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2011年09月01日

【AQUA234号】「見えない」放射能と、「身近」になった残留放射性物質

 東日本大震災による福島第一原発事故は、大量の放射性物質を大気中や海水に放出した。放射性物質による環境汚染は、土壌、水、動植物、人々の生産・生活に複雑に入り込み、拡大を続けている。放射性物質の放出は、今なお進行中であり、今後もその影響は、長く続くことを覚悟しなければならないだろう。
 私の住む千葉県でも、ホットスポットと呼ばれる残留放射能が通常計測時と比べて、高い地域があり、その状況は、現在も続いている。わが家は、そのホットスポットの縁に位置している。五月に自宅で、放射線量を計測したところ、地面で〇・五μSV/h、家の中で、〇・三~〇・四μSV/hだった(文部科学省の言う年間一ミリSV以下の基準数値は、〇・一九μSV/h)。
 地域の給水源である江戸川も汚染され、三月下旬には、水道水も危険になった。現在、浄水場の敷地内には、放射性物質に汚染された行くあてのない汚泥が積まれ、ビニールシートで覆われているのが電車から見える。家の裏にある保育園では、園庭内の土を削りとる作業を行っていたが、その隣の公園の砂場は、特に手をつけられていない。周辺の畑では、今まで通り、野菜を作り続けている圃場もあるが、ロータリーがかけられ、何も栽培されていない圃場もある。近所の中学校の周りには、比較的面積の大きな畑があり、乾燥時に風が吹くと、土埃を上げる。その中を中学生達が登校していく。近所のスーパーを覗けば、水道水汚染が公表された時には、ペットボトル入りの水がなくなり、現在は、昨年産米の買いだめが急速に進んでいる。
 わが家の庭には、夏みかんが未だに実をつけている。本来、春に収穫するはずだったが、おそらく放射性物質に汚染されてしまった果実を放置しているからだ。この夏みかん、昨秋に毎年、花を咲かせるために、堆肥や有機肥料を施したにもかかわらず、何故か、今年の春には、一つの花も咲かせなかった。
 千葉県の場合、福島原発以外にもう一つ放射性物質汚染の懸念がある。全国的には知られていないが、大震災のおり、市原市の製油所で起きたLPGタンク火災で、隣接する劣化ウラン倉庫にも延焼していたのである。劣化ウランは、ガス製造用の触媒に使用され、この倉庫には七六五キロの劣化ウランが保管されていた。放射性物質の漏洩はなかったとされているが、このことが明らかになったのは、六月末の千葉県議会でのことだ。原発以外に、「核燃料使用事業所」が潜んでいることを肝に命じなければならない。
 いずれにしても、何千万人とも言われる人々が福島原発事故由来の放射能に「被ばく」している。“見えない”放射性物質に、大気、森林、水系、海、田畑、居住地が汚染され、それが様々な経路で、日本中に拡散している。そして、残留放射能を含んだ除染土壌や廃水汚泥、焼却灰等の廃棄物は、使用済み核燃料と同様に、行く当てもなく、ただただ、溜まっていくことが見えてきた。放射性物質による人や動植物への「内部被ばく」の影響は、これから明らかになってくるのだろう。
 今後は“身近”となってしまった残留放射性物質と、どう折り合って生きていくかを、自身や共に生きていく人達と、具体的に考えていくしかない。しかし、そのためには判断材料と多くの知見、覚悟と実践が必要だ。BMW技術の活動も例外ではない。すでにヒントは、あるはずだ。勿論、「核」というものの本性、理念と倫理なき技術・行動等についても、問う必要がある。技術そのものに、理念がなくても、それを利用する「人」には、理念や倫理が要求される。そうでなければ、技術は暴走し、ご都合主義に陥る。だからこそ、理念という枠でくくったBMW技術は、「核」技術の対極に位置している。
 原発事故以来、自身の判断材料の一つとするため、主にCS放送での原発事故、放射性物質、エネルギー関係等の番組を、極力、録画してきた。録画番組総数は、すでに五〇を超えていると思う。これらは、BM技術協会本部の広報に提供しているので、興味のある方は、問い合わせていただきたい。

(有)千葉自然学研究所 礒田 有治

Author 事務局 : 2011年09月01日 11:45

 
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