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2007年12月27日

「有機認証取得がはじまりました。」第3回 【192号】

BM技術協会会員の動向
有機認証取得がはじまりました第3回  謙信の郷
峯村正文さん 秋山猛留さん

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。
 有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、インタビューを続けていきます。第三回は、新潟県・謙信の郷の峯村正文さんと秋山猛留さんです。 (まとめ:井上忠彦)

―――いつから有機認証を取得されていますか?
秋山 二〇〇三年に米で二町歩の面積を取得しました。それからだんだんと増えて、今年は四・二町歩になりました。
峯村 二〇〇一年から毎年取得しています。今年は三・八町歩ですね。
―――有機認証を取得してみて、どのような感想をお持ちですか。
秋山 謙信の郷の金谷さんに紹介してもらった有機認証団体、NPO法人民間稲作研究所(http://inasaku.or.tv/kenkyujo/)の稲葉さんから「簡単だよ」と勧められてやってみたのですが、けっこう大変でしたね。特に書類作成が面倒な作業だと思いました。でも二年目からは、まぁこれくらいはしょうがないだろうなという感じです。
―――大手スーパーなどが、有機認証農産物の取り扱い拡大や、有機食品の開発を進めていることについては、どうお考えですか。
峯村 やっぱり消費者がどのくらい有機農産物を求めているか、理解してくれるかでしょうね。安全や環境保護にある程度こだわる人たちが増えなければ、これ以上の消費の拡大は見込めないかもしれません。
―――有機農業への取り組みについてお聞かせください。
峯村 有機に切り替えるとまず生き物が増えてくるのに驚きます。田んぼにいるユスリカやミジンコの量をみればはっきりと違いがわかる。こういった生き物たちの量を、どの程度有機農業が成功しているかのひとつの尺度や基準にできるのではないかと思います。
秋山 わたしも有機に切り替えてから生き物がどっと現れだしたのはびっくりしましたね。
峯村 ただ有機の場合、わたしのところのように基本が夫婦二人の家族経営ですと、作業の負担が増えるのがきついですね。特に除草です。以前、シルバー人材派遣に除草作業をお願いしたことがあるのですが、大変な作業だと思われたらしく半日で帰られてしまいました。電話をかけて聞いてみると「もう有機の田んぼの草取りの仕事は引き受けないから」といわれてしまいました(笑)。それからここだとカモ除草の場合、マガモがカラスに狙われてしまいますね。何かいい対策はないものでしょうか。
秋山 家族四人くらいだと、一〇町歩を超えたらとても手が回らない。有機ではやっていけないのではないですか。
峯村 米から一部大豆などに転作しましたが、米と他の作物と、作業の忙しい時期がどうもかぶってしまいます。
 絶対に必要なのは周囲の農家の理解でしょう。除草はこちらでやりますからと断っていたのに隣接地に勝手に除草剤を撒かれたりしたこともあります。飛散や農業用水の問題は大きいです。やっぱり地域全体として協力して取り組んでいかないと。また家族の理解もいるでしょう。妻に冗談で「来年も有機で大変な除草につきあわせるならあなたと離縁したい」といわれたことがあります(笑)。
―――有機農業基本法成立に関して、国、県に対する要望などありますか?
秋山 認証取得にはコストがかかりますから、認証取得のための経済補助を期待します。農作業以前の出費もけっこうかかります。機械も毎年のように故障が起こり、そのたびに何十万円も費用がかかりますよ。
峯村 わたしはいろいろな地方に行って見聞きし、雑草の出ない方法などを教わってきました。でもその地方で行われているのとそっくりそのまま同じことをやっているはずなのに、なぜかここでは雑草が出てしまうんです。農業技術やノウハウというものはどうしても地域に根ざすものなんでしょうね。このあたりは気温や土地の条件から、草が出やすい状況にあります。
 やっぱり各地域にあった有機農法というものがあるはずです。そういう指導をしてくれる技術指導員が身近にいてほしいですね。びっくりするほど多くはとれなくてもある程度安定した収量が見込めるやり方とか。いままできちんと有機農法の研究を積み重ねてきたといえる研究機関は日本では数えるほどしかないのではないでしょうか。
 すこし上の世代には、作業がいくら大変でも雨が降ろうが槍が降ろうが自分は有機で栽培するんだという強固な信念でやってらっしゃる方たちがいました。しかし研究すればもっと労働力のかからない有機栽培のやり方が絶対にあるはずだと思います。わたしたちは趣味で農業をしているわけではありません。
―――新潟では「土と水の学校」も何度も開催していますね。
峯村 はじめは苦土の使い方がよくわかりませんでしたが、「土と水の学校」によって数年でどんどん成果がでています。それから稲の苗に生物活性水を五〇〇倍に希釈したものを使用していましたが、今年は思い切って一〇〇倍希釈でやってみたら、はっきりわかるほど結果がよかったですね。一〇〇倍希釈だと見た目にも生物活性水の色がわかるくらいだし、おっかなびっくりだったのですが。
―――今後の展望についてどうお考えですか?
秋山 日本中が新潟のコシヒカリに追いつき追い越せで必死になっている間、新潟は次の手を打ってこなかった。コシヒカリの価格がここまで下がってきた今、みんなが目を覚まさなければならない時期かもしれません。

Author 事務局 : 2007年12月27日 12:33

 
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