「ORGANIC」で世界を養えることが証明される 【AQUA193号】

 米国のミシガン・アン・アーバ大学(University of Michigan Ann Arbor)のキャサリン・バッジリ(Catherine Badgley)によって率いられた科学者チームが「有機農業では世界を養えない」という俗説を打破した。この研究班は、293件の実例を挙げて、有機農業と従来農業の生産性を比較し、そして先進国と発展途上国での異なる食物カテゴリー間で、有機対非有機農業の平均生産高比率を具体的に査定した。平均生産高比率では、この研究班は、現在ある農地基盤で有機的に栽培される世界的食料供給を基にモデルを立てた。その結果は、農地基盤を増やさないで、有機農業方法が現在の世界人口の食を支えうる十分な食物を産出できることが明らかになった。この科学者達はまた間作作物としてのマメ科植物(legumes)による窒素固定から潜在的に獲得できる窒素量を計測した。温暖地域と熱帯地域の「アグロ・エコシステム(agroecosystmes)≒農業生態尊重体系」から取り出したデータでは、現在使用されている化学肥料のすべてに取って代われる十分な窒素を固定できる事が示された。その報告書はその結論をこう述べている:「これらの調査結果は有機農業が、従来型農業の環境への悪影響を削減させて、十分に世界の食料供給に対応できる可能性を持っている事を示している」

《緑革命(Green Revolution)の代価》
 穀物収穫の現在の減少は、何十年に及ぶ緑革命の持続不可能な慣行が環境悪化を招いた事に起因している。それは、大規模な土壌侵食、土壌肥沃度の損失、塩分化による農地の喪失、地下水枯渇、害虫の増大する抵抗力、をもたらしてきた。緑革命の他の環境コストは、地上と地下の水汚染、温室効果ガス放出(特に山林伐採と森林の農地転用)、そして生物多様性の喪失、を含んでいる。多くの人達が、食糧生産ではもっと持続可能な方法が不可欠であると論じてきた。

《有機農業が持つ多様性》
 今回のミシガン大学のチームによって調査された有機農業の実例は、「アグロ・エコロジカル(agroecological)≒農事生態尊重」に依拠した多様な農場を取り上げていて、必ずしも「認定」に制限された有機農業だけではない。有機農業の実例は自然界の栄養素が循環するプロセスに依存していて、化学合成された農薬を排除し、土壌質を維持したり、蘇生させている。その有機農作業は、間作農作物(cover crops)、マニュア使用、コンポスティング、輪作、相互間作(intercropping)、生物利用害虫コントロール、を含んでいる。293の実例研究には、有機農業と慣習農業を比較した160件、有機農業を「低強化法農業」とを比較した133件が含まれている。多くの研究はすでに発表されている科学論文からの引用がされている。

《有機食物は世界を食べさせるに十分である》
 有機と非有機産物の生産率は先進国では大体同じである、しかし有機農業における主要な利点が最も明白なのは発展途上国である。発展途上国では、多くの食物には切実な需要があり、農民が高価な合成化学肥料や殺虫剤に対して支払う余裕がないのも実状である。有機農業の従来農業に対する生産率はおよそ1.6から4.0までに及んでいる。世界での全食料の平均生産率は1.3である。毎日のカロリー摂取量の面では、現在の世界の食料供給は一日につき2786キロカロリーを供給している。健康な成人の平均的な必要摂取量は2200から2500の間にある。有機農業で設定された「モデル」では一日2641キロカロリーになるので、推薦されたレベルを上回っている。別の「モデル」では一日4381キロカロリーも生み出している。これは現在獲得できる量の157.3パーセントにあたる。このように、有機農業による生産は、現在存在しているより実質的に多くの人口を養っていける可能性を持っている。

《生物による窒素固定で充分以上の硝酸塩が獲得できる》
 有機農業には充分な有機肥料が無いという批判がある。農業生産に対して主要制限力がある「マクロ栄養素macronutrient」はほとんどの地域では窒素である。有機農法の窒素補修は、作物残余、動物肥料、堆肥、そしてマメ科植物(legumes/緑肥料)から生物によって固定された窒素から獲得される。熱帯地方では、他の農作物植えつけの間に栽培されるマメ科植物が、40日から60日で窒素の相当量を固定させることができる。2001年では、合成窒素肥料の世界使用量は8千200万トンであった。まめ科作物によって固定された窒素の肥料としての査定量は1億4千万トンである。これは1ヘクタールにつき102.8キログラムの平均窒素獲得可能量を基準にしている。温暖地帯と熱帯地域の平均窒素獲得量は1ヘクタールあたり各95.1キログラムと108.6キログラムである。これは合成窒素がグローバルに使われている量の171パーセントにあたる。

《ORGANICの未来と課題》
 ミシガン大学によるこの研究は波及効果を広げている。その研究結果は、もし我々が有機農業に切り替えて、生物学的に獲得可能な窒素が現在使用している化学合成窒素肥料に取って代わることができれば、世界を養う食物を栽培するのに土地を増大させる必要がないことを意味している。また米国では工場型農業による国民の健康と環境への加害額は年596億ドル以上になると発表されているが、有機農業への転換でこの環境汚染に起因する被害を回避できる。しかし有機農業への移行がどんなに有望であるとしても、その遂行には多くの挑戦が控えている。土壌肥沃と害虫管理に関する「アグロ・エコロジカル」方法に貢献する研究機関の支援、「ORGANIC」伝播の強いシステム、そして覚醒した市民の支援は欠かせないものである。


参照論文:
Scientists Find Organic Agriculture Can Feed the World and More
06/09/07 Press Release by The Institute of Science in Society

Author 事務局 : 2008年01月01日13:47

 
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