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2009年07月01日

【AQUA210号】バナナ生産農家に生物活性水で発酵させたBM堆肥が定着

タイにおけるBMW技術普及の現状
バナナ生産農家に生物活性水で発酵させたBM堆肥が定着
~資源活かしたBM肥料・液肥開発も進む~


PAN PACIFIC FOODS CORPORATION LIMITED  木村 俊夫


 昨年の七月二九日、タイでは第二号となるBMW(生物活性水)プラントがタイ南部の無農薬ホムトンバナナ産地の中心組織であるチュムポン県ラメー郡トゥンカーワット農園経営農民会の敷地内に設置され、開所式が執り行なわれました。
 プラント完成後、農民会では生物活性水の無償支給、BM堆肥・液肥の製造などを通じてバナナ生産者の栽培コスト削減支援を進めており、早速プラントが有効活用され始めています。最近までこの第二号プラントには第一号プラントのあるペッブリー県バンラート郡で製造されたBM鶏糞堆肥が原料として使用されていましたが、四月下旬に、㈱匠集団そらの星加浩二プラント事業部長が訪タイされ、農民会のBM堆肥も原料として使用可能なレベルになっているとの太鼓判をいただいてからは、農民会で作ったBM堆肥を生物活性水の原料として使用し始めています。

バナナ生産農家に普及するBM堆肥
 現在までに、BM堆肥はバナナ生産農家を中心に評価が定着しつつあり、受注も安定してきています。バンラートのバナナ生産者で継続的に使用しているのは二一名にのぼりますが、資金力の無い生産者はなかなか継続して使用できていないのが現状です。一方、チュムポン県のバナナ生産者は雨季の始めに集中して発注する傾向があります。
 ただ、今年度の販売量そのものは前年比でほぼ半減しています。サイアム・タクミ社(タイのBMW技術普及会社)の前年度総会の方針に基づいて在庫の縮小を進めてきたことで、年初の販売量が減ったことが第一の原因。次に年度半ば頃より化成肥料の市価高騰が進み、農家(バナナ農家に限らず)の化成肥料離れが進んで厩肥としての鶏糞の需要が高まったことが原料である鶏糞の需給逼迫に繋がったことが挙げられます。この結果、プラユーン養鶏場以外からの鶏糞原料の調達が非常に難しくなりました。一時期には注文に生産が間に合わない状態に陥り、牛糞も調達して堆肥を製造することにしました。またホムトンバナナの出荷残渣も破砕機にかけて堆肥原料として利用することにしました。
 牛糞堆肥の質についてはいくつかの研究資料によれば鶏糞に比べて燐酸とカリが豊富ということなので、特に味を良くするという面においてはバナナにはむしろ適しているかもしれないとの仮説の下に製造に取り組みました。最初の試作品は二〇〇八年の早い段階で出来上がり、作付け後五~六カ月目のバナナに試験的に導入しようとしましたが、六月にチュムポン県で発生した突風被害の緊急支援で、産直協議会により大量の堆肥注文をいただいたために、これらの試作品もすべて緊急支援に回すことになりました。それもあって、この時の牛糞堆肥は十分な結果のフォローができなかったため、現在作り直しているところです。他にも、鶏糞との混合堆肥、麹を混ぜた牛糞堆肥の二種類を製作しています。
 バナナ残渣肥料はバンラートのある生産者が土壌改良目的で使用しており、サンヘンプというマメ科の緑肥を同時に撒くなどして工夫しています。
地域資源を活かして、
BMボカシ肥料とBM液肥を製造
 このほか、サイアム・タクミ社はバナナ栽培実験用に、ボカシ堆肥と液肥を製造しています。ボカシ堆肥は二〇〇八年九月、一一月、一二月の三回に渡り製造し、最初の二回分(米糠とBM堆肥、生物活性水を原料にしたもの)はチュムポン県に送られてバナナ生産者に無償でサンプル支給されましたが、堆肥の出来そのものが芳しくなかったようで、期待された効果は確認されませんでした。三回目のものはこれに魚粉を混ぜて製造したもので、ペッブリー県内のバナナ生産者にサンプルとして無償配布しました。現在、効果をフォロー中です。
 一方液肥は海老の殻、魚のアラ、バナナ残渣、「味の素」の製造粕の四種類を原料に生物活性水を混入し、曝気しながら製造したもので、アミノ酸液肥としてバナナの生育促進効果を期待したものです。二〇〇八年一一月と二〇〇九年二月の二回に渡り、製造し、チュムポン県に持ち込んで実験を行っているほか、一部はバンラートの出荷作業員に無償で支給し、マナオ(タイのライム)や野菜などに試験的に使用してもらっています。
 ペッブリー県のバンラート地域における生物活性水のホムトンバナナ栽培への直接の利用は、残念ながらあまり普及はしていません。ほとんどがBM堆肥という形での導入で、生物活性水をそのまま圃場に使うケースは二~三圃場に限られています。多くの生産者が、プラントから水を運搬するための車両を持っていないというのが最大の原因です。また生物活性水は、たいていの場合潅水の際に水と一緒に混ぜて使用するという方法がとられているため、その方法も一般の農家にとっては少し手間のようです。
 鶏糞原料の価格が上昇している今、今年度は牛糞を代替原料として導入していくことで対応していくことになりそうです。現在、各産地でバナナの生産拡大が積極的に進められており、新規生産者が増えてくることが予測されるため、BM堆肥の宣伝と同時に需要増に備えて生産体制を整えていきます。一方液肥については、バナナへの効果はまだ確認されていませんが、他の作物ではポジティブな結果が得られていますので、今後商品化する可能性は十分にあると見ています。今年度はさらにデータを確実なものにして商品化の見通しを立てていきたいところです。

Author 事務局 : 2009年07月01日 21:24

 
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