« AQUA162号 トップ記事 | メイン | JAかづの »

2005年07月01日

AQUA163号 トップ記事

四万十川の豊饒が生む創意ある活動

 四万十川の中流域三町村が出資して作った、株式会社四万十ドラマが今年の四月より完全民営化されました。BM技術協会会員の由類江秋穂さんが代表取締役社長に就任し、新たな一歩を踏み出しました。
 由類江さんは昨年三月まで村役場に勤め、その間村の自立のために様々な試みを続けてきました。十和村の堆肥センター、生物活性水プラント導入(一九九一年)もその一つです。
 四万十ドラマの取り組みと十和村のユニークな「おかみさん市」等について報告いたします。
(探訪 長倉徳生)
 四万十ドラマは、四万十川の中流域にあたる高知県の三町村、十和村、大正町、旧西土佐村(現四万十市)が出資して一九九四年に株式会社として設立されました。社長はこれまで三町村の町村長が務めてきました。
 九六年には会員制度「RIVER」を設立し、年四回の情報誌発行、会員との交流会を行ってきました。また「自然の学校」(流域に暮らす人が先生となり子供から大人まで知恵や技術を体験する)として、薪を割って五右衛門風呂に入る学校、手作り味噌を作る学校、自分の机を作る学校等とてもユニークな試みを行ってきました。
一方で、水をテーマに人の生き方を語る本「水の本」を出版(糸井重里、筑紫哲也等一八名・一九九七年)、通信販売「四万十川良心市場」の発足(一九九八年)、地域独自の商品としてヒノキの端材を利用した「ひのき風呂」の開発(一九九七年・販売総数二〇万枚以上)等を行ってきました。四月に完全民営化された四万十ドラマは、資本金が一二〇〇万円で、一四〇名の株主の多くは三町村の住民です。
 「ものを作るだけであれば、どこでもやっている。自分たちが生き残るためには、ここから情報を発信しなければいけない」と、地域からの情報の大切さを由類江さんは強調します。また、「(現在)作る側はどこに頼っていいのか分からない。そこに仕掛けを作るのが四万十ドラマです」と、生産者が残っていくための仕組み作りが必要であると話します。この二つの事に、四万十ドラマの主な役割があるようです。
 現在は、四万十流域の茶葉を使ったペットボトルのお茶「しまんと緑茶」をだし、製菓会社には原料として「四万十の栗」を供給して、自然な食品の開発にも力を入れていると
いう事です。
 茶葉はこれまで原料として静岡に出荷していました。「しまんと緑茶」は高知市内を中心に、年間二四万本(定価一五〇円)が販売されています。
 「四万十の栗」は、お菓子屋さんを紹介されたのがきっかけで始めました。これが評判になり、現在数社が製造しているという事です。三町村で一〇〇トン穫れる栗の約半分を取り扱うまでになったという事です。
 「(民間と)お互いに協力できるところは協力し、一緒になって地域経済のあり方を作っていくのが面白い」と由類江さんはいいます。また、「そうやって金を稼ぐ、その事が村を守る事になるんです」と言葉を付け加えました。
 十和村の「おかみさん市(十和村地産地消運営協議会)」は、農家の庭先で作られた野菜を、村の学校給食、村の直売所、そして高知市内のスーパー等に出荷しています。
 ユニークなのはこうした野菜で、昨年三月にISO14001を取得したことです。野菜のチラシには「こんまい段々畑でのびのび育った庭先ISO野菜です」とあります。集荷等を担当する村役場産業課の竹本英治係長は、煩雑なISOの管理を可能にしたのが他にない「ISOカレンダー」だといいます。このカレンダーは、一月が一枚になっていて、日付の下に農薬を使用したか、使用したらその種類、肥料を入れたか、入れたのであれば化学肥料か、有機肥料か等をまるばつ式で記入するようになっています。このカレンダーのアイディアがなかったら、普通の農家の人たちが他品種の庭先野菜の管理をするのは、大変な作業量となりISO取得は実現しなかったかもしれません。現在、約二〇〇人のう
ち、一六六人がISOを取得しています。
 化学農薬、化学肥料をできるだけ使わないで野菜を作ろうというのは大変だったのでは、と竹本係長に質問すると、もともと家庭菜園の延長ですから、と答えが返ってきました。
ISO野菜には、BM堆肥、生物活性水も使われています。竹本係長によるとこのISO取得の仕掛け人は、由類江さんという事です。
 おかみさん市では、高知市内のスーパーへの出荷も行っており、野菜を作っている生産者自らが店頭で販売する事を、定期的に行っています。
 おかみさん市の野菜出荷に関係する仕事は村の産業課が、販売に関係する仕事は四万十ドラマが、経理に関係する仕事は農協が、それぞれ担当しながら、三者の連携で行われています。
 ここでも四万十ドラマが重要な役割を果たしているようです。
 四万十ドラマの畦地履正専務は、四万十ドラマの設立当時から事務局を担ってきました。畦地さんは、地方の村おこし、町おこしを行っているところを今でも視察に行くそうです。うまく行っていないところで感じる事は、責任の所在がはっきりしていない事だと彼は指摘します。
 四万十ドラマは完全民営化され、責任の所在もますますはっきりされ、決定も早くなったといいます。そうして確立された条件を活かして、今後どう活躍していくのか、楽しみにしている人は地元だけでなく、外にも多くいるようです。

Author 事務局 : 2005年07月01日 12:41

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.