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2007年05月31日

AQUA185号 トップ記事

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千葉BM技術協会 青森県視察研修会を実施
「河川流域の生態系の再生」テーマに世界自然遺産白神山地から日本海まで岩木川流域を視察

 千葉BM技術協会は、BM技術協会が提唱している「水源地から河口まで、河川流域の生態系を再生する」取組みを青森県の岩木川を例に考えてみようと、4月7日(土)~8日(日)、青森県の自治体や、常盤村養鶏農業協同組合の協力のもと、「流域の土と水の再生」視察・研修会を実施しました。

 視察・研修会は、世界自然遺産の白神山地から、西目屋村、藤崎町、五所川原市へと、源流から日本海に至る岩木川の流れを人々の生産・生活活動と自然への影響、流域が育んだ文化等を追いかける形で行われました。また、流域の生産活動や暮らしの中で、BMW技術をどう活かせるか考え、技術導入が図られている藤崎町の農業集落排水処理施設や、石澤直士BM技術協会理事長が専務を務める常盤村養鶏農業協同組合のBMW生物活性水プラント等の現場も視察しました。
 同研修会には、千葉BM技術協会会員の農事組合法人和郷園や、生活協同組合エル、生活クラブ生活協同組合、新生酪農等から参加した12人をはじめ、BM技術協会会員のパルシステム生活協同組合連合会、茨城BM自然塾、らでぃっしゅぼーや㈱、太田出版、エフティピーエス㈱からの参加を含め、総勢22人が参加しました。
 青森空港に降りた視察会参加者一行は、昼食後、まっすぐに岩木川の源流となっている白神山地の入り口「西目屋村白神ビジターセンター」へ入りました。そこでまだ40歳という日本で一番若い村長である、関和典氏から西目屋村の現状説明をしていただきました。過疎、特に若年人口の少なさの問題や、経済立て直しのために国や都市部の大企業とどうつきあっていくか、といった日本の地方問題の困難さがよくわかるお話でした。

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 関村長は、昨年5月に西目屋村で開催されたシンポジウム(2006年6月アクア174号参照)で、「我々は川というものが身近にありながら、川というものを遠ざけてしまっているのではないかということにBM協会の方々を通して気づかせてもらいました」と語り、「川の水源というのは、人で言えば頭脳に当たり、我々が一定の方向性を示し、下流域の方々と協力して、岩木川をきれいにし、白神山地の価値をもっと高めていきたい」と話していました。
 その後、白神ビジターセンター内のブナ生態資料や、巨大スクリーンによる世界遺産白神山地についての映画を観賞し、残雪が残る岩木川源流を見学しました。
 西目屋村を後にした一行は、岩木山を横目に見ながら、岩木川を下り、中流域の藤崎町に到着しました。同町では、3月にBMW技術導入工事が完了した常盤地区農業集落排水処理施設を見学しました。施設概要を藤崎町上下水道課の對馬一孝課長補佐から説明をしていただきました。BMW技術導入後、約二週間で悪臭の減少が実感でき、処理施設から土のにおいがしてきたそうです(2007年1月アクア181号参照)。
 次に常盤村養鶏農業協同組合へ向かいました。最初に育苗ハウスで実験が行われている大阪ガス開発による最新のトリジェネレーション発電施設を石澤直士BM技術協会理事長に説明していただきました。トリジェネレーションとは一般のコジェネレーション発電(熱と電力)に加え、発生する二酸化炭素も利用するシステムです(トリプル/三つの略で、養鶏のトリとは関係ありません)。二酸化炭素は時間を決めてハウス内に充填し、苗の発芽状況を改善するために利用しているそうです。
 また、同所で常盤養鶏の生物活性水プラントと大規模な堆肥センターを見学しました。堆肥の周囲には生物活性水が撒かれ、臭いはほとんどしませんでした。

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 陽も暮れ始め、藤崎町から隣町の板柳町ふるさとセンターへ移動し、藤崎町の小田桐智高町長と前五所川原市教育長(旧市浦村村長)の高松隆三氏、トキワ養鶏グループの方々との懇親会となりました。
 小田桐町長からは、「我々のくらしで使用した水が、岩木川を通じ、十三湖へ流れ、そこでシジミ貝が育ち、それを我々は食べている。藤崎町では視察していただいた農業集落排水施設にBMW技術を導入しています。行政の責任として、排水をきれいな水にして、田んぼや川に返す必要があります。今後も流域の町として、また、一町民としての責任を持ち、こうした取組みを流域全体に広げていきたいと考えています」と挨拶がありました。
 続いて高松氏からは「私たちは、川から農業用水や生活用水、工業用水、発電、そして漁業と多大な恩恵を受けています。しかし、一方では、農薬や洗剤の垂れ流しなど、浄化するはずの川が汚れているという現状があります。どんなに水源ではきれいな水であっても、川を守るという事は、上流、中流、下流が一体となって、取り組まなければ、本当の意味で私たち人間も住めない状況になってしまいます」と現状に警鐘を鳴らす挨拶がありました。
 懇親会では、常盤養鶏と八峰園から提供いただいた食材でバーベキューとなりましたが、参加者一同、その美味しさに驚きました。
 視察見学二日目は、高松氏が直々にマイクロバスに同行してくださり、岩木川中流から河口付近の十三湖まで、丁寧な解説をいただきながら見学しました。
 高松氏の解説では、岩木川は世界遺産である白神山地を源流として津軽平野を流れ日本海へと注ぐ、全長102キロもの青森有数の一級河川であり、現在、その水質は県で2番目に汚染されているといいます。世界遺産である白神山地のブナ広葉樹山林で、すばらしい水を作り出しても岩木川の中域は、農薬や化学肥料が使われる水田やリンゴ畑が広がっており、また、弘前市など都市部からのたくさんの家庭生活排水も流れ込みます。汚染された岩木川の最後にある十三湖は日本海の海水と岩木川の淡水が混じる汽水域で、良質の国産シジミが取れる場所です。しかし最近では年々シジミの質や産出量が低下しているそうで、このまま放置すればいずれは採れなくなるかもしれない、とのことでした。
 今回の研修視察会では十三湖の中州にある歴史民俗資料館、五所川原市の「立佞武多(たちねぷた)の館」、旧金木町の太宰治記念館「斜陽館」なども見学し、津軽文化の一端にふれる事ができました。特に十三湖の歴史民俗資料館では、中世、日本海沿岸の交易港「十三湊(とさみなと)」として栄えた同所の記録を興味深く見ました。津軽地方の有力豪族であった安倍氏・安藤氏の拠点であり、この場所から九州や大陸などと交易が行われていたとの事です。

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 今回の視察・研修会を終えて、千葉BM技術協会の向後武彦会長は、「岩木川流域での問題点や、自治体の枠を超えた環境保全、土と水の再生の取り組みを目の当たりにし、あらためて川の大切さ、川につながる広域の大地や小川の環境の重要性を認識しました。これらの事を千葉に持ち帰り、我々の地域で何が出来るかを自治体や職業の枠を超えたテーブルで話し合い、地域ぐるみで何か一つ形にしたいと考えています」と総括されました。
 また、千葉BM技術協会副会長で生活協同組合エルの渋澤温之専務は「今回、BMW技術を活用した岩木川流域の取り組みを視察できたのは、大変貴重な経験でした。特に感銘したのは、行政の理解が非常に深いという点です。環境問題に取り組むには、市民団体だけが力を入れていても、大きな成果を生む事は期待できません。官・民が一体となり協働で取り組むべきです。その先進事例を目の当たりにし、今後、エルコープでも積極的に検討すべきとあらためて感じました。現在、エルコープは千葉県野田市で園芸福祉に取り組んでいます。行政・障害者団体・市民ボランティアが一緒になって参加できる農園作りです。この中にBMW技術を取り入れ環境に配慮した実践を作り上げる事も検討していきたいと思っています」と語っています。
 一方、視察を受入れていただいた、石澤BM技術協会理事長は、「今回の視察研修会では、皆様に、白神山地から十三湖、そして日本海という岩木川の流れを見ていただき、津軽の風土に触れていただきました。参加された皆様と同じ時間をすごせた事で、今後のBM技術協会の生態系を取り戻す運動を理解していただく一助になれば幸いです。また、今回の視察に参加されたパルシステム生活協同組合連合会等が取組んでおられる『田んぼの生き物観察』や、徳江倫明さんが提唱する、農業そのものが環境や食文化を守るという『フードトラスト』運動等々の取組みと一緒に、この国の環境を取り戻し、他の地域のモデルとなる取り組みに出来るよう、お互いに努力していきたいと思います」と今後の抱負を語っています。

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Author 事務局 : 2007年05月31日 20:43

 
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