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2007年12月27日

第17回BMW技術全国交流会が宮城で開催

「ひろげよう"BMの世界"森から海へ」をテーマに

第一七回BMW技術全国交流会が、一一月一六日(金)、一七日(土)の二日間、宮城県のホテル松島大観荘で、開催されました。「ひろげよう『BMの世界』森から海へ」をテーマに、全国の会員・関係者や、海外では韓国、中国からの参加もあり、合計約二七〇人が参加しての交流会になりました。今号では、交流会の概略を報告します。
(報告:長倉徳生)

今回のテーマをイメージしたオープニングビデオの上映後、西塚忠元第一七回BMW技術全国交流会実行委員長(みやぎBM技術協会会長)から開会の挨拶が行われました。西塚実行委員長は、今回のテーマの説明後「森から海へとつながるBMの世界を皆さんと語り合いたい」と交流会への期待を述べました。

○基調報告「流域の土と水の再生を」
  BM技術協会 理事長 石澤 直士
石澤理事長は、世界自然遺産「白神山地」を源流とする地元青森県の岩木川流域の上流、中流、下流の人たちと、流域の土と水を再生するため、話し合いを始めたことや、BMW技術を活用したモデルづくりに着手していることを報告し、こうしたことを進める上で消費者との連携が大切であることを訴えました。また、今後農業は石油危機に大きな影響を受けるとし、石油に依存する生産・生活からの転換、自然エネルギーの活用などを訴え、太陽光発電とBMW技術での生活と生産を個人で実践している例として、茨城県の田中一作氏の取り組みを紹介しました。

○特別講演「牡蠣をつくる森」 
牡蠣の森を慕う会
代表 畠山 重篤
畠山氏はフランスに行った際、森が守られているために、森の動物、川の魚、そして海の牡蠣、エビが豊かであることに気がついたと、森に木を植える運動を始めるきっかけを説明しました。森に木を植えることとともに川の流域の人たちの「心に木を植える」ことが大切であり、難しいことだと話し、上流の小学生を対象に続けている海での体験学習について具体的に語りました。
平成元年から続けてきた植樹の効果もあり川、海が豊かになってきたこと、今年気仙沼湾でウナギを捕獲したことを今年の植樹祭で報告できたことを笑顔で語り、これで孫の代まで気仙沼湾で牡蠣の養殖が続けられるのでは、と講演を締めくくりました。

○講演「BMW技術の概要と今後の展望」 
BM技術協会 顧問 長崎 浩
長崎顧問は最初に環境倫理学の父といわれたアルド・レオポルドの提唱した「土地倫理」を紹介しました。この土地倫理には「土地はその最初の構成メンバー(土壌、水、動植物)を人間の土地利用とできるだけ両立するよう保持すべき」とあり、BM技術協会もミクロコスモスを目指し地方自治体等と望ましい農業、土地利用、景観、地域社会のための施策や制度を追求していきたいと訴えました。
一方で、運動は技術に支えられなければ、地域社会、行政など世の中に広がっていかない。今後、技術の研鑽(適正技術)と道徳的な主張(政策目標)の双方を実現させるために、みんなで知恵を絞っていって欲しい、と今後の協会の活動への期待を述べました。


①「組合員農園、福祉農場で活用されるBMW技術」生活協同組合あいコープみやぎ 小野 奈美子
社会福祉法人みんなの輪    安田 たかね
小野氏は、大郷町にある市民農園で行なった組合員向けの野菜作り実践講座報告、生協で取り組んでいる、BM菌体、生物活性水を使った段ボール箱での生ゴミ堆肥作りの報告を行いました。あいコープみやぎでは、組合員と契約農家、福祉農園との間の資源循環の仕組みを、臭いが少なく手軽にできるこの方法で目指している、と発表を締めくくりました。
安田氏は、あいコープみやぎから委託されている生物活性水プラントの施設利用者による管理の様子、生物活性水を使った生ゴミ堆肥の製造試験の様子などを紹介しました。また、施設利用者による米粉を使ったパン作りについて解説しました。農園班が育てたほうれん草を使った米粉パンが人気であることが紹介されました。

②「有畜複合経営で活きるBMW技術」 
㈲大郷グリーンファーマーズ
代表取締役 郷右近 秀俊
郷右近氏は、平成九年に導入した飲水改善、生物活性水プラントを中心にした鶏糞、野菜くず、くず米、堆肥の循環の解説、鶏糞と米ぬかや未利用資源を使ったBM堆肥作りの解説など行いました。また、今年から本格的に取り組み始めた土壌分析に基づいた施肥、生物活性水を使った育苗の様子などを写真で紹介しました。

③「放牧豚、ノラ牛プロジェクトでのBMW技術」 
生活協同組合あいコープみやぎ
理事長 吉武 洋子
農事組合法人 おおさき赤べこ生産組合
組合長 高橋 精一
最初に吉武氏から、ノラ牛プロジェクトの意義について解説が行われました。このプロジェクトが休耕田を利用した放牧であること、またアニマルウェルフェアを意識していることが紹介されました。
高橋氏は放牧豚について、一反に一〇頭位を放牧していること、全体で面積が五町あり糞尿の処理は始めてから全くないことなどを報告しました。続いてノラ牛プロジェクトを始めた経緯を説明し、始めるにあたりあいコープみやぎと相談し、自然トラストの考え方を取り入れたと解説しました。今年飼料米作りを始めたことも報告し、四町で直播き飼料米を作り、豚のエサに一〇%混ぜる予定であると話しました。最後に、今年飲水改善プラントを導入したこともあって、豚の成育が良くなり、これまで出荷に一九〇日かかっていたのが二週間縮まってきたのではないか、と語り、発表を締めくくりました。

○講演「松島湾、気仙沼湾に注ぐ水をつくる岩石のストーリー」 
名古屋大学環境学研究科 教員 奥地 拓生
奥地氏は今回の講演に先だって行った岩石調査で分かった宮城県、岩手県の地層などについて解説しました。室根山をつくっている花崗岩からミネラルが溶けだし、気仙沼湾で牡蠣を育てていること、北上産地の石灰岩は海に流れたミネラルを陸に戻す働きをしていることなどが語られたあと、そうした岩石が地中から地表にあらわれるのは大陸のダイナミックな移動によるもの、と解説しました。
大郷グリーンファーマーズの生物活性水プラントから取り出した花崗岩が、一二年経て表面がざらざらして色が変わっている様子を写真で紹介し、花崗岩からミネラルが供給されていること、BMW技術は石を使って水を再生する仕組み、と解説しました。

■懇親会
一日目の講演、発表の終了後、懇親会が行われました。懇親会には全国のBM生産者から提供された食材の味をいかした料理が並びました。食材は、野菜、米、豚肉、鶏肉、果物の加工品、飲料などに及び、あらためてBMW技術の広がりを感じさせるものでした。

○生物多様性と水田の再生 田んぼの生きもの調査プロジェクト報告 
パルシステム生活協同組合連合会
産直事業部 田崎 愛知郎
田崎氏は生物多様性の説明で、人も四〇億年の命のつながりによってあり、生物多様性の一つとして活かされている、人間中心の価値観から生態系全体の価値観への転換が必要、と訴えました。その上で生物多様性農法を、多様な生物の中で作物を管理し栽培する技術と解説しました。田んぼの生きもの調査プロジェクトは、この生物多様性農法の確立と普及を目指していることを説明し、子供たちの食農教育にも取り組んでいることを、紹介しました。

①生物活性水によるクロレラの培養と養鶏飼料化実験 
山梨大学大学院医学工学総合研究部
 教授 御園生 拓
(株)山梨自然学研究所
代表取締役 向山 茂徳
御園生教授は、昨年の全国交流会で発表した生物活性水によるクロレラの培養実験を踏まえて行ったクロレラの大量培養について、実験データを示しながら解説しました。
引き続き向山氏が、培養したクロレラを飼料にするための取り組みについて説明しました。クロレラの殻を壊すためにバクテリアを利用することとし、菜種かすや米ぬかなどの原料とともに発酵させ、エサとして十分使えるものができたことを様々なデータを示し報告しました。飼料の高騰のおり、それぞれの地域にあるものを利用しながら、頑張っていきたいと向山氏は発表を締めくくりました。

②バイオベット飼育によるアニマルウェルフェアー基準にもとづく飼育管理の実態と検証」 
㈲ポークランド 菅原 幸治・加藤 仁
最初に菅原氏は、糞尿処理のコストが少なくてすむなどのバイオベット飼育の利点をあげたあと、子豚導入時点からの写真を見せながら仕組みなどを説明しました。
続いて獣医である加藤氏がバイオベット飼育と通常の豚舎飼育の豚のアニマルウェルフェアーに基づいた行動比較調査の報告を行いました。アニマルウェルフェアーとは、空腹、渇きからの自由、不快からの自由など五つの自由のことを示すと解説がありました。検証によりストレスを感じると増える血中の物質がバイオベット飼育の豚の方が低い、腸内細菌の状態がバイオベット飼育の豚の方が良好であった、などの結果が得られたことが報告されました。

~自然学を実践する~
   「土と水の学校」有機栽培講座実践報告
①概要と取組みの成果 
BM技術協会 事務局長 礒田 有治
礒田氏は会員産地の堆肥、生物活性水の性質、成分の違いを数値で示し、自分たちの使用している堆肥、生物活性水の性格を知った上で使うことが大切であると解説しました。
また、「土と水の学校」で実践してきた土壌分析に基づいたミネラル、微量要素を含めた施肥による各生産者の成果を、写真を使って紹介しました。果菜類の収量が上がった、根菜類の大きさが揃い規格外が減った、コメの食味が上がった、などの報告がされました。
②BMW技術による有機栽培 高品質・多収穫の栽培の仕組み
  「土と水の学校」講師 小祝 政明
小祝氏は、高品質・多収穫栽培について、「正しい土壌分析と施肥設計」、「関連微生物の培養技術」「正しい堆肥の作り方と使い方」の三点が重要と解説した後、植物生理、有機栽培の長所を説明しました。また、これから私たちに必要なこととして、「高品質・多収穫によるマーケティング」「高品質・多収穫によるブランドの確立」「健康野菜による予防医学の普及」の三点をあげました。
③実践報告
・青森県 (農)八峰園  古川 治
リンゴの秀品率の向上に取り組み、リンゴの葉の大きさが揃い、生理落花がほとんど見られなくなったことなどを報告しました。また、秀品率も昨年の五〇%から八五%に改善されたことが紹介されました。

・宮城県 ㈲大郷グリーンファーマーズ  熊谷 剛介
取り組み二年目となった今年の水稲とトマトの事例が発表されました。稲は、ミネラルを施肥したために根の張りが良く初期成育が良くなったこと、ヒエと台風の影響などで収量減になったが、除草を徹底することで多収穫・高品質のコメ作りが可能、と報告されました。トマトは、移植時に苗を生物活性水につけ初期成育が順調だったこと、ミネラルの施肥により樹体が堅くしまる効果があったことなどが報告され、今後の課題として天候ごとの水管理の工夫などがあげられました。

・山形県 ㈲ファーマーズクラブ赤とんぼ  今野 純
今年はキュウリの硝酸イオンの少ない栽培、多収穫・安定収量の確保に取り組みました。測定の結果、一般のキュウリに比べて硝酸イオンが大変低かったことなどが報告されました。ミネラルに加え微量要素のバランスの良い施肥により、天候に左右されずに安定的な収量を確保できることが実感できた、と報告されました。
コメについては安定収量と食味・品質向上を目標として取り組み、日照不足のために初期成育が遅れ収穫時期も昨年と比べて遅れたが、収量は反当たり九・五俵収穫できたことなどが報告されました。

・新潟県 ㈲謙信の郷  峯村正文
稲の多収穫・高品質栽培に取り組みました。苦土を施肥したとき葉の色があせないために穂肥を与える時期を誤るため、色、草丈、葉や茎の固さ、気候などから時期、分量を総合判断する必要であると確認したことなどが報告されました。また、今年行ったBM堆肥と生物活性水を使ったプール育苗による培土の実験についても報告され、最終的に苗の根を確認したところ非常に良かったことが報告されました。

各地の実践報告後、礒田氏がこれからの研究課題として、利用目的に合わせた堆肥・生物活性水づくりがあることを示し、研究対象として、茨城県の田中一作氏が実践している家庭雑排水を原料にした生物活性水を利用したコメ作りの例を紹介しましました。

■総括及び次回開催地発表
全ての発表終了後、伊藤幸蔵常任理事が今全国交流会の総括を行い、「発表のレベルが上がってきている。そろそろ次のBMW技術の進む方向について話をする時期にきているのではないか。発表のあった飼料化や様々な問題について、自分たちの地域も含めて新たな活動を展開していただきたい」と述べました。
続いて石澤理事長より、閉会挨拶と次回の開催地となる千葉県の(農)和郷園の木内博一代表理事(協会常任理事)が紹介され、木内常任理事は、来年の全国交流会を、地域、行政まで巻き込んで活動できるきっかけにしていきたい、と豊富を語りました。

■現地視察会
交流会の後に催された視察では、一日目に発表のあった、社会福祉法人みんなの輪の「わ・は・わ大郷」味明分場と大郷グリーンファーマーズの西塚農場を訪れました。「わ・は・わ大郷」味明分場では、生物活性水プラント、生ゴミ堆肥化プラントの見学などを行いました。パンに加工するためのほうれん草もここで栽培されていて、パウダーにしてほうれん草を練り込んだ米粉パンを、お土産にいただきました。西塚農場では、堆肥についての説明を受けた後、平飼鶏舎、トマトの栽培されているハウス、生物活性水、飲水改善プラントを見学しました。プラントから取り出した一二年間たち色の変わった花崗岩と新しい花崗岩をたたいて、音の違いや表面のざらつきを確認しました。前日の奥地氏の解説にあった、「石が死んで水を作る」というBMW技術の一端を実感することがきました。

Author 事務局 : 2007年12月27日 12:23

 
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