« 【AQUA222号】韓国におけるBMW技術の現状を学んで | メイン | 【AQUA222号】BMW技術基礎学習会がパル・ミート山形事業所で開催 »

2010年07月01日

【AQUA222号】「根釧地区マイペース酪農学習会」が開催

報告 ㈱匠集団そら 星加 浩二

 「私の考えるホンモノ牛乳」と題して北海道厚岸町 石澤元勝氏(根釧みどりの会会長)の学習会が開催されました

 パルシステム生活共同組合連合会新農業委員会の主催で五月一一日(火)、東京都文京区の全林野会館で学習会「根釧地区マイペース酪農学集会」が開催されました。「こんせん72牛乳」の産地、北海道根釧地区で酪農を営む石澤元勝氏を講師として、放牧を中心として自給可能な飼料である牧草を与えるマイペース酪農と北海道酪農業界の現状について会員生協、役職員など七〇名が学習しました。

 石澤氏の講演は、「私の考えるホンモノ牛乳」と題して、写真を紹介しながらはじまりました。最初にパルシステムの組合員から送ってもらった搾乳時に牛の乳房を拭くためにつかうタオルが、毎日どのように使われているのかが紹介され、組合員の皆さんへのお礼をつたえました。そしてパルシステム生活協同組合連合会が活動を助成しているレインボー・パル基金で二〇〇八年度の助成活動によりBMW技術「飲水改善施設」の導入の経緯を説明しました。

 石澤氏が営む石澤牧場は、北海道厚岸町で放牧を中心とした酪農経営を実践しています。石澤氏は、「根釧地区の寒い気候は作物が十分に育たない環境で、牧草だけが栽培できる厳しい地域。この牧草を牛の飼料とすることで、牛乳や肉に換えて人間が食べられる食物にしてくれます」と話しました。北海道の酪農の現状について石澤氏は「テレビCMや牛乳パックでは必ず放牧されている牛の姿が利用されていますが、生産量の半分は大規模経営による多頭飼育・多量搾乳の生産者が占めています。牛舎から一度も出ることのない飼育環境で穀物飼料の給餌を高めることで搾乳量を増やすという効率を追求し、搾乳ロボットまで使われるような酪農です」と語りました。
 それに対し、石澤氏の進める「マイペース酪農」は、搾乳牛一頭に対し一ヘクタールの牧草地を利用し、年間を通しまた昼夜にかかわらず牛を放牧させ、牧草を中心に牛を育てています。「牛にできることは牛に任せるのが基本です。それにより牛を健康に飼育することができ、農政などに振り回されない自立した酪農を営むことができています」と、基本的な考えを示しました。

 マイペース酪農の生産性は、道内の一般的な大規模酪農が一頭当たりの年間搾乳量一万リットルに対し、五千〜六千リットル程度にして、牛への負担を少なくし、一頭が生涯で出産する回数は平均二・七三産に比べておよそ二倍の五〜六産あり、健康で長く飼養するといいます。
 また農業収入も、穀物飼料の購入や畜舎施設などにかかる経費を抑えられることから、農業所得との差がほとんどなくその農業所得率は多頭飼育の農家に較べ、よいことがデータの比較でわかったとのことでした。特に飼料が高騰した二〇〇七年は、ある農協の平均所得を上回ったそうです。石澤氏は「マイペース酪農に取り組む前は、毎日朝早くから夜遅くまで働かなければならず子育ての時期は子供と接する時間も十分取れなかったのですが、現在は時間の余裕もでき、人生を優先した生活を送ることができています」と話しました。
 また、マイペース酪農ではできるだけ余分な資材の投入を押さえることにしており、多頭飼育の牧場では、牧草地への化成肥料の大量投入や、牧草の更新に除草剤を散布するなど環境への影響も大きいが、マイペース酪農ではその心配もない経営ができるとのことです。
 奥さんが牧場の牛乳を加工したチーズも参加者にふるまわれ、なごやかな雰囲気の中、北海道の酪農の現状が良くわかる学習会となりました。

Author 事務局 : 2010年07月01日 01:17

 
Copyright 2005 Takumi Shudan SOLA Co.,Ltd All Rights Reserved.