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2011年07月01日

【AQUA232号】BMプラント点検

BMプラント点検 〜フィリピン(ネグロス・北部ルソン)

 六月一二日~一九日の八日間の日程で、フィリピン・ルソン島北部とネグロス島にある生物活性水プラント(ネグロスは飲水改善プラント含む)の点検に行ってきました。
 この点検はNPO法人APLAの依頼により一年に一回行われるものです。匠集団そらの星加とBM技術協会の秋山の二人が行きました。
 最初に訪れたのは、マニラより飛行機で北へ約一時間、カワヤンという町にある生物活性水プラントです。約三年前に農業省の技術センターに設置されたプラントで、農事組合法人CORDEVが所有し、管理しています。現地に着いてすぐにCORDEVに出荷する生産者を中心とした学習会に参加しました。事前にAPLAから、あらためてBM技術について説明をしてほしいと言う依頼があり、星加がBM技術の概要を、秋山が生物活性水の実践事例を説明しました。CORDEVでは生物活性水を堆肥作りに利用し、生産者に提供しています。また、生産者が生物活性水を持ち帰り(CORDEV事務局が配布しているケースもある)、田畑や庭で飼っている豚や鶏に利用しています。米の病害が減り収量が上がった、大豆の収量が上がった、豚や鶏の臭いがなくなり病気もなくなってきたなど、効果が出ているが、では生物活性水そのものは一体何なのかという理解が薄いようでした。液肥や菌床を溶かしこんだ溶液と思っている生産者もいましたが、今回の学習会でBMW技術に対する理解は深まったようでした。対比圃場を作って、その効果をはっきりと比べてみる、より効果的に利用してみる等の意見や、使っていなかった生産者が使ってみたいと言う声が上がりました。CORDEVからは生物活性水が足りなくなってしまうのではないかという不安の声も上がっていました。
 学習会後は有機大豆の圃場へ行きました。生産者はパガドゥワン村の村長キャピターナ氏、女性です。自分が体を壊したこともあり、最近になって有機農業に転換したとのことでした。有機大豆は荒れた土地の多いこの地域の奨励作物となっています。この村でも一七五の農家がこの有機大豆の取り組みを始めようとしているそうです。生物活性水の使い方は、主に植えつけてからの潅水に生物活性水(原液)を利用するとのことでした。一回に五トンの生物活性水を散布するとのことで、CORDEVの配給を待っているとのことでした。生物活性水を使った圃場と使わなかった圃場を比べると、使った圃場では収量が増え、長期間収穫ができるとのことでした。生物活性水を潤沢に使えない状況も踏まえ、今後は二〇〇倍希釈にして作付け前も含め、土壌潅水してはどうかと秋山の方から提案しました。また、種子浸漬や葉面散布などの基本的な使い方の説明もしました。土壌は決して良くはなかったのですが、大豆の根はしっかりと張っていて、茎も葉もしっかりとしていました。キャピターナ村長はBMW技術を学びながら有機農業の取り組みを村でも広めていきたいと話していました。

 翌日はプラントの点検とCORDEV、カネシゲファーム(KFRC)、そしてAPLAを交えて、今後の北部ルソン、そしてフィリピンにおける今後のBMW技術の活動についての話し合いが持たれました。
 まずは点検ですが、プラントは順調に稼働しており、生物活性水もしっかりしたものができていました。暑さでブロアの調子が悪く、モーターを交換するとのことでした。水質の簡易検査や曝気の調整など、星加が丁寧に説明しながら点検は進みました。
 点検が終わり、会議室にて話し合いが行われました。この話し合いには、CORDEVのトム・フェルナンデス委員長、生産者(みかん等の柑橘類)でもあるギルバート・クミラ副委員長、事務局のハニーベス・プレズ氏、北部ルソンにBMW技術を導入するきっかけを作ったグレッグ・ラシガン氏(CORDEVメンバー)、KFRCコーディネーターのアルフレッド・ボディオス氏、APLA共同代表の秋山眞兄氏、同事務局長の吉澤満美子氏、同フィリピン担当デスクの大橋成子氏、星加、秋山、以上の一〇名が参加しました。その議事録をまとめたものを記載します。

 「昨年八月に、フィリピンでBMW技術を進めるに当たり、ネグロスはフレッド氏、北部ルソンはグレッグ氏が担当することになった。また将来的にBMW協会フィリピンを設立し、フィリピンにおけるBMW技術の統括を行うことが話し合われたが、フレッド氏とグレッグ氏との間で情報交換は簡単にできても、北部ルソンの現場の状況が分からないため、北部ルソンから上がってくる課題に関しては、判断をすることが難しいと感じている。
 現在の課題として、
①BMWプラントの管理と維持の問題がある。生物活性水の品質を安定させること、それを管理することが必要。簡単にニセモノのBMWプラントが作られる可能性もある。
②情報やリソースの不足。
③情報交換、経験共有の場が無い。
 以上の三点があげられた。
 この課題を中心に議論を進め、次の方針で進めていくことを確認しました。
 CORDEVにてBMW導入後、様々な人が興味を持ち、実験的に使い始め、またCORDEV理事会の中でも商業的に製造し、普及していきたいという意見もあるが、まだ大規模に進めていく段階ではない。もう少し生産者が経験を積み、実験を行い、フィリピンでの実例の蓄積を行っていく必要がある。BMW技術を適応する作物も多岐にわたるので、作物ごとの効果を検証していく。BMW技術実践者間での経験を共有する場を設立し、またそれはネグロス側とも共有し、フィリピンにおけるBMW技術の効果を実証していく。
 そこで、BMWを使う農家自身が、BMW技術を習得し体得していく必要があり、CORDEV内で経験や実証を積み上げていく。そのために、トム委員長、ギルバート副委員長、グレッグ氏の三名が自分の農場にプラントを設置し、生物活性水の使用の実践者となり実験実証をしていく。すでに設置されているBMプラントの生物活性水は、今後もCORDEVが行っている有機肥料生産に活用し、CORDEVのメンバーで生物活性水利用を希望する農家に配っていく。CORDEV内のBMW技術担当者として、トム委員長を選任する。担当者は、プラントの管理だけではなく、BMW技術についての理解を深め、BMW技術実践者の状況をフォローし、情報交換ができる場を設置する。また日本及びネグロスとの連絡担当者となり、年に二回レポートを作成し、報告する。このことをCORDEV理事会でも承認する手続きを行い、APLAに報告する。BMW技術協会は、これまでと同様にAPLAを通じてCORDEV(北部ルソン)、KFRC(ネグロス)に技術支援を継続していく。BMW協会フィリピン設立に関しては今後も関係者で協議を続け、期が熟した時に設立する。」
(議事録作成:APLA吉澤事務局長)

 話し合いが終わり、トム氏の圃場を訪れました。トム氏はKFRC同様に豚の排水でバイオガスをとり、抽出液(スラッジ)を原料に生物活性水を作ることを計画しているとのことでした。庭先養豚が盛んなフィリピンでは、この形がいずれスタンダードになるような気がします。

 北部ルソンからマニラを経由し、ネグロス島バコロドまで移動し、そこから車で一時間、KFRCを訪れました。昨年一二月に常任理事を中心とした視察ツアーがあり、それ以来の訪問です。豚舎と平飼いの鶏舎、飲水改善プラントが新しく設置されていました。圃場もさらに拡大し、整備されていました。四年前に私と星加で訪れた時は、ここは「廃墟」でした。それを思うと、ここまでの復興と躍進はまさに感動的です。研修生を含めたスタッフ達の顔つきが違います。以前に比べると、自分達の取り組みに確信を持っているように感じました。飲水改善プラントはパルシステム連合会のレインボー基金の補助を得て設置されました。鶏、豚、アヒルなどの家畜、そしてスタッフの飲水用になっています。順調に稼働を始めていました。生物活性水プラントも同じく順調です。豚舎ではちょうど、豚の出産が始まっていました。二頭の豚が出産し、一三頭、一一頭の子豚が生まれました。どの母豚も一〇頭は下回らないようです。滞在中に何度か豚を買いにくる人を見かけました。子豚の評判がよく、すでに四二頭の予約が入っているとのことでした。豚や豚舎を活性水で洗浄し、飲水改善された水を飲み、異臭もない。健康的な子豚達の評判は口コミで広がっているとのことでした。放し飼いで農場中を駆け巡っていた鶏やアヒル、七面鳥などは、放牧場付きの平飼い鶏舎を作り、区分けして飼うようになっていました。荒れ地を開墾し、スラッジを流しこみ、新しい畑を耕していました。今後の課題としては土作り、畑の管理、安定した収量を目指すために品目をある程度絞って作付して行くことなどです。特に土作りや畑の管理については、生物活性水の使い方などを交えて、意見を交換しました。
 以上ですが、フィリピンでのBMW技術の普及は、時間をかけ着々と進んでいるようでした。フィリピンBM協会設立も、将来、そう遠くはないと思います。今後もフィリピンにおける、有機農業者の自立、農業者達のネットワークの拡大にBMW技術が大きく活用されることを望みます。

BM技術協会 事務局 秋山 澄兄

Author 事務局 : 2011年07月01日 23:44

 
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