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2006年12月31日

AQUA180号 トップ記事

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 11月17日、18日の2日間、「第16回BMW技術全国交流会」が、
『~BMの原点に戻る~地域の土と水の再生を』テーマに掲げて 、石川県加賀市で国内外から約250人が参加して開催されました。今回は「第2回アジアBMW技術交流会」を兼ねて行われ、アジアからは、韓国、タイ、フィリピン等から参加がありました。

 交流会は、「地域の土と水の再生を」のテーマ紹介を事例を追って映像化した6分ほどのビデオ上映で幕を開けました。開会の挨拶が佛田利弘交流会実行委員長(BM技術協会理事、(有)北陸自然学研究所・(株)ぶった農産代表取締役)からあり、「今交流会のテーマは、BMW技術の原点に戻り『地域の土と水の再生を』掲げました。この交流会を通じ、自然生態系の循環・浄化システムに学び、それを我々人間の農業生産や生活に活かし、生態系を回復し、地域にも広げていく──というBMW技術の運動を、もう一度皆さんと確認したいと思います」と参加者への呼びかけを行いました。

●講演「BMW技術の概要と今後の展望」
 長崎浩BM技術協会会長は「BMW技術の概要と今後の展望」と題して、生物活性水を例にBMW技術の原理や利用分野の説明、生物とミネラル、土壌腐植の関係について、分かりやすく解説しました。岩石に含まれている各種ミネラルが長い時間をかけて水に溶けだし、植物、動物がその水からバランス良くミネラルを体内に取り込む事の循環原理が分かりやすく、データを使って説明されました。

●基調報告~BMの原点に戻る~「土と水の再生を」
 続いて、石澤直士BM技術協会理事長が基調報告を行いました。畜産の悪臭・公害対策から始まり、畜産糞尿を資源に変え、地域循環型の農業、そして水源地の水を守る活動を展開してきたBM技術協会の活動の経緯が紹介された後、今交流会をBMの原点に戻り、資源と人間の輪と技術が循環する社会『地域ミクロコスモス』を目指し、地域の土と水の再生を図っていく契機としたいとの表明がありました。そして、今後の取り組みとして、流域という観点から農村、都市住民が連携してBMW技術を生かし地域の土と水の再生を進める必要性などを訴えました。

●発表「地域の水を再生する」
 基調報告に続き「地域の水を再生する」をテーマに、四つの発表が行われました。

 ◆「農業集落排水処理施設改善で、排水を生態系の水に」
 農業集落排水にBMW技術を導入し、悪臭防止、汚泥の減容に大きな効果をあげた事例が、㈲北陸自然学研究所の佛田利弘代表取締役から「石川県能美市におけるBMW技術導入効果」と題して報告されました。報告の中で、BMW技術を平成一六年八月に導入後の平成17年度は汚泥の引抜を行う必要がなかった事、悪臭の原因である硫化水素濃度が0,06ppm以下にする事が可能になった事、等が数値を使って紹介されました。

 ◆「BMW技術によって流域の水環境を守る」
 ㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長は「BMW技術によって流域の水環境を守る」と題し、日本全国のBMW技術を導入した食品加工場の排水処理施設、畜産排水処理施設、中水利用施設、農業集落排水処理施設等をBODの減少を数値で示しながら紹介し、これまでの成果を報告しました。

 ◆「農と暮らしが調和したエコライフ」
 島根県池田農場の池田健二氏は、個人が定年後や、新規就農等で、環境を重視しながらBMW技術を活用し、農に取組むライフスタイルの発表を行いました。池田氏はトイレ等、家庭の雑排水を原料にした生物活性水プラントを導入し、家庭排水を出さない暮らしをしているだけでなく、環境に負荷を与えない暮らしの報告がありました。
 
 ◆「環境に負荷をかけない暮らしとBMW技術」
 関西の生協連帯WILLネットの石けん委員会は、「河川・湖沼を汚さない」「加害者にならない」「環境に負荷をかけない暮らし方の提案」をテーマに、合成洗剤・家庭内農薬の排除の一貫として活用されている生物活性水の利用について、今年行った生物活性水の家庭でのモニター調査の結果を、発表しました。調査は、お風呂、洗濯、台所、と3つに分けて行われました。お風呂では、残り湯の臭いが減少したと感じた人が多かった事、洗濯では排水ホースのぬめりの減少に大きな効果があった事、台所では排水口の臭いを感じなくなったとほとんどの人が感じるほど大きな効果があったという報告でした。

●講演「日本列島の形成と北陸地方の岩石と水」
 今交流会の開催地、北陸の岩石をテーマに「日本列島の形成と北陸地方の岩石と水」の講演が、名古屋大学教員、奥地拓生氏によって行われました。なぜ日本列島は花崗岩を主体にしてできているのか。花崗岩に凝縮されたミネラルは長い時間をかけて水に溶け出し、植物、動物の体を通り海に還り循環している事、BMW技術は岩石からミネラルが溶け出すプロセスを早回ししている技術である、と奥地
氏は説明しました。

●海外からのBMW技術事例発表
 ◆タイ・「タイにおけるBMW技術の普及」
 タイのBMW技術の普及について、㈱パシフィック・トレード・ジャパンの木村俊夫氏が発表を行い、養鶏場に作られた生物活性水のデモプラントと堆肥センターの紹介、広がりつつある養鶏、養豚場の飲水改善プラントの報告、養豚場の糞尿から作った堆肥がバナナの生育に効果があった等の報告がありました。

 ◆タイ・「BMW生物活性水を用いた緑豆栽培実験」
 タイ農学局穀物調査研究所・植物病理学者のチュッティマン・パーニッサックパタナー氏からは生物活性水を用いた緑豆栽培実験について研究報告が行われました。三年間続けられてきた生物活性水を使った緑豆の栽培実験で、生物活性水が炭腐病を抑制する事、緑豆の生長を促進させる事、土壌中の細菌数を増加させるという効果が認められた事、化学肥料を施用した土壌では、著しく土壌細菌数が減少する事等が報告されました。

 ◆フィリピン・「フィリピンにおけるBMW技術について」
 フィリピンからは、日本ネグロス・キャンペーン委員会ネグロス駐在農業指導員、吉永紘史氏から報告が行われました。生物活性水を用いた種子浸水や育苗時の生物活性水散布の実験の様子が紹介され、明らかな違いが見て取れました。しかし、土壌の条件が悪く最初の土づくりの所から解決していかなければならない現状や、生物活性水を現地の人にどうやって利用してもらえるか等の課題について、報告が行われました。

◆韓国・「BMW技術を通して家畜と友達になる事」
 韓国のイ・ヒョンボク氏からは「BMW技術を通して家畜と友達になること」と題して、報告が行われました。首都圏の水源地として各種環境規制をクリアし、かつ飼育環境の向上によって家畜の福利を増進するためBMW技術を導入した事、韓牛を飼育している環境にやさしい畜舎やレストラン、カフェが併設されているダンノモ農場の紹介や同農場でのBMW技術の活用方法、イ氏の「家畜をお金に見ないで生命体としてみよう」という家畜に対する考え方などが発表されました。

●BMW技術を味覚で実感
 BM技術協会会員産地・団体の農産物・加工品を堪能
 一日目の講演、発表の後には、懇親会が行われ、タイ、フィリピン、韓国の海外からの参加者の紹介、今回の全国交流会の準備にあたった北陸地方の会員紹介、また次回の第一七回BMW技術全国交流会の開催地の発表等が行われました。普段はなかなか会うことのできない会員同士が、和やかに話をする場面が多く見られました。
 懇親会では、各地の協会会員生産者や団体から提供された農産物や加工品を食材にした料理を堪能しました。山口県・秋川牧園の鶏のムネ肉と高知県・夢産地とさやま開発公社の四方竹をつかった「鶏と四方竹の中華炒め」や千葉県・和郷園のダイコンを使った「風呂吹き大根の鶏味噌」、茨城県・茨城BMのサツマイモを使った「サツマイモのポタージュスープ」等、たくさんの料理がテーブルに並びました。また、山形県・ファーマーズクラブ赤とんぼ、新潟県・久比岐の里農産センターの米で握られたおむすびも出され、好評を得ていました。やまなし自然塾の冷凍桃等の加工品も並び、地元石川県のぶった農産からは、この地方の伝統食であるかぶら寿し等が供されました。
 今回の全国交流会ではBMW技術に取組む各産地や団体から、休憩時間用に飲むヨーグルト(岡山県・蒜山酪農農業協同組合)、お茶(高知県・四万十ドラマ、静岡県・村上園)、コーヒー(東京都・オルター・トレード・ジャパン)、りんごジュース(青森県・八峰園)等、朝食用には牛乳(富山県・新川牧場うしのいえMOOガーデン)等の飲み物も提供され、懇親会、朝食、休憩の場が、お互いの農産物・加工品を味わう貴重な機会となりました。
 
●「新しい生産者会員のためのBMW農法に関する初心者講座」
 交流会の二日目は、パネルディスカッション「新しい生産者会員のためのBMW農法に関する初心者講座」から始まりました。ディスカッションでは『生物活性水の使い方』を題材に、BMW技術に取組んだ経緯などがパネラーから報告されました。長崎会長が司会、石澤理事長がコメンテーターを務め、パネラーに清水澄常任理事(茨城県・清水牧場)、押田明理事(宮崎県・綾豚会)、高草木里香理事(山梨県・白州郷牧場)、豊下勝彦理事(秋田県・ポークランド)、山本優作理事(高知県・夢産地とさやま開発公社)の各氏が、BMW技術に出会ったきっかけ、BMW技術に取り組んだ目的、導入後の変化や生物活性水の利用方法などについて報告しました。 

●技術研究発表
 ◆「微細藻類の高効率培養を助けるBMW天然キレーティング剤の効果に関する研究」
 韓国の金美京教授(嶺南大学校海洋科学研究センター)からは、「微細藻類の高効率培養を助けるBMW天然キレーティング剤の効果に関する研究」と題した、研究発表が行われました。微細藻類の培地に生物活性水を添加すると、細胞の生長や光合成能力が高まり、かつ、その培地で栽培した藻類は機能性食品として、抗ガン効果がある事。また、生物活性水はキレート剤(EDTA)の天然代替物質となる事が報告され、農作物の天然農薬及び液肥の機能が可能である事、畜産業の悪臭除去及び抗生剤機能が可能である事が報告されました。

 ◆「生物活性水による単細胞緑藻クロレラの培養」
 山梨自然学研究所の西村美香氏と山梨大学の御園生拓教授からは、昨年の韓国の金教授の発表をヒントに同研究所と御園生教授とで、共同で進められている生物活性水によるクロレラの培養実験について、研究発表がありました。生物活性水は合成培地に比べて生長が遅いがクロレラは十分に生長する事が分かり、今後は実用化に向けた大量培養システムを構築し、養鶏飼料としての有効性についての試験を行うとの発表が行われました。

●「BMW技術による農法を深化させる」~自然学を実践する~「土と水の学校」報告
 昨年からBM技術協会会員産地で取り組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」の報告は昨年の全国交流会に続いての報告となりました。はじめに礒田有治BM技術協会事務局長が、これまで耕作でのBMW技術の活用は、土壌の物理性、生物性の改善についてはBM堆肥と生物活性水で対応できるが、土壌の化学性の改善については不十分だったという課題が提示され、この課題を中心に「土と水の学校」を開催してきた事を説明しました。

 ◆解説「BMW技術と有機栽培理論」
 「土と水の学校」講師の小祝政明先生からは、「BMW技術と有機栽培理論」と題して、植物生理の解説、BMW技術を用いて作られた堆肥に足りないミネラル分を加える事で理想的な栽培体系ができあがる事、等が解説されました。また、植物生理に基づいた化学性の課題を解決すれば、日本の有機農業技術の中で、BMW技術は有機栽培技術の確立に最も近い所にある技術と評価しました。

 ◆各地の「土と水の学校」取組み報告
  ・十和田湖高原ファーム・JAかづの
 秋田県の十和田湖高原ファームとJAかづのは、キュウリの多収生産をテーマに取り組みを行い、十和田湖高原ファームの板橋一成氏が、発表を行いました。十和田湖高原ファームでは初期成育は非常に順調だったものの、追肥の仕方で失敗し思った通りの結果は出せなかったが、こうした問題をクリアすれば多収穫が達成できるとの感触を得た事が報告されました。JAかづのではキュウリの一節からほとんど二本以上の実がなり、全体的な良品率も向上したという報告が行われました。
 
 ・ファーマーズクラブ赤とんぼ
 山形県のファーマーズクラブ赤とんぼは、米の多収、高品質、高食味生産をテーマに取組みを行い、九月に新代表に就任した北澤正樹氏から報告がありました。低温のため初期の生育が遅れたが、実験圃場の収量は一〇俵と良く、取り組んだ生産者の食味も全体的に良かった事が報告されました。また、来年の課題として、雑草対策をどのようにしていくか、等が上げられました。
 
 ・謙信の郷
 新潟県の謙信の郷も米の多収、高品質生産をテーマに取り組み、金谷武志氏から報告が行われました。謙信の郷ではこれまでのアイガモ、米ぬか除草などの有機栽培技術に今回の土壌分析に基づく施肥管理を取り入れ、それぞれの有機栽培技術ごとに収量、食味の比較などを行いました。金谷氏は「多収しても極良食味を実現できる確信をもてた」と発表を締めくくりました。
 
 ・茨城BM自然塾
 茨城県の茨城BM自然塾は、サツマイモの栽培実験について、多多野勝行氏から報告が行われました。今年は初期成育が後れたものの、イモの形が揃い、良品率も七五%以上と報告しました。収量も反あたり二・五トン以上と、報告されました。栽培を行った米川修さんは、今回苗をまっすぐさす「直植え」と斜めにさす「船底植え」を行い、結果は「船底植え」がイモの形、サイズの揃いも良かった事が報告されました。

 ◆BMW技術による農法の確立に向けて
 各産地からの報告を受け、礒田事務局長は「BMW技術による農法の確立に向けて」と題しまとめを行いました。それぞれのBM堆肥の成分等の特徴を知る事、適正な使用量の大切さと、利用目的に合わせた堆肥の開発について指摘しました。また生物活性水には新たな目的別利用方法があり、開発研究の必要性を、生物活性水の成分データ等を示しながら訴えました。

●総括
総括及び閉会の挨拶を向山茂徳BM技術協会副会長が次の通り、締めくくりました。
 「初心者講座でパネラーを務めた人たちの淡々とした話しにBMを長年やってきた実績と自信を感じました。また『土と水の学校』は実践を通して前に動いているという感じがしました。今回、アジアから大勢の方がきてくれていますが、タイのチュッティマン先生が話した『足る事を知る』という事、韓国のイさんの生産者としての考え方等、印象深いものでした」
 
●現地視察会
 交流会会議終了後は、現地視察会が行われました。能美市の農業集落排水処理施設改善事例と、新しく完成したぶった農産の生物活性水施設を視察しました。農業集落排水処理施設では、匠集団そら・星加浩二プラント事業部長より、BMW技術導入による改良点、効果等について説明を受けました。処理槽のふたは開けてありましたが、処理槽からの臭いはほとんどなく、視察した人達は効果を実感していました。

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Author 事務局 : 2006年12月31日 17:01

 
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