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2010年03月01日

【AQUA218号】ネグロス島・カネシゲファームでBMW技術復興へ

フィリピン・北ルソンのイザベラ州に続き
ネグロス島・カネシゲファームでBMW技術復興へ

報告 株式会社匠集団そら 秋山 澄兄

 昨年の八月にフィリピン・ルソン島北部のイザベラ州カワヤン町の堆肥センターに、農民組合連合コルデヴが管理する生物活性水の施設ができ、BMW技術の普及が本格的にフィリピンで始まりました(アクア二一四号参照)。
 この北ルソンでの生物活性水施設の工事が始まった同時期に、ネグロス島にあるカネシゲファーム(注1参照)では、NPO法人APLAの現地職員である大橋成子さんの夫で、ナヨン村の村長でもあるアンボ氏を中心に、バランゴンバナナの生産団体、BGAのチッタ氏、ビボット氏、そして数名の研修生(近隣の農家等の息子)達の手によって、農場施設全体の復興に向けての作業等が始まっていました。
 アンボ氏は山梨県の白州郷牧場をモデルに、カネシゲファームを立て直す意向を持っており(昨年五月に視察に白州を訪れている)、養豚と耕作の連携、堆肥作りと、それらの基礎となるBMW技術を中心にした有畜複合の資源循環型の農場にしていくことを目標にしています。
 そこでまずは、一九九六年に設置され、現在は稼働停止となっている生物活性水施設を復活させることになり、昨年一二月一八日~二二日に、椎名盛男BM技術協会常任理事と、私が現地を訪れ、生物活性水施設の復旧作業とカネシゲファーム全体の構想図についての話し合いが、アンボ氏ら現地側と持たれました。

 すでに現地では子豚が約二〇頭、放牧の鶏が数十羽飼われていました。この他、研修生たちの小さな畑などがあり、ナスやキュウリ、サンチュ等が栽培されていました。
 また、現地でマスコバド糖を生産しているATC(オルター・トレード・コーポレーション)社の大きな堆肥センターがあり、今後はそこも借り受け、堆肥づくりに利用していくとのことでした。

 現地側とは、生物活性水施設は既存のタンクを修復し、配管等を一からやり直して再稼働させることを確認しました。さらに豚舎の排水を利用しバイオガスを抽出するプラントをつくり、その消化液を原料に生物活性水を作ることに決定しました。
 消化液はそのまま液肥として耕作にも利用されます。生物活性水施設からは、ランポンプ(無動力揚水機)などの自然の力を利用した機材を導入し、豚舎、堆肥舎等に配管していく予定です。
 さらにソーラーパネルや風車(乾季のネグロスはとても風が強い)を利用したクリーンエネルギーの導入も話し合われ、これらを全部一度に導入するのではなく、アンボ氏を中心としたカネシゲファームスタッフのペースにあったやり方で、少しずつ実現していくことも併せて確認しました。このことは彼らにとってとても大事なことだと思います。

 まず今年は、生物活性水施設を再稼働させる㈱匠集団そらと、バイオガスのシステムと施設を導入する現地のエイド財団(数多くのクリーンエネルギーシステムの開発をオランダ人のオーケー氏を中心にネグロスから世界に発信している)とでカネシゲファームの軸となる施設整備を整えることになりました。
 農業指導についても椎名常任理事が今後も関わって行くことが確認されました。この取り組みがネグロス島及びフィリピン全土の有機農業の発展のために動き始めたと言ってもよいのではないでしょうか。ただ、焦らずに彼ら農民の手でじっくりと取り組んでいけるようにサポートできることを願っています。

(注1)カネシゲファーム:一九九五年に逝去された故・兼重正次氏(当時、生活協同組合連合会グリーンコープ事業連合専務理事、BM技術協会常任理事)にちなみ、カネシゲファームと命名された。兼重氏は、一九八八年生協グリーンコープの設立、一九八九年ATJ(オルター・トレード・ジャパン)社の結成に尽力された。今年、設立二〇年となるBM技術協会の結成と技術の普及に多大な貢献をされ、一九九三年から協会常任理事に就任した。
 一九九五年当時、民衆交易を通じて、ネグロス島から日本に輸出していたバナナが病虫害で壊滅的な打撃を受けた。カネシゲファームは、その対策の一つとして資源循環型農業を普及するため、堆肥センターやBMW技術を導入したモデル農場として、ATJ社が開設した。同ファーム内には、民衆交易や農場建設に尽力された兼重氏を偲ぶ、カネシゲメモリアルパークがある。

Author 事務局 : 2010年03月01日 12:16

 
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