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2012年01月01日

【AQUA238号】「脱原発宣言」を発した城南信用金庫

 一一月一七日、パルシステムエネルギー政策検討委員会の学習会が開催されました。今回の講師は金融機関で唯一、脱原発宣言を行った城南信用金庫(http://www.jsbank.co.jp/)の理事長、吉原毅氏。
 講演の骨子は以下の通りです。
 原発は安全でクリーンでコストも安いという政府や電力会社の話を安易に信じて、福島から東京に電力供給を受けていたことを深く反省しました。これだけの事態を引き起こしたことを考えれば、当然、原発をすべて停止して総点検し、関係者が責任をとるというのが普通の感覚です。しかし、驚くべきことに政府もマスコミも、「直ちに健康に影響はない」「原発がないと経済や国民生活が成り立たない」、こうした発言の繰り返しでした。これには非常に違和感と、同じ企業人として、あまりの倫理観のなさに、強い怒りを感じました。それで「原発を止めなくては」と皆で声を上げていかなくてはいけないと思うようになりました。
 城南信用金庫は、東京都と神奈川県を営業地域とする中小企業と個人のための金融機関です。信用金庫は一八四四年にイギリスのマンチェスター郊外のロッチデールで生まれた協同組合組織がルーツで生活協同組合などと同じです。当時のイギリスは産業革命の進展により、貧富の差が広がり、道徳や倫理の衰退などさまざまな社会問題に直面していました。人のつながりよりもお金が中心の世の中になったこと、つまり資本主義の矛盾の露呈でした。こうした中で、協同組合組織は、人々が互いに助け合い、人間としての幸せを取り戻すための組織として創られました。
 3・11の原発事故で、地域を消滅させてしまうほどの危険性をはらんでいることがあきらかになりました。金融機関は融資にあたって事業の採算性や将来性を検討します。どのようなキャッシュフローがあり、リスクがあるかを評価します。原発という事業は、未来がなく、とても融資できるような事業ではありません。再稼働を求める人もいるが、採算性を目先のレベルだけで見るのではなく、後から必ず発生するコストを含めるべきなのです。使用済み核燃料の処理方法は確立しておらず、日本中に核廃棄物があふれています。原発はツケを後の世代に先送りする事業で、ツケとは借金です。借金を重ねていけば必ず返済不能になります。私たち金融機関は、将来にツケをまわし、みんなが不幸に陥るのを知りながら、目先の利益だけを考え、目をつぶることは絶対にできないと考えています。
 私たちの金庫では、来年一月から、本店、各営業所で使用している電力について、原発を推進する「東京電力」との契約を解除し、民間の余剰電力を購入し販売している「株式会社エネット」(NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスの子会社であるPPS http://www.ennet.co.jp/)との契約に切り替えます。PPSとは、特定規模電気事業者(高圧五〇kW以上の利用者に電力を供給)のことで、環境に優しい天然ガス発電所を主力電源に、また、風力発電や太陽光発電、バイオマス発電などの自然エネルギー利用にも取り組んでいます。当金庫としても、生活協同組合のみなさんの協力をいただきながら、各方面に働きかけて、企業や工場、学校、マンション等のPPSへの契約切り替えを推進し、原発の全面停止を早期に実現する考えです。
 また、ソーラーパネル、蓄電池、自家用発電機の設備費などの設備投資をした方には「節電プレミアムローン」や「節電プレミアム預金」を通じて金利優遇を行い、省電力の設備拡大、推進を支援しています。本年八月には「再生エネルギー買取法」が成立し、個人や事業者が、太陽光や風力、小規模水力、地熱などの自然エネルギーで発電した電力を、電力会社に一定価格で買い取ることを義務付けた「固定価格買取制度」の導入が決定しました。今後、地域の企業や一般家庭において、再生可能エネルギーに関連した設備投資が増加することが予想されますが、当金庫も積極的に金融支援を行い、「原発に頼らない安心できる社会」の実現をめざしていきます。 (報告:BMW技術協会 事務局 大田 次郎)

Author 事務局 : 2012年01月01日 12:01

 
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