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2008年12月01日

関西で初の「土と水の学校」を開催【AQUA203号】

 農業技術向上に向け、生産者と生協組合員が共に学ぶ

 関西BM技術研究会 事務局 宮本由理
 
  BMW技術の活用と有機栽培理論の学習で、有機栽培技術を確立していく~自然学を実践する~「土と水の学校」有機栽培講座が全国各地の協会会員の生産者や団体で開催されています。今回は、関西BM技術研究会からの報告をご紹介します。

 九月二〇日、三重県伊賀市の伊賀有機農産に於いて、関西BM技術研究会主催の「土と水の学校」有機栽培講座・基礎編が開講されました。講師に小祝政明氏を迎え、伊賀有機農産、泉州グループ、トマト生産者の中井さん、森さん、望月農園、川口農園、アイワ研究会、山本グループ、そして関西の生活クラブ三生協から合計五一人が参加し、関西で初めて「土と水の学校」が開催されました。BM技術協会からは礒田有治事務局長にお越しいただきました。
 講座は伊賀有機農産メンバーの圃場にて、土壌や作物を診断する実地研修から始まりました。最初の研修場所となった横畑さんの圃場では、雑草を引き抜き、根を観察しました。主根がまっすぐ下に伸びており、柔らかい良い土であるとの評価でした。しかし、葉には、鉄やマンガンの微量要素欠乏の症状が現れていました。
 次の木下さんの圃場でも、作付けされているオクラの根や葉の観察をしました。根が充分に張っていないため、引っ張ると簡単に抜けてしまう状態でした。根が張るために必要な条件が不十分であることが小祝氏から指摘されました。葉の色については、生産者から淡い色を目指して有機農業に取り組んできたという声が上がりました。しかし、色が薄いというのは植物に虫が付きにくくするために窒素成分を押さえて栽培した結果であるものの、収穫量を上げるためには、必要量の窒素を始めとする栄養素を適切に補給することが重要という、解説がありました。
 最後の現地研修場所となった高木さんのオクラの圃場では、葉がくすんだ緑色をしており、これは逆に過剰窒素の状態でした。原因は使用している肥料にあり、資材そのものと施肥設計を見直さなければならないとの指摘を受けました。
 実際に作物や土壌を見ながら小祝氏の講義を受けるなかで、「農業は観察することが大切である。作業におぼれてはいけない」という言葉が印象的でした。
 午後は会場に移り、礒田事務局長によるBMW技術と土壌分析についての基礎的なお話しから始まりました。有機農業は土壌、施肥だけでなく、使っている水も含め、トータルで考えなければならないということ、BM堆肥や生物活性水をうまく活用し、土壌分析、施肥設計、施肥の流れで、有機農業をシステム化すれば、収量が爆発的に上がるということをお話しされ、スライドで実例を紹介されました。
 そして引き続き、小祝氏より土壌分析、施肥設計をしていくにあたっての基礎となる植物生理や発酵、土壌の物理性についての講義を受けました。途中、小祝氏から「カルシウムは土壌改良材ですか。肥料ですか。次に石灰は土壌改良材ですか。肥料ですか」という質問を受け、生産者も生協組合員も二者択一で挙手をしました。しかし「石灰はカルシウムのことですね。同じものです。カルシウムといえば肥料、石灰といえば土壌改良材と思いがちですが、土壌改良材というものは、実際には存在しません。肥料なのです。堆肥のように土を軟らかくするようなものは土壌改良材と呼べるかもしれないですが」という話をされました。カルシウムと石灰を別物と考えてしまっているという何気ない思い込みを気づかされる場面がありました。
 午前中の実地研修では「農業は観察することである」と熱心にお話しされていましたが、「なぜ?」という疑問を明らかにしていくことで植物生理や菌の仕組みを学び、それが基礎となって土壌分析や施肥設計に取り組んでいくことができるのだということにつながっていきました。白板いっぱいに化学記号や図が書き出され、高校時代の化学や生物の授業がよみがえってきましたが、熱心なお話に皆が聞き入っていました。
 産直運動の中で顔の見える関係を築いてきた生産者と生協組合員が農業技術を高めるために共に学ぶことができる機会となり、有意義な一日となりました。本当にありがとうございました。

Author 事務局 : 2008年12月01日 14:17

 
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