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2005年08月01日

AQUA164号 トップ記事

各作物別栽培課題に実践指導〜「土と水の学校」第2回学習会開催

七月二日から六日にかけて「〜自然学を実践する〜『土と水の学校』」第二回学習会がBM協会の研究実践産地で開催されました。この取り組みは、有機栽培の基礎を学び、農作物の収量の向上や品質アップを図り、併せてBMW技術を活用した農法を深化させる事を目的にしています。
講師は(株)ジャパンバイオファーム代表取締役の小祝政明氏、他に礒田有治協会事務局長が同行しました。
日程は次の通りでした。
七月二日(土) トキワ養鶏、八峰園(青森県)
三日(日)十和田湖高原ファーム JAかづの(秋田県)
四日(月)会津「土と水の学校」実行委員会(福島県)
五日(火)ファーマーズクラブ赤とんぼ、米沢郷牧場(山形県)
六日(水)茨城BM自然塾(茨城県)
 三月から五月にかけて行われた第一回目の学習会では、小祝氏の実践する有機栽培技術の理解、土壌分析結果を基にした施肥設計を学びました。二回目の今回は、各グループが対象に決め栽培している作物の生育結果を確認し、問題点の解決とさらに理論的理解を深める現場での実践を中心にした学習会が行われました。
 最初に訪れた八峰園のニンニク畑では、初期成育の遅れが見られました。昨年の定植時に堆肥の分解、土との混合が十分でなかった事が原因として考えられると、小祝氏から指摘されました。また、苦土が不足しているために葉に赤さびが見られましたが、これらの点を解決すれば改善される、という事でした。収穫が終わりしだい土壌分析を行い、次に備える事が確認されました。
 次に訪れたリンゴ畑は徒長枝について説明がありました。夏至までに枝の成長を止める事が落葉果樹栽培のポイントと、小祝氏から説明されました。対策としては、秋のうちに礼肥・基肥を施し、春には基肥を与えないという事でした。いかに徒長枝がでないように秋に礼肥・基肥を与えるかが大変重要な事だと、小祝氏はいいます。
 トマトのハウス栽培では、苦土、石灰を施す肥培管理をして、実の大きさが揃ってきたといいます。しかし、尻ぐされが見られる事から石灰がきいていないのではと原因を探り、
灌水の量が足りないという事が分かりました。応急的な対策として、石灰分を含んだ灌水を行っては、とアドバイスが行われました。
 トキワ養鶏の会議室に場所を移しての学習会では、肥培管理を行って品質、収量共に改善されたリンゴ農家の例が紹介され、どのようにすると徒長枝を抑えることができるのか
といった説明がされました。また、パソコンを使っての施肥設計の方法について、実際にソフトの数値を動かしながら実践しました。参加者からは有機栽培と化成肥料による栽培の違いについて質問があり、根から炭水化物が吸収できる事の優位性が説明されました。
 三日の十和田湖高原ファームでは、生物活性水プラント、堆肥舎等を見た後、場内に作られている実験用の畑を視察しました。土壌分析を行い、基肥は自家製の堆肥と石灰だけで栽培しているという担当者の説明でしたが、トウモロコシ、枝豆、キャベツなど、概ね順調に生育していました。別の畑に作られているキュウリは、葉色もよく生育が順調という事です。キュウリを試食した小祝氏は「硝酸がなくおいしい」と言っていました。また、こまめに追肥をするようにとのアドバイスがされました。
 JAかづのの生産者が作っているキュウリ(路地)は順調に育っていて、「葉が光っている」と生産者も満足している様子でした。肥培管理をしたものと対象区(一般的な有機栽
培)の葉の厚みをさわってみてくださいとの小祝氏の言葉に、さわった葉の厚みが違うので、皆一様に驚いていました。隣のハウスで作られている慣行栽培のキュウリはウドン粉病がかなり出ていましたが、実験栽培のキュウリには病気が見られませんでした。「節間がせまく、側枝もよくでているので、すごく穫れるだろう」と小祝氏は話していました。
 JAかづののトマト生産者のハウスでは、ハウス内の温度が上がりすぎているため、上部の徒長が見られました。葉が蒸れるために水分の蒸散が少なくなり、こうしたことが起きるという事です。ハウス内の換気を良くするため、ハウスの妻(つま)の部分を解放し風が通る用にする事等が小祝氏からアドバイスされました。
 圃場視察の後に行われた学習会にはJAかづのから九名、十和田湖高原ファームから二名の参加がありました。学習会では、キュウリの葉がなぜ厚くなったのか、肥料に含まれ
るチッソの種類とその中でアミノ酸様チッソが作物の生長に優位である事等が説明されました。
 四日に訪れた会津「土と水の学校」実行委員会のメンバーは三年前から小祝氏に教えを受け、体積法の土壌分析による施肥設計を実践しています。今回、巡回した圃場では、その効果が現れているようでした。それぞれの田んぼから抜いた稲は十分根を張っているものが多く、丈夫な白い根も見られました。直播も行われていて、これも現在の根の成長などを確認すると、十分な秋の収穫を予想させるものでした。対象作物の一つ、柿は葉、枝の様子、徒長も少ない事から、生育は順調と判断されました。小祝氏からは実肥を適宜与える事と、基肥を少し増やしてもいい、とのアドバイスがありました。生産者からは「生理落果が非常に少なくなった」との声が聞かれました。
 枝豆、大豆が栽培されていた新しい畑では、雑草であるアカザの葉の状態から、微量要素が欠乏しているとの診断がされました。
 午後に行われた学習会では、はじめて小祝氏の講義を受ける四名を含め、一八名が参加しました。有機栽培による稲作の基本の講義後に、根の断面を顕微鏡で確認しながら、根の構造、役割の解説、初期にしっかりした根を作る事の重要性の説明等が行われました。
 五日のファーマーズクラブ赤とんぼ、米沢郷牧場では、学習会に先立ち七ヶ所の田んぼを回り、それぞれの生育状況を確認しました。実験区と対象区の差が、根の張り、茎の太
さに見られ、実験は順調でした。この地域の特徴として、土壌に鉄分が多く含まれている事が上げられます。そのため、p Hが低いと酸化鉄が根の回りに付着し、養分の吸収を
阻害するという事です。土壌分析に基づいて苦土・石灰等を使ってp Hを調整していますが、田んぼを回って小祝氏が指摘したのは、硫酸苦土の使用による硫化水素の発生です。
有機物の残った嫌気状態の田んぼに硫酸苦土を入れると硫化水素が発生し、根の発育を極端に阻害するという事です。稲を抜いて根を確認すると、硫化水素によって痛められた根
が一ヶ所で確認されました。今後、稲の施肥設計をするときに、十分気をつけなければいけない事でした。
 途中、対象作物の一つ、キュウリのハウスに立ち寄り、肥料を効率的に吸収させるための灌水の仕方などのアドバイスが行われました。
 午後からの学習会では、水田での硫化水素の発生をいかにして止めるか、を中心に講義が行われました。そのためには、収穫後の稲ワラの秋処理により、稲ワラをよく分解しておくことが重要と小祝氏から説明がありました。また、有機物をアミノ酸に分解するために乳酸菌と酵母を前年に与えるのが有効で、そうした資材の作り方が説明されました。
 最後に訪れた茨城BM自然塾では、小雨の中圃場視察が行われました。清水澄塾長の稲が順調に生育していました。有機肥料では葉の色を落とさない事が重要で、追肥をするようにとアドバイスがされました。サツマイモは根の伸びを確認しましたが、これも順調に生育しており、秋の豊作が期待できるとの小祝氏のコメントがありました。葉の色が変わってきたときに、畝間に苦土とセットで追肥を行うと、ツルは伸びずに芋が大きくなるとのアドバイスがされました。梨園では、木にコケが生えている状態から、土壌の酸性化が指摘されました。苦土を少し増やす事、微量要素が不足している事が指摘さ
れました。
 午後の学習会では、根菜類に焦点をあてて講義が行われました。チッソが切れるとツルの伸びが止まり葉で作られる炭水化物が芋に行くようになる事、いつツルの成長を止めるようにするのがいいのか等が話されました。また、病気の種類によって、それらに対応する微生物資材が違うこと、それらを自分達でどうやって作るか等の説明が行われました。

Author 事務局 : 2005年08月01日 16:34

 
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