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2011年09月01日

【AQUA234号】千葉BM技術協会 第15回定期総会報告

 放射性物質の影響等、共通認識を得るための学習・研修を活動計画に

 去る七月一六日(土)、千葉県香取市の山田町公民館において、千葉BM技術協会第一五回定期総会が開催されました。
 総会には、(農)和郷園、生活協同組合パルシステム千葉、生活クラブ生活協同組合(生活クラブ虹の街)、新生酪農(株)、(株)パル・ミート、NPO支援センターちば、(有)千葉自然学研究所等の会員及び関係者四〇人が参加しました。
 総会では、①二〇一〇年度活動報告及び会計・監査報告、②二〇一一年度活動計画及び活動予算、③二〇一一年度役員選出の件等が審議され、いずれの議案も、全員一致で承認されました。
 総会で承認された今年度の千葉BM技術協会の主な活動方針・内容は、以下の通りとなっています。
 『二〇一一年三月一一日、東日本大震災により、福島第一原発は、水素爆発を起こし、生態系に大量の放射性物質を放出し、多くの生命体に脅威を与えています。BMW技術は、地域生態系を保全・再生する生産・生活を通じ、生命体がその命を全うできる循環型技術と地域社会を追求してきました。しかし、福島第一原発事故による放射性物質の拡散は、人々の生活や生産の営みを崩壊させ、あるいは脅威に陥れ、生命体を危険にさらしながら、生態系の物質循環の中にそれが複雑に入り込んでいく事態と言えます。千葉県においても、ほぼ全域で、大気、土壌、水が放射性物質に汚染された事態となっており、生産や生活に大きな影響を与えています。これまで、生態系を保全・再生する資源循環型の生産・生活・地域のあり方を追求してきた当協会でも、この事態に直面し、今後の生産・生活・社会をどのように構築していくか、改めて検討せざるを得ない状況となっています』
 そこで、今年度は、以上の現状認識に基づき、会員間で、福島第一原発事故による、放射性物質による生産、生活への影響、これらへの対処法等、共通認識を得るための学習・研修活動をすすめます。学習・研修活動をすすめるに当たっては、BM技術協会本部の協力を得ながら、他の地方協会をはじめ、関係団体等と連携・協力しながら、すすめていきます。

講演会「放射能と内部被ばく、その危険性と予防法」
 総会終了後は、高木学校の瀬川嘉之さんを講師にお招きし、「放射能と内部被ばく、その危険性と予防法」と題した講演会が行われました。瀬川先生は、高木仁三郎(原子力資料情報室の創設者)先生の遺志を受け継いで、高木学校の医療被ばく問題研究グループで活躍、主な著書に『受ける、受けないエックス線、CT検査』(共著)『福島原発事故はなぜ起きたのか』(共著:藤原書店)などがあります。
 講演内容の要旨は、以下の通りです。

1、被ばく線量と急性障害・晩発性障害について
 一年間で五〇ミリシーベルト(五年間で一〇〇ミリシーベルト)以下を「低線量被ばく」と呼ぶ。これを基本的な線引きとして「高線量被ばく」「低線量被ばく」という区分けを行っています。高線量被ばくの場合、急性障害(すぐに目に見えて現れる)を引き起こすのに対して、低線量被ばくは、晩発性障害(何年も経ってから現れる)を起こすということです。
2、放射線被ばくによる障害のメカニズム
●人の身体は、六〇兆個の細胞からできており、一個の受精卵から分裂、増殖、分化します。細胞の大きさは一〇〜二〇μm、細胞核の直径は八μm。細胞、身体の大事な情報は、ほとんどDNAで伝わります。(DNAの二重ラセン構造)
●DNAが新しく作られる場合は、必ず古いDNAを鋳型にして、それに対する塩基をつなげていきます。放射線によってできた傷を治す場合にも同様な仕組みが働いています。
●しかし、二本のDNAの鎖が同時に切れた場合は、治すための鋳型となる相手がいなくなり、また、DNAの傷が間違えて治された場合、その間違えがDNA鎖のどこに起きたかによって異なります。もし、それがたんぱく質を作る暗号部分であれば、そのたんぱく質の性質が変わったり、作られなかったりします。
●がん細胞が誕生するには、ひとつの遺伝子の変化ではなく、細胞の分裂・増殖を促す遺伝子の働きが活発になったり、細胞の増殖を抑える遺伝子の働きが抑えられたりしただけなら、その細胞が増えて、周囲の組織よりも盛り上がった、いわゆるポリープといわれる状態になるといいます。このことが放射線の被ばくによるがん誕生のメカニズムといわれています。
3、放射線はなぜ危険なのか
 人、生き物は細胞でできています。大事な情報はDNAにあり、間違いのない複製で次の細胞に伝わっていくのです。そのDNAを放射線が傷つけます。一〇〇ミリシーベルト以上の高い被ばく線量でDNAがずたずたに傷つきます。そうなると細胞は死にます。身体の広範囲にこれが起こると死亡(急性障害)します。間違えて治すと変異となり、変異は蓄積して何年も経ってからがん等の原因になります(晩発性障害)。
4、放射線感受性の違い
 人の年齢が若いほど、臓器では細胞分裂が盛んなほど感受性は強いとされています。セシウム汚染地区の子どもの健康状態は、反復性の呼吸器疾患、消化器疾患、内分泌疾患、免疫力の低下、白内障、がん、先天異常、心臓血管系の疾患などの症状を引き起こします。
5、チェルノブイリ事故の被害
 チェルノブイリでの健康被害の全貌はまだつかめていません。しかし、急性障害による死者は三万人から、三一万人とさまざまな説があります。晩発性障害(がん)による死者は、四千人から一〇万人という説があります。その社会的影響は計り知れなく、環境汚染による地域社会の崩壊、第一次産業、農業、畜産、牧畜、水産業に与える影響は、今の福島の汚染が示すとおりです。
6、放射線から身を守るには
 放射線被ばくの被害を出さないように未然に対策する。被ばくをできるだけ少なくする。自然放射線以外の被ばくについては、医療においても、エネルギー利用においても、正当な必然性があるかないか、十分に検討すること。必要最小限の被ばく線量とすることが大事だと思われます。
 以上、瀬川先生の講演は、人々が放射能汚染に対する正しい知識を持って、自ら対策を講ずるという基礎的な内容で、とてもわかりやすいものでした。

BM技術協会 事務局 大田 次郎

Author 事務局 : 2011年09月01日 11:50

 
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