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2008年06月01日

パルシステム千葉 「BMW技術プラント視察・研修会」を野田市で開催

BMW技術の有効活用方法と行政・地域との連携事例を学ぶ
~パルシステム千葉 「BMW技術プラント視察・研修会」を野田市で開催~
               生活協同組合パルシステム千葉 経営企画室長 中根 裕

 パルシステム千葉では、千葉県野田市内で地域循環型農業を展開することを目的に、、東庄町にあった(有)千葉自然学研究所の「BMW技術プラント(生物活性水)」を今年一月、市内船形地区に移設、設置しました。二月二日に、岩石や堆肥を設置する起動式を行い、三月下旬には生物活性水の生産が始まることになりました。いよいよ活用段階に入ったことを受け、生物活性水の有効活用や今後の地域循環のあり方を学ぶために、三月二二日(土)、野田市の「園芸福祉」農場や、パルシステム千葉の店舗「のだあたご店」で、「BMW技術プラント視察・研修会」を開催しました。
 野田市では、二〇〇四年からパルシステム千葉とNPO支援センターちば(パルシステム千葉の関連団体)が中心となって、野田市役所や社会福祉協議会、市内の障がい者団体、ボランティアとともに「園芸福祉」農場を推進してきました。障がいのある方の社会参加の場、地域住民との世代間交流、退職後の地域活動参加、行政との連携など、園芸福祉には多くの社会的効果が盛り込まれています。この事業拡大の一環として、BMW技術を活用した地域循環型農業を目指すことを目的に任意団体「ウェル&グリーンファームのだ」を立ち上げ、将来的には福祉農場から生産農場までを担う法人組織として発展させていけるよう、取組みを進めています。こうした背景のもと、今回の「BMW技術プラント視察・研修会」が開催されました。
 研修会は、一三時から視察会、一四時から講演会という形で進められました。
 前半の視察会にはBM技術協会の石澤直士理事長と、パルシステム千葉の平野都代子理事長、渋澤温之専務理事をはじめ関係者(理事・関係職員)が参加しました。最初に園芸福祉農場である「おーい船形」(畑四・五反)での栽培状況を確認した後、今回新しく借りたBM実験農場(畑三反)を視察。活動内容や作付け状況等を確認しました。その後、移設されたBMプラントに移動し、一槽から六槽までのプラント内の生物活性水を比較するなど、実際の生物活性水の生産状況を確認しました。また、移設までの経緯説明を行い、園芸福祉活動の広がりを実感しました。
 後半の講演会は視察参加者に加え、「園芸福祉」農場でボランティアとして活動している「おーい船形促進隊」のメンバーが加わり、石澤理事長による講演が行われました。講演は、生物活性水の具体的活用方法と、BM技術協会が提唱している地域の土と水の再生について、二部構成で、お話をいただきました。
 トキワ養鶏グループでのBMW技術の具体的活用方法やその効果、岩木川を中心とした流域での地域ネットワーク構想についての説明、全国で取り組まれているBMW技術の活用事例、BMW技術を活用した農業現場などが小学校との連携による学習の場として活用されていること等、幅広い取組みが石澤理事長から紹介されました。
 生物活性水の活用についてはまだまだ研修段階ですが、今回の講演会でBMW技術に関する理解がさらに深まったのは間違いありません。野田市には酪農家から出る牛糞や醤油工場から出る粕などがあり、地元の資源を活用した地域循環型のシステム作りがこれからの課題といえるでしょう。
 また、野田市行政としては遊休農地の活用や堆肥作りに積極的な姿勢を打ち出しています。特に、野田市江川地区では㈱野田自然共生ファーム(野田市の第三セクターで農業生産法人)による遊休農地の市民農園化やビオトープの整備が進められています。パルシステム千葉やNPO支援センターちばも野田自然共生ファームと一緒になって、当該地域で米づくり体験に取り組むなど、具体的な連携が始まっています。今後、地域のさまざまな団体とのネットワークを強化して、地域循環型農業の確立を目指していきます。

研修会・講演報告
 パルシステム千葉「のだあたご店」会議室で開催された研修会には、パルシステム千葉理事や職員、NPO支援センターちば、「園芸福祉農場」関係者ら、合計二六人が参加しました。石澤理事長からは、「トキワ養鶏グループのBMW技術活用方法」の講演と、映画「白神の夢」ダイジェスト版上映の後、「世界遺産・白神山地の水を守る農業」と題して講演が行われました。参加者からは、生物活性水の農業や生活現場での具体的活用方法について、様々な質問が寄せられる活発な研修会となりました。
 パルシステム千葉の平野理事長、渋澤専務理事の挨拶、石澤理事長の講演内容の要旨を紹介します。

開会挨拶「野田市の発酵文化にふさわしいBMW技術」
パルシステム千葉
   平野都代子理事長
 BMW技術に代表されるような、循環型に基づく農業がパルシステムの産地では、行われ、多くの産地でBMW技術が農業に取り入れられています。こうした循環型の思想、産直の思想が私達の商品にも生きています。野田市は、江戸時代から、地元の土と水によって育てられた大豆を、微生物の力を借りて、発酵・醸造してお醤油をつくるという文化を持った土地です。まさに微生物の活動を利用したBMW技術が根づいていくのにふさわしい地域だと思っています。今回の生物活性水プラントの完成によって、今後はBMW技術を活用し、大消費地を控えた野田市と千葉県の中での地産池消を見据えた有機・循環型農業の基地になっていくという夢を持って、第一歩を記したいと思います。

講演要約
   BM技術協会 石澤直士理事長
①「トキワ養鶏グループのBMW技術活用方法」
 トキワ養鶏グループでは、現在、採卵養鶏を、四五万羽をゲージで、五万羽を平飼いで行っています。鶏は何年間か、地面で飼っていると、コクシジウムに感染する事が多く、それは、サルファ剤によってしか直せません。そのため養鶏は、病気を予防するために平飼いからゲージに変わってきました。しかし、BMW技術に出会い、床にBM堆肥を敷く事によって、平飼いが出来るようになりました。
 BMW技術を導入したのは、平成六年に大分県のグリーンファーム久住で、卵の白身を箸でつまんで、黄身が持ち上げる卵に出会ったのがきっかけです。自分もそうした卵をつくってみたいということからBMW技術を取り入れました。技術導入後、半年かかって、白身でつまんで持ち上げられる卵ができるようになりましたが、これは細胞膜が変わったためと考えています。細胞膜が変わるのは、BMW技術による水の力が大きく、BMの力を最大限生かすためには、ひよこから、導入することが重要です。野菜も種から利用が始まります。
 BMW技術を導入すると、家畜が健康になるだけでなく、良い堆肥ができるようになります。それを利用したら、なんでもできると思い、もともと行っていたリンゴ栽培に加え、ニンニク、トマト、野菜等、畑作に挑戦してきました。また、水田には、堆肥と合わせ、生物活性水を流し込んで利用しています。これまでの経験から、ニンニク栽培には、鶏糞堆肥がよく、リンゴには、豚糞堆肥が合います。牛糞と鶏糞を合わせると、さらによい堆肥ができます。
②「世界遺産・白神山地の水を守る農業『流域の土と水の再生』を」
 森から海までの水の循環は、青森でも千葉でも同じです。魚が川を登っていくことによって、上流の動物たちがそれを食べ、海のミネラルが、上流に返されます。しかし、現代社会では、山の人たちは、ダムのことを考え、河口の人たちは、ごみが流されてくることを考え、中流の人たちは、あまり考えようともしません。でもシジミや魚は、食べます。自然生態系のことを多くの日本人は、忘れてしまっています。ぜひ、もう一度思い出しましょう。BMW技術は、水の再生、再利用技術であり、土の再生技術です。水や土を生態系の水や土に再生します。BMW技術を理解すると、さまざまな活用法がその地域で生まれてきます。BM技術協会が目指しているのは、身近なことから、具体的に変えていくことです。そうすれば、同じ農業をやるにしても、楽しくやっていけます。
 現在、白神山地を源流とする岩木川流域の市町村が集まって、川を汚さず、再生するために何ができるかを考えています。その構想を流域の市町村に、提案しています(岩木川流域構想図参照)。上流・中流・下流の人々が連携し、生産・生活・地域のあり方を見直し、かつ、流域の農水産物の産直で提携している生活協同組合との連携が重要と考えています。

閉会挨拶「地域循環型モデルづくりにBMW技術を生かしたい」 
    パルシステム千葉 渋澤温之専務理事
 生物活性水を通して、この野田の地域でどんなことができるのか。これから皆さんとともに考えていきたいと思っています。二〇〇四年から、この野田で、NPOと生協と行政が連携して何か面白いことやりたい、地域循環型社会のモデルをつくりたいと始めたことが今、動き始めています。そこにこのプラントが絡み、今後色々なところに、BMW技術が生かされていくと思っています。今年一一月には、BMW技術全国交流会が、千葉県で開催されます。私たちも、この野田で、皆さんとともに、色々な成果をつくりあげていき、全国から集まっていらっしゃる会員の方々に報告したいと思っています。
  (報告:NPO支援センターちば 松浦光恵)

「生物活性水が地域のつながりの  中心を担う」  
    野田市の生物活性水プラントが完成
匠集団そら プラント事業部 秋山澄兄

 三月二二日、千葉県野田市船形地区の生物活性水施設において、生物活性水の完成式と今後の管理方法の学習会が行われました。
 二月二日に同所で行われた「起動式(アクア三月号参照)」、途中三月一日の培養調整時に行われた生物活性水の学習会を経て、約六週間の培養が終わり、水質検査をクリアして、生物活性水が完成しました。
 当日は起動式と同じく、野田市の生産者、園芸福祉農場の「おーい船形」のボランティアの方々や、パルシステム千葉及びNPO支援センターちばの方々、そしてBM技術協会から礒田有治事務局長、匠集団そらから星加、秋山が参加しました。 
 午前中、匠集団そらから施設の管理を担当する古谷さんに、管理方法を直接指導させて頂き、その後、参加された方全員の前で管理に関する説明を行いました。
 各槽(全六槽)の生物活性水を採水し、皆さんの前に並べて、色の違いや透明感の違いなどを比べて見ました。第一槽目から六槽目までの生物活性水の違いが目で見るだけで分ります。さらに計測器でEC、pH、亜硝酸態窒素の数値を計測しました。
 完成した生物活性水の水質は数値的に全く問題なく、すぐに利用できる状態ということを全員で確認することができました。
 起動式では自分達の手で堆肥や岩石を投入し、培養開始から途中経過を見ていたせいか、完成した生物活性水を手にした参加者の方達の笑顔からは、完成の喜びが伝わってきました。
 完成式を終わると、できあがったばかりの生物活性水をタンクに詰め、園芸福祉農場の圃場へと移動しました。
 圃場では生物活性水の具体的使用方法の研修として、BM技術協会の礒田事務局長から、生物活性水を利用した種子浸漬の方法が説明され、あらかじめ種子浸漬されていたレタスと、パセリの種子の状況を確認し、その種子を利用した播種を実践しました。
 プラ舟に、一、〇〇〇倍に希釈した生物活性水を入れ、培土の入ったトレーポットの底を浸け、表面に水分が浮き上がってくるまで待ちます。十分に水分を吸った状態でトレーポットを取り出し、レタスの種を植えました。余った種子は、参加者が持ち帰り、それぞれ播種して、苗を育て、福祉農場に植えたいと、参加者は話していました。
 このように実践的な生物活性水の利用方法について、今後は福祉農場のボランティアの方々や、地域の生産者の方々を対象に講習会を開催していく計画とのことでした。
 今回、施設の移設から生物活性水の完成までを、利用する皆さんと一緒に見届けたこと、また、ひとつの生物活性水施設及び生物活性水が地域のつながりの中心を担う役割として活用されていくことは、施設の施工に携わる者として非常に嬉しく思いますし、BM技術を広めるにあたって非常に重要なことでもあります。まだ完成したばかりで効果や成果がでるのは少し先になりますが、今後も地域での利用を広げ、「ウェル&グリーン・ファームのだ」の目指す「農のあるまちづくり=田園都市構想」、地域循環型農業の活動の輪を広げていっていただきたいと思います。

Author 事務局 : 2008年06月01日 16:10

 
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