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2010年11月01日

【AQUA226号】第20回BMW技術全国交流会、山形県で今月開催

第20回BMW技術全国交流会、山形県で今月開催
〜まほろばの里・資源と人間の輪と技術が循環する地域システム創り〜

「第20回BMW技術全国交流会開催にあたって」
第20回BMW技術全国交流会 実行委員長(米沢郷牧場)
伊藤 充孝

 これまでBMW技術全国交流会は、受け入れ団体や協会会員の協力を得て毎年欠かさず一九年間開催され、様々なテーマのもと日本全国さらには韓国やフィリピンといったアジアの国々からBMW技術を実践している人々の報告や、テーマに沿った基調講演などが行われ、「BMの人々」にとって重要な情報交換・交流の場であり続けてきました。
 また、一〇月四日〜六日には韓国楊平郡で第三回亜細亜BMW技術交流会が開催され、韓国におけるBMW技術十三年間の事例発表やBMW亜細亜連帯の発信を韓国楊平郡にて行う宣言がありました。このように日本で生まれたBMW技術の交流がアジアを中心に広がっています。その歴史ある二〇回目の記念大会をここ山形県にて開催できることは大変光栄なことと感じています。

 今大会のテーマである「まほろばの里・資源と人間の輪と技術が循環する地域システム創り」は実行委員会メンバーにて何度も話し合いを続けていく中で、これから私達が生産活動を続け生活していく上で重要なキーワードが多数挙げられ、それらを組み合わせ二〇回記念大会に相応しいテーマにと考えられたものです。

 まほろばの里とは古事記や万葉集に出てくる言葉で「周囲を山々で囲まれた、実り豊かな土地で美しく住みよいところ」という意味です。
 ここ山形県の置賜地方は、奥羽の美しい山並みに囲まれ豊富な水資源の恵みをうけ、盆地には肥沃な耕土が拓け、四季折々の多彩な風景が展開される豊かな自然環境を有し、一帯には洞窟や岩陰群、そして古墳群が点在し、縄文創期(約一万年前)から人々が住み、地域の恵まれた条件を生かした生産と生活のかたちを築き、現代のまほろばの里と呼ばれている所です。
 山があり、水があり、土があり、生き物がいる。そして豊かな生活の環境があり、それを支える生産活動がある。気候や形に違いがあっても日本全国どこにでもある風景・環境です。当たり前のこと過ぎて私達はその恵みの有り難さを忘れてしまっているような気がします。
 一万年の歴史・人々の温かい心・みどり豊かな豊穣の里。このまほろばの里の歴史を学び、BMW技術を通し人々が技術を学び・交流することで、これからの地域創りを考え、何を次の世代に伝え残していくかを参加者全員で話し合えれば、良いBMW技術全国交流会になるのではないかと思っております。


第20回BMW技術全国交流会
 副実行委員長
(パルシステム生活協同組合連合会常務執行役員、BM技術協会常任理事)
山本 伸司


 今年、一〇月に生物多様性国際条約締結国会議が名古屋で開かれた。この条約は一九九二年ブラジルで調印され、現在一九〇ヵ国とEUが調印している。ただアメリカのみが調印せずアメリカを入れない国際的な重要会議となっている。なお、生物多様性とは生態系、種、遺伝子の三つのレベルで、「生物多様性の保全」「生物多様性の構成要素の持続可能な利用」「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な配分」を目的としている。これまでの環境破壊と生物の大量絶滅を深刻に受け止め、多国間での防止を行おうとしているものである。

 しかしすでに一八年前からのこうした取組みだが、実態は熱帯雨林の破壊と穀物栽培の拡大などが止まらない。水質汚染と温暖化による珊瑚礁の崩壊。そして日本国内での大量農薬使用や化学肥料の使用による生態系の破壊や土壌の破壊。この問題は依然として不気味に進行している。
こうした生態系の破壊を押しとどめるためには、いままでの経済発展のあり方を転換しなければならない。それは、大量生産、大量消費型の資源浪費と廃棄、食のあり方の転換である。低コスト型の農薬多投、化学肥料依存。さらに遺伝子組み換えの単一種の食糧生産。外国に依存する飼料や加工原料生産からの転換が必要となる。
 しかし、このことはわが国でも家畜生産から野菜、果物などの飼育、栽培方法の見直しが求められる。そして本来の自然生態系のあり方に学ぶ農法の開発と定着が必要となる。そしてこのことにより深い生命への畏敬と共感、学びが農業に求められるのではないかと思う。

 開催地の米沢郷牧場の故伊藤幸吉さんは、米沢郷牧場の創立から「北のまほろば」を夢見ていた。五千年前からの遺跡にみられる自然との共生の豊かな東北の古里。狩猟と栽培と持続可能な知恵の住居。こうした里山が、大量生産、農薬多投で侵され滅びていくことに抵抗し、新たな「まほろば」の建設を目指したのだ。それは、有畜複合経営の「農の曼荼羅」の世界である。

 さて、一作年、有機農業推進法が成立した。しかし、国内有機農業はむしろ逆境にある。リーマンショック以来のデフレ経済は、販売価格を際限も無く下げ続け、国内有機農産物は結局高いとして販売低迷しているのが現実である。さらに、複雑な有機認証システムと狭隘な地域での農薬汚染による事件事故の多発。良心的な農業生産者ほど苦境に立たされている現実がある。

 こうした現実を転換する方向とは何か。
 私たちの生き方の転換こそ求められている。金銭的価値と経済成長、簡単便利とあらゆる道具の家電化、情報化により、これを求め踊らされること。こうしたなかでの知識や利益の競争。そこから逸脱し、自分自身の命と向き合い、そして食べることの価値を再発見すること。この食からみえる食べ物の生産へと接近すること。食べ物を大切にいただくこと。このことから、農の尊厳と生命生産の真理へと導かれていけると思われる。こうした食と農の価値と生命の価値、このことを基本とした社会こそ近未来の新たな社会像となるのではないかと思う。

 BMW技術に求められているもの。
 それは、いち農業技術にとどまらない豊かな生命観、自然観を育む行為の全体である。一人ひとりがその地域で、多様で工夫にあふれた農の取り組みを実施しながらつながっていく。これこそ、生物多様性の求める未来である。生物多様性とは、すなわち人と社会の多様性を育むことそのものなのである。その深い世界の心棒にBMW技術はなりたい。BM技術協会はオープンで、多様で豊かなフォーラムを提供していきたい。

Author 事務局 : 2010年11月01日 02:32

 
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