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2007年11月01日

「有機認証取得がはじまりました。」第2回  【AQUA191号】

BM技術協会会員の動向
有機認証取得がはじまりました第2回
 (財)夢産地とさやま開発公社 理事 山本 優作さん

食品への安全性が揺らぐ事件が国内外で相次いで発生する中、大手スーパーや食品メーカーが、消費者に「安全・安心」を訴えるため、有機農産物の販売の拡大、有機加工食品の開発に本格的に乗り出そうとしています。しかし、現在、国内の有機農産物生産は、全体の一%にも達していません。今後、大手スーパー間、また、産直を中心に安全な農産物を売り物としてきた生協等を中心とした流通間で、国内外の有機農産物、有機食品を巡っての動向が注目されています。一方、昨年、有機農業基本法が制定され、これに基づき、国や各県では、基本施策の策定や調査作業に入っています。
BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。
前号から有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、インタビューを始めました。第二回は、高知県・(財)夢産地とさやま開発公社理事の山本優作さんです。
(まとめ:礒田有治)

―――今年、有機認証を取得されたそうですが。

山本 全部で一・二ヘクタール取得しました。認証が下りたのが今年5月です。記録はずっと付けていたし、一九九五年から、一〇年以上、農薬も化学肥料も使っていません。有機認証は、記録さえあれば取れます。ただし、一七品目の作物を作っていたから、作成する資料が大変でした。例えば、米だけなら米だけで良い。ところが一七品目あったら、一七の記録が過去二年間の全部要るわけです。竹林の場合は、永年作物なので、三年間の記録が要るので、それが結構大変でした。全部で提出した書類が二百枚以上ありました。それがこたえました。

―――有機認証を取得してみて、どのような感想をお持ちですか。

山本 認証を取ったということで外向きにアピールできます。一般の人はまだ有機認証(JAS)のマークを知らない、認証の意味も分らないというのが実態です。ただ生協の店などに出したら、結構反応があります。今までは、県外から買っていたが、認証のある野菜が並びだしたので、少々遠くても買いに来だした。そんな声は、ぽつぽつあります。高知に認証を取った農産物を販売する専門の店が今年、八月頃にオープンしました。「いつ出してくれるのか」という要請がありますが、今は、持って行く手間がありません。

―――昨年、有機農業基本法が成立しましたが、どうような意見をお持ちですか。

山本 国は、法律は作りましたが、これから基本計画を各都道府県で作っていかなければなりません。今後は、県レベルでどの程度のものが実際にできて、行政がどれくらい支援体制をできるのかではないかと思います。けれども、総じて行政は遅れます。とくに高知県では遅れています。その辺がどうなるかだと思います。あとはもう、生産者の方がどれだけ行政に対して働きかけができるのか。そして、どういう支援をしてもらいたいのか、提案をきちんとした形で上げて行けたらよいと思います。そうすれば多少は変わってくると思います。
僕は、前から言っているのですが、有機認証を取った人だけが表示義務があるのはおかしいと思っています。有機認証を取っていない人でも、どういう資材を使っているか、何回、農薬をかけたか、全部表示してほしい。そうすれば、われわれの物が優先して売れると思う。有機認証を取っていない人はそういうことをしない。例えば、僕はショウガを無農薬で作っているが、高知県では一五回まで農薬の散布が認められている。どういう農薬を何回使ったか、このショウガは、栽培期間中に一五回使ったとか。そして、一般栽培では、今も、土壌消毒に臭化メチルを使っています。「作付前に臭化メチルを使い、作付期間中に一四回、農薬を散布してできたのがこのショウガです」と言い、「こちらは無農薬です」と言ったら、絶対に、無農薬の方が売れると思います。だから、本当に共通の土俵で勝負するのであれば、全部の作物にそういう表示をしてもらいたい。

―――外観は、一緒ですからね。

山本 そうです。そこまで行かないと本当のものにならないという思いがあります。

―――大手スーパーなどが、有機認証農産物の取り扱い拡大や、有機食品の開発を進めていることについては、どうお考えですか。

山本 基本的には良いことだと思います。しかし、量販店で認証があるから高く売るというところはあまりありません。僕のところでは、大豆を作るために虫を何万匹も取る等、とても手間がかります。豆腐を一丁いくらで売ったらいいかを計算したら、一丁五〇〇円で売らないと、コストが合いません。普通の豆腐は、今安いので一二四円ほど、高いので一四〇円くらいで売られている。そんな値段では全然、合わない。だから、あとは価格の問題かと思います。
大手に限らず量販店がコーナーを設けて販売するということは、一般の人々の目に有機認証JASというものが触れる機会が出てきていることだと思います。今高知の量販店でもJASの農産物が並んでいる傍にJASとは何かという説明がしてあります。そのことによって皆がJASを認識するきっかけになると思います。普通の農薬を使った農産物とJASとか、JASではなくとも無農薬で作った物を比べた時に、無農薬だから物が悪いでは通らない時代です。だから、無農薬の物でも一般に栽培したものと変わらないくらいの品質でないといけない。そこまで仕上げるには手間がかかる。手間がかからない物もあります。例えば蕎麦などは一般の物とまったく変わらない。農薬も要らないが、きっちり土作りができた畑であれば大丈夫です。他に、この地域で言えば四方竹も孟宗竹も大丈夫です。作る物を選択することが大事です。

―――山本さんご自身の有機農業の取り組みの経過や、今後のあり方をお聞かせください。

山本 有機農業は、とさやま開発公社を立ち上げた当時から、高知の生協組合員から安全・安心な物を提供してもらいたいという要請で始めました。それから、BMの技術を導入した段階で、良い堆肥を作って栽培していけば、それなりの物ができるだろうという思いがありました。
土佐山は、鏡川の源流の地域にあたり、高知市民の水瓶になっています。ここから高知市民の飲料水が行きます。そこで化学農薬や化学肥料を垂れ流していけば、市民に理解してもらえないのではないか、という思いがありました。源流で市民に理解してもらえる農業を展開していく必要がある。合併する前でしたから、高知市の水道代に一メーターにつき、一円上乗せすると、億の財源ができるので、それを土佐山に還元してほしい、と前の市長に僕は言っていました。そのようにお互いが共存しあっていかなければならない。これだけ環境の問題が言われている時代だから、可能な限り全体として有機に切り替えていく必要があるのではないかと思います。
もう一つは、土佐山には柚子があります。柚子は今、土佐山で一番販売高の大きな作物です。キューピー・マヨネーズと高知の大手の販売会社である旭食品がうちの柚子を全部購入しています。それら両社からJASを取ってほしいという依頼がありました。
今、JASを取る方向で話を進めています。しかし、JASを取るのに三年間かかります。すぐ取れるところもありますが、とりあえず、誰かが取っていく。JASを取るために何が必要か、それは自分が取らないと分らない。とりあえず自分がJASを取って、依頼を受けている柚子がどこまでいけるかが課題です。
キューピー・マヨネーズも旭食品もJASの認証のある物が将来絶対に売れるという見通しがあるので、両社からJASを取ってほしいという依頼が来ているのだと思います。一般栽培からJASに切り替えて、例えば、一般栽培の時に百万円取れていたとします。彼らは、今年JASというか、そういう栽培法に切り替えたために七〇万円しか取れなかった場合、残りの三〇万円の所得保障をしようとまで言っています。新たに植えるところは苗代も出していいと言う。向こう五年くらい収入がないから、所得保障してもいいとも話しています。一定のものをきちんと示したら、取組んでいく農家もいるのではないかと思います。

Author 事務局 : 2007年11月01日 14:37

 
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