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2009年03月01日

フィリピン北ルソン・ネグロス島視察調査報告【AQUA206号】

フィリピン北ルソン・ネグロス島視察調査報告~BMW技術の再生に期待を込めて
㈱匠集団そら 秋山 澄兄

 昨年一一月にNPO法人APLAの依頼を受け、㈱匠集団そらでは、一二月一四~一九日にフィリピン・ネグロス島とルソン島北部イザベラ州の視察調査を行いました。
 視察調査の目的は、①ネグロス島のマスコバド糖製糖工場の排水処理施設改善②ルソン島の有機農業へのBMW技術の具体的活用方法――を検討するためです。

 フィリピンに到着し、最初にネグロス島バコロドの生物活性水のミニプラントを視察しました。ネグロス島には、以前、ツブラン農場とカネシゲファームに生物活性水プラントが導入されていましたが、ツブラン農場は閉鎖され、カネシゲファームのプラントも停止状態にあります。このため、APLAフィリピン担当デスクの大橋成子さんがバコロドの自宅で生物活性水のミニプラントをつくり、BMW技術の灯を守ってきました。
 生物活性水は、大橋さんの自宅の裏庭にいるアヒルや鶏の飲水、家庭菜園栽培等に利用されています。大橋さんの夫、アンボ氏(マヨン村村長)は「生物活性水を使い始めてから、庭の鶏達の臭いがほとんどなくなり、卵も水っぽいものから黄身・白身ともにしっかりとしたものになりました。また、孵化率が上昇し、またたくまに羽数が増えていきました」と話します。
 匠集団そらの星加と秋山で、この生物活性水の点検計測を行い、プラント維持の為の指導を行いました。点検した結果、生物活性水は良質なものができていました。
 アンボ氏が村長を務めるマヨン村では、各家庭で飼育している豚の悪臭で度々喧嘩になることが多く、見かねたアンボ氏が生物活性水を豚舎に散布した結果、悪臭がおさまり、今ではほとんど喧嘩も起こらないと話していました。
 次に、バコロドから車で南へ約一時間のところにあるATMC(オルター・トレード・マニュファクチャリング・コーポレーション)のマスコバド糖の製糖工場を訪問しました。
 ATMCでは、現在、製糖工場の排水処理が課題となっています。工場排水は、主にサトウキビを絞る時に使用する機械と、製糖する時に使う機械の洗浄水等で、ATMCは昨年の環境省の調査で、工場の排水が準値を大幅に上回っていると指摘を受け、その対策が急務となっています。
 フィリピンでは、以前は国の排水基準が無いに等しい状態でしたが、現在は日本とほぼ同じ基準を定め、フィリピン環境省が製糖工場をはじめ、全国の工場排水を調査し、厳しく取り締まりを始めています。そして基準値を守れない工場に対しては操業停止の処分も課せられているそうです。この対策として国から提案されているものは、非常に高いコストがかかるもの(酵素・微生物資材の購入)で、年間を通すとよほど大きな工場でなければ対応はできないと聞きました。
 ATMCでは、指摘を受ける前までの排水処理施設は、沈殿槽だけのもので、その上澄み水を小川に放流していました。
 現在はカネシゲファーム(現在稼働停止中の生物活性水施設)から曝気システムを移動し、曝気を始めていますが、いまのところ排水基準を満たしていません。
 今回は現地で水質計測、排水ラインの調査・確認を行いました。今後、匠集団そらからBMW技術を活用した対策を提案し、導入に向けての話し合いを進めて行きます。
 マスコバド糖製糖工場からの帰途、カネシゲファームに立ち寄りました。故兼重正次氏(一九九五年逝去。当時、BM技術協会常任理事、グリーンコープ事業連合専務理事)の記念碑は今でも奇麗に管理されていて、記念碑の周りに植えられた木々も大きく成長していました。APLAでは今後、カネシゲファームの再生に向けて話し合いが始められているとのことでした。
 ネグロス島での視察調査を終え、マニラを経由して、次の目的地ルソン島北部のイザベラ州、ヌエバビスカヤ州へと向かいました。この地方は五つの先住民族の自治区であり、世界文化遺産にも指定されているコルディエラの棚田があります。
 広大な田んぼとトウモロコシや大豆の圃場が広がり、水と緑が豊かな印象を受けました。
 はじめに、農業協同組合CORDEV(注1)の代表であるグレッグ氏の案内で、イザベラ州カワヤンにある農地改革省の敷地内にある堆肥センター建設予定地を訪れました。
 CORDEVでは農地改革省から土地を借受け、堆肥センターを含めた有機農業の実験農場を作る計画を進めています。
 近年、フィリピンにおいても有機農業に対する関心は高まっていて、この地域でも二〇〇ヘクタールの水田で有機栽培が行われています。
 グレッグ氏は「今までは有機堆肥を購入していましたが、今後は自分達で未利用資源を利用した有機堆肥作りを目指しています。そこにBMW技術を導入することが可能かどうか模索しています」と話します。
 農地改革省の敷地内に、現在、トウモロコシの残渣とモミ殻燻炭が運び込まれており、トウモロコシ残渣は自然発酵していました。
 農地改革省を後にし、次に向かったのは、車で南へ三時間、ヌエバビスカヤ州ソラノにあるグレッグ氏の自宅です。
 ここには大橋さんの自宅と同様に、生物活性水のミニプラントが設置されたばかりで、プラント維持と管理方法について、同行したアンボ氏も参加してBMW技術のミニ学習会が行われました。グレッグ邸の庭には豚や鶏、山羊などがいました。
 グレッグ氏はできあがった生物活性水を家畜の他に、米作りやトマトの栽培などで実験をしてみると話していました。
 BMW技術がCORDEVの活動を支え、この地域の有機農業に大きく役立つことを熱望するとともに、今後は時間をかけてBMW技術がフィリピンに根付いていけるよう、BM技術協会、匠集団そら、APLA、CORDEVら関係団体と互いに協力し、取り組みを成功させていきたいと考えています。
(注1)CORDEV(Cooperative For Rural Development)。地産地消をめざし、ルソン島北部のバナナ、果樹、コーヒー、カカオ、米、野菜、養豚等の八つの生産者協同組合が連携した農村発展のための協同組合。

Author 事務局 : 2009年03月01日 20:34

 
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