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2009年06月01日

高知県大川村で常任理事会開催【AQUA209号】

高知県大川村で常任理事会開催
吉野川水源の日本一小さな村をBMプランで再生へ


 四月二一日~二二日、BM技術協会常任理事会が、協会の自治体会員である高知県大川村で開催され、同村が取組む畜産現場等の現地視察や、取組みへの提言が行われました。
 四国・吉野川の源流地域であり、人口四八〇人を切った「日本一人口の少ない村」大川村では、平成一九年度から高知県畜産試験場が開発した「はちきん地鶏」生産に取組んでいます。同村では、この地鶏生産と資源循環型社会づくりへのBMW技術の活用を、村を上げて取組む方針です。取組みに当って、協会への協力要請があり、これを受けて常任理事会開催の運びとなりました。
 二一日に開催された「はちきん地鶏」生産施設等の現地視察会には、協会常任理事及び事務局と㈱匠集団そらから一一人が参加。同村関係者や、県畜産試験場関係者からも約二十人が参加し、地鶏生産施設や、堆肥場、和牛生産施設、生物活性水施設等を視察しました。参加した常任理事からは、鶏の飼育環境や飼育技術、施設、飼料をはじめ、堆肥管理、人材育成や商品開発等、様々な視点からのアドバイスや提言が行われました。また、今後、協会として、大川村の取組みに協力していくことを確認しました。

 高知竜馬空港から車で約二時間ほど急峻な山道を抜け、大川村に到着した常任理事一行は、「ふるさと村公社」学習室に集合し、村からブリーフィングを受けました。
 まず、大川村の合田司郎村長から歓迎挨拶がありました。「大川村は、県の最北端に位置し、北側は愛媛県に接している。日本三大暴れ川・吉野川の源流であり、その水源を涵養する山々に囲まれている。ピーク時に約四千人いた人口は、銅山の閉鎖や、四国の水がめ『早明浦ダム』建設による村の大部分の水没などにより、四七三人にまで落ち込んだ。二〇〇五年に、離島以外の日本の市町村の中で最も人口が少ない村となった」と大川村の概要と歴史について説明がありました。
 大川村役場事業課の明坂健喜課長補佐からは大川村における農業の現状と「大川村BMいきいきプラン」についての説明がありました。
 大川村の農業用地は、水田九・七ヘクタール、畑八八・七ヘクタール、ハウス一・九ヘクタール。「はちきん地鶏」養鶏は、二一年度には、四万羽出荷、二二年度には十万羽出荷体制にする計画だそうです。
 「大川村BMいきいきプラン」は、村内資源循環型社会を目指し、若者から高齢者までが生き生きと暮らせる社会として、①村内全体で有機廃棄物をトータルに資源化する②一般家庭・耕作農家・畜産農家から出る有機廃棄物をそれぞれの発生源で資源化(ミニリサイクル)③各発生源で行うミニリサイクルは、堆肥センターで、総合的に結びつき村内全体のリサイクルを確立する④村内循環型有機農業を推進することにより、地域の水、自然環境を守る⑤有機農業の活性化により、安全な食品を地域内に供給し、村民の健康増進を図る⑥生態系の自然浄化作用をモデルとし、環境への負荷をできる限り軽減する――という構想になっています。プランの実現化にむけては、短期、中期、長期の目標を定めていくことを基本戦略としています。
 次に、村議会の朝倉慧議長から大川村の大幅な人口減少や、村づくりの経過と、今後の産業振興等、展望についてお話がありました。またBMW技術を活用した村の再生へ向け、協会への協力要請が行われました。具体的な協力要請事項として、①飲水改善施設の設置及び技術指導②畜産排泄物処理施設の設置及び技術指導③土佐はちきん地鶏生産施設の改善対策指導④土佐はちきん地鶏販路拡大対策の指導⑤その他関連技術の指導――が、上げられました。
 この後、常任理事や村関係者、県畜産試験場関係者ら、お互いの自己紹介を終えたあと、全員で大川村のはちきん地鶏の鶏舎、土佐赤牛(褐毛牛)の牛舎、堆肥センター、BMプラント等の視察が行われました。

 視察の後は再び、「ふるさと村公社」学習室に戻り、高知県畜産試験場の長坂直比路中小家畜課長より、高知県の養鶏状況、はちきん地鶏選択の経緯、高知産地鶏の詳細などについて解説がありました。
 続いて、BM技術協会礒田有治事務局長からBM技術の概要と理論について解説が行われました。
 その後、各常任理事から、大川村の地鶏生産施設、和牛生産施設、堆肥場等の状況を視察した感想と村への提言が、以下の通り行われました。
向山茂徳常任理事「養鶏は地面の下と上が大事であり、換気がすべて。地面の下には二~三センチ位よい堆肥を敷いて、微生物の力で雑菌をおさえる。現在、給餌は人間が行っているが、機械を導入して人間は他のところに使うべき」
佛田利弘常任理事「まず、いいものをつくる。他と同じものではもう消費者に相手にされない。そして人をつくる。各担当で業務を引っ張っていく人をはっきりさせ、権限を与えて育てる。最後に仕組みをつくる。技術体系や社会の要求に応える構造をつくる。都会に支配された時代は終わった。過疎を優位性に変えていかなくてはいけない。これからは過疎が日本を支える」
山本伸司常任理事「とても安いか、とてもこだわった商品でないと売れない時代になった。大川村では、こだわった商品をつくる必要がある。自給率を考慮し、飼料米等で育てた豚肉は二割高くても売れる。たえず鶏を研究し、技術研鑽していくことが重要。言われたことだけをやっていてもホンモノのいい鶏は育たない。大川村にはポリシーはあるがそれを実現させる技術をこれから確立する必要がある」
伊藤幸蔵常任理事「現状でも、BMの施設等はあるが、それがうまく活かされておらず、もったいないといういうのが第一印象。枠はつくられているがうまく運用されていない。技術を持った人づくりが急務」
向後武彦理事「間伐材などの地域資源を有効利用できる木質チップボイラーをハウスに導入してはどうか」

 最後に、BM技術協会として大川村の環境保全型農業による村の再生に協力することを約束して閉会し、場所を移しての懇親会となりました。懇親会では、より、具体的なアドバイスや、提案がなされました。(報告:井上忠彦)

Author 事務局 : 2009年06月01日 01:45

 
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