています。
 「四万十の栗」は、お菓子屋さんを紹介されたのがきっかけで始めました。これが評判になり、現在数社が製造しているという事です。三町村で一〇〇トン穫れる栗の約半分を取り扱うまでになったという事です。
 「(民間と)お互いに協力できるところは協力し、一緒になって地域経済のあり方を作っていくのが面白い」と由類江さんはいいます。また、「そうやって金を稼ぐ、その事が村を守る事になるんです」と言葉を付け加えました。
 十和村の「おかみさん市(十和村地産地消運営協議会)」は、農家の庭先で作られた野菜を、村の学校給食、村の直売所、そして高知市内のスーパー等に出荷しています。
 ユニークなのはこうした野菜で、昨年三月にISO14001を取得したことです。野菜のチラシには「こんまい段々畑でのびのび育った庭先ISO野菜です」とあります。集荷等を担当する村役場産業課の竹本英治係長は、煩雑なISOの管理を可能にしたのが他にない「ISOカレンダー」だといいます。このカレンダーは、一月が一枚になっていて、日付の下に農薬を使用したか、使用したらその種類、肥料を入れたか、入れたのであれば化学肥料か、有機肥料か等をまるばつ式で記入するようになっています。このカレンダーのアイディアがなかったら、普通の農家の人たちが他品種の庭先野菜の管理をするのは、大変な作業量となりISO取得は実現しなかったかもしれません。現在、約二〇〇人のう
ち、一六六人がISOを取得しています。
 化学農薬、化学肥料をできるだけ使わないで野菜を作ろうというのは大変だったのでは、と竹本係長に質問すると、もともと家庭菜園の延長ですから、と答えが返ってきました。
ISO野菜には、BM堆肥、生物活性水も使われています。竹本係長によるとこのISO取得の仕掛け人は、由類江さんという事です。
 おかみさん市では、高知市内のスーパーへの出荷も行っており、野菜を作っている生産者自らが店頭で販売する事を、定期的に行っています。
 おかみさん市の野菜出荷に関係する仕事は村の産業課が、販売に関係する仕事は四万十ドラマが、経理に関係する仕事は農協が、それぞれ担当しながら、三者の連携で行われています。
 ここでも四万十ドラマが重要な役割を果たしているようです。
 四万十ドラマの畦地履正専務は、四万十ドラマの設立当時から事務局を担ってきました。畦地さんは、地方の村おこし、町おこしを行っているところを今でも視察に行くそうです。うまく行っていないところで感じる事は、責任の所在がはっきりしていない事だと彼は指摘します。
 四万十ドラマは完全民営化され、責任の所在もますますはっきりされ、決定も早くなったといいます。そうして確立された条件を活かして、今後どう活躍していくのか、楽しみにしている人は地元だけでなく、外にも多くいるようです。

Author 事務局 : 2005年07月01日12:41

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中国・上海、崇明島に生物活性水プラントが完成
上海市崇明長江農場


 中国・上海、崇明島で今年二月から建設がすすめられていた生物活性水プラント工事が完成した。同プラントの工事完成を受けて、五月二三日から二七日、培養調整及び管理方法の確認や、生物活性水の利用方法等の指導を目的に、㈱匠集団そらの椎名盛男代表取締役(BM協会常任理事)、清水澄常任理事ら五名のチームが、現地を訪問した。
 同プラントは、上海万事発実業総公司(張建漢代表取締役)の上海市崇明長江農場に導入されたもの。崇明島は、長江(揚子江)の河口にあり、面積は一二〇〇平方K㎡、島全体が生態系保護地区に指定されている。島の農地は、五〇〇〇〇ha有り、今回生物活性水プラントが導入された万事発実業総公司が所有する農地は、四〇〇〇haとなっている。長江農場では、五年前から、有機栽培に取り組み、現在の有機栽培農地は、二七〇ha、二〇〇八年には、有機栽培農地七〇〇haを目指している。同農場の農業経営内容は、耕作部門では、米、小麦、大麦が主力生産品目となっており、畜産部門では、乳牛二五〇〇頭、養豚(母豚一五〇〇頭、肥育豚三〇〇〇〇頭)、アヒル一〇〇万羽などなっている。
 今回、導入された生物活性水プラントは、日量三、五tの生産能力があり、六五tの貯留槽を備えている。生物活性水は、有機栽培の耕作部門や、堆肥づくり等に幅広く利用される予定だ。
 崇明島に入った訪中チームは、二四日にプラントの調整確認や、現地の水稲・野菜栽培の状況や、堆肥づくりの現状等、現地確認を行った。二五日には、現地スタッフに①プラント管理方法の確認②水稲栽培や野菜づくりでの生物活性水の利用方法③堆肥づくりや、畜産でのBMW技術の活用方法を説明した後、現場で技術をどう生かすか、討議を終日行った。二六日には、実際に生物活性水を活用した種堆肥づくりを清水常任理事の指導のもと、訪中チームと現地スタッフの共同作業で実施した。
 同農場でのBMW技術の活用と、技術を介しての中国と日本との交流が今後、大いに期待される。                            (礒 田 有 治)

Author 事務局 : 2005年06月01日13:00

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栽培時術の向上を目指し、各地で学集会を展開~自然学を実践する~「土と水の学校」開催


 BM技術協会の今年度活動目標の一つに上げられている、「BMW技術を活用した農法の深化」を目指した学習会〜自然学を実践する〜「土と水の学校」が、三月一九日の白州郷牧場を皮切りに、青森、山形、茨城で行われました。講師は、(株)ジャパンバイオファーム代表取締役の小祝政明氏です。
 各地で対象品目と目標を設定し、圃場の土壌分析とパソコンを使った施肥設計で、小祝氏のアドバイスを受けながら目標の達成を目指します。また、土壌分析のデータを集める事によって、作物別にどのミネラルが吸収されているのか等を明らかにしていきます。これらの研究によって、BMW技術を活用した農業栽培技術の向上を図っていきます。
 そのスタートになるのが、今回の一連の学習会でした。各地の様子を報告いたします。(報告 長倉徳生)
 ○三月一九日、白州郷牧場の研修センターで午後一時より、牧場のスタッフ約一〇名の参加で学習会は行われました。最初に有機栽培についての基礎的な説明を受けた後、小祝氏に圃場を見てもらいました。
 その後、研修センターに戻り、自分達で簡易土壌分析キット「ドクターソイル」を使って行った土壌分析の結果をもとに、小祝氏のアドバイスをもらいながら、参加者でパソコンを使った施肥設計を学びました。
 白州郷牧場の目標は、ナスなど果菜類の品質向上と収量アップです。現在、自分たちで分析、施肥設計したものを小祝氏に見てもらいます。今後も、夏野菜など施肥設計にもとづき土壌をととのえてから栽培を行うという事です。
 ○四月一日には、山形県川西町のホワイトボード、写真等を使いながら、分かりやすく有機栽培の技術を解説する小祝氏ファーマーズクラブ赤とんぼの会議室で学習会を行いました。参加者は赤とんぼと米沢郷牧場の会員約三〇名でした。
 こちらでは米、キュウリの品質向上と収量のアップが目標です。午前中は、BMW技術と小祝氏の「有機栽培技術」の説明が行われ、この二つが結びつく事によって、非常にすぐれた有機農業の技術が完成する、と小祝氏の期待が述べられました。午後からは、作物別の栽培技術の説明等に続いて、実際にパソコンを使って、施肥設計のソフトを操作する、ということを行いました。参加者の年齢は二二才から六五才ぐらいと幅が広く、パソコンそのものに不慣れな人もいましたが、小祝氏の説明を熱心に聞きながら、操作をしていました。
 今回の学習会での大きな成果は、参加者の多くにBMW技術の持つ有機物を分解する能力の重要性が小祝氏の説明によって理解できた事です。また、作物を作るときBMW技術と小祝氏の「有機栽培技術」が合わさる事によって、収量が上がる事が理解できた事です。
 現在、十数名の会員に圃場から土を取ってきてもらい、一緒にドクターソイルを使って分析し、パソコンで施肥設計を行い、できたものを小祝氏に評価してもらっています。
 ○茨城では四月三日に茨城町の公民館の会議室を借り、約二〇名の参加で学習会を行いました。
 茨城BM自然塾の目標は、サツマイモ、ジャガイモ、ニンジン等根菜類の収量アップと品質向上です。
 学習会では、ドクターソイルで分析したデータをパソコンに入力し、実際に施肥設計を行いました。
 また、根矢氏(茨城BM自然塾会員)のホウレン草の圃場を訪れ、小祝氏にアドバイスをしてもらいました。
 今まであまり気にかけてこなかったミネラル等の微量要素が大切な役割を持っている事、土壌中の炭水化物の事、堆肥の役割がよく分かった等の感想と共に、これまで「よい」といわれてきた事の科学的根拠が分かり、自分で取り組む際の自信になった、という声もありました。
 六月に再び小祝氏に茨城に来てもらい、米、サツマイモ等を中心に指導をお願いしたい、という希望もあるそうです。
 
 ○四月六日から八日にかけて、常盤村養鶏農業協同組合の会議室において、青森のトキワ養鶏、八峰園、秋田の(有)ポークランドのスタッフが集まり学習会が行われました。山形の赤とんぼからも参加があり、約二五名が参加しました。
 学習会の内容は次のようなものでした。
リンゴと野菜の植物生理及び肥料吸収等に関する講義、体積法による土壌分析データに基づく作物栽培、堆肥製造(温度の関係)についての講義、スライドによる作物の表情学及び根の健康状態の説明、土壌分析の方法とパソコンによる施肥設計方法、等でした。これまでの講習会等では、地下部と地上部の関係を話す講師はほとんどいなかったので、受講者は興味をもって聞き入っていました。
 今後は、土壌分析による土壌中の肥料等の吸収推移を見ながら肥培管理に取り組みたい、また作物生育に関わる、苦土の関係を調査したい、という希望が出ています。

Author 事務局 : 2005年05月01日16:21

AQUA160号 トップ記事

集落の水を再生して地域へ還元しよう -農業集落排水処理施設改善事業に向けて

全国の理事・会員の皆さん
 BM技術協会では、今年度の重点事業の一つとして、農業集落排水処理施設(以下、「農集」)の改善事業を展開することにしました。農集は皆さんのご近所にいくつも存在し、税金で運営管理されています。今回の協会プロジェクトは、この農集をBMW技術らしく改善しようとするものです。ご近所の農集の運用実態を調査し、その技術的改善事業を推進し、さらにはこの事業を通じてBMW技術が地域社会に貢献する事業に、広く全国の会員諸氏の協力と参加を呼びかけるものです。
 古来、わが国の地域社会は網の目のような水系のもとに展開され、地域の水と切っても切れない地域生態系(山里)として存続してきました。いま、その地域社会が荒れています。その根源には私たち自身による地域水系の汚染と破壊がある、BM技術協会はそう認識してきました。そして、生活が汚した水は自分達の手で再生させようと、協会は技術の運動を展開してきたところです。
 農集はまさしく山里の水系の結節点に設置され、生活廃水を処理放流する国の事業です。けれども現在、これがうまくいっていません。技術的には、処理水の水質がBOD20pp mを超えるなど処理効率が悪く、悪臭が出て、文字通り邪魔者の余剰汚泥を年数回も施設から引き抜いて、一般廃棄物として処理しています。何よりも、生活廃水が山里の水として再生され、地域の水系に帰っていくという循環が実現できていません。下水を処理して捨てるという大都会の考え方のもとで、農集の水は(多くは農業用水に)捨てられています。
 経済的には、農集の維持管理、とりわけ余剰汚泥の処理経費が、自治体財政の馬鹿にならない負担として認識されるようになっています。現在の市町村合併に際してはなおのことです。このため農集の処理効率を改善することは、地元の関係者のみならず、日本下水道事業団や日本農業集落排水協会など全国組織の課題として浮上しています。農集技術の改善の機運は現実的です。
 会員の皆さんも日々の実践からお分かりのとおり、BMW技術は農集改善の技術的、経済的課題に応えることができます。すでにモデル地域で実証されていますが、BMW 技術は既設の施設に手を加えることによって、次のことができます。余剰汚泥の引抜きの必要がなくなる、悪臭の発生が防止される、そして何より、処理水の水質が向上してまさしく生態系の水として地域の水系に戻すことができます。結果として、自治体の財政的負担が軽減されます。
 かねてより、BM技術協会は農家の暮らしと農業の仕方に技術を活用して、環境保全型の農業を可能にしてきました。その経験を今度はぜひとも地域環境へと押し広げて、豊かな水系がめぐる地域社会を展望したいものです。BM技術協会が協会として取り組む今回の事業に、会員の皆さんのご理解とご協力を要請します。
( BM技術協会二月二二日常任理事会の決議を踏まえて)

Author 事務局 : 2005年04月01日15:59

 
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