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2007年11月15日

~自然学を実践する~ 「土と水の学校」【190号】

有機栽培講座 各地で圃場巡回研修を実施

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が八月に協会会員の各産地で開催されました。同講座は、作物の植物生理を知り、植物生理に沿った施肥設計、栽培方法を学び、BMW技術を活用した農法を深化させるものです。「土と水の学校」講師の小祝政明先生を迎え、各産地では、栽培現場の巡回を中心に実践研修という形で講座が行われました。各地の講座内容を現地から報告します。

福島県・会津うまいもの塾
●揃ってきた稲の生育
 八月二四日(金)、会津うまいもの塾で「土と水の学校」有機栽培実践講座が開催され、昨年と比較し、稲の生育に生産者間のばらつきが減少したことなどが確認されました。
 「稲作りは秋から始まる。その対応は一律ではなく、個々の圃場条件に合わせて行う」。このことに取り組んで来て、生育はどうだったか、それを確認する圃場巡回から始まりました。
 会津うまいもの塾では、田んぼによって土の性質(砂質、粘土質など)は違い、かつ収穫後稲ワラを取り出す圃場、もみ殻を堆肥化して戻す圃場などさまざまな圃場があるため、状態に応じて腐植、ケイ酸、堆肥などを投入して物理的な改良をする事に加え、発酵鶏糞などの窒素分や石灰等のミネラルを入れて秋耕ないをすることに取組んできました。
 この取組みを確認する圃場巡回では、昨年、茎数や穂数がかなり少なく、肥料も流亡してみすぼらしかった圃場も「おお、今年はいいねえ」という具合で、まだ多少のばらつきはあるものの、各生産者の稲の状態は、昨年より格段に揃ってきました。
 途中、講師の小祝先生から「止め葉が長く飛び出ているのは窒素過剰です」と言われたことに対し、「えっ、生育が良いからではなかったのか?」と見方が間違っていたことを知ることもあり、見ながら学ぶことで身に付くことが多くありました。
●トマトは少量多潅水で
 トマトハウスでは、「気根が出ていますね。水不足です」と指摘され、潅水チューブの位置や潅水回数などを確認。潅水は計器で計測しながら行っているものの、現実には水分不足になっており、少量多潅水にしないと長期多収は難しいことが実感されました。また、このための植え付けや潅水チューブ配置などがアドバイスされ、ミネラル先行での施肥と併せて、来期のトマト作りの構想を練ることができました。
●生物性への対応とミネラル先行の施肥を
 巡回終了後の総評では、稲の育苗段階で立ち枯れ病が出たことについて、「酵母では抑えられない、放線菌がいい」とのアドバイスを受けました。物理性や化学性については少しわかってきたのですが、生物性については今後の課題となりました。また、視察先でのミネラルの使用方法についての質問では、「生育期間中ミネラル分を常に上限に保ち、窒素分は状態を見ながら与えるやり方です」とのことで、これも来期の野菜作りに活用できる方法になりそうです。
    (報告:会津うまいもの塾 佐藤 邦夫)


山形県・ファーマーズクラブ赤とんぼ
 ファーマーズクラブ赤とんぼでは、八月二五日、一四人が参加し、「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。前回は野菜栽培の基礎を学習しましたが、今回は、その実践と成果をキュウリの圃場で確認し、小祝先生から栽培のポイントを教えていただきました。午前中は、近野純さんと坂野忠彦さんのキュウリ圃場を巡回し、午後は、現場での課題や、参加者からの質問を中心に講座が行われました。
●窒素切れと病気の発生予防
 キュウリ栽培では、施肥の方法、水管理、微生物の使い方のほかツルや葉の仕立て方を学習しました。キュウリは窒素を多く必要とするため、常に有機肥料が残っている状態にし、酵母菌使用により液状化を促進させ早く吸収させることや、有機肥料に堆肥を混ぜてやることによって、堆肥中に含まれた放線菌がカビなどの病原菌の発生を抑える効果があり、また、生物活性水原液を入れることによって放線菌が増え、さらに効果が上げることを学習しました。
●水管理と追肥のポイント
 生物活性水使用は肥料が正常に液状化することにも役立ちます。潅水は根腐れをおこさないようにし、常時湿っている状態を保つためPFメータを使用し適正値を保つことが重要で、圃場にあった水管理を覚える必要があります。  キュウリの葉の状態が悪い場合は、ケイ酸を使用することにより表面がパリパリとなり病気が付きにくく良好になることや、炭水化物量が不足すると油分が足りなくなり、つやがなくなるため追肥時に土壌分析をして苦土を入れることが必要でした。葉の裏側が薄く抜けているところが目立つときはマンガンが不足している場合があることや葉が混雑して光を受けないところが多くなったら古い葉を除去し新しい葉を増やしていくなど、ミネラル肥料に加え、葉の仕立て方も学びました。
●トマトの香りとコクを良くする硫黄
 トマト栽培ではキュウリと同様に水を多く必要とすることや、香りとコクを良くするには硫黄分が必要で硫酸苦土を設計の上限値まで入れるのが良いなどを学びました。
 女性の参加者からは、「来年からキュウリを栽培する上で、施肥や水管理など、とても勉強になり早く実践で覚えていきたい」、「自分の圃場と比較でき、とても参考になったことや来年は葉をバランスよくするための『切り戻し』をやりたい」など意欲的な感想があり、今後の野菜栽培の技術向上につながる学習会になりました。
 各生産者が施肥設計をものにし、圃場にあった管理を早く身に着ければ安定した収量と収入が期待されます。基本を忠実に実践していきたいと思います。
 次回は一〇月二八日の開催になりますが、一年間の締めくくりとして、反省点や疑問点を重点に進めたいと思います。
(報告:ファーマーズクラブ赤とんぼ 武田 和敏)


宮城県・みやぎBM技術協会
 八月二九日、みやぎBM技術協会では、今年二回目となる「土と水の学校」有機栽培講座を開催し、会員生産者ら約二〇人が参加しました。今回の講座は、小祝政明先生、礒田有治BM協会事務局長の指導の下、大郷グリーンファーマーズと、迫ナチュラルファームの圃場巡回を中心に実施しました。
 まず初めに、大郷グリーンファーマーズの西塚さんの生物活性水を利用した液肥を見てもらいました。生物活性水を二倍に希釈したものに、有機肥料(オーガニック8:5:3)などを入れたものです。前日に曝気を始めたばかりだったので三日程して悪臭がしなければ大丈夫との事でした。
●トマト栽培、潅水と換気に細心の注意と、ミネラル先行の追肥を
 次にトマト圃場を視察しました。今年は三〇度Cを越す暑い日が続いたため、潅水量が不足したことと、ハウス全体に熱気がこもってしまい花付きが悪くなったり、葉がハモグリバエに食べられたりと、今までにはあまり見られない被害がありました。
 前回指摘されて改善をしていたのですが、潅水の量と換気については、細心の注意を払わなければならないと思いました。害虫については、追肥をした際に、苦土やカルシウムなどのミネラル肥料よりも窒素肥料を先に効かせてしまっていたのが原因と指摘されました。
 ナスは、木々に囲まれた中で栽培していたので風通りが悪く、カビの心配もあり、潅水も出来ないので、場所を変えたほうがいいとの事でした。栽培方法についても、ナスに日光が当たるように、葉を掻きすぎていたので、小祝先生は「光合成は葉で行うので、風通しを良くする程度に下葉を掻き取ること」とアドバイスをいただきました。
 水稲では、根の張り具合が良く、太いものも多くなってきていました。もう少し根が白くなってくると穂に透明感が出てくると指摘されました。昨年に比べ、茎も太くなってきており、ガッチリした稲株が出来ていました。
 ただし、無農薬の圃場では除草の問題をどうにかしないと、稲の光合成の邪魔になり、美味しい米も出来ないし、もちろん収量も上がらない等と厳しいお言葉をいただきました。
 続いて場所を迫ナチュラルファームの圃場に移しトマト、ナス、キュウリを視察しました。
 トマトは大郷グリーンファーマーズと同様、潅水、換気を注意され、ナスはミネラルが良く効いていると、お褒めのお言葉をいただきました。
 キュウリは、前回指摘されたネコブセンチュウを良質堆肥と放線菌で土壌養生を行い、かなり抑える事が出来ていました。しかし、早く出荷できるようにとハウスを閉め、蒸らしたことで節間が伸びていました。結局収穫は早まらず、節間が伸びるだけなので温度管理には十分気を付けるようにとの事でした。
 最後に今回のまとめを行い、小祝先生から、施肥設計はだいたいよく出来ているが、管理に課題があり、以下のアドバイスをいただきました。
 果菜類では施肥、潅水の場所、換気の問題。これについては作付けの仕方を複条から単条にし、潅水と施肥を両側の根から吸収できるようにすればよいと指導されました。単条によって、風の通り道も出来るので換気も良くなるとの事でした。
 稲作では、除草の対策として、強アルカリ資材を使った方法もあると教えていただいたので来年試してみようと思います。
 今回の講座を通じ、ミネラル肥料と、微量要素の意味と役割を十分理解し、水が一番の肥料だと思い知りました。
 生物活性水の有効利用に関しては、まだまだこれからですが、作物ごとに合った生物活性水を作って試していきたいと思います。
(報告:大郷グリーンファーマーズ 熊谷 剛介)

新潟県・謙信の郷
 早生刈りがもう始まっている八月三一日、「土と水の学校」有機栽培講座が小祝先生を講師に実施されました。
 今回の講座は、各生産者の田んぼを巡回する現地研修を中心に実施しました。テーマは「刈り取り直前の稲の根」です。
 田植え後から根の診断を始めましたが、八月の高温障害に負けない稲作りを目指すには、太い根がしっかりと生きていること、それが登熟に必要な養分やミネラルを最後までしっかりと吸える稲になります。根がしっかりとしていないと、収量や品質は勿論ですが大切な食味に影響します。
●稲の根が切断された田んぼの中干し
 現地研修は、頚城区管内の田んぼの巡回からスタートしました。最初に葉の色が退色している稲を検証しました。この稲を掘って調べると、根が途中で切れていることが分かりました。葉の退色は、根が切れたため、生育中の水分不足が栄養補給に支障をきたした結果であると診断しました。根が細かく切れているのは、田んぼの中干しをし過ぎたためではないかと、小祝先生から指摘されました。さらに、元肥量から考えてもう少し、積極的に穂肥を施すべきではなかったかと、アドバイスを受けました。
 続いてまだ、田んぼに水がある稲を診断しました。これは驚いたことに根が白くて太く、根が切断された形跡はありませんでした。葉の色の退色もほとんどなく、健全な稲でした。初期成育も大事ですがその後の特に七月、八月の高温時の水分補給による根の管理の大切さを痛感しました。
●苦土による葉色に惑わされない穂肥の判断
 その後は三和区の各々の圃場を巡回し、根の状態、葉の色、固さ、などを診断しました。
 巡回終了後は、三和区神田の集落センターに集合し、それぞれの圃場で採取した稲を比較しながら、まとめの講義が行われました。
 また、各地の優良事例を見ながら、小祝先生から、より高度な稲作診断について解説が行われました。中でも、苦土(Mg)を施した場合の適正穂肥については、葉の色の濃さに惑わされず、色、草丈、固さ、気候などから総合判断して、施肥することが重要であると学びました。
   (報告:謙信の郷 峯村 正文)

Author 事務局 : 2007年11月15日 09:02

 
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