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2008年03月01日

「有機認証取得がはじまりました。」第5回 【AQUA194号】

第5回 ㈲ファーマーズクラブ赤とんぼ
山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼ 御田伸一さん

有機認証取得日 二〇〇一年一一月
有機認証面積  五三・四アール
有機認証団体  ㈱アファス認証センター

 BM技術協会では、これまで、自然生態系の保全・回復を目指し、資源循環型の農業技術の普及に取組んできました。二年前から会員の各産地で取組まれている~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座では、BMW技術を活かし、有機栽培技術の確立を図ろうとしています。アクアでは、有機農業に取組み、有機JAS認定を取得している協会会員・産地にJAS認定取得の動機や経緯、現在の「有機農業」を巡る動きについて、どう捉えているかインタビューを行っています。第五回は、山形県・(有)ファーマーズクラブ赤とんぼの御田伸一さんです。     (まとめ:礒田有治)

 ――有機栽培をはじめられた経緯をお聞かせください。
御田 高畠町では、三五、六年前から和田地区で有機農業が始まり、各地域に広がっていきました。私は、米沢郷牧場ができた頃から、最初は、有機ではなかったけれど、果樹の農薬を減らすことから皆と一緒に始め、その後、田んぼへと進めてきました。自分なりのきっかけは、当時、空中散布や除草剤をやることによって、あらゆる生物が死んでしまったことです。カエルとか、イナゴとか、本当に虫一匹いなくなる。そんなものが本当に食べられるのかと思ったのが一つのきっかけだったと思います。農薬によって体調を悪くする人もいたので、農薬について考えさせられました。
――農家自身が健康を害していたということですね。
御田 自分が小学校や中学校の頃は、すごく効く農薬があって、それを撒くと、そこは立ち入り禁止になる。そういう農薬を農家が使っていました。農家の人が、五〇代くらいになってくると、脳卒中なんかを含めてだけど、倒れる人が多かった。あらゆる虫や生き物が死んでいく光景っていうのは、すごく恐ろしいと思いました。
――農薬を減らしてきて、水田の方はいつ頃から取組まれたのですか。
御田 除草剤とかを使わなくなったのは二〇年くらい前。有機栽培になったのは一〇年くらい前で、有機認証を取ったのは、二〇〇一年です。赤とんぼの生産者で、取得しようということで、認証を取りました。
――大手スーパー等が有機認証の生産物の取扱いを増やしていこうというと発表していますが、どう思われますか。
御田 大賛成ですね。基本的に食の安全とかが、毎日のように言われている中、そうしたことを農家がやっていくってことは、これからは当たり前になっていきます。JASを取る、取らないに関わらず、農薬を減らしたり、そういう努力をしていかなければならないと思います。農家にとって、特に果樹栽培では、農薬は、保険みたいなものです。県の防除基準があって、ラフランスが一七回、リンゴが一六回くらいの散布が防除基準になっていて、それくらい農薬をかけても大丈夫ですよって、県のお墨付きなのです。でも、本当にこんなに必要なのか。私の果樹だと、リンゴで五回くらいですみます。農薬散布というのは、消費者の安全もそうですが、むしろ、農薬をかける人と、かけた園地の周りに住んでいる人の安全を脅かすものです。かける本人は、直接あびる。周りの人も、農薬を吸い込む可能性があります。
――有機農業基本法ができて、県や市町村は計画を策定することになっていますが、高畠町や山形県では、どんな動きがありますか。
御田 高畠町では、まだ具体的には動きはありません。県の方でも、今の段階では、堆肥の補助がある程度と聞いています。
――行政に対しての具体的な要望や提案はありますか。
御田 ヨーロッパでは、有機農業に取組むと、ある程度の損失なんかを、国が補償するような制度があるみたいですね。例えば、高畠町で、もし、すべての田んぼを無農薬にしようとした場合、年齢的に六〇代や七〇代の人が多くなっているので、特に除草は難しい。だから紙マルチにして、そしてその紙マルチ代を行政が負担するからみんなで有機栽培をやりましょうというのはどうでしょうか。また、水田転作を利用して、全ての休耕田に水をはって、温暖化防止の役立てるのも面白いと思います。水田一〇アール当り、エアコン五〇台分くらいの地球を冷やす効果があるそうですから。
――御田さんは、学校給食や学校での環境教育に取組まれているとお聞きしましたが。
御田 現在、高畠町では、小学校が七校あって、給食は自校方式で実施しています。その内、屋代地区と和田地区の小学校で、農家が「自給野菜組合」をつくり、給食に使う野菜や果物を提供しています。私も屋代地区の組合に入っていますが、組合には、有機に携わっている人が多くて、自主基準を設けて、とにかく農薬が少ないものだとかを、子供たちに食べさせたいという思いでやっています。給食の野菜で六〇%、果物で九〇%を供給しています。
――給食の評判は、いかがですか。
御田 何より、朝採りの新鮮なものを提供しているので、食べ残しが少なくなりました。
 また、自給野菜組合が安く農産物を提供しているので、その差額で、例えば肉とか魚とかが冷凍ものから生のものを使えるようになり、子供たちや先生にも、とても好評です。
――環境教育の方は、どんなことをされているのですか。
御田 高畠町では環境政策が町の三本柱のひとつになっています。その一環で、環境にやさしい町づくり町民会議が組織されていて、町への提言を行っています。それを具体的に実行するために環境アドバイザー制度というのがあり、公募で色々な人が集まって、勉強会をしたり、学校で環境教育を行っています。私もその一人です。高畠第四中学校では、年間八〇時間の環境教育を行っていますが、この八〇時間を、先生でなく環境アドバイザーが授業をします。内容は、地球規模の温暖化の話だったり、水質調査や水生生物の話だったり、有機農業を含めた食の話だったり、様々です。子供たちの環境に関する関心は年々、高まってきています。
――最後に、有機農業の課題と、ご自身の抱負をお聞かせください。
御田 有機農業というより、このままいってしまうと日本では農業そのものが成り立たなくなってしまいます。温暖化の問題や、自給率の低さ、米の価格の低迷、高齢化の問題等、そういったものが、より進んでいったら、若い人が農業をやりたいと言っても、結局、そういう人たちもできなくなる。個人で経営の見直しとかを含めて、色々な努力をしていくことも必要ですが、やはり、国として、日本の農業について、自給率や、環境保全、温暖化などを含めて根本的に考えていかないと、どうにもならない。いかに自給率を高めて、安全な食を作るための手助けを、国がどれだけできるかだと思います。
 私たちは、環境を保全しながら、安全なものをつくり、そういうものを求めてくれる人々と良い関係を築いていきたいと思います。
 
――有機栽培をはじめられた経緯をお聞かせください。
御田 高畠町では、三五、六年前から和田地区で有機農業が始まり、各地域に広がっていきました。私は、米沢郷牧場ができた頃から、最初は、有機ではなかったけれど、果樹の農薬を減らすことから皆と一緒に始め、その後、田んぼへと進めてきました。自分なりのきっかけは、当時、空中散布や除草剤をやることによって、あらゆる生物が死んでしまったことです。カエルとか、イナゴとか、本当に虫一匹いなくなる。そんなものが本当に食べられるのかと思ったのが一つのきっかけだったと思います。農薬によって体調を悪くする人もいたので、農薬について考えさせられました。
――農家自身が健康を害していたということですね。
御田 自分が小学校や中学校の頃は、すごく効く農薬があって、それを撒くと、そこは立ち入り禁止になる。そういう農薬を農家が使っていました。農家の人が、五〇代くらいになってくると、脳卒中なんかを含めてだけど、倒れる人が多かった。あらゆる虫や生き物が死んでいく光景っていうのは、すごく恐ろしいと思いました。
――農薬を減らしてきて、水田の方はいつ頃から取組まれたのですか。
御田 除草剤とかを使わなくなったのは二〇年くらい前。有機栽培になったのは一〇年くらい前で、有機認証を取ったのは、二〇〇一年です。赤とんぼの生産者で、取得しようということで、認証を取りました。
――大手スーパー等が有機認証の生産物の取扱いを増やしていこうというと発表していますが、どう思われますか。
御田 大賛成ですね。基本的に食の安全とかが、毎日のように言われている中、そうしたことを農家がやっていくってことは、これからは当たり前になっていきます。JASを取る、取らないに関わらず、農薬を減らしたり、そういう努力をしていかなければならないと思います。農家にとって、特に果樹栽培では、農薬は、保険みたいなものです。県の防除基準があって、ラフランスが一七回、リンゴが一六回くらいの散布が防除基準になっていて、それくらい農薬をかけても大丈夫ですよって、県のお墨付きなのです。でも、本当にこんなに必要なのか。私の果樹だと、リンゴで五回くらいですみます。農薬散布というのは、消費者の安全もそうですが、むしろ、農薬をかける人と、かけた園地の周りに住んでいる人の安全を脅かすものです。かける本人は、直接あびる。周りの人も、農薬を吸い込む可能性があります。
――有機農業基本法ができて、県や市町村は計画を策定することになっていますが、高畠町や山形県では、どんな動きがありますか。
御田 高畠町では、まだ具体的には動きはありません。県の方でも、今の段階では、堆肥の補助がある程度と聞いています。
――行政に対しての具体的な要望や提案はありますか。
御田 ヨーロッパでは、有機農業に取組むと、ある程度の損失なんかを、国が補償するような制度があるみたいですね。例えば、高畠町で、もし、すべての田んぼを無農薬にしようとした場合、年齢的に六〇代や七〇代の人が多くなっているので、特に除草は難しい。だから紙マルチにして、そしてその紙マルチ代を行政が負担するからみんなで有機栽培をやりましょうというのはどうでしょうか。また、水田転作を利用して、全ての休耕田に水をはって、温暖化防止の役立てるのも面白いと思います。水田一〇アール当り、エアコン五〇台分くらいの地球を冷やす効果があるそうですから。
――御田さんは、学校給食や学校での環境教育に取組まれているとお聞きしましたが。
御田 現在、高畠町では、小学校が七校あって、給食は自校方式で実施しています。その内、屋代地区と和田地区の小学校で、農家が「自給野菜組合」をつくり、給食に使う野菜や果物を提供しています。私も屋代地区の組合に入っていますが、組合には、有機に携わっている人が多くて、自主基準を設けて、とにかく農薬が少ないものだとかを、子供たちに食べさせたいという思いでやっています。給食の野菜で六〇%、果物で九〇%を供給しています。
――給食の評判は、いかがですか。
御田 何より、朝採りの新鮮なものを提供しているので、食べ残しが少なくなりました。
 また、自給野菜組合が安く農産物を提供しているので、その差額で、例えば肉とか魚とかが冷凍ものから生のものを使えるようになり、子供たちや先生にも、とても好評です。
――環境教育の方は、どんなことをされているのですか。
御田 高畠町では環境政策が町の三本柱のひとつになっています。その一環で、環境にやさしい町づくり町民会議が組織されていて、町への提言を行っています。それを具体的に実行するために環境アドバイザー制度というのがあり、公募で色々な人が集まって、勉強会をしたり、学校で環境教育を行っています。私もその一人です。高畠第四中学校では、年間八〇時間の環境教育を行っていますが、この八〇時間を、先生でなく環境アドバイザーが授業をします。内容は、地球規模の温暖化の話だったり、水質調査や水生生物の話だったり、有機農業を含めた食の話だったり、様々です。子供たちの環境に関する関心は年々、高まってきています。
――最後に、有機農業の課題と、ご自身の抱負をお聞かせください。
御田 有機農業というより、このままいってしまうと日本では農業そのものが成り立たなくなってしまいます。温暖化の問題や、自給率の低さ、米の価格の低迷、高齢化の問題等、そういったものが、より進んでいったら、若い人が農業をやりたいと言っても、結局、そういう人たちもできなくなる。個人で経営の見直しとかを含めて、色々な努力をしていくことも必要ですが、やはり、国として、日本の農業について、自給率や、環境保全、温暖化などを含めて根本的に考えていかないと、どうにもならない。いかに自給率を高めて、安全な食を作るための手助けを、国がどれだけできるかだと思います。
 私たちは、環境を保全しながら、安全なものをつくり、そういうものを求めてくれる人々と良い関係を築いていきたいと思います。

Author 事務局 : 2008年03月01日 11:30

 
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