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2007年11月15日

~ひろげよう『BMの世界』森から海へ~ 第17回BMW技術全国交流会【190号】

第一七回BMW技術全国交流会が、~ひろげよう『BMの世界』森から海へ~をテーマに、一一月一六日(金)~一七日(土)の二日間、宮城県松島町のホテル大観荘で開催されます。今回は、その概要を紹介いたします。

交流会開催地の宮城県からは、~宮城の農と暮らしの中のBMW技術~と題して、地元、みやぎBM技術協会会員が取組んでいる農業生産の現場や、生協・福祉活動での活用事例発表(①有畜複合経営で活用されるBMW技術:㈲大郷グリーンファーマーズ、②放牧豚、のら牛プロジェクトでのBMW技術:大崎あかべこ会、③福祉農場、組合員農園で活用されるBMW技術:社会福祉法人みんなの輪、生活協同組合あいコープみやぎ)が行われます。
また、宮城県・気仙沼湾で牡蠣養殖を行いながら、海に注ぐ水源の山に「森は海の恋人」を合言葉に植林運動を進めている畠山重篤氏をお招きしての特別講演が行われます。
名古屋大学の奥地拓生氏からは、この畠山氏が牡蠣養殖を行っている気仙沼湾と、交流会開催地の松島湾に注ぐ水をつくる岩石のストーリーを講演していただきます。
石澤直士BM技術協会理事長からは「流域の土と水の再生を」と題し、基調報告が行われ、長崎浩顧問からは、これまでのBM技術協会の活動を振り返り、その運動論と普及の特徴を、BMW技術のしくみを交えながら講演いただきます。
技術研究発表は、①「生物活性水によるクロレラ培養とその養鶏飼料化実験」について、㈱山梨自然学研究所と山梨大学の御園生拓教授から、②「バイオベット飼育によるアニマルウェルフェア規準に基づく飼育管理の実態と検証」と題して、㈲ポークランドから発表が行われます。
協会が各地の会員生産者と取組んでいる~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座報告では、これまでの成果と、各取組み産地から(①青森県・(農)八峰園【リンゴ】、②山形県・㈲ファーマーズクラブ赤とんぼ【キュウリ】、③宮城県・㈲大郷グリーンファーマーズ【水稲・トマト】、④新潟県・㈲謙信の郷【水稲】)の実践発表、そして「土と水の学校」講師の小祝政明先生から、「多収穫及び高品質栽培のポイント」の解説が行われます。
この他、会報アクアに連載した『水田の生態系を回復させる水づくり』で、インタビューを行ってきたパルシステム生活協同組合連合会の田崎愛知郎氏から、「田んぼの生き物調査プロジェクト報告」が行われます。
一七日の交流会会議終了後は、大郷町の㈲大郷グリーンファーマーズの平飼い養鶏と耕作との有畜複合農業と、福祉農場・米粉パン工場の現地視察が企画されています。

Author 事務局 : 09:05

~自然学を実践する~ 「土と水の学校」【190号】

有機栽培講座 各地で圃場巡回研修を実施

 ~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が八月に協会会員の各産地で開催されました。同講座は、作物の植物生理を知り、植物生理に沿った施肥設計、栽培方法を学び、BMW技術を活用した農法を深化させるものです。「土と水の学校」講師の小祝政明先生を迎え、各産地では、栽培現場の巡回を中心に実践研修という形で講座が行われました。各地の講座内容を現地から報告します。

福島県・会津うまいもの塾
●揃ってきた稲の生育
 八月二四日(金)、会津うまいもの塾で「土と水の学校」有機栽培実践講座が開催され、昨年と比較し、稲の生育に生産者間のばらつきが減少したことなどが確認されました。
 「稲作りは秋から始まる。その対応は一律ではなく、個々の圃場条件に合わせて行う」。このことに取り組んで来て、生育はどうだったか、それを確認する圃場巡回から始まりました。
 会津うまいもの塾では、田んぼによって土の性質(砂質、粘土質など)は違い、かつ収穫後稲ワラを取り出す圃場、もみ殻を堆肥化して戻す圃場などさまざまな圃場があるため、状態に応じて腐植、ケイ酸、堆肥などを投入して物理的な改良をする事に加え、発酵鶏糞などの窒素分や石灰等のミネラルを入れて秋耕ないをすることに取組んできました。
 この取組みを確認する圃場巡回では、昨年、茎数や穂数がかなり少なく、肥料も流亡してみすぼらしかった圃場も「おお、今年はいいねえ」という具合で、まだ多少のばらつきはあるものの、各生産者の稲の状態は、昨年より格段に揃ってきました。
 途中、講師の小祝先生から「止め葉が長く飛び出ているのは窒素過剰です」と言われたことに対し、「えっ、生育が良いからではなかったのか?」と見方が間違っていたことを知ることもあり、見ながら学ぶことで身に付くことが多くありました。
●トマトは少量多潅水で
 トマトハウスでは、「気根が出ていますね。水不足です」と指摘され、潅水チューブの位置や潅水回数などを確認。潅水は計器で計測しながら行っているものの、現実には水分不足になっており、少量多潅水にしないと長期多収は難しいことが実感されました。また、このための植え付けや潅水チューブ配置などがアドバイスされ、ミネラル先行での施肥と併せて、来期のトマト作りの構想を練ることができました。
●生物性への対応とミネラル先行の施肥を
 巡回終了後の総評では、稲の育苗段階で立ち枯れ病が出たことについて、「酵母では抑えられない、放線菌がいい」とのアドバイスを受けました。物理性や化学性については少しわかってきたのですが、生物性については今後の課題となりました。また、視察先でのミネラルの使用方法についての質問では、「生育期間中ミネラル分を常に上限に保ち、窒素分は状態を見ながら与えるやり方です」とのことで、これも来期の野菜作りに活用できる方法になりそうです。
    (報告:会津うまいもの塾 佐藤 邦夫)


山形県・ファーマーズクラブ赤とんぼ
 ファーマーズクラブ赤とんぼでは、八月二五日、一四人が参加し、「土と水の学校」有機栽培講座が開催されました。前回は野菜栽培の基礎を学習しましたが、今回は、その実践と成果をキュウリの圃場で確認し、小祝先生から栽培のポイントを教えていただきました。午前中は、近野純さんと坂野忠彦さんのキュウリ圃場を巡回し、午後は、現場での課題や、参加者からの質問を中心に講座が行われました。
●窒素切れと病気の発生予防
 キュウリ栽培では、施肥の方法、水管理、微生物の使い方のほかツルや葉の仕立て方を学習しました。キュウリは窒素を多く必要とするため、常に有機肥料が残っている状態にし、酵母菌使用により液状化を促進させ早く吸収させることや、有機肥料に堆肥を混ぜてやることによって、堆肥中に含まれた放線菌がカビなどの病原菌の発生を抑える効果があり、また、生物活性水原液を入れることによって放線菌が増え、さらに効果が上げることを学習しました。
●水管理と追肥のポイント
 生物活性水使用は肥料が正常に液状化することにも役立ちます。潅水は根腐れをおこさないようにし、常時湿っている状態を保つためPFメータを使用し適正値を保つことが重要で、圃場にあった水管理を覚える必要があります。  キュウリの葉の状態が悪い場合は、ケイ酸を使用することにより表面がパリパリとなり病気が付きにくく良好になることや、炭水化物量が不足すると油分が足りなくなり、つやがなくなるため追肥時に土壌分析をして苦土を入れることが必要でした。葉の裏側が薄く抜けているところが目立つときはマンガンが不足している場合があることや葉が混雑して光を受けないところが多くなったら古い葉を除去し新しい葉を増やしていくなど、ミネラル肥料に加え、葉の仕立て方も学びました。
●トマトの香りとコクを良くする硫黄
 トマト栽培ではキュウリと同様に水を多く必要とすることや、香りとコクを良くするには硫黄分が必要で硫酸苦土を設計の上限値まで入れるのが良いなどを学びました。
 女性の参加者からは、「来年からキュウリを栽培する上で、施肥や水管理など、とても勉強になり早く実践で覚えていきたい」、「自分の圃場と比較でき、とても参考になったことや来年は葉をバランスよくするための『切り戻し』をやりたい」など意欲的な感想があり、今後の野菜栽培の技術向上につながる学習会になりました。
 各生産者が施肥設計をものにし、圃場にあった管理を早く身に着ければ安定した収量と収入が期待されます。基本を忠実に実践していきたいと思います。
 次回は一〇月二八日の開催になりますが、一年間の締めくくりとして、反省点や疑問点を重点に進めたいと思います。
(報告:ファーマーズクラブ赤とんぼ 武田 和敏)


宮城県・みやぎBM技術協会
 八月二九日、みやぎBM技術協会では、今年二回目となる「土と水の学校」有機栽培講座を開催し、会員生産者ら約二〇人が参加しました。今回の講座は、小祝政明先生、礒田有治BM協会事務局長の指導の下、大郷グリーンファーマーズと、迫ナチュラルファームの圃場巡回を中心に実施しました。
 まず初めに、大郷グリーンファーマーズの西塚さんの生物活性水を利用した液肥を見てもらいました。生物活性水を二倍に希釈したものに、有機肥料(オーガニック8:5:3)などを入れたものです。前日に曝気を始めたばかりだったので三日程して悪臭がしなければ大丈夫との事でした。
●トマト栽培、潅水と換気に細心の注意と、ミネラル先行の追肥を
 次にトマト圃場を視察しました。今年は三〇度Cを越す暑い日が続いたため、潅水量が不足したことと、ハウス全体に熱気がこもってしまい花付きが悪くなったり、葉がハモグリバエに食べられたりと、今までにはあまり見られない被害がありました。
 前回指摘されて改善をしていたのですが、潅水の量と換気については、細心の注意を払わなければならないと思いました。害虫については、追肥をした際に、苦土やカルシウムなどのミネラル肥料よりも窒素肥料を先に効かせてしまっていたのが原因と指摘されました。
 ナスは、木々に囲まれた中で栽培していたので風通りが悪く、カビの心配もあり、潅水も出来ないので、場所を変えたほうがいいとの事でした。栽培方法についても、ナスに日光が当たるように、葉を掻きすぎていたので、小祝先生は「光合成は葉で行うので、風通しを良くする程度に下葉を掻き取ること」とアドバイスをいただきました。
 水稲では、根の張り具合が良く、太いものも多くなってきていました。もう少し根が白くなってくると穂に透明感が出てくると指摘されました。昨年に比べ、茎も太くなってきており、ガッチリした稲株が出来ていました。
 ただし、無農薬の圃場では除草の問題をどうにかしないと、稲の光合成の邪魔になり、美味しい米も出来ないし、もちろん収量も上がらない等と厳しいお言葉をいただきました。
 続いて場所を迫ナチュラルファームの圃場に移しトマト、ナス、キュウリを視察しました。
 トマトは大郷グリーンファーマーズと同様、潅水、換気を注意され、ナスはミネラルが良く効いていると、お褒めのお言葉をいただきました。
 キュウリは、前回指摘されたネコブセンチュウを良質堆肥と放線菌で土壌養生を行い、かなり抑える事が出来ていました。しかし、早く出荷できるようにとハウスを閉め、蒸らしたことで節間が伸びていました。結局収穫は早まらず、節間が伸びるだけなので温度管理には十分気を付けるようにとの事でした。
 最後に今回のまとめを行い、小祝先生から、施肥設計はだいたいよく出来ているが、管理に課題があり、以下のアドバイスをいただきました。
 果菜類では施肥、潅水の場所、換気の問題。これについては作付けの仕方を複条から単条にし、潅水と施肥を両側の根から吸収できるようにすればよいと指導されました。単条によって、風の通り道も出来るので換気も良くなるとの事でした。
 稲作では、除草の対策として、強アルカリ資材を使った方法もあると教えていただいたので来年試してみようと思います。
 今回の講座を通じ、ミネラル肥料と、微量要素の意味と役割を十分理解し、水が一番の肥料だと思い知りました。
 生物活性水の有効利用に関しては、まだまだこれからですが、作物ごとに合った生物活性水を作って試していきたいと思います。
(報告:大郷グリーンファーマーズ 熊谷 剛介)

新潟県・謙信の郷
 早生刈りがもう始まっている八月三一日、「土と水の学校」有機栽培講座が小祝先生を講師に実施されました。
 今回の講座は、各生産者の田んぼを巡回する現地研修を中心に実施しました。テーマは「刈り取り直前の稲の根」です。
 田植え後から根の診断を始めましたが、八月の高温障害に負けない稲作りを目指すには、太い根がしっかりと生きていること、それが登熟に必要な養分やミネラルを最後までしっかりと吸える稲になります。根がしっかりとしていないと、収量や品質は勿論ですが大切な食味に影響します。
●稲の根が切断された田んぼの中干し
 現地研修は、頚城区管内の田んぼの巡回からスタートしました。最初に葉の色が退色している稲を検証しました。この稲を掘って調べると、根が途中で切れていることが分かりました。葉の退色は、根が切れたため、生育中の水分不足が栄養補給に支障をきたした結果であると診断しました。根が細かく切れているのは、田んぼの中干しをし過ぎたためではないかと、小祝先生から指摘されました。さらに、元肥量から考えてもう少し、積極的に穂肥を施すべきではなかったかと、アドバイスを受けました。
 続いてまだ、田んぼに水がある稲を診断しました。これは驚いたことに根が白くて太く、根が切断された形跡はありませんでした。葉の色の退色もほとんどなく、健全な稲でした。初期成育も大事ですがその後の特に七月、八月の高温時の水分補給による根の管理の大切さを痛感しました。
●苦土による葉色に惑わされない穂肥の判断
 その後は三和区の各々の圃場を巡回し、根の状態、葉の色、固さ、などを診断しました。
 巡回終了後は、三和区神田の集落センターに集合し、それぞれの圃場で採取した稲を比較しながら、まとめの講義が行われました。
 また、各地の優良事例を見ながら、小祝先生から、より高度な稲作診断について解説が行われました。中でも、苦土(Mg)を施した場合の適正穂肥については、葉の色の濃さに惑わされず、色、草丈、固さ、気候などから総合判断して、施肥することが重要であると学びました。
   (報告:謙信の郷 峯村 正文)

Author 事務局 : 09:02

土こそ命:(Soil Stewardship) 【190号】

土こそ命:(Soil Stewardship)

 土くれは多くの凡人には考えの片隅に捨て置ける些事である。だが土壌が黄金より尊いとする先人も昔からいた。科学の解明力が邁進するにつれ、自然循環ダイナミズムの実相が想像から現実の親密な関係で認知できるようになってきた。地球儀的規模での土壌の悪化や侵食が、気候変化を突進させる温室効果ガス放出原因の30パーセントを担っているという計測が出された。さらに土壌の劣化は食物生産と水供給にも損害を与えている「静かなグローバルな危機」になっている事が明らかにされてきた。

 『土壌・社会・地球変動に関する国際フォーラム』開催

 「我々は地球のあらゆる生命の基礎としての土壌をないがしろにしている。土壌と植物が地球全体で脅威的な速さで消失している。それは次には食糧生産に破壊的な影響を与えて、そして気候変化を加速させている」と、『アイスランド土壌保護サーヴィス(The Icelandic Soil Conservation Service)』副所長、アンドレス・アーナルズ(Andres Arnalds)氏が述べている。この発言はアイスランドのセルフォス(Selfoss)で2007年8月31日から9月3日まで開催された『土壌・社会・地球変動に関する国際フォーラム(The International Forum on Soils, Society and Global Change)』で述べられたものである。アイスランドは自然や環境に先駆的な理解と実践の歴史を持って来た国である。アイスランドが多くの他の国際的な組織と協力してこの国際フォーラムに世界から学者や専門家達を結集させた。またアイスランドにとっては他国に先立った土壌保存活動の百年目を記念する行事にもなっている。この国際フォーラムは、アイスランド大統領オラフュール・ラグナー・グリムスン(Olafur Ragnar Grimsson)に後援され、3つのアイスランド政府機関、18のインターナショナル組織や大学が協力している。科学者、政策立案者、土地利用者、民間部門代表者を含む約130人の参加者が研究発表や討議を行い、共通理解と実践目標を討議した。さらに多岐な専門分野を持つ参加者達は、土壌保護と植物再生の相乗的な役割を明らかにして、地元や地域さらに世界の環境問題と社会問題に立ち向かえる統合的知識と理解を求めた。この会合の内容は、研究発表、全員参加討議、実働グループの討議で成り立っている。全体セッションは以下の主要テーマに焦点を合わせて発表されて、それらのテーマは実働グループの討議にさらに取り入れられている。①土壌と社会とグローバル変化 ②健康な土壌:食物安全支援、水供与、貧困削減と生物多様性 ③衰退した土地の蘇生による天候変動の緩和 ④強い自然力を取り戻した環境の創生。さらに5つの実働グループが以下の課題にも取り組んだ:土壌保護責務とランドケア(soil stewardship and landcare)、土壌マネージメント、多国間環境協定、炭素固定、炭素市場、土地回復、知識マネージメント、土壌マネージメントに於ける立法と政策開発の能力を作りあげる事。

砂漠化と土壌衰退が水不足を増大させる

 毎年およそ10万平方キロに及ぶ世界の土地がその植物を失って、地表が悪化した状態になり、砂漠化している。「土地の衰退と砂漠化は静かな世界の危機と見なされ、人類の未来に対する真なる脅威である」とアンドレス・アーナルズ氏は言っている。食糧生産を1980年から2000年の間に50パーセント増大させて人口増加による需要に対応してきた。しかし推定人口が30億人に達するとされる2050年に地球上の人間を食べさせる十分な食物があるかどうかは未知の問題である。国連大学のカナダにある「水・環境・健康・国際ネットワーク(International Network on Water, Environment and Health)ディレクター、ザファール・アディール(Zafar Adeel)氏はこう述べている:「1ヘクタール当たりのグローバルな食糧生産力はすでに低下している。この衰退には多くの理由があり、それには土壌の衰退が水不足を増大さしている事実を含んでいる。土壌と植物は水を保留させ、そして徐々に水分を放出するスポンジの機能を果たしているのです」オーストラリアで設けられた初の「ナショナル・ランドケア・促進者(National Landcare Facilitator)」、アンドリュー・キャンベル(Andrew Campbell)氏はこう述べている:「食糧生産と土地と水資源保存の最も新しい困難な課題は、植物に依拠した生物燃料ブームである。あちこちの土地が以前のどの時期よりも大きなプレッシャーの下にある。世界中の政府が生物燃料を生産する農作物に補助金を進んで提供している。世界の農地の何億平方キロメートルがまもなく、世界の急増する燃料枯渇の小さな部分を満たすために使われていくだろう。燃料作物は実際の環境保護への恩恵を提供する事はほとんどないだろう」。生物燃料への殺到を敬遠するもう1つの理由がある。それはバイオ燃料作物が多くの水を使うという事実である。将来には、我々が必要とする食物を栽培するのに十分な水がなくなるだろう、と彼は言う。山林伐採と土壌損失を防止することは、温室効果ガス排出を減らす最も早い、容易な方法である。逆説的だが、気候変化の環境問題が、もう1つの長期的な基本的環境問題-即ち土壌の保護-に対して世界をやっと行動に駆り立てる事になるかもしれない。
 オハイオ州立大学の研究者、ラッタン・ラル(Rattan Lal)氏の計測によれば、土壌の衰退と砂漠化は世界の温室効果ガス放出の約30パーセントをも起因させている。土地に起きているこの衰退は、また地球の水、温度、エネルギー収支にも変動を起こしている。さらに気候変動が、極端な天気を引き起こす降水変化と蒸発増大を通じて、この土地衰退をさらに悪化させ、そしていっそう規模を拡大させている。二酸化炭素は主要な温室効果を起こすガスである、そして「炭素分子を土地と森林と草原に保留させることが最も速く気候変化に対処できる、さらに経費に見合う最善の措置である」とアディール氏も言っている。

統合的な理解とソイル・スチューワドシップ(soil stewardship)

 土壌と植物に炭素を固定させ、保留させる事によって、新しい「炭素市場」に於いて利益を上げる事ができる。現在から2050年までの間に予想される化石燃料排出の約20パーセントがそのようにして保留することができる、と、『国連開発プログラム(U.N.Development Programme)』のマリアム・ニアミール- フラー (Maryam Niamir Fuller)氏が述べている。人類の未来の生き残りを確保するため、土壌と植物の保護、また悪化した土地の蘇生、を実現するには多くの他の基本的な政策変更もまた必要である、と、エキスパート達が述べている。米国やヨーロッパ等北半球での推定300億ドルに上る食物助成金を中止する事はそのいい手始めになるだろう。その助成金は、アフリカや他地域の土地の衰退を引き起こし、そして貧しい農民が対抗するため高農薬使用等の生産強化農業を強いられている、とアディール氏が述べている。「ナショナル・ランドケア・促進者」のアンドリュー・キャンベル氏はこう提言している:土壌再生には土地の使用の仕方を決定する場合、政府のあらゆるレベルで、全面的な変更が必要である。土壌、水、エネルギー、気候、生物多様性、食糧生産はすべて生態的に緊密に結びついている、だから土地利用には統合された政策決定が必要なのである。現在では、国の決定や諸政策は異なった部門や機関で別々に行なわれていて、他のセクターへの影響にはほとんど考慮が向けられていない。先進国のエネルギー担当省は、生物燃料に、その為の水がどこから来るか、あるいはそれがどのように土壌、生物多様性、食物価格に影響を与えるか心配しないで、何十億ドルの出費も許すだろう、と同氏は警告している。また世界の土壌を保護する事ではなんら公式の合意が成立していない。
 アイスランドのこの国際フォーラムに結集した世界各地からの代表者達は、「ランドケア国際年International Year of Land Care」と呼ばれる土壌への国際的な認識を持つ為、「土壌責務遂行」(soil stewardship)に焦点を合わせた「提言」を討議した。それは「土壌保護の責務を果たす事」が世界全体の食物と水の保全に影響を与えるからである。アーナルズ氏は経験からこう述べている:「我々はアイスランドにおける非常に深刻な土壌劣化と闘ってきた、それは対応するのにこれまで100年かかってきた闘いである。その土壌衰退はアイスランドの10,300平方キロの3分の1を今でも砂漠にしたままである。アイスランドは他の国々への警告、また十分のリソース(資力・知力・人力)があれば悪化した土地を復活させることも可能であるという希望を与える役を果たすだろう。土壌は蘇生させるよりも保護する方がずっと良いのです」。

土壌と水危機と健康

 「水・環境・健康に関する国連大学国際ネットワーク(United Nations University International Network on Water, Environment and Health)」のザファ・アディール(Zafar Adeel)は、土地の衰退と水資源の持続可能なマネージメントを議題にして、砂漠化の大きさとグローバルな水危機を強調した。彼はその水危機が貧困と人間の健康へ与えているインパクトを指摘しこう述べている:水不足は政策の失敗によって影響を受けている、そして乳児死亡率と強い相関関係がある。彼は内陸のアラル海の破滅を挙げて何千という人々の暮らしへのインパクトを説明した。彼は持続可能性を保証する適切な対応は、水資源と土地使用パターンを統合的に査定して、政策決定を行なう必要がある。そしてより広範囲なマネージメントアプローチを確定していくべきである。彼はエジプトとパキスタンに於ける生物圏保護の肯定的な実例を提供して、開発共同体でのパラダイムの転換をよりよい活動の統合に向ける必要があると結びで述べた。
 この国際フォーラム報告のウエッブサイトに自然保護活動家ダグラス・バーンズ(Douglas Barnes)氏は以下の意見を寄せている:「私はこの土壌衰退という最大の環境危機がやっと世間の注目を浴びてきたのを見るのがうれしい。土壌の衰退は嬉しい事ではない、そしてたいていの人は人間の健康と土壌の健康の間を結び付ける事はない。しかし現実は健康な土壌は、ホモ・サピエンスを含んだ多くの種の生命の基礎になっている。我がホモサピエンスの農業の最初の試みが、人によって作られた最初の砂漠を作りだし、文明社会の最初の崩壊も生みだした。この傾向は今日も続いていて、中国の土地の19%が土壌悪化で塩化されて、年に1ヘクタール毎に土壌40トンを失っている。米国では植物栄養分の損失は1年に200億ドルに昇っている。またカナダでは大草原の38%が塩化で厳しい影響を受けている。土壌破壊による損失はこれらの国で止まるわけではない。
 アイスランド農民協会(Icelandic Farmers Association)から会議に参加したシグルゲール・ソーゲルソン(Sigurgeir Thorgeirsson)氏はこのフォーラムの結びにあたってこう強く述べた:「土壌は農業生産と人間の暮らしにとって根本的に必要な条件です。農民は土地の最も重要な使用者です。ランドケアに於いては農民の理解と参加が必須なのです」。

参考資料;
◎Common Dreams NewsCenter
Dirt Isn't So Cheap After All September 18, 2007
◎Summary of International Forum on Soils, Ssociety and Global Change
Vol. 144 No. 1 Friday, 7 September 2007
◎Soil erosion is the "silent global crisis"
Inter Press Service  7 September 2007

Author 事務局 : 08:52

2007年11月01日

韓国・山(サン)自然学校を訪ねて 【AQUA191号】

韓国・山(サン)自然学校を訪ねて

自然・環境・生態系を日常的に体験する代案学校
BMW技術を教材に、自然の循環システムを学ぶ
㈱匠集団そら 秋山 澄兄

 一〇月六日~九日の四日間、韓国のBMW技術導入現場を視察しました。今回は、慶北永川市の山(サン)自然学校について報告します。
 山自然学校(旧梧山自然学校)は、釜山国際空港から車で北東へ二時間余り、東テグと言う地方都市から車で三〇分ぐらいの山逢いの静かな村の中にあります。そこでは廃校になった小学校を利用して二〇〇二年に、前身の梧山(オサン)自然学校が設立され、三日から四日のキャンプを通して、自然体験等を通じた教育を行っていました。
 設立当初は、山梨県・白州郷牧場の「キララの学校」をモデルに、自然とその生態系を学ぶ子供の為の学校として運営が始まり、現在では自然の生態体験を日常的な暮らしの実践として持続可能にする代案学校(注1)として、二〇〇七年から、新たに全寮制の山自然学校として開校されました。
 小学生の生徒数二二名、常勤講師五名で生活を共にし、通常の教育課程に加え、宇宙の授業や調理実習など、すべての授業に自然・環境・生態系との関わりや取り組みを織り交ぜながらの教育がなされています。
 また従来のショートキャンプの受け入れも続けられており、夏休みなどに近郊の都市のテグ、釜山、ソウルなどから年間三千名の子供達が訪れるとのことで、常勤講師と数十名の非常勤講師やボランティアスタッフにより運営されています。子供だけの学校でなく親子教室などもあり、自然・環境・生態系はもちろんのこと、音楽や工作、付近の様々な場所で色々と学ぶことのできるプログラムなどが導入されています。近くには青鷺の繁殖地もあり、野外活動においても自然の生態系・環境などに触れ学ぶことができます。
 自然・環境・生態系を学ぶ為の施設として注目すべきものは二つあり、一つ目はBMW技術が導入されているということ。大きな食堂の厨房排水はBMで処理されています。処理水はビオトープ(観察用池)に利用され、その中の生態系を学ぶことができます。池の中に浮草、鯉、蛙、タニシ、その他の水中生物を観察できるようになっていて、さらに校庭にある便所の排水を利用した生物活性水施設があり、そこでは自分達の尿や糞が生物活性水となり、圃場還元などされ、循環されていることを学ぶこともできます。
 もう一つはエネルギー。ここでのエネルギー源は主に太陽光エネルギーを利用し、風力発電を合わせ百パーセントの電力がまかなわれています。さらに余電力は電力会社に売っているとのことで写真にある太陽光パネルで約三キロワットの電力供給ができ、風力と合わせ約四キロワットの発蓄電が可能ということでした。次号で紹介するプルム農学校や済州島でも同じ光景を目にしたのですが、韓国では自然エネルギーに対する考え方・取り組みが日本より進んでいて、正にそれを実感することができました。
 これから石油がなくなっていくことがわかり始めた今、日本も見習うべきことであり、またBMW技術を利用する者としても避けては通れない課題点でもあると思いました。現在のBMW技術は大きな意味で生産・消費の面で大きく役立っていますが、そこに偏ってしまっているような気もします。
 もちろん自然の循環に沿った技術であり、豊かな環境(農地や畜舎)作りと言った点の貢献は多大なるものだとは思います。ですがBMW技術に直接ふれることができるのは、農業従事者を中心に自然との関りを営む大人が中心であるような感じが私の中では否めません。間接的には子供達の役には立っているけれど、山自然学校のように教育現場の中で直接BMW技術にふれながら、子供達が自然・環境、そしてエネルギーを学ぶことのできる環境は素晴らしく思えたのです。そしてさらに、BMW技術が利用される現場としてこのようなスタイルがこの先必要不可欠なのではないかと実感しました。
 BMW技術はありとあらゆる可能性をまだまだ秘めています。これからは自然・環境に対してだけでなく、子供の教育といった点でこれからの社会・教育にも向き合っていく方法があるのだと考えさせられました。

(注1)代案学校(だいあんがっこう)
韓国では、フリースクールやオルタナティブ・スクールを代案学校という。一二年ほど前に、大学受験に偏重した既存の教育に疑問を投げかける代案教育運動から生まれた。小規模で都会から離れた自然豊かな場所で、寄宿生活を伴う事例が多い。山自然学校は国の認可は受けていないため、中学校にあがるためには学歴取得の試験が卒業時に必要になる。無認可の代案学校に入った子供達のほとんどは中・高学校も代案学校を選び、高校課程卒業時に日本で言う大検のようなものを受け合格すると小学校から高校までが学歴として認められる。

Author 事務局 : 14:45

エネルギーに翻弄される農産物と理想のバイオヒュエル 【AQUA191号】

石油と穀物の値上がりが食品価格を突き上げる

 消費者レポートによれば、ニューヨークで典型的朝食のボウル一杯にいれたシリアルとミルクは今約49セントになる。去年は44セントほどであった。来年には56セントになる見込みが強い。これは一般の家族には厳しい状況である。この波が寄せるような食品価格上昇の裏には、重油価格の上昇、中国の経済ブーム、増大するバイオ燃料生産、がある。この苦境は地球的な規模であり、当分収まりそうな様子はない。市民の食品負担が全体に膨らんでいる主要因は、原料、包装、石油燃料がこの数十年間に比べてずっと高くなっているからである。食品価格の急騰は商品市場に辿って行けるが、その市場では農産物と石油の値段はこの数十年に比べ今年最高額になっている。重油は、ガソリンとプラスチック包装の価格を限定するのだが、この9月には空前の高値を出している。小麦の値段もまた記録的な高さを示した。諸物価の高騰は、各市場の短期の供給と需要に関連しているが、同じように供給商品を誰が生産して、誰が消費していくのかの長期的な変移にも関連している。中国での急成長、さらにはブラジル、ロシア、インド、他の発展途上国での急成長は、原材料の厖大需要を捲き起こしている。この大型需要は、産業や工場や自動車を駆動させるエネルギー、社会の基礎施設を築く金属類、家畜と人間を食べさせる豆類と穀類を含んでいる。中国はこの10年で世界の菜種油の50%を輸入するようになっていて、世界最大の輸入国になっている。大豆のような油脂種子から作られたオイルは、包装食品で広く使われている。他方トウモロコシは高果糖コーンシロップに使われている。これはよくある甘味料で、ソーダからパンまであらゆる食品に使われている。

食用作物の燃料への転用

 中国の菜種油需要はもう1つ別の動向を反映している。世界は燃料を作るために食用産物の多くを転用させている。合衆国と中国で生産されるトウモロコシは、ガソリンに添加されるエタノールに変えられている。ヨーロッパはエタノールのため多量の小麦を転用し、そしてバイオディーゼルのため菜種油を転用している。これは普通のディーゼル燃料と混合される大気汚染が少ないとされる燃料になる。ブラジルはエタノールを作るためサトウキビ生産を拡大させている。合衆国でのエタノール産業からのトウモロコシ需要が今年トウモロコシ価格を急上昇させている。これがドミノ効果を始動させて、食品流通チエーンに価格上昇を引き起こしている。それは家畜飼育業者、食品メーカー、小売り業者がコストを回復しようと必死になって対応するからだ。 トウモロコシ価格は今年の莫大収穫の予測があるので、当然とされる高値上がりからはずれている。しかし物価は農業市場全体のインフレーションのため歴史的に上がったままである。2年前に約2ドルで売れた1ブッシェルのトウモロコシは今日およそ3.50ドルになっている。

食品物価のインフレーション

 今年起きた需要のテクトニック的地殻変動は短時期の供給制限を引き起こし、さらにインフレーションを悪化させた。原材料の複数市場はしばしば地理的にも相互にもリンクしているので、一市場での問題は別の市場に広がっていく。大豆で見ると、合衆国の農民がエタノール需要に応えるため、今年ずっと多くのトウモロコシを植えて、大豆生産には少ない面積を当てた。それは大豆の供給を絞ってしまった。今年初頭から大豆価格が40パーセントを超えて上昇した。大豆は1月の1ブッシェル7ドルから、1ブッシェル10ドルに今高騰している。ウクライナでの穀物不作が米国での価格上昇を急に起こす事になっている。この状況は雪だるま式にふくらんで行っている。小麦の収穫が世界で次々に大雨や旱魃で被害を受けると、外国のバイヤーが買い付けに必死で駆け回って価格変動が起きている。小麦の備蓄は世界的にこの26年で最低に落ちて、小麦価格が急上昇している。イタリアでは主要食のパスタの値段が上がり、消費者団体が先月上昇する価格に対して象徴的なパスタ抗議を街頭で演じたりした。1ブッシェルの小麦が最近9.50ドルまで上がった。これは小麦が1ブッシェルおよそ5ドルした今年初頭のほぼ90パーセントの高騰である。米国労働省(The Labor Department)は食品インフレーションが年4.2パーセントで進んでいて、これは全体的なインフレーション率の2倍であると報告している。米国全土では、ミルク価格は今年の始めから18パーセント上がっている、他方卵は1年前に比べて35パーセン値上がりしている。米国農務省は全体的食品価格インフレーションが3パーセントになり、2008年には4パーセントになると見積もっている。石油や燃料問題が農業基盤、食物生産、市民生活不安の根底に蹲っている。


理想バイオヒュエル「ジャトロファ」への期待

 エネルギー問題の解決なしには人類の幸福な活動は難しい。「ジャトロファ」《Jatropha》というバイオ・エネルギー源が最も持続可能な選択として登場してきている。公式名でいえば、「ジャトロファ・クルカス」《Jatropha curcas》は中央アメリカを起源とするユーフォルビア(euphorbia)科の有毒な低木雑草である。バイオエネルギーとしての主要なセールスポイントは、余分な、侵食された土地でも育ち、旱魃にも強く、指先程の実にかなりな油脂分が含まれている。放置された荒地でも繁茂する「ジャトロファ」は食物栽培をする土地と競合する事がなく、多量の水も、肥料も、殺虫剤もいらないという。だから、トウモロコシ、菜種油、大豆、ひまわり、他の生物燃料生産に転用される食用作物とは違い大きな利点を持っている。「ジャトロファ」は油量生産が高く、低油性効率の既存バイオ作物を凌駕して、さらに食用にはできないので、食用産物の値段を吊り上げる事もない。「ジャトロファ」はまた油抽出効率が高いサトウキビやオイルパームをも退ける優位性を持っている。サトウキビやオイルパームは自然の草地や森林を伐採した大規模プランテイションが必要で、大気へメガトン規模の温暖化ガス放出を引き起こしている。だが「ジャトロファ」は余分とされる荒地でも栽培され環境への負担がないと主張されている。

「ジャトロファ」列車に競って飛び乗る

 前インド大統領、アブドゥル・カラム博士(Dr. Abdul Kalam)は「ジャトロファ」バイオディーゼルの強力な提唱者である。彼はインドの6千万ヘクタールを越える利用可能な野生地の内3千万ヘクタール以上の土地が「ジャトロファ」栽培に適していると2006年のスピーチで訴えた。最近ではインド国立銀行が「ジャトロファ」栽培をさらに後押しする承諾覚書に署名をした。これはインドの地方農民に総額13億ルピーになるローンを与えるもので、その返済は収穫した「ジャトロファ」種子の買い上げ金で余裕をもってできることになっている。またインド鉄道はエンジンを動かすディーゼルに混ぜた「ジャトロファ」オイルを使用して、実際に大成功を収めている。インドの多くの州も「ジャトロファ」栽培に飛びついている。インド地方開発省(TheMinistry of Rural Development)はインド全体で50万から60万ヘクタールの「ジャトロファ」栽培地が既に存在していると推定している。これはインドだけの話ではない。中国はすでに2百万ヘクタールの土地で「ジャトロファ」を栽培していると述べている、そして2010年までには中国南部の諸州でさらに1千百万ヘクタールに「ジャトロファ」を栽培する計画であると発表している。ビルマは数百万ヘクタールに「ジャトロファ」を栽培する計画を明らかにしている。フィリピン、さらにいくつかのアフリカの国が独自の大規模な「ジャトロファ」プランテイションを開始させている。これまでのところマラウイに20万ヘクタールの「ジャトロファ」栽培地があり、ザンビアには1万5千ヘクタールがある。

不確定な基礎からの成果

 バイオディーゼル作物としての「ジャトロファ」の可能性には多くの不確実さがある。「ジャトロファ」という植物は一度も「飼い慣らされた」事がない。その収穫は予測可能ではない、最適栽培条件はまだ確定されていない。さらに大規模栽培の潜在的な影響は未知である。インドの「塩分海水化学物資中央研究所」所長のプッシュピト・ゴーシュ(Pushpito Ghosh)氏はこの「ジャトロファ」を10年以上研究してきた。彼は「ジャトロファ」栽培への性急な押しよせが「非常に非生産的な農業」に到る危惧を表明している。数年前に国際連合開発プログラム (The United Nations Development Programme)は劣化した土地に、「ジャトロファ」を実験的に植えつける為に資金を供給した。「ジャトロファ」はなんとか育ってきたが、種子油の収穫高は公表されたヘクタール当たり300リットルの数字からはかけ離れたものであった。2003年、自動車会社「ダイムラークライスラー」、「ドイツ投資開発会社」、インドの「科学産業研究評議会」、「ホヘンハイム大学」が国際事業団を組んで、「ジャトロファ」油をバイオディーゼルに変えるため必要な「エステル転化反応プロセス」を開発する目的でゴーシュの研究チームに資金を提供した。ゴーシュの研究チームが作りだした「ジャトルファ・バイオディーゼル」はヨーロッパの基準を充分に満たす良品質であったので、菜種油、ひまわり、大豆から取ったバイオディーゼルを凌いだ。ゴーシュの夢はエステル転移反応プロセスを経済的に貧しい村でも使用できるものにする事であった。インドに点在する60万の村の貧しい約8万の村は頼れる燃料も電気もなかった。ゴーシュのチームはまもなく村落や小規模産業での使用に十分な1日250リットルのバイオディーゼルを生み出す「エステル転化反応ユニット」を作りだした。

不確定な未来と欠けている研究

 インドに於けるこの希望作物の植えつけの大部分はまだ未熟で、最高生産性には達してはいない。「ジャトロファ」研究の先駆者ゴーシュ氏は、「ジャトロファ」の大量栽培の問題が十分に理解される前に、あまりに多くの助成金が農民に支給されている事を心配している。彼は、農民に「ジャトロファ」を換金作物として他を捨てて植えることに賭けずに、むしろ従来の栽培農作物に平行させて植えるように助言している。インド「プランニング委員会」が1ヘクタール当たり1300リットルの油生産を見積もっているのだが、ゴーシュ氏はその予定数字の半分を見積もっている。石油会社「D1 Oils Indian」のオペレーションは収穫量に関する研究に焦点を合わせていて、多くの「ジャトロファ」の品種をテストしてインドの多様な気候風土でどれが最も良く育つかを調査している。しかしこの研究もまだ断片的で、全体的な取り組みになっていない。バイオディーゼルの企業家、ルイ・ストリドム(Louis Strydom)氏は、ケニアで大規模な「ジャトロファ」バイオディーゼルプランテーションと精錬所を創立するのに奮闘してきてこう悟っている。世界で小規模農民による補助的な作物として「ジャトロファ」を栽培してバイオ燃料を生産するのは生活できる程度に成り立つ経済モデルではある。しかし大規模な商業的生産になるとそれは別の事業になる。1つには、「ジャトロファ」の高生産性と年多数回収穫は誇張されすぎている。それらが可能になるのは、最適条件での降雨と土壌質、殺虫剤と肥料の使用、があって始めて可能になるものである。ゴーシュ達が、理論的に理想的バイオエネルギーとされる「ジャトロファ」でも用心深い対応を推奨しているのは妥当だといえる。今最も必要なのは、「ジャトロファ」が大規模栽培プランテイションになった時の生態的なそして社会経済学な影響に関する調査研究である。

参考資料:
◎Fuel, Grain Prices Spur Food Price Hikes - washingtonpost.com
By Lauren Villagran October 10, 2007
◎Jatropha Biodiesel Fever in India
By Dr. Mae-Wan Ho  ISIS Press Release 15/10/07
◎Holding the seeds of the future
By Terry Slavin The Guardian Weekly September 28,2007

Author 事務局 : 14:43

BMW技術の奥深さに触れて 【AQUA191号】

知識よりも知恵を大切にした技術
BMW技術の奥深さに触れて

 私たちは、あらゆる物が消費され、廃棄されていく時代にくらしている。しかし、人間の長い歴史から言えば、この循環が途切れた社会は、近代の高度経済成長のごく短い時間の中で起こっている。とすると何がこの変化をもたらしたのだろうか。

  「人間の限界を自分自身が認識できなくなった時から、人間は自分自身を破壊するようになった」とフランスの文化人類学者のレヴィ・ストロースは「遠近の回想」(みすず書房一九九一年)で述べている。人間は、生物界の中では特殊な生きものではないということを再考する時期が来ている。西欧のデカルト的な知性主義は、人間を自然の世界から切り離して特別なものにしてしまい、そのときから人間たちは自分たちを支えていた基盤を失い、自分自身を攻撃しはじめたのである。
 しかし、一方、アジアモンスーンに共通する農民たちは、自然に学び活かそうとして知恵を働かせて持続可能な技を作った。そして、かつての技術は、人間と自然との豊かな橋渡しとして存在したのである。自然界の豊穣な世界を深く理解し、その仕組みにある種の理想をいだきながら、しかし、自然とは完全には一体となれない自分たちの限界と悲しさを知って上品に行動していた。広大な自然界の仕組みと人々のくらしの間に微妙でゆるやかな間をとることで、自然と共に生きる人間の精神と技を作り出していたのだ。そこには、精神と身体が一体となった世界が存在する。私たちがここで再認識しなければならないのは、知識よりも知恵を大切にした時代が遙かに長かったことである。経済よりも物作りを大切にしていた時代の方がずっと長かったことである。スピードや効率性は、生物である人間にとってかならずしも幸福をもたらすものではなかったのである。
 今回、茨城BM自然塾の塾長であり、BM技術協会の常任理事である清水澄さんと「家庭排水の完全ゼロエミッション化」と「太陽光発電のある暮らしは地球環境と家計にやさしい田中発電所所長」(名刺にそう書いてあった)田中一作さんにお会いして、人間の知恵としての技の延長上に生態系を活かしたBMW技術があることを実感した。

現場からの発想を生かす
大いなる実験家 清水澄氏
 そのひとの印象は、強烈であった。エネルギーに満ちあふれた言葉の重みに驚くばかりである。しかも、現場からの発想を生かした本来の実験家である。表面的な実績を挙げようとしている人などとは、そもそも人種が異なっていることがすぐに分かった。茨城の酪農家、清水澄さんは水戸に近い湖沼のほとりに住んでおられるが、この沼にそそぐ涸沼川の上流には有名な御影石(花崗岩)の山地がある。その岩石をミネラルとして生かそうとしているのである。BMWの技術と水田を組み合わせて、再び地域水系の浄化力を水田に取り戻す実験を行っている。稲田の花崗岩に発する水系とその結実点としての涸沼そのものが大きな自然システムとして見えてくる。田んぼそのものを曝気してしまう装置も考えた実験田さえ持っているのには驚いた。BM技術協会顧問の長崎浩氏によると、BMW技術は、そのものが五〇%の技術で、あとは、地域が創意と工夫を積み重ねてそれぞれの地域に合った現実的なものとするという考えが基本にあるというが、実際に清水さんを見ているとその奥深い思想が見えてくる。往々にして研究者は、自分の技術を地域に委ねるだけの器量がない。だから、地域の伝統的な技術を遅れたものと否定する。そもそも農業そのものが地域に根ざした土着的な技術によって成り立っていたことを考えるならば、この技術を現実の中に展開する農家の土着技術を尊敬しなければ成立しない話だ。BMW技術は、農家そのものを活性化させる優れた技術だと感じた。

小さな田んぼの循環が地球の大きな循環の要を握っている=完全循環型の暮らしは可能か
田中一作氏の実験
 私は、これまでずっと考え続けていた。排出ゼロの完全循環型システムなんて本当に可能なのだろうか?これまで多くの一見、ゼロエミッションというまやかしのシステムを見てきたが、田中一作さんの住宅というより、暮らしそのものは本物だった。かねてからエコトイレは、莫大なお金がかかり、臭気が完全に消えないなどの問題がどうしても気になっていた。また、微生物が分解した後にそれらが畑や、田んぼで肥料として生かされない限り循環は途切れてしまっていることに重大な問題を抱えていると疑問を持っていた。
 それらの疑問が、田中さんの小さなひとつの家庭で行われている現実としての循環システムを垣間見ることで、すべてが解消したのだ。完全なるゼロエミッションは、むしろそれに留まるのではなく、積極的に循環型に変化し、完全な循環システムへと完成する。そんな究極の住宅なのである。
 田中さんの家では、トイレ、台所、洗濯などの家庭雑排水と生ゴミの大部分をBMW技術を使った水浄化プラントで処理をする。また、それだけでなくそれを田んぼや鶏の飲み水として循環して使うのである。しかもこの浄化システムは、田中さん夫妻と清水さんを始めとする地域のひとびとが作った手作りシステムだというのだから驚きである。田中さんの家のシステムは、清水さんを始めとする地域コミュニティーの復活を伴いながらその豊かさを確実に増している。
 田中さんの裏庭には田んぼがある。水質浄化システムで作った生物活性水を使って十坪ほどの餅米の田んぼを作っているのだ。家庭雑排水からできた生物活性水はいったん小さな水槽に入れられそこから田んぼに引き込まれている。家庭雑排水が流れ込む浄化槽には、モノアラガイやサカマキガイが大量についていて有機物を食べていた。見事に育った、有機の田んぼにはヒメゲンゴロウやミズカマキリなどの水生昆虫、フナやタモロコ、モツゴなどの魚影が多数見ることができた。なにより、稲の茎が太く、理想的な有機の姿をしていた。これが地元で採れた岩石と、地元の土着菌と家庭雑排水の有機物からできている循環の究極だとすれば、BM技術協会の礒田有治さんが言う現代の「肥溜め循環理論」だということが深く理解できる。この延長に現在では、逆に売電までしている太陽光発電システムや、地域のコミュニティーの復活に奔走する姿も重なって見えてくるのである。
 BM技術協会の方々の理想に、水源から河口まで、地域流域の土と水を再生するミクロコスモス構想が壮大な計画としてあるが、この考えの基本をなすのがこの小さな田んぼを含む小さな完全循環システムの発想から生まれているということを実感した。「小さな田んぼでの循環が地球の大きな循環の要をにぎっている」BMに関わった人々の最終的な到達点が地球の生態系の再生そのものだとすれば、それはもっとも健全な技術のひとつであることは確かである。

水田農業には、経済価値で計り知れない豊かさがある
 農村地域で適切な利潤を得ながら人間らしい豊かな生活を行うためには、地域の農家の生物多様性を生かした持続可能な技術がなければ成立しない。また、自然を直接相手にしている一次産業である農業は、それだけ自然の驚異から受けるリスクが高く、多くの自然災害の影響を受けやすいと同時に、健全な持続可能農業は、地域の景観を守り、生物多様性を育み、風景を作り出している。これらは、すべて経済効果には換算されることのできない外部経済と呼ばれるものであるが、このことに価値があるとすればそれを支えるシステムが必要となる。それが環境直接支払いの概念である。水田農業には、経済価値で計り知れない豊かさがある。これらを地域と都市住民が一緒になって支えるシステムが早急に必要なのである。BM技術協会のひとつのゴールと考えている水域全体の生態系の再生がこれを支える技術の一つであることは実感として理解できた。

人間もバクテリアも、その棲み場所
   つまり、生態系から見ることだな
・・・ヴェルナツキーは、地球の生命を「岩が分散したもの」と考えた
 わたしたちの生活は、農家の生活も、地域の生活も地球の大いなる物質循環の中にある。植物であれ、人間であれ水分を除いた乾燥組織の中に取り込まれている元素の量と、地殻の岩石中の元素量との間にはかなりの関係があることがわかっている。近年地質学者は、ロシアの科学者V・I・ヴェルナツキーの考えを受け入れるようになった。ヴェルナツキーは、地球の生命を「岩が分散したもの」と考えた最初の科学者である。当時は学説として科学者には受け入れられなかったが、つまり、無機質の岩石は数億年にわたって自らの配列を変えて、細菌へ、そして人間へとより複雑なかたちの生物に向かって自らが変化するものである。ということである。そして、人間もまたバクテリアによって土にそして、岩石に帰るのである。
 BMWの中に含まれるのは、特定の菌ではなく、原材料や菌体製造場所に棲む土壌微生物群が増えたものだという。調査分析では、通性嫌気性菌といって好気でも嫌気でも活動する菌が多いことが分かっている。通性嫌気性生物は、そのエネルギー獲得のため、酸素が存在する場合には好気的呼吸によってATPを生成するが、酸素がない場合においても発酵によりエネルギーを得られるように代謝を切り替えることのできる生物である。通常は細菌であるが、酸素の有無に関わりなく醗酵を行う菌(レンサ球菌,乳酸菌,酵母など)が含まれる.嫌気性か好気性かそれにこだわることはないとは言え、実際にBMWは曝気しているのであるから軽い好気性の状況にあるのは間違いない。酵素であれミネラルであれ、特定の種類のものを「農業資材」する考えをとらないというのがBMW技術の方針である。これが資材さえ多様であり、地域の土壌もそこに棲息する菌類も人間も多様であるとする考え方の基本が見えてくる。

生態系農法の低エントロピー生産技術のひとつであること
 BMWは生態系農法の低エントロピー生産技術のひとつであることと、そこに流れる地域に半分委ねるといった基本概念がアジアモンスーンの多様性を重視する概念とゆるやかに合致する。あとの半分の技術は、農家自身が現場に合った自分の工夫によって完成にすることが提唱されているのである。かえってこのような性格の技術だからこそ、農業そのものがおもしろくなってくる。もともと、農業は創造的で自由なものであったことを考えると、多くの借りものによって成り立った技術は、農家を解放せず、むしろ農業の豊かさを制限することになる。いわば民衆の技術になって始めて本来の農業技術としての豊さが見えてくるのである。農家から草取りの重労働を解放しようとして、かえって多くの環境問題を抱えることになった現代の除草剤の現状を考えてみれば、農業技術の持つ性格が見えてくる。地域の実態と共に改善される。こういった技術が、むしろ地域のコミュニティーの再生を行うことのできる技術である。
 地球環境の危機が叫ばれて、現代社会を支えてきた科学技術の在り方全般に反省が迫られている。先端技術がとめどない勢いで発展する一方で、時代や空間を遙かに超える生物多様性を生かした共生技術が、先住民族の知恵としてすでに完成している例は少なくない。江戸時代には日本全体にこうした地域に根ざした持続可能な共生技術が各地で完成の域に達していたことは、日本農書全集(全七六巻:農文協)を見れば明らかである。
 生命の進化から考えた生物学的共生概念で世界を考えたら現代の弱肉強食といったネオダーウイニズムとは、全くちがったものになっていただろうと、進化生態学者のエリザベット・サトリウス博士は指摘する。生物をその生態系において見るとき、そこには法則の多様性が本来つきまとうのである。生物の論理の共通性と多様性、一見合い反するこの両極端に対して節度を持って対応していきたいものである。
 今回の茨城の訪問では、あまりに当たり前のことを発見することができた。自分がいかに知らないかを実感した豊かな経験であったといまこの現実をかみしめている。


NPO法人 田んぼ 理事長 岩渕 成紀

Author 事務局 : 14:41

「有機認証取得がはじまりました。」第2回  【AQUA191号】

BM技術協会会員の動向
有機認証取得がはじまりました第2回
 (財)夢産地とさやま開発公社 理事 山本 優作さん

食品への安全性が揺らぐ事件が国内外で相次いで発生する中、大手スーパーや食品メーカーが、消費者に「安全・安心」を訴えるため、有機農産物の販売の拡大、有機加工食品の開発に本格的に乗り出そうとしています。しかし、現在、国内の有機農産物生産は、全体の一%にも達していません。今後、大手スーパー間、また、産直を中心に安全な農産物を売り物としてきた生協等を中心とした流通間で、国内外の有機農産物、有機食品を巡っての動向が注目されています。一方、昨年、有機農業基本法が制定され、これに基づき、国や各県では、基本施策の策定や調査作業に入っています。
BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。
前号から有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、インタビューを始めました。第二回は、高知県・(財)夢産地とさやま開発公社理事の山本優作さんです。
(まとめ:礒田有治)

―――今年、有機認証を取得されたそうですが。

山本 全部で一・二ヘクタール取得しました。認証が下りたのが今年5月です。記録はずっと付けていたし、一九九五年から、一〇年以上、農薬も化学肥料も使っていません。有機認証は、記録さえあれば取れます。ただし、一七品目の作物を作っていたから、作成する資料が大変でした。例えば、米だけなら米だけで良い。ところが一七品目あったら、一七の記録が過去二年間の全部要るわけです。竹林の場合は、永年作物なので、三年間の記録が要るので、それが結構大変でした。全部で提出した書類が二百枚以上ありました。それがこたえました。

―――有機認証を取得してみて、どのような感想をお持ちですか。

山本 認証を取ったということで外向きにアピールできます。一般の人はまだ有機認証(JAS)のマークを知らない、認証の意味も分らないというのが実態です。ただ生協の店などに出したら、結構反応があります。今までは、県外から買っていたが、認証のある野菜が並びだしたので、少々遠くても買いに来だした。そんな声は、ぽつぽつあります。高知に認証を取った農産物を販売する専門の店が今年、八月頃にオープンしました。「いつ出してくれるのか」という要請がありますが、今は、持って行く手間がありません。

―――昨年、有機農業基本法が成立しましたが、どうような意見をお持ちですか。

山本 国は、法律は作りましたが、これから基本計画を各都道府県で作っていかなければなりません。今後は、県レベルでどの程度のものが実際にできて、行政がどれくらい支援体制をできるのかではないかと思います。けれども、総じて行政は遅れます。とくに高知県では遅れています。その辺がどうなるかだと思います。あとはもう、生産者の方がどれだけ行政に対して働きかけができるのか。そして、どういう支援をしてもらいたいのか、提案をきちんとした形で上げて行けたらよいと思います。そうすれば多少は変わってくると思います。
僕は、前から言っているのですが、有機認証を取った人だけが表示義務があるのはおかしいと思っています。有機認証を取っていない人でも、どういう資材を使っているか、何回、農薬をかけたか、全部表示してほしい。そうすれば、われわれの物が優先して売れると思う。有機認証を取っていない人はそういうことをしない。例えば、僕はショウガを無農薬で作っているが、高知県では一五回まで農薬の散布が認められている。どういう農薬を何回使ったか、このショウガは、栽培期間中に一五回使ったとか。そして、一般栽培では、今も、土壌消毒に臭化メチルを使っています。「作付前に臭化メチルを使い、作付期間中に一四回、農薬を散布してできたのがこのショウガです」と言い、「こちらは無農薬です」と言ったら、絶対に、無農薬の方が売れると思います。だから、本当に共通の土俵で勝負するのであれば、全部の作物にそういう表示をしてもらいたい。

―――外観は、一緒ですからね。

山本 そうです。そこまで行かないと本当のものにならないという思いがあります。

―――大手スーパーなどが、有機認証農産物の取り扱い拡大や、有機食品の開発を進めていることについては、どうお考えですか。

山本 基本的には良いことだと思います。しかし、量販店で認証があるから高く売るというところはあまりありません。僕のところでは、大豆を作るために虫を何万匹も取る等、とても手間がかります。豆腐を一丁いくらで売ったらいいかを計算したら、一丁五〇〇円で売らないと、コストが合いません。普通の豆腐は、今安いので一二四円ほど、高いので一四〇円くらいで売られている。そんな値段では全然、合わない。だから、あとは価格の問題かと思います。
大手に限らず量販店がコーナーを設けて販売するということは、一般の人々の目に有機認証JASというものが触れる機会が出てきていることだと思います。今高知の量販店でもJASの農産物が並んでいる傍にJASとは何かという説明がしてあります。そのことによって皆がJASを認識するきっかけになると思います。普通の農薬を使った農産物とJASとか、JASではなくとも無農薬で作った物を比べた時に、無農薬だから物が悪いでは通らない時代です。だから、無農薬の物でも一般に栽培したものと変わらないくらいの品質でないといけない。そこまで仕上げるには手間がかかる。手間がかからない物もあります。例えば蕎麦などは一般の物とまったく変わらない。農薬も要らないが、きっちり土作りができた畑であれば大丈夫です。他に、この地域で言えば四方竹も孟宗竹も大丈夫です。作る物を選択することが大事です。

―――山本さんご自身の有機農業の取り組みの経過や、今後のあり方をお聞かせください。

山本 有機農業は、とさやま開発公社を立ち上げた当時から、高知の生協組合員から安全・安心な物を提供してもらいたいという要請で始めました。それから、BMの技術を導入した段階で、良い堆肥を作って栽培していけば、それなりの物ができるだろうという思いがありました。
土佐山は、鏡川の源流の地域にあたり、高知市民の水瓶になっています。ここから高知市民の飲料水が行きます。そこで化学農薬や化学肥料を垂れ流していけば、市民に理解してもらえないのではないか、という思いがありました。源流で市民に理解してもらえる農業を展開していく必要がある。合併する前でしたから、高知市の水道代に一メーターにつき、一円上乗せすると、億の財源ができるので、それを土佐山に還元してほしい、と前の市長に僕は言っていました。そのようにお互いが共存しあっていかなければならない。これだけ環境の問題が言われている時代だから、可能な限り全体として有機に切り替えていく必要があるのではないかと思います。
もう一つは、土佐山には柚子があります。柚子は今、土佐山で一番販売高の大きな作物です。キューピー・マヨネーズと高知の大手の販売会社である旭食品がうちの柚子を全部購入しています。それら両社からJASを取ってほしいという依頼がありました。
今、JASを取る方向で話を進めています。しかし、JASを取るのに三年間かかります。すぐ取れるところもありますが、とりあえず、誰かが取っていく。JASを取るために何が必要か、それは自分が取らないと分らない。とりあえず自分がJASを取って、依頼を受けている柚子がどこまでいけるかが課題です。
キューピー・マヨネーズも旭食品もJASの認証のある物が将来絶対に売れるという見通しがあるので、両社からJASを取ってほしいという依頼が来ているのだと思います。一般栽培からJASに切り替えて、例えば、一般栽培の時に百万円取れていたとします。彼らは、今年JASというか、そういう栽培法に切り替えたために七〇万円しか取れなかった場合、残りの三〇万円の所得保障をしようとまで言っています。新たに植えるところは苗代も出していいと言う。向こう五年くらい収入がないから、所得保障してもいいとも話しています。一定のものをきちんと示したら、取組んでいく農家もいるのではないかと思います。

Author 事務局 : 14:37

「やはりBMの力は凄い」 【AQUA191号】

 八月二四日、トキワ農場の新鶏舎の建設を関係者一同で祝った日の出来事だった。BMで飲水改善をした水を飲ませることによって感動した平成六年一〇月のとある日を改めて思い起こした。

BMに取り組んだのは、平成六年の四月からだったと思う。平成五年のBMW技術全国交流会で、大分県グリーンファーム久住の荒牧さんの『白身で黄身が持てる卵』との出会いから待ちに待ってようやくBMシステムを導入した。飲水改善・生物活性水作りという一連の流れの中で、約半年かけて雛から育て、その雛から生まれた卵が、荒牧さんのような卵を作り出すと確信し、事実その通りになった、平成六年一〇月、トキワの卵がBMの卵になった日だった。
今年(平成一九年)の夏は、全国的な猛暑、青森も暖冬に始まり冷夏の様相を呈していたが、一変しての猛暑、我が地方には不向きと言われていた、飼料米「べこあおば」の穂も実り、豊穣の秋を迎えようとしている八月も末のこの時期に、気温三〇度を越える中で、この出来事が起きた。
トキワ農場の場長の赤坂が導入当初から飲水改善をした水を飲ませた「後藤もみじ」の産卵率が九五%(通常は九二%程度)となり、もう一つの「ボリスブラウン」も九六%の産卵率であるとの報告を受け、やはり、良い鶏舎でよい管理、しかも飲水改善をしているのでこのくらいの成績は出るのか、などと一人悦に入っていたが、せっかく鶏舎メーカーの社長もいるのだから久しぶりに卵を割ってみようと思い、赤坂場長に「もみじ」と「ボリス」の卵を一〇個ずつ持ってきてもらい、触ってみた。手に取った瞬間ずしりと来た。あわてて卵を割ってみると、案の定すごい盛り上がりだった。直ぐに割り箸を準備し、箸でつまんでみた。とにかくすごい、いくら揺すっても、白身が壊れない。久し振りの経験に手が震えたが、それでも白身が崩れない。黄身を箸からゆっくりと離していくと、見事に白身で黄身がつかめた。思わず、赤坂場長に「この卵選んできた?」と聞くと、赤坂場長は、いとも簡単に「いいえ、ただ鶏舎から集めてきただけ」との返事。何個も割ってみたがどれも同じだった。
今まで、何度も卵を割っては白身で黄身を持つという挑戦を繰り返してきたが、正直一〇個中三個から五個程度、しかもその日生まれた卵で、かつ涼しい時期にという、ある意味限られた条件の中での出来事であったように思える。しかも今回の鶏舎は、環境は整っているとはいえ、開放の直立六段のシステム鶏舎(和歌山県に本社のあるヨシダエルシス製)で、良い成績は、出るとは聞いていた。また、実際に見に行って、何度も確認をした。しかし、なかなか、信用は出来ない。私自身は、平飼いが一番良いと思っていた。しかし、事実である。
改めて、一日置いた卵でやってみたが、すべて掴めるし、要領さえ得れば、誰でも出来る。
これで確信した。BMは凄い。これは、鶏舎が凄いのか、BMが凄いのかと、ヨシダエルシスの社長に聞いたが、「このような卵は、見たことがない」との返事だった。ということは、やはり、BMが凄いのだと今更ながら、確信した。
やはりBMの力は凄い。

BM技術協会理事長 石澤直士

Author 事務局 : 14:32

 
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